2018年5月第4週 株 コメント
5月第4週 投資部門別売買状況 現物先物合計 現物 先物

5月第4週 日経平均株価 日中足チャート

時系列データ
投資部門別売買状況 現物と先物の時系列表
投資部門別売買状況 長期時系列グラフ(月次)
投資部門別売買状況 先物累積買越枚数 グラフ
先物建玉残高 証券会社別枚数推移 グラフ
(2018年5月第4週の株式市場の概況)
日経平均株価終値 22451円 前週末比-480円
5月第4週の外部環境は、為替レートが円高、NY株は小幅上昇であった。この週はトランプ大統領が米朝首脳会談の延期を22日に示唆し、24日に正式に発表した。23日には自動車輸入関税の25%までの引き上げの検討を発表した。こうしたトランプ政権の政策が23日水曜日以降の日本株の下げ材料となった。日経平均株価の連続上昇は8週で途切れ、9週ぶりに下落して週を終えることになった。
買い方
(1)個人
現先合計 2216億円の買い越し
現物現金 78億円の買い越し
信用 1374億円の買い越し
先物 764億円の買い越し
個人は8週連続で逆張りの売りが続いていた。その翌週の第4週は逆張りの買いになった。現物現金、信用、先物がすべて買い越しになっている。スイングトレーダーが中心に株価が下がったので押し目買いを入れた。現物現金の買い越し金額は小さい。売り一辺倒の高年齢富裕者層の売りは減ったが、継続して出ているようである。
買い方
(2)自己
自己はいつも最後に掲載
買い方
(3)事法
現先合計 1456億円の買い越し
現物 1466億円の買い越し
先物 9億円の売り越し
大半が自社株買い。大口のものとしては、5月23日、スタートトゥデイ、244億円が上げられる。まだ買い付け終了の発表は少ない。6月1日から大量発表があるはずだ。
売り方
(1)投信
現先合計 2748億円の売り越し
現物 759億円の売り越し
先物 1989億円の売り越し
野村総研による日本株型公募投信の資金流出入
153億円の純流出(この中の多くの部分が現物株の売りになる)
ブルベア型投信による日経平均ラージ先物の大口売買
野村アセット「NEXT FUNDS」シリーズ
「日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信」
1200億円前後の売り越し
野村アセット「NEXT FUNDS」シリーズ
「日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信」
250億円前後の売り越し
大和投信
「ダイワ・ブルベア・ファンドⅣ ブル3倍日本株ポートフォリオⅣ」
150億円前後の売り越し
上記のファンドを含む観察中の大口ブルベア型投信7本の合計で1600億円前後の売り越し。
ブルベア型投信の売買の大半は個人である。しかし、個人の信用、先物の売買の方向とはあまり一致しない。この週も個人の信用、先物は押し目買いになったが、ブルベア型投信は戻り売りになった。
設定とブルベア型投信7本以外の投信による売買
現物 610億円前後の売り越し
日経平均ラージ先物 90億円前後の買い越し
それ以外の先物 450億円前後の売り越し
合計 970億円前後の売り越し
設定とブルベア型投信7本を除くその他もろもろの投信の売買は、現先合計では上記のように970億円の売り越しであった。公募投信だけでは多いので私募投信の売りが中心と思われる。ブルベア型も含めた投信は、高値警戒感が出てきている中、北朝鮮問題などの悪材料が出てきたので売ったようである。
売り方
(2)海外
現先合計 1279億円の売り越し
現物 3404億円の売り越し
先物 2126億円の買い越し
大手証券(外資系14社、日系大手5社)の先物手口概算を示す。
5月第4週 大手証券 先物手口概算

