日銀ウォッチャー報告(2013年6月号)

マネタリーベース平残の推移2013006(グラフ)

2013年5月の季節調整後のマネタリーベース平残は、前月比で10.9兆円増加し、過去最高の157兆円となった。

マネタリーベース平残の推移201306(表)

上記の表で示した通り、昨年2月14日に金融緩和の強化が発表され、その翌月である昨年3月以降の季節調整後のマネタリーベース平残の推移を見ると、ほぼ継続して増加し続けている。最初に示したグラフを見て分かる通り、そのトレンドは、直近では、ますます強くなっている。今年2月の白川体制の終わり頃からマネタリーベースの伸び率は加速し始め、4月に黒田体制に移行してから、その伸び率はさらに加速度を増している。

5月の市中資金は、13.4兆円の不足であった。そこに、国債の購入8.7兆円、短期国債の購入9.5兆円などを中心とした金調調節により、合計18.9兆円の資金が供給された。金融調節後の市中資金は、5.5兆円の資金余剰になった。この資金余剰のため、当座預金残高は、4月末の66.2兆円から、5月末の71.7兆円と、5.5兆円増加した。この当座預金残高の増加を反映して、4月の季節調整後のマネタリーベース平残は、前月比10.9兆円増加の157兆円になった。当座預金残高増加額と季節調整後のマネタリーベース平残の増加額に差がある理由は、5月のマネタリーベースは減少しやすいという季節要因があるためである。


日銀BSとMB(実績) 201306

上記の表のように、日銀のバランスシートの残高は、4月に10.4兆円の純増、5月に9.6兆円の純増となっている。なお、5月のバランスシート残高9.6兆円の純増に対して、マネタリーベース残高3.9兆円の純増と5.7兆円の差がある理由は、季節要因ではなく、日銀が国の特別会計に対して、5.9兆円の売現先をした要因が大きい。売現先の5月末残高は、21.1兆円。売現先の残高は、だいたい10兆円-30兆円くらいの範囲で上下するので、売現先が、長期的にバランスシート残高とマネタリーベース残高を乖離させる要因にはならない。

日銀BSとMB(予定) 201306

上記の表のように、今年の年末のバランスシートの予定残高は、220兆円であり、残り7ヶ月間、等金額で増やすと仮定した場合、バランスシート残高は、月間5.1兆円の純増で済むことになる。この金額を見る限り、4月と5月の10兆円前後のバランスシート残高の純増は、かなり多めであったと言えるであろう。

6月のマネタリーベースを予想するに当たって、事前に分かっている重要な点をあげると、①6月の市中資金は、4.6兆円の余剰、②6月に満期償還を迎える日銀保有債券が、国債で3.8兆円、短期国債で5.7兆円、③日銀は、国債をグロスで月間7兆円強購入、④年内に9.3兆円、3回に分けて行うことが予定されている貸出支援基金による貸し出しが、6月に実施、の4点を上げることができる。この中で、④の貸出支援基金が6月にどれだけ増えるかが、全く見当がつかない。従って、今月は、6月のマネタリーベースの具体的な増加額の予想は行わない。ただ、市中資金の4.6兆円の余剰金額を大幅に上回ると断言することはできる。プラスアルファがどれだけ増えるかは、長期金利の動向次第であろう。長期金利が上昇速度を速めた場合、多めに資金を供給し、そうでなければ、資金供給量は少なめになるであろう。6月の季節調整後のマネタリーベース平残の前月比は、4.6兆円の市中資金の余剰金額を大幅に上回る増加額になり、過去最高を更新することは間違いない。

黒田総裁は、4月4日の異次元金融緩和により、債券のイールドカーブ全体を下方に移動させることを狙っていた。しかし、イールドカーブ全体の下方移動は、異次元金融緩和の発表の直後だけであった。異次元金融緩和がデフレ不況の最中に突然発表されていたならば、ある程度の期間、イールドカーブの下方移動を継続させることができたと思う。しかし、昨年の11月14日に野田前総理が衆議院の解散を表明し、当時の安倍自民党総裁が主張していた「無制限の金融緩和」が現実化する可能性が高くなった。その翌日から、円安・株高の急速な進行が始まった。その後、景気回復が現実化し、今年1-3月期の実質GDPの前期比成長率は、年率で3.5%と高い伸び率を示した。景気回復が継続すれば、インフレ率も高まることが期待される。その場合、インフレを嫌気して、長期金利に上昇圧力が高まることになる。4月4日に異次元金融緩和が発表された直後の債券市場は、国債買いオペ金額の増額による債券需給の改善と、インフレ発生を嫌気する債券の売却増加の、どちらが大きいかが判断がつかなかったのだと思う。しかし、日が経つにつれて、インフレ発生による金利上昇の圧力がより高いことが、市場の多数派の意見になったのだと思う。今後、景気回復が続く限り、長期金利に上昇圧力がかかり続けることになる。加えて、日本より早く出口戦略が開始されるはずのアメリカの長期金利上昇からも、上昇圧力を受けることになる。この場合、日銀は、国債買いオペの金額を増やしたりすることにより、金利の跳ね上がりを防ぐことになるであろう。しかし、金利の一時的な跳ね上がりを防ぐことができても、中長期的な金利上昇を止めることはできない。金融政策は、長期金利をある程度はコントロールすることができるが、100%コントロールすることはできない。

5月22日をピークにして、円安・株高から、円高・株安へと相場は急に反転した。この反転の原因が、22日のバーナンキFRB議長の議会証言に加え、長期金利の上昇にもあったことは間違いない。しかし、円高・株安が続いている間は、長期金利の上昇も一休みする状態となっている。昨年11月14日以降、猛烈な勢いで、日本株、外国株、外国債券を買い越してきたのではなく、売り越してきた個人から機関までの日本人投資家も、円高・株安がある程度進めば、あり余るキャッシュを、日本株、外国株、外国債券に投じることになると思う。これは、円安・株高要因である。直近発表されたマクロ経済の統計をみる限りでは、力強い景気回復は続いている。もうしばらく、長期金利、株価、為替レートは上下の動きが激しい状態が続くであろう。私は、今年度中は、円安、株高、長期金利のゆるやかな上昇のトレンドと共に、景気の回復傾向が続くと見ている。現時点で、円安・株高から円高・株安のトレンドに切り替わったかどうかを判断するのには、早すぎる。このトレンド転換、すなわち異次元金融緩和の成否を見極めるためには、おそらく数ヶ月の時間が必要であろう。



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