ISバランス論(貯蓄投資バランス論)の意義と限界

マクロ経済学で最初に学ぶ理論の一つとして、ISバランス論(貯蓄投資バランス論)というものがある。今回は、このISバランス論を批判することにより、従来から繰り返し述べている海外への資金流出拡大=経常収支の黒字拡大と考えることが望ましいことを説明する。そして、金融緩和の強化は、国によってはデメリットの方が大きい国も存在する。しかし、日本の場合はメリットの方が大きいので、早急に金融緩和の強化を実施に移す必要があるという結論で終わることにする。

ISバランス論(貯蓄投資バランス論)は初級者向けのマクロ経済学の教科書に出てくる基本理論である。GDP(国内総生産)、GNP(国民総生産)ないしはGNI(国民総所得)をYとし、消費をC、投資をI、政府支出をG、輸出をEX、輸入をIMとする。すると、Yは次のような恒等式で表わされる。

Y=C+I+G+(EX-IM)

ここで、税金をTとして上記の式を変形すると

(Y-T-C)+(T-G)-I=EX-IM

となる。(Y-T-C)は貯蓄であり、これをSとおいて、この式をもう一度変形すると

(S-I)=(G-T)+(EX-IM)・・・A式と表す
貯蓄投資差額=財政収支+経常収支
   ↑
(民間部門)       ↑
(YがGDPの時は貿易・サービス収支)

A式は初級のマクロ経済学の教科書に掲載されている式である。

この式は重要な式であり、知っておく必要がある式である。注意書きとして、恒等式であるが、因果関係を示す式ではないとも普通は書かれている。しかし、大きな問題点を含む式でもある。重要な式だとは思うが、同時に、正確に使うことが不可能な式でもある。理論としては正しいが、統計上、成立することを確認することができない式でもあるのだ。実際の国民経済計算で成立する式は、A式ではなく、下記のB式である。

B式
(S-I)=(G-T)+(EX-IM)+資本移転等収支+統計上の不突合
貯蓄投資差額=財政収支+経常収支+資本移転等収支+統計上の不突合

統計上の不突合は、統計上は存在しても、理論的には存在しない。統計上の不突合はやむをえないものである。しかし、それよりももっと大きな問題が存在する。YがGDPである場合は、理論的には(EX-IM)は経常収支ではなく、貿易・サービス収支となる。しかし、国民経済計算の統計からその具体的な数字を示すことはできない。そのため、YがGDPではなく、GNPまたはGNIとするケースが多い。その場合、理論的には(EX-IM)は経常収支となる。ところが、YがGNP、GNIの場合でも、具体的な数字を示すことはできない。国民経済計算では、(EX-IM)は経常収支ではなく、「経常収支+資本移転等収支」であるからだ。少し前までは「経常収支+その他資本収支」であった。「資本移転等収支」、「その他資本収支」は経済学の初級者には難しすぎる。そのため、実際の統計上の数字を使って説明する場合、「経常収支+資本移転等収支」を単に経常収支と言い換えることが多い。

A式は経済学の初歩とされているが、実際には正確に使うことができない式でもある。理論的には、(EX―IM)は貿易・サービス収支か経常収支でなければならない。しかし、実際の国民経済計算では、貿易・サービス収支も経常収支も使うことができない。「経常収支+資本移転等収支+統計上の不突合」、または「経常収支+資本移転等収支」というややこしい言葉で示される数字を使わなければならない。

経済現象は複雑であり、正しく説明すると、経済学の初級者には理解できないことが多い。初級者のためには単純化、より正確にはゴマカシが必要である。ゴマカシのない正確性の高い内容は、あまりにも複雑すぎて初級者に理解できるものではない。ただ、ゴマカシの仕方が気に入らない。正確な理解を広めるためのゴマカシは必要である。しかしこのゴマカシは、誤解を広めるようなゴマカシになっているからだ。別のゴマカシの仕方がより望ましいと考える。そのため、A式は経済学の初級の教科書に掲載すべきではない。

初級の教科書に掲載するのであれば、日銀の資金循環統計の資金過不足の方を使うべきである。項目の定義などが異なるので、資金循環統計の資金過不足の数字と国民経済計算で示されているもう一つの資金過不足の数字とは同じではない。しかし、国民経済計算の資金過不足の数字は、日銀の資金循環統計をベースにして再編成されているのである。国民経済計算は年1回発表で、発表される時期も遅い。日銀の資金循環統計は年に4回発表されており、速報性もある。そのため、日銀の資金循環統計が実際の経済分析では使われるケースが多い。日銀の資金循環統計で示される資金過不足(=貯蓄投資バランス)のグラフを下記に示す。

