日銀ウォッチャー報告(2013年1月号)

2012年12月の季節調整後のマネタリーベース平残は、11月比で3.5兆円増加し、129.9兆円と過去最高の金額になった。   
                                        (日銀HPより)

マネタリーベース平残の推移

上記の季節調整後のマネタリーベースの推移を見ると、大震災のあった2011年3月にマネタリーベースは急増し、一旦、2011年4月にピークをつけた。その後、マネタリーベースは減少傾向であった。日銀は、昨年2月に、消費者物価上昇率の前年比+1%を目指すという中長期的な物価安定の目途を設定し、資産買入等の基金の金額を10兆円増額した。そして、基金で資産購入を進めたが、下記の表に示すように、昨年3月に基金の枠外で貸出金を8.4兆円回収するなどした結果、昨年5月までは、季節調整後のマネタリベースはほとんど増加しなかった。しかし、昨年6月以降、基金の枠外での貸出金の回収は一巡し、基金で資産購入を続けた結果、季節調整後のマネタリーベースはほぼ順調に増加し、昨年12月には過去最高の金額まで増加した。

資産買入等の基金 月次購入資産の内訳

昨年12月については、市中資金が1.2兆円の余剰のところに、長期国債買いオペと資産買入等の基金の6.4兆円の資産購入により、金融調節後の市中資金は、7.6兆円の資金余剰になった。この資金余剰のため、当座預金残高は、11月末の39.7兆円から、12月末の47.2兆円と、7.5兆円増加した。この当座預金残高の変化を反映して、12月の季節調整後のマネタリーベース平残は、前月比3.5兆円増加の129.9兆円となった。当座預金残高とマネタリーベースの増加に差がある最大の理由は、12月は毎月マネタリーベースが増えるという季節性があるため、季節調節をかけると、増加額が縮小するからである。

資産買入等の基金の資産購入額の総額は、今年の6月末には、85.5兆円、12月末には、101兆円まで増額されることが決定されている。基金の年間の資産購入額は、昨年が25兆円に対し、今年の前半で、18.4兆円、年間では34兆円まで増加する。そこから今年前半の月次の資産購入額の平均を計算すると、上記の表のように、月3.1兆円となる。主な内訳は、国債が1.6兆円、短期国債が1.7兆円である。短期国債の購入額は大幅に増加するが、国債の購入額は昨年よりも若干減少する。また、昨年の8月、9月には、3.1兆円以上の資産購入を実施しているので、基金の資産購入額は増加するにしても、大幅に増加すると言うほどではではない。この外に、6月から貸出支援基金による資金供給が始まるが、この基金による増加額は、現時点では予想しきれない。

1月の市中資金は、7兆円の不足となる。1月の資金調節では、資産買入等の基金で3.1兆円の資産購入を実施し、資産買入等の基金の国債、短期国債の償還分に当たる2.5兆円をロールオーバーし、資産買入等の基金以外で長期国債を1.8兆円購入し、合計7.4兆円の資産購入と予想する。マネタリーベースの1月末残を昨年12月末残と比較すると、0.4兆円前後の増加になりそうだ。季節性を考慮すると、1月の季節調整後のマネタリーベース平残は、12月比で増加し、再び過去最高値を更新すると予想する。

2月の市中資金は、季節的には大幅不足になる。2月のマネタリーベースの末残は、1月の末残より減少と予想する。しかし、2月の季節性を考えると、2月の季節調整後のマネタリーベース平残は、1月から横ばいか増加と予想する。

先にも示したとおり、現在の日銀の金融政策は、中長期的な物価安定の目途として、消費者物価上昇率の前年比+1%を目指すというものである。これに対して、安倍総理は、日銀との間にアコードを締結し、その中で、消費者物価上昇率の前年比+2%のインフレターゲットを設けることを要求している。その要求への対応策が、1月21日、22日の金融政策決定会合で話し合われる。通常ならば、内閣が日銀にこのような要求をした場合、中央銀行の独立性の侵害だと、内閣側が袋叩きに合うはずである。しかし、今回に関しては、安倍総理の要求は、衆議院総選挙における公約であり、民意の審判を受けたものであるため、世論もマスコミも、内閣の要求を批判することはあまりない。白川総裁と日銀内部の人たちにとっては、屈辱的な決定をせざるを得ないところまで追い込まれている。しかし、白川総裁がいかなる判断をしようとも、最終的には、日銀総裁の人事や、日銀法改正という手段を使って、近い将来、安倍総理は+2%というインフレターゲットを日銀に設定させることになるであろう。

