2015年5月第3週 株 コメント

投資部門別売買状況 長期時系列表はこちら

投資部門別コメント週次20150528

週足株価201505-4Wブログ用


5月第3週の日経平均株価は前週末比531円高の20264円で引けた。この週は、サーベラスが西武の株を1050億円前後市場外(=取引所外)取引により機関投資家に売却したと報道されている。今までもこうした売買は存在していたが、規模が大きくなりつつある。こうした取引所外取引は今後も増えるであろう。東証の投資部門別売買状況を分析する者としては、統計の精度のさらなる低下につながり、ますますやりにくい状況に追いやられる。先週、詳しく説明したように、日銀ETF買いから発生する株の売買が投信か自己か区別がつかなくなり、すでに困った状況が発生していた。もう一つの頼りにできる日銀の資金循環統計は、こうした取引所外取引をある程度はカバーしている。しかし、漏れも増えている。日銀は、自分が大量に購入しているETFから発生する株の買いがどの部門に含まれているかが、正確にはわからない状況が続いている。しばらくはマンパワーの不足などにより把握不可能らしい。将来的には手間暇をかけても把握してもらいたいところであるが、どうなるかはわからない。

5月第3週に日本株を最も大きく買い越してきた主体は海外であった。現先合計で1兆0422億円の買い越し。うち現物で4376億円の買い越し。先物で6046億円の買い越し。うち日経平均ラージ先物で3528億円の買い越し。TOPIXラージ先物で1519億円の買い越し。5月第3週の日経平均ラージ先物の手口は、メリルリンチ7000枚、ABNクリア6000枚の買い越しが目立つ。ヘッジファンドの買いが中心であると推測する。同じ週のTOPIXラージ先物の手口は、クレディスイス11000枚買い越しが目立つ。普通なら、年金、投信、投資顧問を通じた長期性の資金の買いが中心と書くはずである。しかし、この週のクレディスイスの買い越しはショートカバーが中心なので、必ずしもそうとは言い切れない。この週の海外は、年金、投信からヘッジファンドまで様々な投資家が幅広く日本の現物株、先物を買い越していた可能性が高い。

自己は1158億円の買い越し。うち現物で2841億円の買い越し。先物で1683億円の売り越し。うちTOPIXラージ先物で1990億円の売り越し。5月第3週のTOPIXラージ先物の手口では、パリバの9000枚の売り越しが目立つ。金額に直すと1500億円前後。パリバのTOPIXラージ先物の売り越しは、自己の裁定類似の売買。パリバは自己で裁定類似のポジションを相当大規模に積み上げている。しかし、厳密な裁定ではないという解釈をして、東証には裁定売買として報告してはいない。この週は日銀のETF買いは361億円しか入っていない。仮にこれが全部自己で計上されていたとしても、それ以外の買いが1000億円近く入っている。モルガンスタンレーMUFGは、西武の株を1050億円分、取引所外取引で売買の仲介をした。一銘柄なので、売買ともに取引所外取引が可能であったと推測する。しかし、それ以外の株式バスケット売買の場合は、取引外取引で「海外投資家による現物、デリバのロングポジション」を外資系証券が自己で引き受け、取引所でそのポジションをカバーするための買いを入れている可能性が高いと推測する。この週の1000億円近い自己の買いも、実質的には海外の買いである可能性が高いと推測する。

事業法人は現先合計で470億円の買い越し。現物だけで492億円の買い越し。大部分は自社株買いによるものだと思われる。

信託は現先合計で112億円の買い越し。現物だけで636億円の売り越し。先物で748億円の買い越し。うちTOPIXラージ先物で426億円の買い越し。クジラは3月以降、ほとんど現物を買っていない。企業年金などのクジラ以外の投資家が継続的に売りを出す。TOPIXラージ先物はおそらく新規の買いであり、クジラをも含む投資家のヘッジ買いであると思われる。たとえこの全額がクジラであったとしても、TOPIXラージ先物426億円の買い越しは、本格的な買いの金額ではない。

投信の現物は65億円の売り越し。野村総研によると、国内株式型の投信は5月第3週に99億円の資金純流出になっている。この週は、日銀によるETF買いが361億円存在している。先に書いた通り、この売買が投信なのか自己なのかは謎のままである。

投信の先物は3515億円の売り越し。うち日経平均ラージ先物で3491億円の売り越し。日経平均ラージ先物の売り越しを枚数に直すと17286枚の売り越し。5月第3週に野村証券は日経平均ラージ先物を14000枚売り越し。何度も書いてきたように、昨年11月以降、野村アセットの私募投信が日経平均ラージ先物を大量に売り越してきた。最近は、そのショートポジションの買い戻しが続いていた。その同じ私募投信が、再び大規模な売りを出し、海外投資家による買いと激突した可能性が高い。5月第3週の終了時点におけるこの私募投信による日経平均ラージ先物のショートポジション残高は、6075億円前後であると推測する。