資金過不足6部門

金融機関、非金融法人企業、一般政府、家計、対家計民間非営利団体、海外の6部門の資金過不足の合計=0・・・C式と表す

C式は、A式というマクロ経済学の基本式とはアプローチが全く異なっている。しかし、実際によく使われるのは、A式ではなく、C式の方である。A式では3部門にしか分かれていないが、C式は6部門に分かれている。

そこで6部門に分かれているC式を3部門にまとめてみる。すなわち、金融機関、非金融法人企業、家計、対家計民間非営利団体の4つを1つにまとめる。これを民間と表すことにする。そのグラフを下記に示す。


資金過不足3部門

民間、一般政府、海外の3部門の資金過不足の合計=0

上記の式がA式で示したISバランス(貯蓄投資バランス)に相当する式である。理論という点では意味合いが異なるのであるが、定義を完全にそろえた場合、結果は同じ数字にならなければならない。しかし、アプローチ、すなわち算出方法が全く異なっているため、定義を完全にそろえても、統計上の不突合が積もる結果、両方の数字が一致することはない。ちなみに、日銀の資金循環統計には統計上の不突合が多いのであるが、巧みに隠すことにより、統計上の不突合が表面上は存在しない統計になっている。

この統計の民間と一般政府を国内という部門に統合したグラフを下記に示す。


資金過不足2部門

国内+海外=0

上記の式をもう少し具体的に表現すると、下記のようになる。

国内の資金過不足=海外との資金流出入

私が重要な式だと考えている式が、上記の式である。私は、初級のマクロ経済学の教科書で上記の2部門モデルを最初に教えるべきだと思う。その後、上級に進むにつれて、6部門モデル、3部門モデルへと拡張していけばよい。最初に3部門モデルから入るのは、理論的には正しい。しかし、実際の統計上には正確な数字が存在しないので、正確に理解することも難しくなってしまう。一番シンプルな2部門モデルを最初にマスターすべきである。

国際収支統計の場合、下記の式も恒等式として成立する。

経常収支+資本移転等収支+誤差脱漏=金融収支

誤差脱漏は、統計上必ず発生するが、理論上は存在しない。従って、理論的には、

経常収支+資本移転等収支=金融収支

が成立する。ここで初めて、ゴマカシ、すなわち単純化をするのである。「経常収支+資本移転等収支」を単に「経常収支」と表示する。

経常収支=金融収支

が成立することにする。先に、

国内の資金過不足=海外との資金流出入

が成立すると書いた。この上記の二式は同じものである。つまり、

経常収支=金融収支=国内の資金過不足=海外との資金流出入

である。この恒等式を事後的には必ず成立する式として頭に入れると、正しい理解がしやすくなる。さらに具体的な説明として、

経常収支の黒字=金融収支の黒字=国内の資金余剰=海外への資金流出

といった式まで示せばよい。それならば、海外への資金流出拡大が発生すると、同時に経常収支も改善することがだれでも理解することができる。経済学を少しでも学んだことのある人には、経常収支を改善させたいならば、海外への資金流出拡大をめざすことが当然と受け止められるようになる。

ところが日本では、海外への資金流出拡大が発生すると、経常収支が改善するのではなく、金利の急上昇が発生して財政破綻、国家破綻へとつながるということが当然のごとく語られることがある。この現象は世界においては、過去にいくつもの国で実際に発生したことがある現象である。しかし、現在の日本では発生することはありえない。海外への資金流出拡大が金利の急上昇につながったトルコを例にして、日本との違いを説明する。

海外への資金流出拡大=経常収支の改善は、日本であろうと、トルコであろうと、世界中の国において、事後的には必ず成立する。この「事後的には」という言葉の中に、世界の経済現象の多様性が含まれている。「事前的には」成立しないのである。事前的な不成立から事後的な成立へと変化する間に、経済環境が急激に好転することもあり、反対に悪化することもある。トルコでも海外への資金流出拡大が発生すると、必ず経常収支は改善に向かう。Jカーブ効果のような時間差もなく、同時である。しかし、経常収支の改善が進行する過程で、経常収支以外の経済現象で悪化する点がいくつもある。そのためトルコの場合、経常収支の改善をめざさないで、経常収支の改善に等しい海外への資金流出拡大を防ごうとした時期もあるのだ。