従来、私は、現状の日銀の金融政策では、2014年、ないしは、2015年の消費者物価上昇率の前年比+1%目標を実現することは不可能と書いてきた。しかし、状況がここまで変化すると、2014年、ないしは、2015年の消費者物価上昇率の前年比+2%が実現する可能性は高くなったと言わざるをえない。金融緩和の効果の波及過程として、円安と資産高が必要と主張してきが、昨年の11月14日以降、急速に円安が進行し、株価は上昇し続けている。安倍総理の金融政策に対する批判は多いが、市場は、安倍総理の政策が、円安、株高をもたらすと予想し、既にそれを織り込み始めている。現在の金融政策を維持したままで、消費者物価が前年比+2%まで上昇する可能性は低いと思うが、市場を睨みながら日銀が追加緩和を実施していけば、最終的には2%程度の消費者物価上昇率は実現するであろう。

とは行っても、実現への道が簡単であるとは言えない。補正予算や2013年度本予算で国債が増発されたならば、金利上昇がどの程度になるか、警戒しなければならない。消費税増税が延期されたならば、やはり金利上昇を警戒しなければならない。私のような、財政緊縮・金融緩和派にとっては、積極財政の結果としての金利上昇は、最大の懸念材料である。消費税増税が実施された場合には、来年4月以降の景気の落ち込みがどの程度になるかを考える必要があるし、アメリカやEUの政治混乱の経済への影響、日中関係の動向、そのほかにも、心配しなければならない要因は山のように存在する。マクロ経済で予想を難しくする要因は何時でも沢山ある。そうした中で、日本の金融政策が、正しい方向に動き始めたことだけは、歓迎したいと思う。

テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

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いわゆる金融緩和と非伝統的緩和と政府債務

いわゆる金融緩和は政策金利を押し下げて民間の投資を活性化させるものだったかと思います。
ゼロ金利においても企業への貸し出しが年々減りつつあるということはいわゆる金融政策は無効ということです。

もちろん国債や株を中央銀行が買い入れ続ければ、金利はゼロのままでも、金融資産の価格が下げ止まり上昇に転じるでしょう。
しかし、これは金融緩和というよりは露骨な貨幣の希薄化に近い。(いわゆるお札を刷ってばらまくというイメージ)
金融緩和というより、政府債務ひいては政府通貨に近いものではないでしょうか。

そしてこれは「国債、株、土地」などを所有する人だけを富ませるやり方です。
どうせ通貨を希薄化するなら国民の信任を受けた政府が国民全体を分け隔てなく豊かにするために使う政府債務を拡大するべきではないでしょうか。

疑問①
ゼロ金利以上の金融緩和は政府債務、政府通貨と性格が似てはいないだろうか。

そして
疑問②
基本的なファンダメンタルは超デフレではないだろうか。

毎年40兆円の財政赤字を積み増してなおデフレだったのです。
金融政策で何をしようと、財政収支を来年から均衡させたら大大大デフレが発生することは想像に難くありません。
財政収支を均衡させて、金融緩和だけでどうにかなるでしょうか。
均衡させたにせよ既存の政府債務が流動性を大きく受け持っています。
民間の信用創造だけで流動性の供給が足りるというのでしょうか。


民間の借りいれ、民間の投資が減少する分を国ぐ化持つのは必然ではないでしょうか。そして豊かであり国民が幸せであるほどそうなると思うのです。
というのも、もう新しいものがいらないほど豊かになったら民間の信用創造は先細るので政府債務によって流動性を供給することが不可欠だからです。

これからインフレに転じるかもしれません。
しかしそれはなにかをするからであって、もし財政を均衡させ債務を縮小させる=何もしないならすぐに本来の超デフレに戻るのではないでしょうか。


量的緩和の効果

非伝統的緩和=量的緩和は、必ず、インフレを引き起こします。
http://stockbondcurrency.blog.fc2.com/blog-entry-48.html

