日銀ウォッチャー報告(2013年4月号)

2013年3月の季節調整後のマネタリーベース平残は、2013年2月比で6.2兆円増加し、過去最高の138.9兆円になった。

マネタリーベース平残の推移

昨年2月14日に、金融緩和の強化が発表され、その翌月である昨年3月から今年3月までの季節調整後のマネタリーベース平残の推移を見ると、日銀は、ほぼ順調にマネタリーベースの残高を積み上げている。

3月については、市中資金が6.3兆円の余剰のところに、長期国債買いオペと資産買入等の基金の8兆円の資産購入により、金融調節後の市中資金は、14.3兆円の資金余剰になった。この資金余剰のため、当座預金残高は、2月末の43.9兆円から、3月末の58.1兆円と、14.3兆円増加した。この当座預金残高の増加を反映して、2月の季節調整後のマネタリーベース平残は、前月比6.2兆円増加の138.9兆円となった。当座預金残高増加額と季節調整後のマネタリーベース平残の増加額に大きな差がある理由は、3月のマネタリーベースの増加の大半は、3月下旬に集中しており、その結果、平残にしてみると、それほど大きな増加にはならないからである。

下記の表に示したとおり、3月の資産買入等の基金の増加額は、2月の増加額2.6兆円を若干下回っている。これは、貸出金の供給で、1月と同様に札割れが頻発し、貸出金残高を維持すること出来なかったからである。その代わりに、国債と短期国債の購入金額を増やした結果、月間の基金の増加額は、前月号で予想した増加額を下回ったものの、2.2兆円の増加となった。現在のような高水準の当座預金残高が、さらに増加する環境下では、現行方式の貸出金の残高を維持することは不可能である。今後の金融政策の変更時に、貸出金の供給方式なり、供給金額に、大きな変更が加えられることは間違いない。

3月のマネタリーベース平残の季節調整後の前月比増加率4.6%という数値は、2012年の年初からの前月比の推移を見ても、増加率が最大である。これは、3月というのは、季節的に、市中資金が大幅な余剰の月であるからだ。昨年3月のマネタリーベース平残の伸び率は、前年比マイナスであり、前月比でもわずかなプラスであった。従来は、昨年3月のように、余剰資金を貸出金の回収などを通じて減らすという操作が実施されたこともあるからだ。今年の3月は、従来と異なり、大幅な余剰資金があるにもかかわらず、資産買入等の基金を使って、資金供給を増やし続けた。結果として、3月のマネタリーベース平残の季節調整後の前月比増加率は、4.6%という大きな数値となった。


資産買入等の基金 月次購入資産の内訳

4月中に金融政策の変更が決定される可能性が高い。しかし、その内容が現時点では予想できないので、金融政策に変化がないと仮定した場合の予想を述べることにする。

4月の市中資金は、6.6兆円の不足となる。6月の資産買入等の基金の予定残高85.5兆円を達成するためには、4月に資産買入等の基金で残高を4.4兆円増加させる必要がある。4月の資金調節では、資産買入等の基金で4.4兆円の資産購入を実施し、資産買入等の基金の国債、短期国債の償還分に当たる5兆円をロールオーバーし、資産買入等の基金以外で長期国債を1.8兆円購入し、合計11.2兆円の資産購入と予想する。マネタリーベースの4月末残を3月末残と比較すると、4.6兆円の増加になりそうだ。4月の季節調整後のマネタリーベース平残も、3月比で増加し、過去最高を更新すると予想する。

5月の市中資金は、季節的には大幅不足となる。5月のマネタリーベースの末残は、4月末残との比較では、ほぼ横ばいと予想する。5月の季節調整後のマネタリーベース平残も、4月との比較では、ほぼ横ばいと予想する。

このように、白川前総裁下で決定された金融緩和路線をそのまま実行するだけで、季節調整後のマネタリーベース平残は、4月も過去最高を更新し、大幅な資金不足になる5月も大きく減少することはない。この調子で、12月まで予定通りに資金供給を続けると、少なくとも年内は、マネタリーベースの金額だけを見るならば、かなりの速度で増加することが既に確定している。

加えて、4月3日、4日の金融政策決定会合で、何らかの追加の金融緩和策が打ち出されることは間違いない。しかし、市場は、昨年の11月14日から、大規模な追加金融緩和策が打ち出されることを、既に織り込んでいる。実際の追加緩和策とそれに対する市場の反応を予想することは難しい。ただ、金融政策決定会合は、4月5日以降、年内だけであと10回開催されることが決まっている。日銀に期待したいことは、仮に、4月4日に打ち出された政策が、市場の期待を満たさず、円高株安が進行した場合でも、次回以降の会合で、追加緩和を実施する姿勢を見せることである。日銀は、インフレ率が2%になるまでは、追加緩和のカードをいくらでも切り続けることが出来る。市場が、日銀に対して、今後も追加緩和のカードを切ってくるとの雰囲気を感じたならば、いずれは円安株高への方向に相場は反転するであろう。金融政策に素早く反応する市場の動きを睨みながら、金融緩和のアクセルを踏む強さをコントロールすることこそが、市場との対話を行うという意味であると考えている。

