日銀ウォッチャー報告(2013年2月号)

2013年1月の季節調整後のマネタリーベース平残は、2012年12月比で0.7兆円増加し、過去最高の128.8兆円になった。  
                                        (日銀HPより)

マネタリーベース平残の推移

1月分のデータ公表ということで、季節調整後の数値が過去に遡って改訂された。日銀は、昨年2月に、消費者物価上昇率の前年比+1%を目指すという中長期的な物価安定の目途を設定し、資産買入等の基金の金額を10兆円増額した。そして、基金で資産購入を進めたが、基金の枠外で貸出金を大量回収した。従来の季節調整後のマネタリーベースでは、昨年3月は、2月比で減少し、季節調整後のマネタリーベースが着実に増えるのは昨年6月以降であった。今回の改訂で、昨年2月以降、季節調整後のマネタリーベースは、着実に増えていることが明らかになった。季節調整前の数値は変化がないので、前年が震災という特殊要因があったにせよ、昨年3月、4月の季節調整前のマネタリーベースが、前年比でマイナスであることには変わりは無い。昨年6月以降も、季節調整後のマネタリーベースは、ほぼ着実に増加を続け、今年1月には、過去最高の金額となった。

1月については、市中資金が7.9兆円の不足のところに、長期国債買いオペと資産買入等の基金の4.3兆円の資産購入により、金融調節後の市中資金は、3.6兆円の資金不足になった。この資金不足のため、当座預金残高は、12月末の47.2兆円から、1月末の43.7兆円と、3.5兆円減少した。この当座預金残高の変化を反映して、1月の季節調整後のマネタリーベース平残は、前月比0.7兆円増加の128.8兆円となった。当座預金残高が3.5兆円減少し、季節調整後のマネタリーベース平残が0.7兆円増加した理由は、1月はマネタリーベースが減るという季節性があるのにもかかわらず、例年ほどマネタリーベースが減少しなかったからである。もう一つ、昨年12月のマネタリーベース末残が大きく、その結果、今年1月のゲタが大きかったことも影響している。

2013年1月号(*1)で、1月の季節調整前のマネタリーベース末残が前月比で増加する理由として、日銀が7.4兆円の資金供給をすることを予想した。しかし、実際には、1月の日銀の資金供給は、4.3兆円にとどまり、予想を3.1兆円下回った。資産買入等の基金残高は、1月の月間に、0.3兆円しか増えなかった。理由は、0.1%の固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションという名の貸出金の供給が、札割れ続出で、資金供給が出来なかったからである。日銀は札割れを予想して、多めの資金供給を実施しようとしたが、回数で13回、金額で6.5兆円もの札割れが発生し、資金供給の目標に達しなかった。その結果、横ばいを維持する予定であった資産買入等の基金の貸出金は、残高が3.6兆円も減少してしまったのである。1月の季節調整後のマネタリーベースの増加額が0.7兆円と少なかった理由は、技術的な要因で、資金供給が出来なかったからである。当座預金の1月末の残高は43.7兆円である。この残高は、現在予定されている資金供給が続いて行けば、50兆円、60兆円と増えていくのである。こうした環境下で、0.1%の固定金利の貸出金で資金供給を続けることは不可能である。資金供給の方式を、現在の0.1%の固定金利方式から、以前実施されていた金利入札方式に改めるか、25兆円の貸出金の多くを、短期国債に変更するなどの方式に、政策変更が行われることになるであろう。

なお、昨年1年間の市中資金は43兆円の不足であった。一昨年は17兆円の不足であったので、不足額は大幅な拡大となった。しかし、今年の市中資金の不足は43兆円をさらに大幅に上回るのである。理由は、資産買入等の基金で購入した国債、短期国債の償還が急増するからである。市中から購入した国債、短期国債を、市中に売却するのであるならば、事前の市中資金の過不足に何の影響も与えない。しかし、市中から購入した国債、短期国債の償還金を、日銀が政府から受け取ってしまうと、その金額に等しい金額が、市中から日銀への資金移動となり、市中資金の不足額の増加につながるのである。従って、今年の市中資金の不足金額は、43兆円を大幅に上回ることは間違いない。一方、資産買入等の基金で購入する国債、短期国債は、償還が続出する結果、購入金額が昨年より大幅に増加することも間違いない。

