2015年10-12月期 日銀統計 株 コメント

日銀 資金循環統計に基づく株式売買と株式保有残高はこちら

資金循環統計コメント表201512


2015年10-12月期の日銀の資金循環統計から、株式投資部門別売買・保有残高の直近分を取り上げ、重要な箇所に色をつけて示した。日銀の統計は、東証等の取引所内取引だけではなく、取引所外取引や株の発行、償却をも含んでいる。そのため、東証の投資部門別売買状況という統計よりも、株の売買動向をより正確に反映している統計として大変貴重な統計である。それでも問題点を数多く含んでいるので、その問題点も合わせて説明することにする。

今回は通常とは異なる数字が存在する。薄緑色をつけた2ヶ所であるが、いずれも郵政3社株の上場に伴う特殊な処理の分である。中小企業金融機関は1兆3460億円の買い越しになっている。しかし、上記の表にはない未上場株でこの金額に近い売りが発生している。これは、ゆうちょ銀行の自社株保有分が、株式上場により未上場株から上場株へと振り替わったからである。この分を除くと、中小企業金融機関の株の買越額は460億円にまで減少する。もう1つは公的非金融法人の6兆0082億円の買い越しである。これも日本郵政が保有していたゆうちょ銀行、かんぽ生命の保有株が未上場株から上場株に振り替わった点が大きい。日本郵政はゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式を売り出しによって売却もしているので、公的非金融法人の上場株と未上場株を合計すると5368億円の売り越しとなる。

薄赤色の部分が、企業年金を中心とする私的年金に相当する「年金基金」と「公的年金」、および両者の合計である「年金計」を表す。年金計では5570億円の買い越しになっている。この数字の根拠は、東証の投資部門別売買状況における信託銀行の買越額5922億円であろう。年金計の数字は、特に矛盾する点も見られないので、正確な数字に近いものと受け止めることにする。問題はその内訳である。公的年金による買越額4611億円は、GPIFが公表している4300億円前後の株式買い越しなどが根拠であったと思われる。しかしこの期間は、3共済も一元化によりかなり多くの株を買い越していたはずである。日銀による公的年金買越額4611億円という数字は過小推計である。もう一つの理由は、年金基金による959億円の買越額があまりにも過大推計と考えられることだ。この10-12月期は日経平均株価が1646円も上昇した期間である。年金基金の売買行動パターンは公的年金とは異なり、昔からずっと逆バリである。この株価上昇局面で買い越しはあり得ない。年金基金は959億円の買い越しではなく売り越しであり、公的年金の買越額は3共済の買越額を上乗せすると、4611億円より大きかった可能性が高い。

国内銀行は610億円の買い越し。東証統計の銀行は1434億円の売り越しであり、日銀統計とは異なっている。東証統計とは異なり、日銀統計は銀行が買い越しになることが多かった。過去の買い越し時においては、日銀統計の推計値は信じられないと書いてきた。しかし、今回は日銀統計の元になる、同じ日銀による「国内銀行の資産・負債等」という統計の銀行による保有株式残高を見ると、少し増えている。これは持合解消売り以上に、余剰資金の運用手段として株を購入していたからだと思われる。購入の際に取引所外取引を多く使ったと考えれば、銀行が買い越しということはありうる話となる。今回は日銀統計の数字を信じることにする。

民間非金融法人は2356億円の売り越し。この数字も東証統計の事法1兆0797億円の買い越しを参考にしているはずである。ここから日銀が把握した自社株償却の金額を差し引いた結果、2356億円の売り越しになったのだと思われる。7-9月期に1兆1914億円の買い越しが記録されているが、これは自社株償却の過小把握が原因の誤った数字である。ただ、7-9月期から10-12月期にかけての自社株償却金額の急増もまた大きすぎて信じがたい。10-12月期が正確というよりも、7-12月期を合計した場合、より正確な数字に近づいた可能性が高い。このことを頭に入れた上で、2356億円の売り越しという数字を一応容認できる推計値と見なすことにする。その場合、先に日本郵政を中心とする公的非金融法人が特殊分を除くと5368億円の売り越しと書いたが、公的と民間を合計した非金融法人で考えると、7724億円の売り越しであったことになる。

家計は1兆6555億円の売り越し。この数字も東証統計の個人2兆0390億円(厳密には個人+証券会社(小規模証券会社の売買であるため、大半が個人の売買))の売越額を元に、郵政3社株の売出株購入金額などの推計数字を加えたものであると思われる。前回も指摘したように、公募増資等を含めた個人の株の買越額は日本証券業協会が推計している。その数字は7941億円の売り越しである。日銀の数字よりも日証協の数字の方が正確性が高い。しかし、個人は郵政3社株だけで売り出しの際、1兆円以上購入している。難しいのは、郵政3社株以外の株の公募売り出しによる購入金額の推計である。個人の売越額が1兆円以下ということまでは誰でも簡単に推計できる。1兆6555億円という数字を出す日銀の株式売買推計担当者はあまりにもいい加減すぎる。日銀統計の個人売越額は、長年過大推計され続けているのである。

海外は1兆6187億円の買い越し。東証統計の1兆1737億円の買い越しに、郵政3社株の海外に対する売り出し金額2872億円を加えると1兆4609億円になる。それ以外に海外は発行市場や取引所外取引でも日本株を買い越している。日銀の推計値は妥当な金額と考える。

証券投資信託は1310億円の買い越し。これは東証統計の投信の買越額と全く同じ数字である。しかし、日銀が大量に購入しているETFを通じた現物株の買いが一部しか含まれていない。この不備は日銀自身も認めている。実際の投信の買越額は10-12月期に日銀が購入したETF5789億円、日銀以外が購入したETFも含めると、おそらく6000億円以上の過小推計になっていると思われる。

上記以外では、保険272億円の売り越し、証券会社(自己)1041億円の売り越しになっている。これらの数字は、東証統計の数字を参考にしながら、日銀が修正を入れている。この2つの数字にも疑問点はあるが、金額が大きくはないので重要性は低い。

以上のことを頭に入れておく必要がある。その上で日銀の資金循環統計による2015年10-12月期における投資部門別売買状況は、郵政3社の未上場株から上場株への振り替えという特殊要因を除くと、「海外1兆6187億円の買い越し、年金計(信託の一部)5570億円の買い越しvs家計(個人)1兆6555億円の売り越し、非金融法人(事法に相当)7724億円の売り越しであった。日経平均株価が1646円上昇した期間であり、自社株消却を考慮しているので、最近の株価上昇時によく見られるパターンに近かった。

テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

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