個人は現先合計で7294億円の売り越し。うち現物現金で5515億円の売り越し。信用で444億円の売り越し。先物で1335億円の売り越し。最も多くの金融資産を持つ高年齢富裕者層による現物現金は、大規模な売り越しが続く。この週は、時々買い越しになるスイングトレーダーも大きく利食い売りを実施していたようだ。

合計すると、海外の大規模買い越しvs個人、投信を中心とする国内投資家の大規模売り越し、という過去24年間株価が高値で大きく上昇した週に発生した現象とほとんど同じ現象が、5月第3週にも発生していた。



政府・日銀の犯罪的な政策について

日本企業の株というものは、日本国民にとっての大変貴重な財産である。それに対して政府・日銀が過去にとってきた政策は、1989年12月29日の高値38,915円から2009年3月10日の安値7,054円まで、19年強の期間、最大で82%も日経平均株価を下落させたことである。そして、国内投資家に、株価はもう上がらないという非常に強い予想、期待、確信と、株価が戻れば売らなければならないという非常に強固な信念を抱かせてしまった。そして、1991年以降、結果として取引所という流通市場だけで92兆円、発行市場も含めた国際収支ベースでは115兆円もの日本の現物株を国内投資家が海外投資家に安値で売り渡すことになってしまった。これは犯罪的とも言えるレベルの政策である。アベノミクス相場が始まってからも、国内投資家は取引所という流通市場だけで21兆円の現物株を海外投資家に売り渡しており、犯罪的な政策は是正されていない。

ここまで来てしまった以上、完全に手遅れであり、問題の解決策はもはや存在しない。可能なことは、損失のさらなる拡大をくい止めることだけである。そのためには、国内投資家が株を買い越すようになるまで金融緩和の強化を続けるしかない。2013年4月の異次元緩和は、あまりにも遅すぎであり、金額も少なすぎた。実施の翌週に、国内投資家が過去最高の金額の現物株を海外投資家に売り渡すという非常に大きなマイナス効果が現実のものになってしまった。2014年10月の第2弾の翌週も、国内投資家が海外投資家に現物先物合計で過去最高の金額を売り渡すという巨額のマイナス効果しかもたらさなかった。現在も効果がマイナスという状態が続いている。金融緩和を大幅に強化すれば、巨額の残高が存在する国債という運用先を失った国内投資家は、高値でも株を買わざるをえなくなる。この場合、国内投資家に、安く海外投資家へと売り渡した株をバブルに匹敵する高値で買い戻すように誘導することになる。実にバカバカしいことだ。しかし、これ以上海外投資家に株を売り渡せば、株価上昇と並行して増える損失がさらに拡大する。過去の政策があまりにも犯罪的すぎたので仕方がない。

過去における政府・日銀による犯罪的な政策が容認された結果、国内投資家は海外投資家に対して直近においても巨額の株を売り渡し続けている。それにもかかわらず、株式時価総額が過去最高という現象が現実のものになってしまった。この状況を異常と思わない人が多すぎることは、大問題である。



詳細は以下の記事もご覧ください。
株式市場のヒステリシス
株価上昇が引き起こす対外純資産の大幅な減少
過去最高に膨らんだ海外投資家による日本株買い越し
金融緩和に過去最高の売り越しで立ち向かう日本の株式投資家
アベノミクスがもたらした株価上昇による100兆円の損失

なお、日銀による金融緩和の強化の目的は、国内投資家に株を買わせること以上に、「国債発行残高=ゼロ」という真の意味での財政再建の実現が重要な目的であると考えています。
金融抑圧による財政再建 経済財政諮問会議資料における試算
不動産バブルの崩壊防止を通した財政再建策

テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

コメントの投稿

非公開コメント

全記事表示リンク
目次のページを表示

株式関連 株 コメント一覧

  • 投資部門別 現物先物 時系列表

  • 投資部門別売買状況 時系列グラフ

  • 6月第2週 株 コメント

  • 6月第1週 株 コメント

  • 5月第5週 株 コメント

  • 5月第4週 株 コメント

  • 5月第3週 株 コメント

  • 5月第2週 株 コメント

  • 5月第1週 株 コメント

  • 4月第4週 株 コメント

  • 4月第3週 株 コメント

  • 4月第2週 株 コメント

  • 4月第1週 株 コメント

  • 3月第5週 株 コメント

  • 3月第4週 株 コメント

  • 3月第3週 株 コメント

  • 3月第2週 株 コメント

  • 3月第1週 株 コメント

  • 2月第4週 株 コメント

  • 2016年 年間 株 コメント

  • 投資部門別売買状況アノマリー

  • 日本株 株式分布状況調査

  • 日銀資金循環統計 株 長期グラフ

  • 日銀資金循環統計 株 コメント

  • 株式先物投資部門別売買状況

  • 大手証券 先物建玉推移 グラフ

  • 海外投資家の株式買い越し金額

  • 世界の株価 国別 長期推移

  • 最新記事
    カテゴリ
    最新コメント
    Twitterを表示
    経済指標が意味するところを解説
    FC2カウンター
    最新トラックバック
    検索フォーム
    リンク
    ブロとも申請フォーム

    この人とブロともになる

    QRコード
    QR
    RSSリンクの表示
    Web Analytics