日銀ウォッチャー報告(2012年9月号)

8月の季節調整後のマネタリーベースは、過去最高を記録した7月から1.6兆円の減少となった。          
                                        (日銀HPより)

マネタリーベースの推移

上記の季節調整後のマネタリーベースの推移を見ると、大震災のあった昨年3月にマネタリーベースが急増し、一旦、昨年4月にピークをつけた。その後、マネタリーベースは減少傾向であった。しかし、今年度に入ってマネタリーベースは増加に転じ、今年7月のマネタリーベースは、昨年4月のピークを上回り、過去最高となった。8月は、そのピークからは、1.6兆円減少した。

昨年度は、縛りの無い貸出金の大量回収が、マネタリーベ-スの減少につながった。今年4月以降は、縛りの無い貸出金の残高が大きく減少し、5月1日にはその残高がゼロとなった。縛りの無い貸出金は、その後、ほとんど利用されなくなった。マネタリーベースの残高は、各月の市中資金の過不足に加え、毎月約1.8兆円の長期国債買いオペと、「資産買入等の基金」の資産買い入れ金額だけで、ほぼ決定されるようになった。実際、4月以降の季節調整前のマネタリーベースの末残の増減を見ると、前月の資金の過不足の金額に、長期国債と「資産買入等の基金」の資産買い入れ金額を合計した金額にほぼ等しくなっている。8月については、市中資金が5.7兆円の不足のところに、5.8兆円の長期国債買いオペと「資産買入等の基金」の資産買い入れにより、金融調節後の市中資金は、0.1兆円の資金余剰となった。その結果、マネタリーベースとほぼ並行して動く当座預金残高は、7月末の36.9兆円から、8月末の37兆円と、0.1兆円増加した。しかし、平残ベースに直すと、上旬の大幅余剰のために7月の平残が多かったことが影響し、8月の季節調整後のマネタリーベース平残は、前月比1.6兆円減少の121.2兆円となった。

9月の市中資金は、3.8兆円の余剰となる。4.1兆円の国から地方への交付税交付金の支払いがどうなるか不透明なので予測しづらいが、マネタリーベースの9月末残を8月末残と比較すると、数兆円レベルの大幅な増加となりそうだ。季節調整後の平残ベースに直すと、末残ベースより増加額は少し減る。それでも9月の季節調整後のマネタリーベース平残は、7月の平残をさらに上回る、過去最高の金額になることは十分考えられる。

10月の市中資金は、季節的には数兆円の不足になる。10月のマネタリーベースの末残は、9月の末残より少し減少しそうである。しかし、10月の季節調整後のマネタリーベース平残となると、増えるか減るか微妙なところである。10月の季節調整後のマネタリーベース平残は、9月から大きく変化することはないとしか予測できない。

従来、何度か説明してきたように、日銀は、マネタリーベースの量の調節ではなく、資産の買い入れで、結果的に金利や各種プレミアムを引き下げることを目標としている。しかし、「資産買入等の基金」で購入する国債は、1年以上3年以下の国債に限っており、毎月約1.8兆円購入する長期国債の平均残存期間は、昨年度において3.3年(日銀調査論文5月8日「2011年度の金融市場調節」)と、かなり短い。そして、残存期間3年以下の国債の金利は、このところずっと、日銀の超過準備に対する付利の0.1%か、それを少し下回る水準にはりついている。現行方式の資金供給では、これ以上金利を引き下げる余地は、ほとんど存在しない。

それでは、日銀が無関係としている資金の量の面ではどうであろうか。9月、10月の当座預金残高は月次の平残ベースで、過去最高であった今年7月の38.1兆円と同レベルかそれを上回ることも十分考えられる。福井総裁の量的緩和の時代のピークである2006年1月の33.6兆円と比較すると、数兆円上回ることになる。

私は、この当座預金の残高では、物価や経済に与える効果は、非常に小さいと考える。もともと、金融政策の効果は、金利がプラスの状態での利下げの効果ですら、小さいのである。それが、ゼロ金利下の量的緩和の段階に達すると、ますます効果が小さくなる。その上、現在は、福井総裁の時代と違って、超過準備に0.1%の付利という制度があり、金融緩和の効果を減殺している。だから、量的緩和に効果は無い、量的緩和は無意味という意見が多く聞かれるである。私の立場は、量的緩和の効果は小さいが、ゼロではない、という立場である。量的緩和無効論者とは、見方は似ているが、最後の結論部分だけが正反対になる。現状程度の量的緩和では、効果は非常に少ない。目に見える効果を上げるためには、もっと大規模な量的緩和を実施しなければならない、というものである。

現在の政策では、2014年度に中長期的な物価安定の目途である前年比1%の消費者物価上昇率を実現することは、不可能である。超過準備に対する付利の0.1%を廃止して金利の低下を促し、もっと残存期間が長い国債をより大量に購入するか、より期間の長い貸出金の金額をより大幅に増やすなどして、資金の量の面でも思い切った金融融和を実施すべきである。


【いつもクリックで応援していただき、大変感謝しております】      
  

テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

コメントの投稿

非公開コメント

 株式関連 株 コメント一覧

  • 投資部門別 現物先物 時系列表

  • 投資部門別売買状況 時系列グラフ

  • 10月第2週 株 コメント

  • 10月第1週 株 コメント

  • 9月第4週 株 コメント

  • 9月第3週 株 コメント

  • 9月第2週 株 コメント

  • 9月第1週 株 コメント

  • 8月第5週 株 コメント

  • 8月第4週 株 コメント

  • 8月第3週 株 コメント

  • 8月第2週 株 コメント

  • 8月第1週 株 コメント

  • 7月第4週 株 コメント

  • 7月第3週 株 コメント

  • 7月第2週 株 コメント

  • 7月第1週 株 コメント

  • 6月第4週 株 コメント

  • 6月第3週 株 コメント

  • 2016年 年間 株 コメント

  • 投資部門別売買状況アノマリー

  • 日本株 株式分布状況調査

  • 日銀資金循環統計 株 長期グラフ

  • 日銀資金循環統計 株 コメント

  • 株式先物投資部門別売買状況

  • 大手証券 先物建玉推移 グラフ

  • 海外投資家の株式買い越し金額

  • 世界の株価 国別 長期推移

  • 世界の住宅用不動産価格

  • 長期の実質実質為替レート

  • 最新記事
    カテゴリ
    全記事表示リンク
    目次のページを表示

    最新コメント
    Twitterを表示
    経済指標が意味するところを解説
    FC2カウンター
    最新トラックバック
    検索フォーム
    リンク
    ブロとも申請フォーム

    この人とブロともになる

    QRコード
    QR
    RSSリンクの表示
    Web Analytics