日銀ウォッチャー報告(2013年5月号)

マネタリーベース平残の推移2013005(グラフ)

2013年4月の季節調整後のマネタリーベース平残は、前月比で7.1兆円増加し、過去最高の146兆円となった。

マネタリーベース平残の推移201305(表)

上記の表で示した通り、昨年2月14日に金融緩和の強化が発表され、その翌月である昨年3月以降の季節調整後のマネタリーベース平残の推移を見ると、ほぼ継続して増加し続けている。最初に示したグラフを見て分かる通り、直近については、増加額が加速化している。4月については、異次元の金融緩和の実施が開始され、日銀が大量に資金を供給した結果である。

4月の市中資金は、8.3兆円の不足であった。そこに、長期国債の購入7.1兆円、短期国債の購入7.5兆円などを中心とした金調調節により、合計16.4兆円の資金が供給された。金融調節後の市中資金は、8.1兆円の資金余剰になった。この資金余剰のため、当座預金残高は、3月末の58.1兆円から、4月末の66.2兆円と、8.1兆円増加した。この当座預金残高の増加を反映して、4月の季節調整後のマネタリーベース平残は、前月比7.1兆円増加の146兆円になった。当座預金残高増加額と季節調整後のマネタリーベース平残の増加額に差がある理由は、4月のマネタリーベースは増加しやすいという季節要因があるためである。


日銀BSとMB 201305

4月4日の金融政策決定会合で、異次元の金融緩和の実施ということで、長期国債を中心とする購入資産、操作目標としてのマネタリーベースの残高を大幅に増加させることが決定された。その明細をまとめた表が上記に示した表である。4月末から12月末までの8ヶ月間に、バランスシートで45.3兆円、マネタリーベースで44.7兆円の増加が予定されている。その大半を占めるのは、長期国債の41.9兆円の増加である。その次に、貸出支援基金の増加額が大きい。しかし、そのイメージとしては、その他に含まれる短期国債や貸出金で供給されている資金が、貸出支援基金に振り替えられるという感じである。振替分を除いた貸出支援基金の増加額は、年内に1.5兆円となり、それほど大きな金額にはならない。また、ETFやJ-REATなどのリスク資産の購入金額も増やし、質的にも緩和という形になっている。

5月については、市中資金が13.4兆円の大幅な不足である。日銀による5月の長期国債購入金額は、7.5兆円とアナウンスされている。5月の長期国債償還金額は、0.4兆円であり、純増ベースでは7.1兆円となる。貸出支援基金を通じた貸し出しは、5月中には実施されない。バランスシートの予定増加金額は、年内に45.3兆円、単純に8等分すると、月平均の増加額は5.7兆円で足りることになる。毎月等金額の純増を仮定すると、長期国債以外の資産は全く購入せずに、1.4兆円減らす必要がある。短期国債の償還が6.2兆円あるので、この分のロールオーバー金額を1.4兆円減らすと仮定し、4月中の短期国債の購入が4.8兆円になると想定する。この結果、5月の資金供給は、長期国債と短期国債の購入で12.3兆円となる。5月末のマネタリーベース末残は、前月比1.1兆円の減少となる。この1.1兆円の減少というのは、いくつかの仮定を設けて機械的に算出した数値である。黒田執行部の量的緩和への決意が強いことを考えると、5月のマネタリーベース末残を、前月末比でマイナスにするとは考えにくく、プラスに持っていく可能性が高いと思う。ただ、5月のマネタリーベースの末残が、4月のように前月比で大幅な増加になる可能性は低いと思う。なお、5月は季節的にマネタリーベースが減少しやすい月であるので、季節調整後のマネタリベース平残は、間違いなく増加する。

