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賃金下落の原因 その1 超円高・アジア通貨安

OECD時給


日本は1997年以降、賃金下落が継続している世界で唯一の国である。日本以外の国では、長期賃下げは発生していない。 このような長期賃下げはなぜ起こったのであろうか。

賃金上昇は生産性上昇の結果と説明されることが多い。間違いではないとは思うが、長期の賃下げメカニズムまでは説明していない。

賃金下落の大元の原因は、過去の超円高・アジア通貨安である。それを円安中心ではなく、賃金物価の引き下げ中心で是正したからと考える。 現在でもなお、円高・アジア通貨安は続いている。


中国は改革開放政策の一環として、1970年代終わりから1993年にかけて極端な人民元安政策を取った。



円人民元202102


中国だけではなく、韓国の通貨価値も1997年のアジア通貨危機で大きく下落した。韓国ウォンの下落もまた、日本経済にとって大きな打撃となった。

韓国や中国、アジア諸国の通貨価値の低さはIMF購買力平価比での割安度合いを見ればわかる(年間の平均為替レート÷IMF購買力平価)。



アジア購買力平価202102


1998年以降、韓国ウォンは急落から戻した。しかし、その急落分は一部しか是正されていない。通貨危機の再来を恐れ、外貨準備を増やした。そのため、割安な通貨価値が維持された。

2008年のリーマンショックでは、再度の超円高が引き起こされた。この時も韓国ウォンが大きく売られた。この超円高・アジア通貨安のおかげで、日本の賃金はまた大きく下落することになった。

アジア通貨危機では、韓国以外にも通貨価値が下落した国がある。1995年以前の日本のように、経済成長とともに通貨価値が上昇するのが普通である。しかし日本とは異なり、極端な通貨価値の上昇を経験した国はない。

アジア通貨安は近隣窮乏化政策である。距離が遠く、輸送コスト障壁のある欧米は被害が少ない。

実際に、1997年をピークにして日本だけで賃金の下落が続いている。反対に、アジア諸国は世界の成長センターへと変身をとげた。



IMF購買力平価から見た「円の割高+アジア通貨の割安」は、現在も続いている。日本の平均物価は、アジアの中では高い。しかし、一部の商品、サービスの価格は割安になった。そのため、安い日本と言われることも増えた。

円高は交易条件改善というメリットはあるが、輸出産業の工場が潰れすぎるというデメリットの方がはるかに大きかった。


ちなみに、賃金上昇率トップのラトビアと、第3位のリトアニアには共通点がある。1990年代初頭の建国時の混乱で、通貨価値が極端に割安に設定された。その後に、低賃金→西欧に移民が大量流出→人口急減→人手不足→賃金急上昇というメカニズムである。

為替レートは、長期で購買力平価へと引き付けられる。アジア諸国やラトビアは、為替レートを引き下げたり割安に維持し、代わりに賃金物価を引き上げた。日本は、割高な為替レートを引き下げるため、賃金物価を引き下げた。為替レートの1つの調整手法ではあるが、非常に「損」な手法を選択した。


円高・アジア通貨安が続く間は、賃金物価に引き下げ圧力がかかり続ける。賃上げのためには、円高・アジア通貨安の是正が必要である。

現在の日本経済は、円安が起これば簡単に再生できる国ではなくなっている。円安反対の政治的障壁は高い。

にもかかわらず、日本にはまだ潜在能力がある。再生に時間はかかるが、可能である。数多くの国内改革が必要としても、その成果が円高・アジア通貨安のためアジア諸国に吸い取られた過去の構造だけは改革しなければならない。


超円高・アジア通貨安が、長期賃下げの大元原因である。長期賃上げ継続に戻すためには、円高・アジア通貨安を是正することが、最低限必要な政策である。

賃金低下の原因 その2


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テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

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