2016年4-6月期 日銀統計 株 コメント

日銀資金循環統計による株式投資部門別売買・保有残高
資金循環統計コメント表201603

2016年4-6月期の日銀の資金循環統計から、株式投資部門別売買・保有残高の直近分を取り上げ、重要な箇所に色をつけて示した。日銀統計は、東証名証の取引所内取引だけではなく、取引所外取引や株の発行、償却をも含んでいる。そのため、東証の投資部門別売買状況という統計よりも、株の売買動向をより正確に反映している統計として大変貴重な統計である。それでも問題点を数多く含んでいる。今回も日銀統計の数字をその問題点と合わせて説明することにする。

国内銀行は4814億円の買い越し。東証統計の銀行は645億円の売り越しであり、日銀統計とは異なっている。3か月前にも指摘したが、この数字は誤りである。一行下の農林水産金融機関の数字も同様に誤りである。

国内銀行
1-3月期 6291億円の売り越し→4-6月期 4814億円の買い越し
農林水産金融機関
1-3月期 8196億円の買い越し→4-6月期 5130億円の売り越し

上記のようにこの2部門は正反対の動きを示している。このうち、農林水産金融機関の数字は全くのデタラメである。理由は、資金循環統計はフロー、ストック、調整額という3つの部門から成り立っている統計である。調整額というのは、株の売買、評価損益プラス誤差である。株の場合、価格変動が大きいので、調整額も大きい。そして調整額はTOPIXとある程度連動する。評価損益等が大きいので、誤差が存在するにしても相対的には小さいからである。しかし、2016年の1-3月期も4-6月期も農林水産金融機関の調整額はTOPIXとかけ離れた動きを示している。これは、この期間の農林水産金融機関のストック、フローの金額に、非常に大きな誤差が存在していることを意味している。結論としては、1-3月期と4-6月期における国内銀行と農林水産金融機関の間には大きな売買は存在しなかった。信用できる部分があるとするならば、両者合計の1-6月期の数字であろう。これは1589億円の買い越しとなる。一方、この部門に相当する東証統計の「銀行+その他金融機関」は471億円の買い越しである。乖離は限定的で、日銀統計の数字の信頼性は比較的高いと思われる。

薄赤色の部分が、企業年金を中心とする私的年金に相当する「年金基金」と「公的年金」、および両者の合計である「年金計」を表す。年金基金は1億円の売り越し、公的年金は5577億円の買い越し、年金計では5576億円の買い越し。この数字の根拠は、東証の投資部門別売買状況における信託銀行の買越額8321億円であろう。しかし、この数字にも誤りが存在する。まず、1-3月期の数字が3か月前から大幅に修正された。

1-3月期の3か月前の公表分から今回公表分への修正金額と修正内容

年金基金(1兆9349億円の下方修正)
6526億円の買い越し→1兆2823億円の売り越し

公的年金(1兆6566億円の上方修正)
9654億円の買い越し→2兆6220億円の買い越し

年金計(2783億円の下方修正)
1兆6180億円の買い越し→1兆3397億円の買い越し

3か月前には怪しいとは思いながらも、選挙の関係で公的年金の決算が未公表であったので、「将来は修正の必要性を頭に入れながら、現時点では一応正確な数字に近いと受け入れるしかない。」と書いた。今回の問題は修正幅が大きい上に、修正後の数字もデタラメである可能性が高いことである。特に年金基金と公的年金の内訳は修正後の1-3月期も、今回公表された4-6月期もデタラメの数字である。この中で正確性が比較的高い数字は、修正後の年金計と今回公表された年金計の数字であり、1-3月期に1兆3397億円の買い越し、4-6月期に5576億円の買い越しである。この数字なら東証統計の信託の数字から見てもありえない数字ではない。この年金計の数字は、正しいとは言い切れないが、誤差が比較的少ない数字として受け入れるしかない。年金基金と公的年金の内訳は、全くデタラメで信用に値しない。

証券投資信託は1750億円の買い越し。これは東証統計の投信の買越額といつも同じ数字である。しかし東証統計の投信には、日銀が大量に購入しているETFを通じた株の買いが含まれていない。ETFは取引所外取引を利用して株を購入しているからだ。この不備は日銀自身も認めている。実際の投信の買越額は4-6月期に日銀が購入したETF9667億円分が過小推計になっている。つまり、ETFによる買いも含めた場合、投信は1.1兆円前後の買い越しになる。

証券会社は1兆5980億円の売り越し。これは東証統計の自己1兆5748億円の売り越しを参考にしたものと思われる。ところが東証統計の自己には日銀ETF9667億円の買い越しが含まれている。先にも書いたが、これは取引所外取引を利用して投信へと売却されている。日銀ETF買いを除く自己は2.5兆円ほどの売り越しになるはずである。同時期に東証の自己は先物を1.9兆円買い越している。この分は広義の意味における裁定解消売買である。それ以外に0.6兆円の売り越しがある。ただ自己はリスクを取れないので、これとは反対の様々な取引所外取引による買いが0.6兆円前後あるはずである。しかしこの取引所外取引の内容(現物かデリバかなど)は外部からは全くわからない。結論としては、日銀統計における証券会社の1兆5980億円の売り越しという数字は、東証統計における先物買いを伴った1.9兆円の自己による現物売りの金額にある程度近く、正確性がそれほど高いとは思えないが、信用するしかない。

非金融法人企業は7842億円の買い越し。この数字は東証統計の「事法+その他法人」の8877億円の買い越しという数字に近い。しかしこれは、近い数字であっては困るのである。日銀統計には自社株買い以外に、自社株消却が含まれているからだ。7842億円の買い越しという数字では、自社株消却が少なすぎ、買い越しの金額としては大きすぎる。ただ自社株消却は日銀が把握した時点でドカンと大幅なマイナスが計上されることが多い。自社株償却の正しい数字を知ることは非常に困難である。日銀統計の4-6月期の数字は信用できないが、年単位で見た場合は日銀の数字を信用するしかない。そういうことを頭に入れた上で、4-6月期の7842億円の買い越しを受け入れるしかない。

保険は1706億円の買い越し。一方、東証統計の保険は1285億円の売り越し。日銀の数字は「東証統計の金額+保険会社が信託勘定で売買した金額+保険会社が取引所外取引で売買した金額」の合計である。日銀の数字が正しいかどうかわからないが、信託勘定や取引所外取引での売買金額は全くわからない。そういう意味において、日銀の数字を信用するしかない。

家計は3903億円の売り越し。これは東証統計の4060億円の売り越しから、公募、売出しなどの取引所外取引での購入金額を加える必要がある。日銀統計はこれらの数字の推計が常に過小推計なので、正しいとは言えない。ただ4-6月期は公募、売出しが少額であった。4-6月期に関しては誤差は小さく、3903億円の売り越しは実際とはかけ離れた数字ではない。

海外による3029億円の買い越しは、取引所外取引を含まない2716億円の買い越しという東証統計よりも正確性が高い。

以上のことを頭に入れておく必要がある。その上で日銀の資金循環統計に基づく2016年4-6月期における投資部門別売買状況は、「非金融法人企業(事法+その他法人)7842億円の買い越し、年金計(信託の一部)5576億円の買い越しvs証券会社(自己)1兆5980億円の売り越し」であった。

参照 株式売買関連の統計
 日銀 資金循環統計に基づく株式売買と株式保有残高(日本株)
 投資部門別売買状況 長期時系列表 (日本株)
 株式先物 投資部門別売買状況 累積買越枚数
 大手証券 先物建玉枚数推移 グラフ
 日本株 株式分布状況調査 2015年度

テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

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