金融の量的緩和 過剰な効果が発生するか

金融の量的緩和を強化すると、過剰な効果が発生する、すなわち、ハイパーインフレ、あるいはバブルが発生するという理由で、金融の量的緩和に反対する意見も、結構存在する。

現在の日銀は、中長期的な物価安定の目途を、消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域、当面は1%を目途とする、という方針を決めている。従って、2%を超えるインフレが発生したり、ハイパーインフレ(前回示した、財政破綻を織り込む金利急上昇を原因とするものは除く)になったりする可能性は非常に低い。それにもかかわらず、ハイパーインフレを心配する人が多い理由は、下記の表から推察できる。


生活意識に関するアンケート調査

このように、生活者(全国20才以上の個人4000人を対象)の意識では、過去1年間で物価が上がったと実感している人は、45.8%、下がったと実感している人は、11.3%いる。45.8%の物価が上がったと実感している人の中では、物価上昇が好ましいと考えている人は、2.1%、困ったことと考えている人は、84.6%いる。そして、11.3%の物価が下がったと実感している人の中では、物価下落が好ましいと考えている人は、32.4%、困ったことと考えている人は、30.5%いる。この数値から、生活者全体では、物価上昇を好ましいと考えている人は、4.4%、困ったことと考えている人は、42.4%いる、と計算できる。物価上昇を困ったことと考えている人は、好ましいと考えている人の10倍近くもいる。物価についてのアンケートの質問内容が、現在の様式になったのは、2009年12月からであるが、その時から、調査結果は、大きくは変わっていない。大変乱暴にまとめてしまうと、普通の日本人は、インフレを嫌う人は、非常に多いのに対して、デフレを嫌う人は、非常に少ないのである。このような、普通の日本人の感覚を持った人から見ると、短期金利をほとんどゼロ近くに引き下げ、その上、金融の量的緩和などというものを実施して、デフレ脱却を目指し、インフレを引き起こすような政策は、好ましい政策とは感じられないのであろう。こうした人々にとって、デフレ脱却、リフレ政策というものは、1970年代前半の狂乱インフレを思い出させるような、許されざる政策なのかもしれない。

ただ、金融政策を担う日銀内部の人たちは、国民の多くが、インフレよりデフレを好んでいることを理解してはいるが、デフレは好ましいものではないという点では、かなり一致しているはずだ。金融の量的緩和がハイパーインフレを起こすと主張する人たちの多くは、経済を専門としていない、評論家、政治家などに多いと思われる。

一方、金融の量的緩和がバブルを引き起こす、と考えている人は、日銀の白川総裁を始めとして、経済の専門家と呼ばれる人たちの中にも、かなり多く存在する。消費者物価の上昇率を前年同月比で0%-2%の間に誘導することに成功しても、地価や株価などの資産価格が大きく上昇することを、大変警戒しているようだ。1980年代後半のコールレートは、最低の時ですら、3%を上回っていたが、巨大なバブルが発生した。現在のコールレートは、0.1%を下回っている。現在のような低金利政策を続け、その上、金融の量的緩和を強化したならば、バブルにつながる可能性は、否定できない、と考えているようだ。

しかし、2012年の公示地価は、1991年のバブルのピークから、57.4%下落(公示地価全国全用途平均)しており、いまだに下げ止まっていない。株価も、TOPIXで見れば、1989年12月18日のビーク2884.8から、2012年の6月4日のボトム695.51までに、74.1%下落した後、現在、若干反発した位置にある。何か悪材料が出れば、バブル崩壊後のボトムをさらに下回る可能性も残っている。現在の日本の地価、株価は、消費者物価指数よりも、さらに激しいデフレの最中にある。このような時期に、バブルを心配するのは、全くの杞憂である。地価、株価が、ある程度上昇のトレンドが定着した後になってから、バブルの心配をすべきである。

