2019年5月第4週 株式需給コメント


時系列データ
投資部門別売買状況 現物と先物の時系列表
投資部門別売買状況 長期時系列グラフ(月次)
投資部門別売買状況 先物累積買越枚数 グラフ
先物建玉残高 証券会社別枚数推移 グラフ
(2019年5月第4週の株式市場の概況)
日経平均株価終値 20,601円 前週末比-516円
5月第4週の外部環境は、ドル円レートは円高、NY株は下落であった。27日月曜がアメリカの休日であったため、週前半は小動きであった。しかし週半ばから米中貿易摩擦激化の不安からNY株が下落し、日本株の下落にもつながった。そして金曜の寄り付き直前にトランプ大統領がメキシコに対する関税の引き上げを公表。これを嫌気して円高が進行し、株価も下げた。日経平均株価は4週連続の下落で週を終えることになった。
買い方
(1)自己
自己はいつも最後に掲載。
買い方
(2)個人
現物先物合計 + 2,300 億円
現物現金 + 477 億円
信用 + 646 億円
先物合計 + 1,177 億円
日経平均ラージ先物 + 558 億円
日経平均ミニ先物 + 536 億円
TOPIXラージ先物 + 87 億円
個人は伝統の逆張りの買い。現物も先物も総買いになっている。先物は第3週以前に買い戻しを終え、第4週は新規買いが増えた。スイングトレーダーが信用を中心に押し目で買いを増やした。
買い方
(3)事法
現物先物合計 + 1,935 億円
現物 + 1,947 億円
先物合計 - 13 億円
日経平均ラージ先物 - 13 億円
日経平均ミニ先物 + 0 億円
TOPIXラージ先物 + 1 億円
事法の現物買いは自社株買いが中心。6月に入って5月月間の自社株買いが大量に公表されている。第4週の間だけに買ったものはまだ一部しかわからない。5月は第4週をも含めて多くの自社株買いが実施されたことだけは確かである。
買い方
(4)投信
現物先物合計 + 351 億円
現物 + 563 億円
先物合計 - 213 億円
日経平均ラージ先物 - 111 億円
日経平均ミニ先物 + 0 億円
TOPIXラージ先物 - 89 億円
野村総研による日本株型公募投信の資金流出入
+130億円(この中の多くの部分が現物株の買いになる)
ブルベア型投信による日経平均ラージ先物の大口売買
野村アセット「NEXT FUNDS」シリーズ(1570)
「日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信」
+400億円前後
野村アセット「NEXT FUNDS」シリーズ(1357)
「日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信」
-100億円前後
大和投信
「ダイワ・ブルベア・ファンドⅤ ブル3倍日本株ポートフォリオⅤ」
-50億円前後
上記のファンドを含む観察中の大口ブルベア型投信7本の合計で+250億円前後。
設定と大口ブルベア型投信7本以外の投信による売買
現物先物合計 - 20 億円
現物 + 430 億円
先物合計 - 450 億円
日経平均ラージ先物 - 350 億円
日経平均ミニ先物 + 0 億円
TOPIXラージ先物 - 90 億円
設定と大口ブルベア型投信7本を除くその他もろもろの投信の売買は、現先合計では上記のように20億円の売りであった。金額としては小さい。
私募投信らしき現物買い・先物売りは見える。しかし、投信の買いの大半は公募投信の設定と大口ブルベア型投信7本の買いで説明できる。
売り方
(1)海外
現物先物合計 - 5,975 億円
現物 - 2,838 億円
先物合計 - 3,137 億円
日経平均ラージ先物 - 1,110 億円
日経平均ミニ先物 - 821 億円
TOPIXラージ先物 - 1,209 億円
大手証券(外資系14社、日系大手5社)の先物手口概算を示す。

