購買力平価とは

購買力平価から見た、円相場の水準を調べることにする。ネット上で手に入る、あるいは、算出可能な購買力平価のデータとしては、IMF(2011年)、世銀(2010年)、CIA(2011年)、OECD(2011年)、ビッグマック指数(2012年)がある。

このうち、IMF(2011年)(2012年4月の公表値ではなく、2011年9月公表の2011年の推定値)とCIA(2011年)は、大部分が同じなので、CIAは、独自計算ではなく、IMF等からデータを借用していることがわかる。

IMF(2011年)と、世銀(2010年)は、いずれも、世銀が2005年の価格を基準としたICP(International Comparison Program:国際比較プログラム)という作業で求められた数値を元にして算出されている。 ICPは、国連統計部とペンシルベニア大学が、1970年から開始した、購買力平価を算出するためのプログラムである。2005年基準のICPは、第7回目である。この時は、世銀が中心となり、OECD、ユーロスタットが分担協力して、146の国、地域における約1000の商品・サービスを比較して算出するという大規模な購買力平価算出プログラムであった。第6回は1993年基準であったので、精度向上のために、過去6回よりも相当長い時間をかけて算出している。先進国から途上国まで、幅広くカバーしている。2006年以降は、それぞれが、購買力平価算出用デフレーターを作って算出するという手法により、アップデートした数値である。大元が同じであるため、IMF(2010年)と世銀(2010年)は、非常に似た数値を示している。直近の数値は、IMFの方が新しいので、IMF(2011年)を使用するのが妥当であろう。

OCED(2011年)は、OECDとユーロスタットが共同して、先進国を中心とする2008年の主要国の購買力平価を算出したデータを元にしている。ユーロスタットは、1960年代後半から、ヨーロッパの一部の国の購買力平価算出プログラムを開始した。1980年から、OECDと共同して先進国中心の購買力平価を算出し始めた。その後、何度も新たに計算を行い、現在は、OECD(2008年)の数値が元となっている。これは、主要国における約3000の商品・サービスを比較して算出された購買力平価の数値である。2008年の数値から、IMF・世銀方式よりも、より精密な購買力平価算出用デフレーター作って算出するという手法によりアップデートしたものが、OECD(2011年)である。OECD(2005年)はICPで算出された世銀(2005年)に組み入れられている。

ビッグマック指数は、イギリスのエコノミスト社が、マクドナルドのビッグマックという一つの商品から算出している購買力平価である。IMF等の購買力平価と違って、あまりにも簡易な算出方法であり、実体がどこまで反映されているか疑わしい。実際、ビッグマック指数は、IMF、世銀、OECDの購買力平価と、かなりかけ離れた数値が散見される。より厳密な購買力平価を使うとしたら、ビッグマック指数ではなくIMF等の数値を使うのが妥当であろう。

それでも、IMF、世銀、OECDの購買力平価には、いくつかの問題がある。その中で最大のものは、貿易財と非貿易財の問題である。先進国と途上国の生産性の格差は、貿易財の方が非貿易財よりも大きい。例えば、工業製品の生産性は、先進国と途上国との間に大きな格差が見られる。しかし、散髪のようなサービス・非貿易財の生産性は、先進国と途上国との間に、大きな格差は見られない。しかし、市場で決定される為替レートは、非貿易財の価格は無視され、貿易財の価格のみが反映される。そのため、途上国では、市場で決定される為替レートは、購買力平価よりも過小に評価される傾向がある。一方、先進国では、市場で決定される為替レートは、購買力平価よりも過大に評価される傾向がある。このことは、同時に、途上国が経済成長を実現して先進国へと移っていく間、市場で決定される為替レートは、経済成長と共に上昇していくことをも意味する(バラッサ・サミュエルソン効果)。この問題を頭に入れておけば、IMF、世銀、OECDの購買力平価は、通貨価値を比較する際の指標として、かなりの正確性を持つことになると考えられる。


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テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

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