4月4日の異次元金融緩和は、大方の予想を大幅に上回る大規模なものであった。株式、為替関係のストラテジストの評価は高く、当然のことながら、円安株高が進行した。一方、債券関係のストラテジストの評価は、それほど高くない。異次元金融緩和の発表後、国債価格は乱高下し、国債市場が機能不全に陥っているとの評価がよく聞かれた。しかし、債券ストラテジストたちが、国債市場が機能不全になっていると批判するということは、異次元金融緩和が正解であった根拠の一つであると考える。従来は、投資家の資金が、直接、あるいは、銀行預金を通じて、国債市場に流れ込み、政府支出を通じて投資家に戻るという資金の循環構造が構築されていた。そして、その資金循環構造から外に出る資金の量が、あまりにも少なすぎたことが、日本経済の停滞を招いた大きな原因だと考えるからだ。そしてまた、従来の資金循環構造は、安定しているように見えても、持続不可能という致命的な欠陥を持つ。デフレと低金利、そして巨額の国債の新規発行が毎年継続し、国債の発行残高が増え続ける以上、いつの時点か、財政破綻懸念から、金利の急上昇へと向かうのは避けられない。持続不可能な資金循環構造は、一刻も早く破壊する必要がある。消費税増税などにより財政再建を図れば良いという反論は、当然ありうる。しかし、1997年に消費税が増税されて以来、現在までの一般会計の税収を見ると、約10兆円減少している。従来の金融政策を継続し、そこに消費税などを増税し、その結果として税収が再び減った場合、どうなるか。その時こそ、財政破綻の恐怖から、投資家の国債離れが起こり、従来型の資金循環構造が破綻し、金利の急上昇へと突入する。国債の発行は不可能になり、国家財政は破綻する。財政破綻を避けるために、国債の日銀引受を行った場合、ハイパーインフレが発生し、今度は日本経済が破綻する。金融緩和は、金利の急上昇につながるという意見もあるが、金利の急上昇へと進む道は、従来型の金融政策のまさにその延長戦上にあるのである。金利の急上昇を避けるために最低限必要な条件は、債券市場の機能不全を引き起こしてでも、従来型の資金循環構造をぶち壊すことである。そして、ある程度の物価上昇が続き、増税の結果、税収が増大する経済をつくることである。その第一歩として、4月4日の異次元金融緩和は、高く評価できると思う。多くの投資家が、国債市場は機能不全と見て、国債投資を外債投資に振り向ければ、円安になる。国債投資を株や土地への投資に振り向ければ、株価、地価は上昇する。円安資産高がある程度継続すれば、景気は間違いなく回復し、デフレからの脱却も可能になる。その時に行われる増税は、税収を増やし、ここで初めて金利の急上昇の発生を回避できる条件が生まれる。4月4日の異次元金融緩和の結果、物価上昇率はプラスに転じるであろうが、2年後に2%の物価上昇が可能かどうかまでは分からない。同時に、金融政策だけで、世の中がバラ色になることもありえない。少子高齢化、人口減少、巨額の政府債務という条件に変化はないので、将来は、依然として茨の道しかありえない。少し油断すれば、再び金利の急上昇へと通じる道に舞い戻ってしまう危険性は、常に存在する。20年前に異次元金融緩和が実施されていたならば、茨の道や危険性のある経済にはならなかったはずだ。それでも、金利の急上昇に確実に突入して行く道から、金利の急上昇が回避可能な道へと、4月4日を境にしてコースが変わったことだけは、間違いない。

テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

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財政は破たんしようがない(対外債務は別)

国家が消費を受け持つことで経済は回り、国民も納得する。
中間層も富裕層もその収入は国家債務による景気循環維持のたまものに過ぎない。

金利上昇局面になれば相続税、資産課税によってバランスシートを縮小するでしょう。
日本でもアメリカでも国家債務の無限の膨張は民間資産の無限の膨張を意味します。
持たなくなるところまで膨れたら余るほど持つところから回収するだけのことだと思います。

そしてこの時点において資産の国外逃避を心配することもないと思うのです。
というのも、世界中が相続税、資産課税によって、

現在の水準程度の民間資産と国家債務ぐらいまでバランスシートを縮小させるからだろうからです。そうするしかないとも言えますが。
フローから税金を取るのは20世紀、21世紀はストックから取る。

なぜそうなるかというと、技術革新による生産力過剰が関わっていると思います。

資産課税の増税は不可能

世界同時の相続税、資産課税の増税は、政治的に可能であれば、賛成です。しかし、近い将来、そうした増税が実現する可能性はゼロだと思います。現在の世界の流れは、相続税廃止の方向です。

私の考え方は、マイルドなインフレを通じて、富裕層から毎年少しずつ税金を払ってもらう仕組みを作ることです。

インフレの発生と所得、資産の分配の変化
http://stockbondcurrency.blog.fc2.com/blog-entry-50.html

もちろん

近い将来ということでしたら私も想定していません。

しかし、政府債務が膨張し、富裕層の資産も膨張し、これ以上債務も貧富の差も大きくしようとしたら既得権益の起案そのものが吹っ飛ぶという段になって、ひどすぎるものを持続可能にするというレベルで相続税増税が行われると思います。

というのもほかにどうしようもないからです。
これも、財政破たんはしないだろうという消極的な意見であり、積極的に相続税を増やそうという意見でもなく、その方向性に世界が動いているとも見ていません。

でも、富裕層の資産と国家債務の膨張が限界まで行けばその先はシステムチェンジする他ないようにも思います。
相続税廃止するのはいいですがそれをやると他が持たなくなりむしろ反動としての革命を呼び込んでしまうかもしれません。
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