2016年3月第1週 株 コメント

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投資部門別コメント週次20160310

週足株価201603-1Wブログ用


2016年3月第1週の日経平均株価は前週末比826円高の17015円で引けた。この週は安く始まったが、後半はグングン上昇して引けた。転機は3月1日火曜日にアメリカで発表されたISM製造業景況指数の改善であったと思う。このところずっとアメリカの製造業は不振で、ISM指数も下落が続いていたが、1日発表の2月分は前月比プラスであった。それまで広まりつつあったアメリカ景気後退説が一挙に払拭され、NY株価が上昇に転じ、同時に円安も進行した。こうした海外経済、株式市場の好転を反映して日本株も2日は大幅な上昇となり、そのまま高値で終えることになった。

3月第1週の最大の買い手は信託であった。現先合計で2884億円の買い越し。うち現物で2813億円の買い越し。先物で71億円の買い越し。アベノミクス相場開始以降の信託の投資部門別売買状況と日経平均株価を下記に示す。

信託買いと日経平均株価20160310

信託は、アベノミクス相場開始以降しばらくは、現物中心に大幅な売り越しであった。「株価の戻り=売り」のできないファンドマネージャーは過去20数年間損を出し続けた。生き残るためにはアベノミクスの正否に関係なく「株価の戻り=売り」で反応せざるをえなかった。その信託の売買パターンに変化が生じたのが2014年5月である。それ以前の信託の買いは押し目に限られていたが、この時から上値でも買い越すようになった。クジラ=公的年金の買いが本格化し始めたのである。

2016年2月第3週から3週連続で信託は大幅な買い越しである。この特徴は、金額が信託にしては大きいだけではなく、上値を買い上がると同時に、大半の買いが現物に集中していることである。これは、クジラのように一定の期限までに株を買う必要があるので、計画的に株式組入比率を先物も使って引き上げるという買い方とも異なっている。

とにかく、現物をひたすら買っているのである。ファンダメンタルズが悪化する中で株を買い越すのは、信託だけではなく国内投資家の特徴である。しかし、以前ならそうした買いは株価の下落局面に限られていた。ファンダメンタルズの悪化を無視し、株価の位置や方向を考えずに買い越している。長年にわたる日銀による量的緩和とマイナス金利に反応して、長期国債の金利がマイナスになってしまった。信託を利用して資金運用をしている国内機関投資家は、運用の柱である国債を超長期を除けば買えなくなってしまったのである。そのため、運用先を失った資金がとりあえず現物株を買っているようにしか見えない。この現象を、日銀が量的緩和、マイナス金利を通じて意図しているポートフォリオ・リバランス効果と呼ぶのである。

2月第3週から3週連続で株価が上昇する中で信託は大幅な買い越しになった。クジラも当然買い越しであろう。しかし、信託はクジラだけのものではない。国債という資金運用先を失った生保系、簡保系、ゆうちょ系、農林系、企業年金系などの信託もクジラと一緒に買い越していた可能性が高い。

それ以外にも信託方式の自社株買いがある。最近発表された信託方式による大口の自社株買いとしては、トヨタ、2月8日-2月29日、947億円と、大和証券グループ本社、2月17日-3月9日、186億円があげられる。この2社の自社株買いの一部が3月第1週に実施されている。ちなみに2月月間での信託による現物株買越額は9500億円なので、そのうち約10%は上記2社による自社株買いであった。

投信は現先合計で854億円の買い越し。うち現物で557億円の買い越し。野村総研によると、3月第1週の国内株式型の公募投信は234億円の資金純流入になっている。この資金が現物株の買いに回った。資金純流入額以上の株を買っているので、私募投信にも資金が流入しており、現物株の買いに回ったと推測する。

投信先物は297億円の買い越し。うち日経平均ラージ先物で362億円の買い越し。その中で、野村アセットの「NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信」が日経平均ラージ先物を500億円前後の買い越しと計算できる。大和投信の「ダイワ・ブルベア・ファンドⅣ ブル3倍日本株ポートフォリオⅣ」は日経平均ラージ先物を150億円前後の買い越しと計算できる。しかし、同種のブル型投信の多くは純資産があまり増えておらず、解約のための売りの方が多かった可能性が高い。それらを合計すると362億円の買い越しになったと思われる。

