日銀ウォッチャー報告(2012年6月号)

日銀は、昨年の大震災直後に、大規模な金融緩和を実施した。しかし、その後は、ごくわずかな金融緩和しか実施していない。
                                     (日銀HPより)

マネタリーベースの推移(表)

上記のマネタリーベースの推移を見ると、日銀が金融緩和を実施したのは、大震災直後の昨年3-4月だけである。日銀は、昨年8月から今年4月の間に4度にわたって、金融緩和の強化を発表し、「資産買入等の基金」の枠拡大だけで、30兆円増加させることを発表した。しかし、季節調整後のマネタリーベースは、昨年8月から今年5月までに、わずか1.6兆円しか拡大していない。

日銀は、毎月1.8兆円の長期国債買いオペと、「資産買入等の基金」で資産買い入れを実施してきた。しかし、「資産買入等の基金」の枠外で、主に貸出金を大量回収したため、昨年8月から今年3月までのマネタリーベースは微増であった。

今年5月のマネタリーベース減少は、市中資金の8.4兆円不足の影響が大きい。加えて、南欧の経済危機の影響を受けて、避難用の資産として日本国債が買われて金利が低下し、貸出や国債の買いオペで、札割れが相次ぎ、資金供給が予定よりも1.3兆円少なくなったことも一因であろう。その結果、5月のマネタリーベースは、季節調整後の前月比で4.7兆円減少し、昨年8月比の増加額も、1.6兆円にとどまった。

6月の市中資金は、9兆円の大幅余剰となる。6月のマネタリーベースの季節調整後の前月比増加は、ほぼ確実であろう。しかし、7月、8月は再び市中資金は大幅不足となるため、マネタリーベースも、前月比で減少する可能性が高い。

日銀の白川総裁は、5月24日の衆議院の特別委員会で、「ゼロ金利下では日銀が大量に資金を供給しても、資金はそのまま当座預金に預けられる『のれんに腕押し』の状況になっているため、『量では金融緩和の度合いは測れない』」と発言しており、 基金による国債などの資産買入を導入した2010年当初から、基金の「量」が目的ではなく、資産の買い入れで結果的に金利や各種プレミアムを引き下げるのが主眼であると説明している。

「資産買入等の基金」で購入する国債は、期間を延長したとは言え、1年以上3年以下の国債に限っている。毎月1.8兆円購入する長期国債の平均残存期間は、昨年度において3.3年(日銀調査論文5月8日「2011年度の金融市場調節」)と、直近では残存期間の短期化が進んでいる。ちなみに、アメリカでは、現在、期間3年以下の国債を売却し、期間6年以上の国債に乗り換えるという「ツイスト・オペ」が実施されている。

現在、日銀が採用している政策は、平均残存期間が3年強の長期国債を購入し、さらに、「資産買入等の基金」で、期間1-3年の国債を中心に資産購入を行い、かつ、マネタリーベースの量は少ししか増やさずに、長めの金利の低下を目指す、というものである。

このような政策により、中長期的な物価安定の目途である、前年比1%の消費者物価上昇率が実現するのであろうか。私には、現状の政策では、実現不可能な目標であると思われる。日銀の政策を支持する学者、エコノミストは、国内には数多くいるが、彼等は、上記のような日銀の真意を理解した上で、日銀の政策を支持しているのであろうか。

テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

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