2016年1-3月期 日銀統計 株 コメント

日銀 資金循環統計に基づく株式売買と株式保有残高(日本株)

資金循環統計コメント表201603


2016年1-3月期の日銀の資金循環統計から、株式投資部門別売買・保有残高の直近分を取り上げ、重要な箇所に色をつけて示した。日銀の統計は、東証名証の取引所内取引だけではなく、取引所外取引や株の発行、償却をも含んでいる。そのため、東証の投資部門別売買状況という統計よりも、株の売買動向をより正確に反映している統計として大変貴重な統計である。それでも問題点を数多く含んでいる。日銀統計の数字を、その問題点と合わせて説明することにする。

国内銀行は7012億円の売り越し。東証統計の銀行は778億円の売り越しであり、日銀統計とは大きく異なっている。銀行に関しては日銀統計の数字を受け入れることはできない。上記の表では国内銀行7012億円売り越しの一つ下の行に、農林水産金融機関が7277億円買い越しという数字が見える。外見上は国内銀行が株を農林水産金融機関に7000億円ほど売却したように見える。しかし、この農林水産金融機関の7277億円買い越しという数字もおかしい。まず、この1-3月期において、TOPIXは12.9%下落している。しかし、国内銀行の保有株式価格は、32.4%の下落、農林水産金融機関の保有株式価格は6.9%の下落である。保有株式の下落率に差があるのはよくあることだが、今回は差が大きすぎる。同じ日銀が発表している民間金融機関の資産・負債という統計では、この1-3月期に銀行が保有株式を大きく売り越したという事実は確認できない。東証の株式分布状況調査でも、2015年度に銀行が株を大きく売り越したという事実は見えない。やはり日銀統計の国内銀行による株式の保有金額、売買金額には誤りがある。日銀統計では、国内銀行と農林水産金融機関を合計すれば265億円の買い越しになる。東証の銀行は778億円の売り越しであるが、農林水産金融機関が属するその他金融は1390億円の買い越しであり、合計すると611億円の買い越しである。国内銀行と農林水産金融機関を合計した数字は、正確な数字に近いと思われる。

証券投資信託は3879億円の買い越し。これは東証統計の投信の買越額と全く同じ数字である。しかし東証統計の投信には、日銀が大量に購入しているETFを通じた現物株の買いが一部しか含まれていない。この不備は日銀自身も認めている。実際の投信の買越額は1-3月期に日銀が購入したETF6833億円、日銀以外が購入したETFも含めると、おそらく7000億円以上の過小推計になっている。つまり、ETFによる買いも含めた場合、投信は1.1兆円以上は買い越しているのである。

民間非金融法人は4509億円の売り越し。この数字は東証統計の事法3958億円の買い越しを元にしているはずである。ここから日銀が把握した発行や取引所外取引での売買金額、自社株償却などの金額を調整した結果、4509億円の売り越しになったのだと思われる。自社株償却等の数字は、アイ・エヌ情報センターが集計した数字を日銀が借用している。そうした数字には明らかにおかしな推計と思われる数字が、過去においては何回かあった。しかし、今回の数字は明らかにおかしいという部類に属する数字ではない。十分に考えられる範囲内の数字である。従って、今回は正確に近い数字と受け入れることにする。

薄赤色の部分が、企業年金を中心とする私的年金に相当する「年金基金」と「公的年金」、および両者の合計である「年金計」を表す。年金計では1兆6180億円の買い越しになっている。その内訳は年金基金6526億円、公的年金9654億円である。この数字の根拠は、東証の投資部門別売買状況における信託銀行の買越額2兆0560億円であろう。しかし、東証の株式分布状況調査の数字を頭に入れると、年金基金の数字を額面通り受け入れるのには大きな抵抗感を感じる。しかし公的年金については、今回は日銀の推計を否定する確たる根拠が存在しない。通常なら現時点で3月末のGPIF、3共済の株式運用状況が公開されており、公的年金の株式売買状況を一定程度は推測できる。しかし、今年は参議院選挙があるため、公的年金の運用状況の公開を先延ばしにしてしまった。日銀の数字を誤りと指摘できる根拠が現時点では不足している。将来は修正の必要性を頭に入れながら、現時点では一応正確な数字に近いと受け入れるしかない。

保険は1039億円の買い越し。一方、東証統計の保険は764億円の売り越し。この数字については日銀の数字を支持したい。「東証統計の金額+保険会社が信託勘定で売買した金額+保険会社が取引所外取引で売買した金額」が本当の保険会社の買い越し売り越し金額になる。東証統計の保険の数字は売り越しが続いているが、金余りの環境下で、保険全体では買い越しになっている可能性が高い。日銀の数字の方が、東証の数字よりも正確な数字に近いと考えることにする。

家計は1兆4827億円の買い越し。東証統計の個人1兆4235億円買い越しに近い。しかし、より正しい数字は日本証券業協会が発表している募集と売り出しを含む個人の買い越し1兆4990億円である。1-3月は募集、売り出し金額が少なく、日銀も日証協も数字に大きな違いはない。ただ、昨年10-12月では、郵政3社株を大量に個人が買った分の日銀独自の推計値が滅茶苦茶であった。日銀には独自推計よりも、日証協の数字を使ってもらいたい。

証券会社4944億円買い越しは、東証統計の自己4138億円買い越しに近い。海外4兆9846億円の売り越しは、東証統計の海外5兆0127億円売り越しに近い。この2部門の売買については、日銀の数字が正確な数字ではないとしても、正確な数字からそれほど離れた数字でもない。

以上のことを頭に入れておく必要がある。その上で日銀の資金循環統計による2016年1-3月期における投資部門別売買状況は、「年金計(信託の一部)1兆6180億円の買い越し、家計(個人に相当)1兆4827億円の買い越しvs海外4兆9846億円の売り越し」であった。

参照 株式売買関連の統計
投資部門別売買状況 長期時系列表 (日本株)
株式先物 投資部門別売買状況 累積買越枚数
大手証券 先物建玉枚数推移 グラフ
日本株 株式分布状況調査 2015年度


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テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

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