事法は現先合計で294億円の売り越し。うち現物で294億円の売り越し。最近発表された大口の自社株買いは、テレ朝、3月3日、224億円などがあげられる。なお、ソフトバンクが5000億円の自社株買い実施を2月に発表している。前回の自社株買いの実施は昨年8月発表であったが、発表時に信託方式であることを明示していた。2月にはその明示がないので、事法部門で行われる可能性が高い。3月4日開始の日産による4000億円の自社株買いも事法部門である。一方、トヨタの現在の自社株買いは信託方式なので信託部門、NTTドコモの5000億円の自社株買いはTOB方式なので取引所外取引になる。第1週に間違いなく事法部門で自社株を買ったと確認できるものは、テレ朝の224億円だけである。しかし、自社株買いの中心は事法部門であり、現在も継続中の企業は、小口のものも加えると非常に多い。そのため、事法は3月第1週もそれなりの買い越しが続くと考えていたが、予想外の売り越しであった。売りの金額が大きいというよりも、買いの金額が小さい。事法は自社株買いを中心に買い越しの週が多くなると思う。3月第1週は事法部門で自社株買い継続中の企業が、買いを一時的に休んだことがたまたま同時に発生したという偶然の結果としか考えられない。

海外は現先合計で608億円の売り越し。うち現物で954億円の売り越し。先物で346億円の買い越し。月曜日に公表され、その日にツイッター上に掲載している3月第1週の先物建玉の変化から見た大手証券会社の先物売買概算を示す表を下記に掲載する。


先物手口201603-1W

海外による先物の買い越しの中心は日経平均ミニ先物であり、日経平均ラージ先物は売り越しである。ただおそらくは、ニューエッジを中心とする証券会社の日経平均ミニ先物の買いは、海外扱いになる外資系証券の海外自己による日経平均ラージ先物売りとセットになった裁定売買である。元をたどればシティによる日経平均ラージ先物1250億円の買い越しが原因である。これはシティが2月後半に売った分の買い戻しである。ヘッジファンドなどの投機筋の買いであろう。

海外による現物の売越額は954億円。過去においては、アメリカのISM製造業景況指数の予想外の回復、アメリカ景気後退説の払拭という好材料が出た場合、真っ先に日本株を買い越してきたのは海外であった。しかし、それを目に見える形で実施したのは、シティの顧客ぐらいであった。3月第1週はオイルマネーも売り越していたとは思う。しかし、より巨額の資金を動かす欧米の機関投資家は、日本株については売りと買いに対応が分かれた。欧米の機関投資家はファンダメンタルズに敏感なのであるが、アメリカのISM指数の改善が日本経済の回復につながるかについては見方が分かれたようである。結果として海外の現先合計は608億円という小幅の売り越しになった。

個人は現先合計で2628億円の売り越し。うち現物現金で1601億円の売り越し。信用で388億円の売り越し。先物で639億円の売り越し。国債を大量に保有している国内機関投資家=信託とは異なり、個人は量的緩和やマイナス金利から受ける影響は小さい。預貯金の金利は少し下がったが、元から低かったので小幅である。預貯金の金利がマイナスになれば変わるであろうが、現時点ではマイナスにはなっておらず、将来もマイナス化する可能性は高くない。個人が買い上がり、同時に取引所内取引における大幅な売り越しが買い越しに転換すれば、プラスのポートフォリオ・リバランス効果は完成ともいえる。そのためには、バブル崩壊後の勝利の方程式に従って、戻り売りの原則を遵守していた個人が儲からなくなり、禁じ手である高値買いを行った個人が大儲けするという体験が積み重ならなければならない。これを現実化するためには、株価を下げさせないことが必要であり、緩やかでもよいから右肩上がりの相場が長期間持続することのできる政策をとり続けることしかない。右肩上がりの相場は、日本以外の国においては過去25年といった長期レベルでは成立しているのである。

合計すると、3月第1週は「信託、投信の買い越しvs個人、海外の売り越し」であった。日銀による金融緩和の効果がようやく現実化し、運用先を失った国内機関投資家の資金が株価上昇局面においても株式市場に流入してくるというように行動パターンに変化が現れた。しかし、個人は依然として戻り売りを続けている。日銀による量的緩和とマイナス金利の効果は現れ始めたが、まだ十分なものにはなっていない。

テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

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