2016年7-9月期 日銀統計 株 コメント

日銀資金循環統計による株式投資部門別売買・保有残高
資金循環統計コメント表201609

2016年7-9月期の日銀の資金循環統計から、株式投資部門別売買・保有残高の直近分を取り上げ、重要な箇所に色をつけて示した。日銀統計は、東証が公表している投資部門別売買状況という統計ではカバーしていない取引所外取引や株の発行、償却をも含んだ大変貴重な統計である。他方、その推計方法には問題点も存在している。今回も日銀統計の数字を、その問題点と合わせて説明することにする。

国内銀行は3527億円の売り越し。東証統計の銀行は1088億円の売り越しであり、日銀統計とは異なっている。この点に関しては、過去2回、同じ内容を指摘した。この数字と、一行下の農林水産金融機関による7332億円の買い越しという数字はおそらく誤りである。

前回は「ほぼ間違いなく誤り」であった。今回は「おそらく誤りに」なる。前回は確度が高い証拠があったが、今回はそこまで確度の高い証拠がないからだ。3期連続して国内銀行と農林水産金融機関がキャッチボールのように株を売ったり買ったりするのは不自然である。常識的には考えられないのであるが、それ以上の証拠がない。

繰り返すが、東証統計の銀行は1088億円の売り越しである。農林水産金融機関が属する東証統計の「その他金融機関」も732億円の買い越しである。国内銀行、農林水産金融機関には株の売り越しや買い越しはあるが、大きな金額ではないと思われる。3回連続して起こったことなので、10-12月にもう一度大きな反対売買があるかもしれない。この売買の説明は3か月後にさせていただく。

薄赤色の部分が、企業年金を中心とする私的年金である「年金基金」と「公的年金」、および両者の合計である「年金計」を表す。年金基金は1947億円の買い越し、公的年金は122億円の買い越し、年金計では2069億円の買い越し。この数字の根拠は、東証の投資部門別売買状況における信託銀行の買越額7213億円であろう。この中にはトヨタを筆頭とする信託方式の自社株買いが4000億円前後存在することが確認できる。従って、信託方式の自社株買いを除いた様々な信託の合計が1000億円強の買い越しになる。

日銀と東証を合わせると、自社株買いが4000億円前後、年金計が2069億円の買い、うち公的年金が122億円買い、年金基金が1947億円買い、それ以外の様々な信託が1000億円前後の買いというわけである。信託には年金と自社株買い以外にもいくつかの勘定があり、その内側は外からはほとんどわからない。明らかな推定ミスが存在することが多い部門だが、今回はそのような推定ミスは見当たらない。従って、日銀の推計値を受け入れるしかない。

証券投資信託は1796億円の売り越し。これは東証統計の投信の買越額といつも同じ数字である。しかし東証統計の投信には、日銀が大量に購入しているETFを通じた株の買いが含まれていない。この不備は日銀自身も認めている。実際の投信の買越額は少なくとも7-9月期に日銀が購入したETF1兆5005億円分が過小推計になっている。つまり、日銀ETFによる買いをも含めた場合、投信は1兆3000億円前後の買い越しになる。

証券会社は1兆2472億円の買い越し。これは東証統計の自己1兆2543億円の買い越しを参考にしたものと思われる。ところが東証統計の自己には日銀ETF1兆5005億円の買い越しが含まれている。この分を差し引かなければならない。日銀ETF買いの金額を除くと、証券会社は2500億円前後の売り越しになる。この数字がより正しい推計値になる。

非金融法人企業は40億円の売り越し。この数字は東証統計の「事法・その他法人」の6119億円の買い越しという数字が大元であろう。しかし、日銀統計には自社株買い以外に自社株消却が含まれている。40億円の売り越しという数字は、6119億円の買い越しから自社株消却を差し引いた金額である。自社株償却の正しい数字を知ることは難しい。従って、日銀の推計値を受け入れるしかない。

保険は1340億円の売り越し。一方、東証統計の保険は1921億円の売り越し。日銀統計の数字は「東証統計の金額+保険会社が信託勘定で売買した金額+保険会社が取引所外取引で売買した金額」の合計である。この数字も外からはほとんどわからない。保険についても、日銀の推計値を受け入れるしかない。

家計は5799億円の売り越し。これは東証統計の6766億円の売り越しから、公募、売出しなどの取引所外取引での購入金額を加えた推計値である。しかし、ほとんど同じ数字を日証協が算出しており、4589億円の売り越しである。日銀よりも日証協の数字の方を信用すべきである。

海外は1兆2961億円の売り越し。東証統計では1兆4459億円の売り越し。海外に関しては取引所外取引を含む数字を国際収支統計の一部として財務省・日銀が集計している。東証統計よりも日銀統計の方が正確性が高い。

以上のことを頭に入れておく必要がある。その上で日銀の資金循環統計に基づく2016年7年-9月期における投資部門別売買状況は、「証券会社1兆2472億円の買い越し、年金計(信託の一部)2069億円の買い越しvs海外1兆2961億円の売り越し、家計5799億円の売り越し」であった。ただ、証券会社の買いというのは実は日銀ETFの買いの一部であり、日銀がETFを通して1兆5005億円買い越していたという理解の方がより正しい。


参照 株式売買関連の統計
 日銀 資金循環統計に基づく株式売買と株式保有残高(日本株)
 投資部門別売買状況 長期時系列表 (日本株)
 株式先物 投資部門別売買状況 累積買越枚数
 大手証券 先物建玉枚数推移 グラフ
 日本株 株式分布状況調査 2015年度

テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

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