デフレと財政赤字の関係

主要先進国を20ヶ国ピックアップし、IMFのHP掲載データを使用し、その財政状況の比較を行うことにする。日本を例にとると、政府の一般会計の数字ではなく、国民経済計算ベースの中央政府、地方政府、社会保障基金の合計である一般政府の数字が比較対象である。

まず、主要先進国20ヶ国の総債務の対GDP比率の変化を見ることにする。


先進国の総債務GDP比率

この指標では明らかに日本がずば抜けて借金の比率が高い。かつ増加し続けている。

ただ、日本の場合、政府は、借金も多いが、資産も多い。そこで、借金から資産を差し引いた、純債務の対GDP比率の変化を見ることにする。


先進国の純債務GDP比率

このグラフでも、日本が最悪であることには変わりは無い。ここで注意してもらいたいのは、ノルウェー、フィンランド、スウェ-デンの3ヶ国の数字である。3ヶ国の数字がマイナスであるということは、3ヶ国の政府の資産が借金を上回っているということである。特にノルウェーのこの比率はマイナス168%である。ノルウェーは、北海油田の収入を財源としたソブリン・ウェルス・ファンドを通して資金運用を行い、次世代のために貯蓄を増やしているのである。日本はこの比率がプラス
127%。日本はノルウェーと正反対に、次世代に多額の借金を残しているのである。

この借金や貯蓄の原因となった、年ごとの財政収支の対GDP比率を見ることにする。


先進国の財政収支GDP比率

日本の場合、1993年以降、ずっと赤字が継続している。2005年-2007年の景気回復期に赤字は縮小するが、リーマンショック後には、再び大幅赤字に逆戻りしてしまった。

この財政赤字の原因を探るために、国家の歳入(税金・社会保険料)の推移を見ることにする。


先進国の歳入の推移

日本だけが、バブルのピークの1991年あたりから、歳入は微減である。日本政府の一般会計だけの税収を見ると、1990年をピークにして、その後大きく減少している。国税は大きく減少しているが、社会保険料の収入が増加し、IMF定義の一般政府では、何とか微減のレベルに抑えている。それでも、日本以外の主要先進国の歳入は増加を続けており、日本だけが歳入、すなわち税金・社会保険料が増えなかったということを理解しておく必要がある。

次に歳出の推移を見ることにする。


先進国の歳出の推移

日本の歳出も、2000年頃から増加しておらず、他の主要先進国の増加とかなり異なっている。日本の歳出は、今後はともかく、2011年までは、少子高齢化の中でもあまり増えておらず、無駄もあったと思うが、他の先進国よりは、相対的に少なかったと言えるであろう。にもかかわらず、1993年以降、財政赤字が増加した主な原因は、歳出面より歳入面により大きな原因があるはずだ。

歳入に最も大きな影響を与える要因は、名目GDPである。次に名目GDPの推移を見ることにする。


先進国の名目GDPの推移

歳入のグラフと似ており、日本だけがバブル末期の1991年頃から横ばいである。こうしたグラフから、日本の財政収支の悪化の最大の原因は、主要先進国20ヶ国の中で、唯一、名目GDPが成長しなかったことにある。

名目GDP=実質GDP×GDPデフレーターである。そこで、次に実質GDPの推移を見ることにする。


先進国の実質GDPの推移

初めて日本が最悪ではないデータが出てきた。それでも、イタリアとデンマークを少し上回るだけである。

次に、GDPデフレーターの推移を見ることにする。


先進国のGDPデフレータの推移

GDPデフレーターの増加率も、日本が最低である。しかも現在の水準は、1994年のピーク時よりも、はるかに低く、グラフの始まりの1980年頃と同程度の水準である。日本が世界最大の借金大国となってしまった原因は、GDPデフレーターがピークの1994年から、ほぼ継続してして値下がりし続けてきたことにある。
1994年以降、デフレに陥らなかったと仮定すると、1994年の数値である、総債務/GDP比率は83%、純債務/GDP比率は19%から、あまり大きく変化しなかった可能性は十分考えられる。日本の借金が異常なまでに膨れ上がった原因は、日本の名目GDPが成長しなかったことが原因であるが、その先の大元の原因は、GDPデフレーターが長期間低下し続けたことが原因である。すなわち、日本政府の巨額の借金の原因の多くは、デフレにあったと言っても良いであろう。

デフレとは、主に、預貯金や確定利付債券の保有者に対する減税である。他の主要先進国が、預貯金や確定利付債券の保有者に対する増税を継続している間、日本は預貯金や確定利付債券の保有者に対する減税を継続し、結果として税収を大きく減らしてしまった。大半の他の主要先進国はデフレに陥ることがなく、名目GDPの成長率が高かったため、財政赤字は日本ほど増加することは無かった。

なお、香港と台湾は1998年以降デフレが続いているが、実質GDPの成長率が主要先進国20ヶ国の中で、非常に高く、名目GDPの成長率も主要先進国20ヶ国の中で中位にある。名目GDPの成長率が高ければ、税収も増加し、財政赤字の問題も深刻にならない。日本の場合、実質GDPの成長率は、主要先進国20ヶ国の中で下から3番目、GDPデフレーターは、主要先進国20ヶ国の中では最低であった。その結果、名目GDPの成長率が主要先進国20ヶ国の中でずば抜けて低くなってしまった。その次には、税収が大幅に落ち込み、財政赤字や借金の残高が異常なまでに膨らんでしまった。

税収を引き上げるために最も必要な政策は、GDPデフレーターで測ったデフレから脱却し、マイルドなインフレを実現することである。直近のGDPデフレーターは、前年比1.1%のマイナスである。デフレ減税はまだ続いている。日銀が量的緩和を現在よりも大幅に強化し、1日も早くGDPデフレーターをプラスの領域に持っていくことが、何よりも求められている。

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