ノキアの株価急上昇がもたらしたフィンランドの静かな経済危機

今年1-3月の海外投資家による日本の現物株売越額は合計5兆円であった。大幅な売越額に見えるらしく、一部の人たちは大騒ぎをしていた。しかし、海外投資家は現物の取引所内取引だけで1991年-2016年4月第3週で86兆円の買い越しである。発行市場も含めた国際収支ベースでは1991年1月-2016年2月の期間で112兆円の買い越しである。安倍政権誕生直後の2013年1月以降だけでも、12兆円と18兆円の買い越しである。日本は、日本企業の株という日本人にとって貴重な財産をバブル崩壊後一貫して国内投資家に売らせ、代わりに海外投資家に買わせてきた。アベノミクスの正体は、この日本株を海外投資家に売り渡すという大変間違った政策を大幅に拡大させたことであった。安倍首相が2013年9月25日にニューヨーク証券取引所で行った「バイ・マイ・アベノミクス」というスピーチがその証拠である。海外投資家が大株主になった時の損失については過去に何度も書いたことがある。かつて使ったことのあるグラフを1つだけ下記に示す。

フィンランドの対外債務

ギリシャ危機の深刻さを表す際に使ったグラフである。2000年頃のフィンランドでは対外純債務の対GDP比率が200%近くであった。借金で首が回らない最近のギリシャよりも2000年頃のフィンランドの方が対外純債務比率が高かったのである。これは海外投資家がノキアの株を大量に買って株価が大きく上昇したからである。海外投資家がノキアの大株主になって株価が大きく上昇した時点でフィンランド経済は終わっていたのである。ノキアがさらに成長して海外投資家に巨額の配当金を支払い続けるか、ノキアの没落とともにフィンランド経済も没落するかの2つの道しか残されていなかった。その後フィンランドがたどった道は、後者の道であった。現在の日本は2000年時点のフィンランドとは全く異なる世界最大の対外純債権保有国である。しかし、今後日本経済が成長力を取り戻した場合、海外投資家に日本株を売り続けて、海外投資家が日本株のより多くの割合を保有する大株主になっていたならば、フィンランドと似た現象が将来の日本で発生するのである。

海外投資家に対して日本株を売るという状態はすぐにでも解消させる必要がある。そのために必要な政策が金融緩和の強化である。日銀が日本国債、株式ETF、REITの保有金額を年間1000京円ずつ、合計3000京円分だけ1年間で純増させるという政策目標を発表すればよい。そうすれば、物価も国債価格も株価も地価も急激に上昇することは間違いない。日銀が額面100円の国債の買い取り価格を1万円→1億円→1兆円→1京円と引き上げ続ければ、札割れなんか起こらない。ETFもREATも日銀が購入価格を無制限に引き上げれば、無制限の設定購入が可能になる。金融政策が実質GDPを引き上げることが可能かどうかという論点では、議論は分かれる。しかし、物価、株価、地価、名目GDPなどはいくらでも引き上げることは可能なのである。実質ではなく名目ベースのものに対して、「金融政策に効果はない」、「金融政策の効果には限界がある」と言うならば、その考え方は完全に間違っている。

3000京円は話をわかりやすくするための一つの極端な例であり、金額が大きすぎる。しかし、現在の政策と3000京円の間に現実的な解が必ず存在する。それなのに日銀は金融緩和を強化しようとしない。理由は明らかである。黒田総裁は出口戦略に自信がないからである。

出口戦略は政府が全面的に引き受けるべきである。第二次世界大戦終了直後のハイパーインフレを鎮静化させたと言われることが多い「ドッジ・ライン」の「バージョン2」を早急に策定するのである。消費税増税により、日本では消費税増税のデフレ不況促進効果が非常に大きいということが明らかになった。日本経済は消費税増税だけではなく、一般的に増税に弱い。非ケインズ効果が発生するような国とは正反対なのである。この増税を中心とするデフレ不況促進政策により、金融緩和によって発生するインフレを抑制することは可能である。そして、「ドッジ・ライン・バージョン2」を策定するならば、国債発行残高ゼロも同時に目指そうではないか。

とはいっても2016年の日本の前にはバラ色の道は存在しない。イバラの道しか残されていない。それでも海外投資家による日本株買いをこのまま続けさせ、現在30%強である海外投資家による日本株保有比率がさらに上昇すると、日本のフィンランド化が少しずつ進み、イバラのトゲの痛さは必ず増す。金融緩和をやめ、経済をデフレ不況に戻せば、海外投資家とともにイバラだらけの道に引き戻されることになる。増税だけで物価や株価を抑制することは簡単ではない。痛みも必ず伴う。しかし、それ以外の政策を採用した場合と比べれば、痛みは少ないはずである。

これから先の金融緩和の強化は完全に手遅れであり、痛みは大きい。しかし、痛みが一番少ない道が金融緩和の強化の後に続く道なのである。日本をフィンランドにさせてはならない。日銀は1日も早く無制限の金融緩和の強化を実施に移すべきである。


(長文ですが、過去にはこんな記事も書いています)
外国人株主比率上昇を伴う株価上昇による損失について
 2013年末対外純資産が過去最高を更新 ドル建てでは減少
 アベノミクスがもたらした株価上昇による100兆円の損失
金融緩和による財政再建策について
 金融抑圧による財政再建 イギリスと日本
 金融抑圧による財政再建 経済財政諮問会議資料における試算
 不動産バブルの崩壊防止を通した財政再建策


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