上記の外資系14社合計の先物手口概算(3種の先物)と先物の投資部門別売買状況の海外(3種の先物)とを比較すると下記のようになる。

いつものように海外と外資系を比較した。(1)はほぼ毎週のようにあるドイツの自己による裁定売買の修正である。
修正前の2641億円から修正後の2541億円へと差が少し減少した。それでも2541億円というのは大きい。
第3週が2600億円であったので2週連続で大きな差である。続きは後ほど自己のところで説明する。
先物手口の買い方のトップはソシエテ(上から7番目)。
ソシエテの先物売りは2月が7000億円、3月が1.2兆円。このうち、3月第2週にUBSとのクロスの形で1.4兆円の売りがあった。そして4月以降の買いの合計は第4週までで8000億円である。
今まで3月第2週の1.4兆円の売りはカバーがついており、買い戻しはないかもしれないと何度か書いてきた。しかし、ここまで買いが連続すると、3月第2週の1.4兆円の分についても買い戻しが入っている可能性が高くなってきた。
先に外資系に2541億円の売りがあると書いた。自己のところでも説明するが、これは海外がソシエテで1700億円の先物を買った他に、2541億円の先物を買い、ソシエテの自己が2541億円売り向かっている可能性がある。これも可能性があるまでで、断定はしない。
いずれにせよ、ソシエテを通して海外が買い戻しを続けていることまでは可能性が高い。
先物手口の売り方のトップはゴールドマン(上から2番目)。第4週の売りはTOPIXラージ先物が中心である。長期性の資金がインデックス連動目的でずっと前に買っていた分の売りである可能性が高い。
第4週の海外による現物は3404億円の売り越しである。海外の先物は8週連続の買い越しであるが、現物は3週連続の売り越しである。第4週も外見上は現物売り・先物買いのロングショート型の形になった。実際に、ロングショート型の売買が何割かは存在している可能性は高い。
海外は現先合計では7週連続で買いが続き、株価上昇の原動力であった。それが、北朝鮮、25%関税などの悪材料が出てきたので、現先合計では小幅ながら売り越しに転じた。
売り方
(3)信託
現先合計 1261億円の売り越し
現物 403億円の売り越し
先物 858億円の売り越し
信託は5週連続の売り越しであり、売り越し金額も増えた。投信と同様に高値警戒感を感じている中、北朝鮮問題などの悪材料が出たから売ったのであろう。
(*)自己という特殊な部門
5月第4週は買い方の(2)になった
現先合計 1971億円の買い越し
現物 1749億円の買い越し
先物 223億円の買い越し
裁定売買
東証発表の裁定売買
651億円の裁定解消(現物売り・先物買い)
裁定売買を実施した主な証券会社
裁定解消売買上位の証券会社
みずほ500億円、野村300億円
裁定形成売買上位の証券会社
ドイツ100億円
東証発表の裁定残の株数変化から計算した裁定売買の推計値
500億円前後の裁定形成(現物買い・先物売り)
2種類の方法の差は1100億円。この差が発生する確かな理由はわからない。しかし、第4週については次のように推測する。
第4週は月曜から金曜まで5日とも裁定解消売買が超過していた。それでも裁定残が増えたのは、第3週以前の裁定形成売買で現物買い・先物売りになったポジションを裁定残と東証に報告するのが遅れ、東証発表の数字だけが第4週に増えたと考える。
そうであるならば、自己に裁定以外の現物買い・先物売りが2500億円近く存在することになる。この先物売りが海外のところで書いたように、海外の先物買いを受けた外資系の自己の売り2541億円の大部分と考える。現物の買いとセットであり裁定と同じ形である。この現物買いは裁定ではなく、先物売りのカバーである。
裁定解消売買が大量に出ている中での現物買い・先物売り。これをやるのがソシエテ自己である。第4週に関しては、2500億円前後がソシエテによる海外先物買い・自己先物売り・自己現物買いである可能性はそれなりに高い。第3週もソシエテの売買で説明は可能である。しかし、海外と外資系の差をソシエテの売買で説明できる週はこの2週以外には少ない。従って、第3週、第4週についてもソシエテの売買である可能性があるまでであり、ソシエテの売買であるとは断定しない。
自己に含まれる日銀ETF
2220億円の買い
日銀ETF以外の自己
250億円前後の売り(現先合計)
250億円は小さく、ディーラーのポジション調整の売買として許される範囲内の金額である。
(5月第4週合計)
合計すると「個人、自己、事法の買い越しvs投信、海外、信託の売り越し」であった。
第4週のポイントは、日経平均株価8週連続上昇の後の週に出た北朝鮮問題の悪化、自動車関税25%、そして円高という悪材料である。こうした高値での悪材料に反応して売る主体は売った。その主体が投信、海外、信託であった。
買い方は高値での悪材料に反応しない、あるいは株価が下がれば買う主体である。反応しないのは事法、下がれば買うのが日銀ETFを中心とする自己、そして逆張りが基本の個人であった。
こうした主体の売買の結果、週末の日経平均株価は480円下落した位置で需給は均衡し、5月第4週を終えることになった。