日銀ウォッチャー報告(2012年12月号)

11月の季節調整後のマネタリーベース平残は、11月比で1.5兆円減少し、126.4兆円となった。          
                                        (日銀HPより)

マネタリーベース平残の推移

上記の季節調整後のマネタリーベースの推移を見ると、大震災のあった昨年3月にマネタリーベースが急増し、一旦、昨年4月にピークをつけた。その後、マネタリーベースは減少傾向であった。しかし、今年6月からマネタリーベースは増加に転じ、10月には過去最高の金額になった。11月はそこから若干減少した。

昨年度は、縛りの無い貸出金の大量回収が、マネタリーベースの減少につながった。縛りの無い貸出金は、今年7月以降、残高がゼロのまま、オペレーションの手段として全く使われなくなった。マネタリーベースの残高は、各月の市中資金の過不足に加え、毎月約1.8兆円の長期国債買いオペと、資産買入等の基金の資産買い入れだけで、ほぼ決定されるようになった。11月については、市中資金が8.3兆円の不足のところに、長期国債買いオペと資産買入等の基金の5.2兆円の資産買い入れにより、金融調節後の市中資金は、3.1兆円の資金不足になった。この資金不足のため、当座預金残高は、10月末の42.8兆円から、11月末の39.7兆円と、3.1兆円減少した。この当座預金残高の変化を反映して、11月の季節調整後のマネタリーベース平残は、前月比1.5兆円減少の126.4兆円となった。当座預金残高とマネタリーベースの減少に差がある最大の理由は、当座預金残高が末残ベースであり、マネタリーベースは平残ベースであるからだ。

12月の市中資金は、2.2兆円の余剰となる。マネタリーベースの12月末残を11月末残と比較すると、大幅な増加になりそうだ。12月は季節的にマネタリーベースが膨らむ月であるが、それを考慮しても、12月の季節調整後のマネタリーベース平残は11月比で増加になると予想する。12月の季節調整後のマネタリーベース平残の金額は、10月の過去最高金額を上回る可能性が高い。

1月の市中資金は、季節的には大幅不足になる。1月のマネタリーベースの末残は、12月の末残より減少と予想する。しかし、1月の季節性を考えると減少額が少ないので、1月の季節調整後のマネタリーベース平残は、12月から増加と予想する。

資産買入等の基金の年内の資産購入金額は、4月、9月、10月の金融緩和の強化の時にも、変更は無かった。しかし、12月初頭までの実績を見ると、資産買入等の基金の金額は、12月末には、65.2兆円の目標をを若干上回り、65.6兆円まで増加する可能性が高くなった。
                                        (日銀HPより)


資産買入等の基金の残高と資産の内訳

上記のように、資産買入等の基金の12月末残高の予定金額65.2兆円に対して、11月末時点で、すでに64.6円の購入を済ませ、残り1ヶ月で0.6円の購入だけが必要であった。国債はあと1.9兆円、短期国債は、0.5兆円買う必要がある。一方、貸出金(共通担保資金供給オペレーション)は2兆円減らす必要がある。しかし、貸出金については、12月3日通知分までの貸出金の年越えの残高を計算すると、25.4兆円になる。貸出金は2兆円まで減少せず、計画を0.4兆円上回る。他の資産は予定通り購入すると仮定とすると、資産買入等の基金の12月末の残高は、計画より0.4兆円増加し65.6兆円になり、月間の資産純増額も、1兆円となる。従って、12月の資金調節では、資産買入等の基金で1兆円の資産購入を実施し、資産買入等の基金の国債、短期国債の償還分に当たる2兆円をロールオーバーし、資産買入等の基金以外で長期国債を1.8兆円購入し、合計4.8兆円の資産購入と予想する。12月の市中資金は2.2兆円の余剰であり、紙幣発行残高も季節的に増加するので、マネタリーベースの12月末残は、11月末比で大幅増加と予想した。貸出金の残高の減少スピードが遅いので、日銀の意図が理解できなかったのだが、結局、購入予定金額の超過達成が早くも確定した。12月14日満期の1.6兆円をロールオーバーせずに、残高は25.4兆円で年越しとなりそうである。

10月30日の金融政策決定会合では、2013年末の資産買入等の基金の残高を91兆円、2013年の年間で、26兆円の資産を購入することが決定された。計画ベースの今年の資産買入等の基金の残高増加分は、23.2兆円、来年の残高増加分は26兆円であり、資産買入等の基金の枠外の資産の残高の変化を考慮しても、2012年より、2013年の方が、金融緩和が強化されることは間違いない(詳しくは*1)

私は、上記の政策で、2014年度ないしは15年度に中長期的な物価安定の目途である前年比1%の消費者物価上昇率を実現することは不可能だと考える。理由は、何度も指摘している通り、金額が小さすぎるからである。量的緩和というのは、効果が小さい政策であるので、大量に実施しなければ効果は現れないのである。

私が望ましいと考えている政策は、毎回同じで、超過準備に対する付利の0.1%を廃止して金利の低下を促し、もっと残存期間が長い国債をより大量に購入するか、より期間の長い貸出金の金額をより大幅に増やすなどの政策である。

11月14日に衆議院解散がほぼ決定した後、安倍自民党総裁の大胆な金融緩和を実施すべきとの報道が次々と流れ、円安と株高が進行した。11月20日の日銀金融政策決定会合後の記者会見で、安倍氏の発言に対して、白川総裁が強い反対意見を述べている。その発言を読み返すと、白川総裁のインフレタカ派の本来の顔を、正確に見ることができる。日銀は従来から積極的で大胆な金融緩和を実施しており、現在でも最大限の金融緩和を実施している、新たな金融緩和策を実施しても、副作用が多きすぎて採用することは不可能である、などの論法で、安倍氏の主張する大胆な金融緩和の提案を退けている。また、「成長通貨オペとして、年間21.6兆円の長期国債の買い入れを行っています。」などの、国民に誤った理解を植え付ける、従来通りの発言を繰り返していた。これは、本来、「成長通貨オペとして、年間21.6兆円の長期国債の買い入れを行い、現在は年間約18兆円の償還があるので、年間3.6兆円程度の純増になる形での国債買い入れを行っています。この年間3.6兆円の純増額は、今後減少し、来年末にはゼロ近辺になる可能性もあります。」と正確に表現すべきものである。白川総裁は、金融政策が高度に技術的になって、国民に理解してもらえなくなっている、とぼやきのような発言をしているが、国民に誤解を与えるような発言を繰り返し、金融緩和を、実際よりも過大に評価する発言を続けてきたことに対する反省は感じられない。前回(*2)、白川総裁がインフレハト派に変身しつつある可能性を書いたが、誤りであった。来年4月までに、多少の金融緩和の強化が発表される可能性はある。しかし、実際に効果が現れるほどの大胆な金融緩和策は、来年4月8日に白川総裁が退任した後の、次期総裁の下で実施されることになるであろう。


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