上記の先物手口概算(3種の先物)の外資系14社合計と、先物の投資部門別売買状況の海外(3種の先物)とを比較すると下記のようになる。

いつものように海外と外資系を比較した。
海外と外資系の差は690億円。この買いは外資系自己の買いである可能性が高い。内外ともに機関投資家の目立った買いは見当たらない。ただ海外については上場分では大量に売ってもOTCでは買うケースは過去にもよくあった。
海外の大手顧客がOTCでデリバか現物を690億円前後外資系自己から買い、外資系自己がその売りに対するカバーのために上場先物を690億円前後買った可能性が高い。
これが超大口ならゴールドマンであり、そうでなければソシエテの手口と考える。ただ690億円は少なく、他の多くの外資系でもできる金額である。
先物建玉残高 証券会社別枚数推移 グラフは先物手口に関心がある方はぜひ見ていただきたい。
買い方のトップはABNアムロクリア。この会社の買いは、ヘッジファンドの買いである可能性が高い。
売り方のトップはクレディ・スイス。2番目はメリル・リンチ。この2社の売りはヘッジファンドの売りである可能性が高い。Cスイスは昨年は半ばから、メリルは今年に入ってヘッジファンドの売買比率が高くなっている。
売り方の3番目はドイツ、5番目は UBS。この2社はロングショートの売りが含まれている可能性がある。海外顧客のロングショートであるかもしれないし、海外自己の実質裁定であるかもしれない。
海外先物はロングショートや裁定を除いても、先物はヘッジファンドの売りの比率が高そうである。
現物については確かなことはわからない。ただ先物の売買から類推すると、一部のロングショートの買いを除いても、投機筋の売りの比率がある程度高そうである。
なお先に書いた通り、海外は外資系自己を通して690億円前後OTCで買っている。これを加えると海外の売りは現先合計の5975億円より少なく、実質では5300億円前後の売りになる。そしてその中では割合としてはヘッジファンドを中心とする投機筋の売りの比率が高そうである。
5月5日のトランプ大統領による対中関税引き上げ表明以降、年初から買い続けてきたヘッジファンドを中心とした海外投機筋は売り続けているが、第4週も同様の売りが続いた。
(*)自己という特殊な部門
第4週は買い方の(1)になった。
現物先物合計 + 2,739 億円
現物 - 1,156 億円
先物合計 + 3,895 億円
日経平均ラージ先物 + 1,793 億円
日経平均ミニ先物 + 233 億円
TOPIXラージ先物 + 1,783 億円
裁定売買
東証発表の裁定売買
-458億円(現物売り・先物買い)
裁定売買を実施した証券会社(「-」は現物売り・先物買いを示す)
みずほ - 300 億円
野村 - 100 億円
ソシエテ - 50 億円
東証発表の裁定残の株数変化から計算した裁定売買の推計値
-1100億円前後(現物売り・先物買い)
2種類の数字の差は650億円。三菱UFJの日経平均ラージ先物500億円買いは自己としか考えられない。これは広義の裁定の買いであろう。第4週の裁定解消売買は1100億円に近かった可能性が高い。
自己に含まれる日銀ETF
+2181億円
日銀ETF以外の自己
+550億円前後
海外のところで外資系自己による海外の代理の買いが+690億円あると書いた。
それ以外は-140億円の売り。-140億円は日系証券のディーラーのポジション調整の売買の差として許される範囲内の金額である。
(5月第4週合計)
合計すると、「自己、個人、事法の買い越しvs海外の売り越し」であった。
売り方の中心は海外。5月5日のトランプ大統領による対中関税引き上げ表明以降はヘッジファンドなどの投機筋が中心に売りが続いている。
買い方は自己の日銀ETFが最大の買い手であった。逆張りの個人も買った。事法の自社株買いもいつものように買った。
銀行、保険、信託といった機関投資家は皆売り方であった。貿易戦争が激化しているので、まだ買いではなく売りであると考えているようだ。
結果として、日経平均株価は516円下落した位置で週末の需給は均衡し、5月第4週を終えることになった。
5月月間


記録にとどめておくべき事項、数字
(1)投信現物
野村総研による5月の日本株型公募投信の資金流出入
+714億円
(2)投信による日経平均ラージ先物の大口売買
野村アセット「NEXT FUNDS」シリーズ(1570)
「日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信」
+2400億円前後
野村アセット「NEXT FUNDS」シリーズ(1357)
「日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信」
+250億円前後
大和投信
「ダイワ・ブルベア・ファンドⅤ ブル3倍日本株ポートフォリオⅤ」
+20億円前後
上記を含む観察中の大口ブルベア型投信7本の合計で+2800億円前後。
(3)事法部門での自社株買い
NTTの1188億円買いが一番大口
(4)信託部門での自社株買い
ソフトバンクグループの154億円買いが一番大口
(5)裁定売買(自己が多いが、海外もある)
東証発表 裁定売買の金額合計
-3340億円(現物売り・先物買い)
東証発表 裁定残株数変化からの裁定売買推計値
-1900億円前後(現物売り・先物買い)
上記2つの数字の差は1400億円。月次なら差は小さい。
(6)自己
日銀ETFが+7298億円
(7)合計
5月月間では
個人 +8047億円
自己 +6938億円
事法 +6453億円
vs
海外 -2兆3318億円
であった。
個人は逆張りの買い。先物の買いと信用の押し目買いが多かった。自己は日銀ETFの買いが中心。事法の自社株買いも高水準。下がれば買いが入る。
売り方は海外が中心。何度も繰り返すが、5月5日のトランプ大統領による対中関税25%への引き上げ表明以降の海外は、ヘッジファンドなどの投機筋を中心に大量の売りが出ている。
銀行、信託、保険という日系の機関投資家は、大きくはないが売り方である。
結果として、日経平均株価は1658円下落して月末の需給は均衡し、5月の4週間を終えることになった。