トルコでは、経常収支が改善する過程で、悲惨な状況が発生する可能性がある。理由は、海外への資金流出拡大が発生すると、トルコリラのレートが下落する。一方、トルコ経済の供給サイドはあまり強くないので、トルコリラが下落しても、輸出は少ししか増えない。この場合、経常収支が改善するためには、トルコリラが急落する必要がある。そうすれば、輸入品の価格が高騰し、輸入金額が大きく減少する。トルコリラが急落した結果、輸出が少し増え、輸入が大幅に減少し、その結果、経常収支は改善する。この過程で、トルコ国民は、輸入品の価格が急激に上昇し、輸入品を買うことができなくなってしまう。そのため輸入が大きく減少し、経常収支が改善するのであるが、トルコの消費者は、高い輸入品が買えなくなることにより生活水準が大きく低下してしまう。

加えて、トルコはドルやユーロ建ての対外純債務を大量に保有している。トルコリラの価値が急落すると、トルコリラ建ての実質的な対外純債務の価値が急激に拡大してしまう。トルコから海外への資金流出拡大が発生すると、トルコリラの価値の急落により、トルコ国民の生活水準の急激な低下と、実質的な対外純債務の急激な拡大が発生してしまう。これが市場原理である。しかし、市場原理をそのまま通用させると、国民の生活水準が急激に低下し、対外債務の返済も困難になる。トルコ国民は政府を攻撃し、暴動が発生したり、政権が転覆されてしまう可能性が出てくる。そのため、市場原理に従ってトルコリラの急落が発生してしまうことを、トルコ政府は容認できないのである。

2013年5月に当時のバーナンキFRB議長がテーパリングの開始を示唆すると、海外への資金流出拡大とトルコリラの下落が発生した。トルコは、トルコリラの下落を阻止するために、最初は外貨売り、トルコリラ買いという為替介入で対応した。そして、2014年1月には政策金利(1週間物レポ金利)を4.5%から10%へと大幅に引き上げるトルコリラ防衛策が発表された。介入も利上げも一時的には効果があったが、現在もトルコリラ安は続いている。今後、トルコに債権を持つ海外の投資家は、価値が下落するトルコリラ建ての債権だけではなく、トルコに対するドル建て、ユーロ建ての債権もいち早く回収しようとすることになるかもしれない。そうなるとトルコリラは今後さらに急落し、介入する外貨準備も尽きるかもしれない。借金の返済も不可能になってしまう。この現象を通貨危機という。この場合、IMFが介入し、トルコに外貨を供給する見返りに、緊縮財政などを要求し、輸入を減らすことを強要される。当然、国民の生活水準も大きく低下する。通貨危機が起こるのは、こうしたパターンが一番多い。現時点で、トルコでは通貨危機にまでは発展していない。しかし、将来、通貨危機が発生するというウワサが現在でも存在する国の一つである。

もう1つの例として、20年前の日本を例にあげてみる。20年前の日本の場合、海外への資金流出拡大が発生すると、ある程度の円安が進行する。20年前の日本経済の供給サイドは現在と違って強力であった。この場合、ある程度の円安が進行すると、日本製品の競争力は拡大し、輸出が拡大する。経常収支は海外への資金流出拡大金額と同額だけ同時に拡大する。海外への資金流出拡大が発生した場合、経常収支の黒字拡大の結果、日本のGDPも上昇する。

現在の日本はどうであろうか。20年前の日本と現在のトルコの中間であるが、20年前の日本の方がまだ近い。過去20年間、日本経済の供給サイドは大きく弱体化したが、現在のトルコよりは強力である。2012年11月に円安が始まった直後の2013年1月のダボス会議で、ドイツを中心にしていくつかの国が「為替操作」、「通貨戦争の仕掛け人」との非難を日本に浴びせてきた。この時、ドイツが見ていたのは、20年前の強い日本経済であったのだ。円高が修正されると、たちまち輸出が増え、経常収支が改善する。日本の経常収支の改善は、日本以外の国の経常収支の悪化につながる。その中には日本と競合する製品を作っているドイツも含まれる。そのため、ドイツは日本に「為替操作」という非難を浴びせてきたのである。

しかし2013年の日本は1993年の日本から大きく変身していた。超円高とアジア諸国のライバル企業の成長により、円安がすぐに輸出拡大と経常収支の改善にはつながらなかった。過去20年の間に日本経済の供給サイドは弱体化し、トルコのような弱い経済の供給サイドを持つ国へと近づいていたのである。ただ重要な点は、2012年11月以降、円安は進行したが、海外への資金流出拡大は発生しなかったことである。海外投資家による猛烈な日本株買いなどのために、海外への資金流出は縮小し、一時は資金流入超過に転落していたのである。経常収支が一時赤字になった月もあるが、これは海外からの資金流入超過が一時的に発生していたことを示す。資本移転等収支、誤差脱漏が存在するため、金融収支はより大規模な資金流入超過が発生していたことを示している。

