2015年1-3月期 日銀計 株 コメント

日銀 資金循環統計に基づく株式売買と株式保有残高はこちら

資金循環統計コメント表201503


日銀の資金循環統計から、株式投資部門別売買・保有残高の直近分を取り上げ、重要な箇所に色をつけて示した。

薄赤色の部分が、企業年金を中心とする「年金基金」と「公的年金」、および両者の合計である「年金計」を表す。2014年度に年金基金は売り越しであったが、公的年金は買い越しであり、年金計では買い越しであった。そのうち公的年金だけの数字を見ると、2014年度に2.7兆円の買い越し、2015年1-3月期に0.2兆円の買い越しである。年度を通してみると買い越し金額は大きめだが、その中心は10-12月期であり、1-3月期には買い越し金額が減少していることがわかる。GPIFを中心とする「クジラ」の買い越し金額は、この金額に近かった可能性が高い。

他に重要な箇所は水色で示した。これは、毎週、東証が発表する投資部門別売買状況の数字と、かなりの程度重なる。

2014年度に買い越し金額が比較的大きかった部門は銀行であり、1.3兆円の買い越しである。持ち合い解消を加速させようとしている時期での買い越しに、多くの人が違和感を感じると思う。私も、銀行のここまで大幅な買越金額は誤りと考えている。ストックベースで見た全体に占める銀行による株式保有比率は、資金循環統計では、2012年度末4.7%→2013年度末4.0%→2014年度末4.9%になっている。この数字が正しければ、銀行は2013年度に大量に株を売り越しており、2014年度に大量に株を買い越していなければならない。ところが、東証の株主分布状況調査によると、定義が少し異なるのであるが、銀行による株式保有比率は、2012年度末3.8%→2013年度末3.6%→2014年度末3.7%になっている。他に存在する統計も、資金循環統計ではなく、東証の株主分布状況調査の方が正しいことを示している。資金循環統計における銀行の推計された株式保有金額には計算違いがある。そのため、2013年度の売り越し金額は大きすぎであり、逆に2014年度の1.3兆円もの買い越し金額も大きすぎなのである。2014年度の東証の統計では、投資部門別売買状況での銀行は1500億円の売り越しであり、株主分布状況調査での銀行は小幅の買い越しを示唆している。取引所外取引の存在を考えると、2014年度の銀行は小幅の買い越しであったと考える。それでも、1.3兆円の買い越しという金額は、ケタが1つ違っている可能性が高い。

証券会社は2014年度に1兆円の買い越しになっている。この数字にも誤りがある。日銀はETFを2014年度に1.7兆円、2015年1-3月期に0.7兆円買い越している。日銀は自分が大量に買っているETFによる株の買いを投信の買いであると見なしていた。資金循環統計の投信の売買金額は、東証の投資部門別売買状況における投信の売買金額に等しい。そのため、私も日銀ETF買いは投信部門での買いと信じていた。

しかし、その考え方を5月にブログとツイッターを通じて発表すると、大変多くの反響をいただいた。そのため日銀に対して、日銀ETFの買いが本当に投信に含まれているのかどうかを確認した。日銀は東証に問い合わせた上で回答してくれた。その結果わかったことは、「日銀ETFによる株の買いのすべてが投信部門に含まれているものではなく、他の部門にも含まれている」ということであった。他の部門といっても、東証自身もほとんど把握できていないのであった。加えて日銀は、現在の体制では、日銀ETFによる株の買越金額がどの部門にいくらずつ計上されているのかを正確に調査することは不可能、とのことであった。これではあきらめるしかない。真相は不明である。

現時点では、その他の情報も総合して、暫定的に、ETFによる買いの一部は証券会社という自己に、一部は投信に含まれていると考えている。証券会社は、取引所内取引で買ったETF用の株を、取引所外取引でETF組成のために引き渡している。その時、証券会社が買った株の何割かが、証券会社による自己の買いと記録されている可能性が高い。

一方、東証の投資部門別売買状況の数字から、証券会社が「現物買い・先物売り」という裁定と裁定類似の現物株式の買越金額を増やしていることは間違いない。証券会社の2014年度1兆円の買い越しは、日銀を中心とするETFの買いと証券会社による裁定と裁定類似の買いの合計金額である。

投信は2014年度に5200億円の売り越しである。ETFが購入している株については、全額が投信に含まれていないことだけは明白になった。資金循環統計における投信は、投資部門別売買状況の投信とは異なり、取引所外取引や交換といった売買以外の取引も本来なら含まれていなければならない。ETFの設定、解約分を、正確に投信の売買に反映させたならば、売り越しではなく買い越しになっていた可能性が高い。

非金融法人企業は2014年度に900億円の売り越しである。うち民間非金融法人企業が5500億円の売り越し。公的非金融法人企業が4600億円の買い越し。公的非金融法人企業は、情報公開が不十分と批判される政府系企業なので、株式保有金額は1.5兆円と非常に少ないが、売買回転率だけは非常に高いという以上のことはわからない。より重要な点は、民間非金融法人企業、すなわち事法による5500億円の売り越しである。これは、持ち合い解消などの通常の売買に、「自社株買いマイナス自社株消却」の金額を加えた金額である。東証の統計では2014年度の事法の買い越し金額は1兆円である。これに信託方式など他の方法での自社株買いを加えるともっと大きな金額になる。2014年度に事法は1兆円以上の株を買い越していたはずである。ただ、買い越した以上に自社株償却をしているので、資金循環統計上は売り越しになっている。新株発行の場合は買い越し扱いになるので、自社株償却を売り越し扱いにするのは、正しい計上方法である。

2014年度は保険5900億円の売り越し、海外3.2兆円の買い越し、個人(家計)6.2兆円の売り越しである。東証の数字と多少は異なる。しかし、公募増資を始めとする様々な取引所外取引で、日銀が把握可能な分を修正した場合、このような金額になるのであろう。個人と保険に大きな間違いはないと思われる。海外は取引所外取引の金額が大きいので、正確な数字は見当がつかない。内部情報をある程度保有している日銀の数字を信用するしかない。

以上をまとめると、2014年度は「海外3.2兆円の買い越し、公的年金2.7兆円の買い越し、日銀ETF1.7兆円の買い越しvs個人6.2兆円の売り越し」であった。2015年1-3月期は「日銀ETF0.7兆円の買い越し、証券会社の裁定と裁定類似の売買で数千億円の買い越しvs個人1.4兆円の売り越し」であった。

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