私は、金融の量的緩和が、バブルを発生させるならば、それは大変好ましいことであると考える。バブルが発生し始めたら、金融政策では無く、財政政策でバブルを抑制すべきである。地価税を復活させ、税率を引き上げたり、範囲を拡大すれば良い。株式譲渡益に対するキャピタルゲイン課税も、どんどん引き上げていけば良い。こうした資産課税の大幅な引き上げにより、バブルが崩壊するほど大きく膨張することを防ぎ、財政再建も同時に容易になる。バブルに対して、誤った政策で対応すれば、バブルが膨張し、崩壊し、その後、とんでもない苦痛を味わうことになる。しかしバブルに対して正しい政策で望めば、バブルは、崩壊するほど膨張することなく、経済成長と税収の大幅増加を可能にしてくれる。日銀がバブルを作り上げ、政府が増税によりバブルを徹底的に押さえ込む政策を採る、このような政策協定を、政府・日銀の間で締結したらどうであろうか。そうすれば、バブル崩壊の責任は、日銀ではなく、政府が全面的に負うことになる。日銀は、バブルの発生を気にすることなく、思い切った金融の量的緩和を実施することが可能となる。その結果、日本経済は成長し、財政再建も容易になると思う。

テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

コメントの投稿

非公開コメント

【日本の解き方】白川日銀総裁は“デフレ・円高大魔王” - 経済・マネー - ZAKZAK―【私の論評】財政ばかりでなく、金融政策にも目を向けよ!!

こんにちは。イングランド銀行による大量増刷の直後ハイパーインフレ論者は、付加価値税の増加によっても、インフレが収束しないことを事例として、増刷はインフレを招くと主張してはばかりませんでした。しかし、最近では、インフレが収束して、ハイパーインフレ論者の主張は、間違いであることがはっきりしました。ハイパーインフレ論者は、なぜ現実を真摯に受け止めようとしないのか、不思議です。

日銀は、リーマン・ショックの時も、他国が大幅に増刷したにもかかわらず、増刷拒否の姿勢を崩さず、さらなるデフレを招き日本は世界で一人負け状態になりました、最近では、3.11の後で、復興のための円需要が高まったにもかかわらず、増刷拒否の姿勢を崩さず、そのためさらなる急激な円高を招いていました。それに、最近1%のインフレ目処を打ち出しましたが、目標達成は平成14年度どあるとし、ことあるごとに、追加緩和措置など打ち切り、あいかわらず、増刷拒否の姿勢を崩しません。このようなことは、暗に中央銀行の役割りを果たさないと宣言しているようなものです。まるで外国の中央銀行の手先であるかのような、日銀。日銀の爆走は、何がなんでも阻止しなければなりません。白川征伐と、日銀征伐は、日本のデフレを克服するために、喫緊の課題です。詳細は、是非私のブログを御覧になってください。
全記事表示リンク
目次のページを表示

株式関連 株 コメント一覧

  • 投資部門別 現物先物 時系列表

  • 投資部門別売買状況 時系列グラフ

  • 6月第2週 株 コメント

  • 6月第1週 株 コメント

  • 5月第5週 株 コメント

  • 5月第4週 株 コメント

  • 5月第3週 株 コメント

  • 5月第2週 株 コメント

  • 5月第1週 株 コメント

  • 4月第4週 株 コメント

  • 4月第3週 株 コメント

  • 4月第2週 株 コメント

  • 4月第1週 株 コメント

  • 3月第5週 株 コメント

  • 3月第4週 株 コメント

  • 3月第3週 株 コメント

  • 3月第2週 株 コメント

  • 3月第1週 株 コメント

  • 2月第4週 株 コメント

  • 2016年 年間 株 コメント

  • 投資部門別売買状況アノマリー

  • 日本株 株式分布状況調査

  • 日銀資金循環統計 株 長期グラフ

  • 日銀資金循環統計 株 コメント

  • 株式先物投資部門別売買状況

  • 大手証券 先物建玉推移 グラフ

  • 海外投資家の株式買い越し金額

  • 世界の株価 国別 長期推移

  • 世界の住宅用不動産価格

  • 長期の実質実質為替レート

  • 最新記事
    カテゴリ
    最新コメント
    Twitterを表示
    経済指標が意味するところを解説
    FC2カウンター
    最新トラックバック
    検索フォーム
    リンク
    ブロとも申請フォーム

    この人とブロともになる

    QRコード
    QR
    RSSリンクの表示
    Web Analytics