2018年10月第4週 株 コメント
10月第4週 投資部門別売買状況 現物先物合計 現物 先物
10月第4週 日経平均株価 日中足チャート
時系列データ
投資部門別売買状況 現物と先物の時系列表
投資部門別売買状況 長期時系列グラフ(月次)
投資部門別売買状況 先物累積買越枚数 グラフ
先物建玉残高 証券会社別枚数推移 グラフ
(2018年10月第4週の株式市場の概況)
日経平均株価終値 21185円 前週末比-1347円
10月第4週の外部環境は、ドル円レートは横ばい、NY株は下落であった。この週もNY株の下げが日本株の下げを主導したと思う。ただし従来とは異なり、企業収益の下方修正、すなわちファンダメンタルズの悪化が増えた週でもあった。アメリカ企業にも共通するが、日本企業の方が悪化の度合いは大きかった。週末の日経平均株価は3月の終わり頃の水準、TOPIXは年初来の安値で週を終えることになった。
買い方
(1)個人
現先合計 4151億円の買い越し
現物現金 2883億円の買い越し
信用 369億円の買い越し
先物 899億円の買い越し
今年に入って個人は43週中40週で逆張り。現物現金は3週連続の買い。信用は4週連続の買いだが、こちらは下がった場合の損失に耐えるのが難しい。そのため、買い金額は減少。一方、先物は第3週が売りなので、買いに戻ることができた。
買い方
(2)投信
現先合計 4048億円の買い越し
現物 1498億円の買い越し
先物 2550億円の買い越し
野村総研による日本株型公募投信の資金流出入
957億円の純流入(この中の多くの部分が現物株の買いになる)
ブルベア型投信による日経平均ラージ先物の大口売買
野村アセット「NEXT FUNDS」シリーズ(1570)
「日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信」
2050億円前後の買い越し
上記のファンドを含む観察中の大口ブルベア型投信7本の合計で2050億円前後の買い越し。
解約とブルベア型投信7本以外の投信による売買
現物 540億円前後の買い越し
日経平均ラージ先物 520億円前後の買い越し
それ以外の先物 1億円前後の買い越し
合計 1070億円前後の買い越し
解約とブルベア型投信7本を除くその他もろもろの投信の売買は、現先合計では上記のように1070億円前後の買い越しであった。金額としてはやや大きい。通常の公募投信に加え私募投信や他のブルベア型ETFも含めると、かなりの買い越し金額になった。
(3)自己
自己はいつも最後に掲載
売り方
(1)海外
現先合計 1兆3062億円の売り越し
現物 3174億円の売り越し
先物 9887億円の売り越し
大手証券(外資系14社、日系大手5社)の先物手口概算を示す。
上記の先物手口概算(3種の先物)の外資系14社合計と、先物の投資部門別売買状況の海外(3種の先物)とを比較すると下記のようになる。
いつものように海外と外資系を比較した。(1)、(2)、(3)はほぼ毎週ある裁定絡みの売買の修正である。
修正後の外資系と海外の差は5290億円。3週連続で非常に大きい。このうち3100億円はソシエテかドイツによる自己の裁定の買いと考える。詳しくは自己のところで説明する。残りは不明だが、海外の売りが日系大手に流れた分が1番多いと考えている。
財務省の統計では第4週の海外は3490億円の売り越し。東証統計では3174億円の売り越し。差は300億円前後。金額が少ないため、株ではなく投資ファンドの売りかもしれない。自己のところで述べるが、日銀ETF以外の自己の売買は買いで金額は少ない。従って、第4週の海外はOTCでの売買はあっても金額は少なく、全体では東証発表に近い1.3兆円前後の売り越しであった。
先物建玉残高 証券会社別枚数推移 グラフは第4週も先物手口に関心がある方はぜひ見ていただきたい。
重要な点はツイッターですでに説明しているので、それを再掲載する。
トレンド追随コンピューター主導型ヘッジファンド、市場混乱で「惨敗」
— アダム・スミス2世 (@AdamSmith2sei) 2018年10月27日
スイスのミラボー・アセット・マネジメントが撤退を表明。クレディ・スイスの先物売りが減れば、あの売買にはミラボーが含まれていた可能性が高くなる。他にも欧州系のCTAの大きな損失が明確になる。https://t.co/N1gCAXofCF
クレディ・スイスの先物手口
— アダム・スミス2世 (@AdamSmith2sei) 2018年10月29日
27日に書いた通り順張り系のCTAが大損。クレディにはCTAの売買は昔からあったが6月から急増して大損。クレディの売買が減れば撤退したミラボーになる。CTAの買いがまだ残るのはMS。他社のT先の買い建玉は長期性の資金が多そう。証券会社別時系列→https://t.co/Seufsta947 pic.twitter.com/cJRx9Tz6vJ
第4週に限らず、10月に入ってからの売買はトレンド追求型CTAの比率が高かったようである。