資産買入等の基金の残高と資産の内訳

2月の市中資金は、7.7兆円の不足となる。2月の資金調節では、資産買入等の基金で3.6兆円の資産購入を実施し、資産買入等の基金の国債、短期国債の償還分に当たる4.5兆円をロールオーバーし、資産買入等の基金以外で長期国債を1.8兆円購入し、合計9.9兆円の資産購入と予想する。マネタリーベースの2月末残を1月末残と比較すると、2.2兆円の増加になりそうだ。2月の季節調整後のマネタリーベース平残も、1月比で増加し、過去最高を更新すると予想する。

3月の市中資金は、季節的には大幅余剰になる。3月のマネタリーベースの末残は、2月の末残より大幅な増加と予想する。3月の季節調整後のマネタリーベース平残も、2月から大幅な増加となり、過去最高を大幅に更新すると予想する。

1月22日の日銀の金融政策決定会合では、2%というインフレ目標が設定されたが、金融政策については、2014年に10兆円の緩和の強化だけが決定され、2013年中の政策変更は無かった。市場の反応は、1日~2日は円高株安方向に動いたが、その後は、再び円安株高方向に動いた。市場としては、2013年ではなく、2014年からの金融緩和の強化に失望して、一旦は、円高株安の方向に動いた。しかし、2%というインフレ目標が決定されたわけだから、日銀としては、今後も断続して金融緩和の強化を実施することにならざるを得ないと判断する人が増加し、しばらくして円安株高のトレンドに戻った、というのが私の解釈である。

こうした解釈が正しいならば、現状レベルの金融緩和に、市場関係者は満足していないということになる。現状は、1年前の金融緩和よりも、レベルは上がっているのではあるが、市場が満足するレベルには達していないことになる。現状の金融政策を維持し続けた場合、いずれ市場は失望し、再び円高株安方向に向かう可能性が高い。そうなれば、2%のインフレ目標も、景気回復も、実現することが困難になってしまう。日銀は、株価や為替レートを横目に見ながら、もう一段の金融緩和の強化を実施することが求められる。

同時に、速すぎる円安も望ましいとは言えない。円安は、進行すればするほど、日本全体にとっての利益は大きい。しかし、速すぎる円安は、国内の所得分配を大きく歪めてしまう。日本全体としては、円安がメリットであっても、輸入に大きく依存する企業にとっては、円安など損害以外の何者でもない。輸入依存の企業が、円安という環境に、ある程度適応できるくらいの時間をかけた円安が一番望ましい。同時に、急激な円安が進行した場合、既に発生している日本の金融緩和政策は近隣窮乏化政策だという諸外国の非難も大きくなることであろう。従来の日本こそが、周辺のアジア諸国の近隣窮乏化政策の最大の被害者であった(*2)。しかし、そのような主張をするよりも、デフレ脱却、欧米諸国と同じ2%のインフレ目標の達成を表に出す方が、政治的には有利だと思う。速すぎる円安より、長期間、持続可能な緩やかな円安の方が好ましいのである。

現在の環境が変化することなく、金融緩和だけが強化されたと仮定すれば、今後、円安株高だけではなく、都会の地価の上昇、景気の回復、インフレ率の上昇、金利の上昇などの現象が進行して行く可能性が高い。しかし、現実にはそんな単純に物事は変化しない。消費税増税もあるし、それ以外にも様々な想定外の事態が発生することがありうる。それでも、結果として、円安株高から金利の上昇まで、できるだけ長期間、緩やかに進行するような金融政策を実行できる人が、次期日銀総裁になってもらいたいものである。

テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

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