2015年7-9月期 日銀統計 株 コメント

日銀 資金循環統計に基づく株式売買と株式保有残高はこちら

資金循環統計コメント表201509


2015年7-9月期の日銀の資金循環統計から、株式投資部門別売買・保有残高の直近分を取り上げ、重要な箇所に色をつけて示した。日銀の統計は、東証等の取引所内取引だけではなく、取引所外取引や株の発行、償却をも含んでいる。そのため、東証の投資部門別売買状況という統計よりも、株の売買動向をより正確に反映している統計として大変貴重な統計である。それでも問題点が残っているため、その問題点も合わせて説明することにする。

薄赤色の部分が、企業年金を中心とする私的年金に相当する「年金基金」と「公的年金」、および両者の合計である「年金計」を表す。年金計では1兆2057億円の買い越しになっている。この数字の根拠は、日銀が2番目に重要な参考資料として説明している東証の投資部門別売買状況における信託銀行の買越額1兆1375億円であったと思われる。しかし、信託の中には年金以外にも、ゆうちょ系の信託、生保系の信託、信託方式の自社株買い等が買い越しになっているはずである。年金にプラスしてこれらの主体の買越額合計が東証統計の信託1兆1375億円の買い越しなのである。信託の中には売り越し主体もあったと思うが、大きなプレーヤーではない。年金だけの買越額は1兆2057億円よりも少なかった可能性が高い。ただし、最近増えている取引所外取引で信託が大量に株を買った可能性を否定することはできない。この点は自信がないので別の角度からも見ることにする。

日銀の推計では、公的年金が9259億円の買い越し、年金基金が2798億円の買い越しになっている。年金の中の最大の買い越し主体であるGPIFは7-9月期に3800億円の買い越しである。GPIF以外の公的年金、年金基金のディスクロージャーは貧弱であり、これらの主体の売買動向を知るためには、日銀統計が唯一の頼りになる統計である。それでも年金計の保有株式の60%強を保有し、同時に株の組入比率を引き上げつつあるGPIFが3800億円の買い越しでしかない。公的年金と年金基金を合計した年金計も、日銀の推計額1兆2057億円という買越額を下回っていた可能性が高い。

3ヶ月前に4-6月期の公的年金の4068億円の売越額は修正される可能性があると書いた。しかし、修正値は4516億円の売り越しと、小さい方向ではなく、大きい方向への修正であった。GPIFは4-6月期に1500億円の買い越しである。GPIFよりも株式組入比率の低い3共済が株を売り越していたとは考えられない。4-6月期の買い越しを売り越しと間違って推計しているので、7-9月期の買越額が過大推計になったものと考える。

保険は1651億円の買い越し。一方、東証統計の保険は92億円の売り越しである。その差は1743億円。これは、生保や簡保が信託を通して買い越した分であると思われる。この数字も日銀統計以外ではわからないので、日銀を信用するしかない。その場合は、先に指摘した年金計が過大推計と考えるのが妥当であると思う。

国内銀行は1146億円の売り越し。東証統計の銀行は337億円の売り越しであり、日銀の方が売越額が大きい。これは取引所外取引を通じた持ち合い解消売りがあったからだと思われる。日銀は銀行が2014年4-6月期から5四半期連続で株を買い越しと推計してきた。この過去の買い越しは信じられなかった。2015年7-9月期になってようやく東証統計よりも大幅な売り越しになった。持ち合い解消が進む銀行の実態に近づいたと思われる。

証券投資信託は5310億円の買い越し。これは東証統計の投信と全く同じ数字である。しかし、日銀が大量に購入しているETFを通じた現物株の買いが一部しか(最近ではゼロに近いはず)含まれていない。この不備は日銀自身も認めている。実際の投信の買越額は7-9月期に日銀が購入したETF8908億円、日銀以外が購入したETFも含めると、おそらく1兆円前後の過小推計になっていると思われる。

非法人金融企業は1兆3735億円の買い越し。この数字も東証統計の「事法+その他法人」の1兆5359億円の買い越しを参考にしているはずである。非金融法人企業の本当の数字は、東証の数字から取引所外取引を通じた持ち合い解消売りと自社株消却を差し引かなければならない。しかし、日銀はその数字を一部しか把握できていない。非法人金融企業が1兆3735億円の買い越しというのは過大推計であり、正確な数字は1兆円を大幅に下回っている可能性が高い。

家計は1兆2794億円の買い越し。この数字も東証統計の個人1兆2036億円の買い越しを参考にしているはずである。しかし、個人は一種の取引所外取引とも言える公募増資、売り出しを通じて株を買い越している。この公募増資等を含めた個人の株の買越額は日本証券業協会が推計している。その数字は1兆8767億円である。東証の数字よりも日証協の数字の方が正確性が高い。日銀の買越額の推計は過小推計である。日銀統計によれば、個人は長期にわたって大量に株を売り越してきたことになる。しかし、この日銀統計の個人による株の売越額は、どう考えても過大推計である。日証協の統計の存在を日銀が知らないことも一因である。

上記以外では、海外3兆9217億円の売り越し、証券会社(自己)4355億円の売り越しになっている。これらの数字は、東証統計の数字を参考にしながら、日銀が少しばかり修正を入れている。これは日銀を信じるしかないが、修正幅は小さいので重要性は低い。

以上のことを頭に入れておく必要がある。その上で日銀の資金循環統計による2015年7-9月期における投資部門別売買状況は、「事法(非金融法人企業)1兆3735億円の買い越し、個人(家計)1兆2794億円の買い越し、年金計(信託の一部)1兆2057億円の買い越しvs海外3兆9217億円の売り越しであった。この間、日経平均株価は3000円ほど下落している。株価下落局面ではよく見られるパターンと同じであった。


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テーマ : 経済
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