黒田総裁、岩田副総裁は、2年後に2%のインフレ実現を公言している。私は、そう発言すること自体は問題ないが、2年での実現にこだわる必要は全く無いと考える。重要なことは、円相場を円安方向へ、株価、地価などの資産価格を値上がり方向へ、できるだけ長期間、動かし続けることであると考えるからだ。金融政策の波及経路は、マネタリーベースの増加→銀行貸出の増加→GDPの増加というルートよりも、円安→輸出の増加→GDPの増加、あるいは、株価・地価の上昇→消費、投資の増加→GDPの増加というルートの方により明確に現れる。現在の金融政策に必要なことは、日銀が、十分な金融緩和を続け、円安や株価・地価の上昇を通じて、必ず景気回復と物価上昇を実現するぞという雰囲気、あるいは期待というものを作り上げることである。「期待に働きかける」という最近よく使われる言葉は、「予想インフレ率を引き上げる」という意味として使われることが多い。私は若干違って、「日銀が金融緩和の強化を通して景気回復と物価上昇を実現する強い意志を持っていることを、市場関係者や多くの人々に理解させること」であると考えている。白川前総裁は、それより前の総裁より、金融緩和を大幅に強化したのであるが、いくつかの失敗を犯したことが問題であった。その失敗の一つが、「日銀だけの力では、デフレ脱却を実現することは出来ない」と繰り返し発言したことである。日銀は金融緩和の強化と言っているものの、デフレ脱却が確実に実現できるまで、金融緩和を強化し続けるかどうかわからない、むしろ、現在のデフレ状態が長続きするかもしれない、といった期待を市場関係者に抱かせてしまったことは、大きな失敗であった。期待という要素は、為替レートや株価の形成要因としては、決定的に重要な要素である。この結果が、円高株安の継続であり、デフレ経済の継続であった。白川前総裁は、デフレ脱却期待、景気回復期待というものを形成させることに、完全に失敗したのである。逆説的なことであるが、2%のインフレ実現は、2年後でない方が良いと考えている。2年後に2%インフレが実現できなくても、円安、株価・地価の上昇を通じて景気回復が継続し、緩やかながらも賃金と物価が上昇し、多くの国民に景気回復の実感を持たせることができれば良いのである。その場合、2年後に2%の公約が達成できなくても、日銀を非難する声は大きくならないと思う。2%のインフレが2年後に実現してしまうと、インフレ率がさらに上昇することがないように、資金を回収し、金利を引き上げるという出口戦略を実行に移す必要がある。その場合、それ以上の円安、株価・地価の上昇を持続させる手段が無くなってしまう。景気回復局面が終わってしまうかもしれない。金融緩和の雰囲気と景気回復が、たった2年で終わるとするならば、それはもったいない。できるかぎり長期間、景気回復期が続くことの方が望ましい。ただ、金融政策は普通、効果が現れるまで、2年近い時間が必要であると考えられている。2年後に実現できないなら、永久に実現できない、あるいは実現させる気が無いと市場が予想してしまうかもしれない。そうなると、金融緩和の効果が薄れてしまう。従って、方便として、2年後に2%のインフレ実現を公言することがあっても良いと思う。黒田総裁、岩田副総裁の真意はわからないが、私は、2%のインフレ実現はもっと先である方が望ましいと考えている。

このように、好き勝手な意見を述べることだけなら簡単なことであるが、実際に金融政策を実施する側に立てば、簡単なことではないであろう。1年後にほぼ確実に実施される消費税率の引き上げだけをとっても、それが景気やインフレ率にどの程度の影響を及ぼすか、誰も正確に予想できない。その上、将来には、様々な「想定外」の事件が必ず発生するのである。それでも、「日銀だけではできない」と責任回避のような発言を続ける総裁よりも、「日銀があらゆる手段を使って実現する」と責任を取る覚悟を持つ発言をする総裁の方が、経済により好ましい影響を及ぼすものと考える。

テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

コメントの投稿

非公開コメント

銀行は緩和マネーで株を買うか?