量的緩和は、国債の保有者からインフレという形で資産を巻き上げ、政府に資産を移す政策です。同時に、賃金の増加にもつながります。
http://stockbondcurrency.blog.fc2.com/blog-entry-50.html

量的緩和は、最初に株、土地、そして外貨建て資産を所有するする人を儲けさせますが、二次的に、そうした資産を持たない多くの国民も儲けさせることができます。資産価格の上昇や円安は、間違いなく実質GDPの増加につながります。しかし、国民を完全に等しく豊かにさせることは不可能です。
http://stockbondcurrency.blog.fc2.com/blog-entry-24.html
http://stockbondcurrency.blog.fc2.com/blog-entry-23.html

量的緩和は、政府通貨と共通点はありますが、この2つを比較することにあまり意味は無いと思います。

基本的なファンダメンタルズは超がつくかどうかは別にして、かなりのデフレでしょう。

量的緩和の強化→円安、資産高が起これば、多少は銀行借入は増加するでしょう。それよりも、国内の余剰資金が海外に流出し、資本収支の赤字=経常収支の黒字幅が大きくなります。そして、同時に、企業の増資という形で、株式形態の債権、債務が増加すると思います。

政府債務を永遠に増やすことは不可能です。国債の償還可能性に疑問符がつけば、誰も国債を持たなくなります。それは金利の急上昇を引き起こします。

財政再建を急激に実施することは誤りですが、時間をかけて実施することは絶対に必要です。量的緩和の強化の中で、財政再建を急ぐと、デフレになるのではなく、景気が大きく悪化します。正しい政策の組み合わせは、量的緩和の強化と、緩やかな財政再建の継続だと考えています。

固定観念に縛られていました

金利を下げて民間の信用創造を増やすのが伝統的金融緩和でそれが無効になったら財政出動。伝統的緩和を超えて緩和をするのは本来の金融緩和の役割ではないという刷り込みがありました。

本来の役割かどうかではなく、国債、REIT、株の買い入れを増やしていけばそれに伴った効果が出るだけですね。
今の財政赤字1000超超えは従来の固定観念からいくと非常識ですが現実です。
別にそれを減らして日銀のベースマネーが500兆になってもそれもまた現実なのでしょう。
株や土地をそれほど買わなくても国債を根こそぎ買ってしまえば外債にむかうしかないですから円安になりますね。

土地と株が大きく値上がりして富の不均衡が出来たとき、それに課税するのは困難です。
困難ですが相続税で対応可能です。今年亡くなってしまうところからしか取れませんが、将来の確実な税収増を約束します。

≫政府債務を永遠に増やすことは不可能です。
広義流動性と物価上昇の問題だと理解しています。
広義流動性が増えないうちは政府債務は必要ということでしょう。
しかし広義流動性が増えだしても物価が上昇せず、債務ばかり増大するときは、それは貧富の差が拡大していることを意味します。
富裕層の死に金が大きすぎ、財政が疑問視される状態です。

こうなったら相続税と資産課税がなされることでしょう。
それも財政赤字がありすぎる状態は、富裕層にお金がありすぎる状態と同義ですので、ことここに至っては大した抵抗もなく回収することでしょう。

今回の発表はいかがでしょう

14年から長期債と短期証券を13兆買い入れるとのことです。

①しかし、安倍首相、麻生大臣は13年度財政赤字を44兆円以下にすると言っています。
財政出動がないと短期的な雇用回復と所得上昇が見込めないので景気回復は非常に時間がかかるのではないでしょうか。
といっても12年の補正予算があるので13年度予算が平年並みでも14年度予算が大きなものになるのでしょうか。

②買い入れ資産が国債ばかりですが、株やREITは買い入れなくてもよいのでしょうか。
こちらについては銀行の資産運用先を取り上げてしまうのでその分銀行が株や土地や外国資産にシフトするので副次的な効果を期待しておけあ良いのでしょうか。

どうでしょうか。
見方によっては昨年の日銀の2の舞になりかねない気もしますが、物価上昇、そして所得と雇用の上昇の好景気がもたらされるような声明だったでしょうか。

市場に聞いてください

今回の日銀の政策変更が成功か失敗かは、市場が決めます。
円安株高がさらに進行→成功
円高株安に戻る→失敗
現在のところ、市場は成功とは見てはいない模様。
もうしばらく様子を見る必要があります。
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