付け加えると、第4週における先物の最大の売り手はJPモルガン。上に示したブルームバーグの記事の中で、10月に大きな損失と書かれてあるファンドの中の1番目はレダ・ブラガ氏のブルートレンド・ヘッジファンドである。レダ・ブラガ氏はJPモルガン出身である。
だからといって第4週にJPモルガンで売ったのはブルートレンド・ヘッジファンドなどとは言えない。しかし、JPモルガンの最近の先物売買は順張り傾向であり、かなりの損をしている。レダ・ブラガ氏のブルートレンド・ヘッジファンドが日本株の先物も売買していたとしたら、その時、JPモルガン証券を1番多く利用していた可能性はそれなりに高いと思われる。
海外は第2週のNY株の急落以降、日本株を大量に売り続けている。先物中心の売りである。売り方から考えると、中心は投機筋の売りである。それに上記のブルームバーグの記事を合わせると、投機筋の中でもトレンド追随型のCTAの比率が高かったと思われる。
(*)自己という特殊な部門
10月第4週は買い方の(3)になった。
現先合計 3080億円の買い越し
現物 2591億円の売り越し
先物 5671億円の買い越し
裁定売買
東証発表の裁定売買
221億円の裁定解消(現物売り・先物買い)
裁定売買を実施した主な証券会社
裁定解消売買上位の証券会社
UBS450億円、ソシエテ350億円
裁定形成売買上位の証券会社
みずほ250億円、三菱UFJ250億円、ドイツ100億円
東証発表の裁定残の株数変化から計算した裁定売買の推計値
3300億円前後の裁定解消(現物売り・先物買い)
2種類の数字の差は3100億円。自己の現物は2591億円の売りである。
裁定解消売買は3300億円に近いと推測する。第4週はほぼ全額が取引所を通じる現物売り・先物買いであり、第2週、第3週のようなOTCを使った現物売りはあったとしても少ない。
裁定解消売買が3300億円なら自己の現物売りの金額2591億円を上回っている。しかし、日銀ETFの買いが大量に入っているので、日銀ETF準備用の現物買い・先物売りが2つの数字の差の700億円前後入っていたとしても全然おかしくない。700億円では少なすぎるくらいである。
3300億円の裁定解消売買のうち、221億円は東証が発表した通りである。残りは3100億円。第2週と第3週は全部ソシエテの現物売り・先物買いと考えた。
外資系と海外の差はTOPIXで主に発生しており、外資系の自己がTOPIX型の裁定解消売買をしている。東証に報告されている裁定残はソシエテとドイツとUBSしかない。UBSは残高が少ない。だからドイツかソシエテのどちらかである。
第4週も全部ソシエテかもしれない。全部ドイツはない。3100億円という金額は週間のドイツ全体の買い金額に近いからだ。ただ、一部がドイツということはありうる。
ドイツはTOPIXラージ先物を1500億円買い越している。ただ建玉移管があるので、ドイツで買った分は1200億円ほどである。この1200億円は海外か自己のどちらかの買いと思われる。
ドイツによる先物1200億円買いは自己の広義の裁定解消売買と考えてもおかしくない。第3週はOTCでの現物売りであった。誰かがソシエテとドイツの両方にOTCで現物買いを入れたと仮定しなければドイツに先物買いは発生しない。第4週は取引所での現物売りであり、第3週のような仮定は必要ではない。第4週の裁定解消の中にドイツが含まれている可能性は第3週よりは高い。
ドイツの東証発表の裁定は裁定形成が多く、裁定解消は一部しか発表しない。第4週もこの下げ相場で先物を大量に買い越していながら、100億円の裁定形成と発表している。これ以外に、隠れ裁定解消がどこかに存在していてもおかしくない。
第3週は全部ソシエテの裁定解消と断言した。第4週も全部ソシエテかもしれない。ただドイツも含まれている可能性が少し高いので、ソシエテかドイツの裁定解消ということにする。
自己に含まれる日銀ETF
2872億円の買い
日銀ETF以外の自己
200億円前後の買い(現先合計)
週間で200億円は小さい。無視できる範囲内の金額である。
(10月第4週合計)
合計すると、「個人、投信、自己の買い越しvs海外の売り越し」であった。
海外の売りは投機筋の売りが中心であり、トレンド追随型のCTAが多く含まれていた。その中でも1番可能性が高いのはクレディ・スイスを通じるミラボー・アセット・マネジメント、2番目に可能性が高いのはJPモルガンを通じるブルートレンド・ヘッジファンドであった。損をしたので投げ売りが多かったと思われ、急落の最大の原因となった。
個人、投信、日銀ETFを中心とする国内勢の大半は下げたので買い越した。ただ最近買った分が損をした上、ファンダメンタルズ面も少し悪くなった。そのため、日銀ETF以外は買い指し値が第3週より下がってしまった。これが急落のもう1つの原因である。
結果として週末の日経平均株価は1347円下落した位置で需給が均衡し、10月第4週を終えることになった。