日銀短観での設備投資意欲は低調なのでそうそう企業向け貸し出しが増えるとも思えません。
さらに国債を売ってしまったら銀行はどうやって利益を上げればいいのでしょう。とりあえず、国債と株の含み益があるので1-2年なにもしないということは可能でしょうか。

まずは不動産関係の融資の基準が甘くなったり、個人向けローンの金利を下げての拡大攻勢になるのではと思います。

国債を手放したマネーが株に向かうでしょうか。かつての日本や、昨今のアメリカの金融機関は国債を手放したマネーをどうしたのでしょうか。

今まで株を売り越してきた日本の金融機関としては下手にここで株を買いたくないのではと思いますで、まずは融資の拡大を模索して株式は放置するのではと思いますが、いかがでしょう。
資産購入は控えて、企業、個人向けの融資の拡大を模索し、実体経済の好転を手探りし、そこで株が値ごろになっていたら拾うかもしれません。

まさかここで緩和マネーで株を購入するとしたら正に業績の伴わないバブルですし、外資に見透かされてとんでもない高値つかみをするだけになりそうです。
しかし、生命保険会社はこれからどうするか。
国債で含み益があってもここからの運用は株を購入するしかないのではないか。しかし、ここで買いにゆくことはあまりに足元を見られるということ。
結果国債をなかなか手放さないのではないかと思います。
そうなると日銀の購入額以上に金利が低下するかもしれません。

(個人の信用取引の金利も下がりそうです。
実体経済の好転が伴わない金融相場なのですがしばらくの内はそんなことを気にしない強気な参加者も出てくるのでしょう。
ですが、日銀短観や消費税増税を控えての企業業績については古い市場参加者は疑問を持っているようです。)
株価は需給要因と業績要因がるので何ともよくわからない地点だと思います。

生保のこれから

生保はどうするのでしょう。
国債で含み益があるとはいえ、これを手放して株を買えるものでしょうか?
意地でも国債を手放せない感があります。
ここで国債を手放して株を買いに行ったらそれこそ高い買い物になりそうです。

するとなかなか国債を手放さないのではないでしょうか。
そうすると日銀は買い付け規模の割にやたらと高い買い物で国債を買わなければならなくなる気がします。

誰も手放したがらなかったら国債市場の金利が限りなくゼロに近づいてしまいます。中央銀行もそんなものは大量には買えないと思います。
しかし、すると今度は国が発行する際の入札金利が落ちますね。
そうなると国債では誰も運用できなくなり、今度こそ融資や低金利の社債に向かわなければいけなくなる。

株式は、その時の価格水準次第なのでしょうか。
期待ではなく実体経済にかけ続けた銀行や生保がそうほいほいと株には向かわず、国債を手放さず、次に社債に行きだとは思います。
彼らは相場の熱が冷め、業績や経済指標や消費税に目が向いて下がるのを待っているようには思います。

それとも緩和と共に株にも投入するか?

外国人しか株を買わない悲しい現実

日本人の投資家が、そう簡単に株を買うことはありません。
http://stockbondcurrency.blog.fc2.com/blog-entry-40.html

銀行は、バブル崩壊後、原則として新規の株式投資をしないように決めています。銀行本体が株を買いに来ることはありません。外国人以外の株の買い手として、生保が一番期待できる主体ですが、その生保ですら、簡単に株を買うことはないと思います。無理やり生保に株を買わせる方法を考えましたが、実現性は低そうです。下記の後半を参照してください。
http://stockbondcurrency.blog.fc2.com/blog-entry-55.html
全記事表示リンク
目次のページを表示

株式関連 株 コメント一覧

  • 投資部門別 現物先物 時系列表

  • 投資部門別売買状況 時系列グラフ

  • 6月第2週 株 コメント

  • 6月第1週 株 コメント

  • 5月第5週 株 コメント

  • 5月第4週 株 コメント

  • 5月第3週 株 コメント

  • 5月第2週 株 コメント

  • 5月第1週 株 コメント

  • 4月第4週 株 コメント

  • 4月第3週 株 コメント

  • 4月第2週 株 コメント

  • 4月第1週 株 コメント

  • 3月第5週 株 コメント

  • 3月第4週 株 コメント

  • 3月第3週 株 コメント

  • 3月第2週 株 コメント

  • 3月第1週 株 コメント

  • 2月第4週 株 コメント

  • 2016年 年間 株 コメント

  • 投資部門別売買状況アノマリー

  • 日本株 株式分布状況調査

  • 日銀資金循環統計 株 長期グラフ

  • 日銀資金循環統計 株 コメント

  • 株式先物投資部門別売買状況

  • 大手証券 先物建玉推移 グラフ

  • 海外投資家の株式買い越し金額

  • 世界の株価 国別 長期推移

  • 最新記事
    カテゴリ
    最新コメント
    Twitterを表示
    経済指標が意味するところを解説
    FC2カウンター
    最新トラックバック
    検索フォーム
    リンク
    ブロとも申請フォーム

    この人とブロともになる

    QRコード
    QR
    RSSリンクの表示
    Web Analytics