20年前とは異なり、日本は円安の結果、輸出はすぐに増えなくなっていた。そのこともあり、2014年の秋頃から、円安デメリット論、円安亡国論が急速に台頭した。仮に日本経済の供給サイドが現在のトルコ並にまで弱体化していたならば、より急速な円安進行により、もっと早い段階で円安亡国論が噴出していたかもしれない。

しかし、日本経済は、20年前よりは大きく弱体化していたが、まだそれなりの潜在能力を残していたのである。円安デメリット論が噴出する少し前から日本の経常収支、貿易収支は改善し始めていた。その後、急激な原油安の恩恵も重なり、国際収支ベースでの季節調整済の貿易収支は1月に黒字化した。3月には通関ベースでの季節調整前の貿易収支、季節調整済の貿易収支も黒字化した。時間はかかったが、円安の影響で、日本経済の供給サイドは少しずつ強化されていたのである。より重要な点は、最近は、海外への資金流出拡大=金融収支の黒字拡大が同時に発生しているのである。だからこそ、貿易収支、経常収支が同時に著しく改善しているのである。

もう一つトルコと日本の決定的に重要な相違点は、日本が世界最大の対外純資産国であるということだ。急激な円安が発生すると、対外純債務が急激に拡大するのではなく、対外純資産が急激に拡大する。現在の円安は、日本に巨額の利益をもたらす。日本の対外純資産は2011年末265兆円(財務省確報値)→2014年末377兆円(財務省推計値)と実際に急激に拡大している。

このように、トルコとは異なり、現在の日本では、海外への資金流出拡大→金利の急上昇は発生しえないのである。現在の日本は、現在のトルコとは全く異なった国である。20年前ほどは強くはないが、3年前よりは強くなった経済の供給サイドを持つ国へと変化しているのである。日本経済がいかなる状況にあろうとも、日本から海外への資金流出拡大は、必ず同時に経常収支の黒字拡大を伴う。問題は、その際発生する円安が、急激か緩やかかのどちらかであるかだ。急激な円安が進むのであれば、輸入物価は大幅に上昇し、国民の生活が圧迫される。ただし、日本経済の供給サイドは過去2年半近い円安の結果、多少は強化されている。今後は、海外への資金流出拡大により多少の円安が進むことはあっても、急激なものにはなりにくい。急激な円安が発生する前に経常収支の黒字が拡大するはずであるからだ。円安を伴う日本の海外への資金流出拡大は、輸出拡大と経常収支の黒字拡大が必ず並行して発生するため、金利を急上昇させて円の急落を防ぐ必要性が発生することはありえない。

一方、日本は完全雇用の状態にあるため、輸出=生産を増やすのは不可能、という意見も存在する。しかしそれとは反対に、製造業は雇用吸収能力がないので輸出振興は意味がない、という意見も存在する。真理はその中間である。製造業は生産性の上昇率が高いため、雇用は少ししか増えず、賃金の上昇率が低い間は、雇用の少しばかりの拡大は可能なのである。

ただし、現在の日銀は量的緩和の出口戦略を語らない。そのため、出口をしくじると、ある程度の速度の金利の上昇は発生する。この場合、海外への資金流出拡大が発生し、円安が進行することは、起こるとは限らないが、起こることはありうる。それでも、海外への資金流出拡大金額とほぼ同金額の経常収支の黒字拡大を必ず伴うことになる。

経常収支=金融収支=国内の資金過不足=海外との資金流出入は経済学の初級者向けの教科書に書かれるべき恒等式である。統計上の定義から導き出される恒等式であるが、経済を正しく理解するためには重要な式であるからだ。日銀の国債購入金額の拡大による、国内の資金余剰の拡大=海外への資金流出拡大=金融収支の黒字拡大=経常収支の黒字拡大は、日本にとって破綻ではなく、大変大きな恩恵をもたらす。最近、何度も書いているように(*1など)、日銀による国債購入金額の拡大は、国債発行残高ゼロという本物の財政再建を実現するためには必要な政策である。経済の供給サイドがある程度の力を回復し、国債発行残高がゼロへと向かう途中においては、金利の急上昇が発生することはありえない。しかし、「為替操作」、「一国繁栄型の近隣窮乏化政策」という非難を海外から浴びることは間違いない。こうした制約は存在するが、国際政治上許されるギリギリの線まで、日銀による国債購入金額を拡大させることは、必要不可欠なのである。


リンク先記事
金融抑圧による財政再建 経済財政諮問会議資料における試算(*1)

テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

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おかしな経済論説は意図的では

勉強になります。
 しかし、ここに書いてあるようなことは分かっていて、デマが流布され、金融緩和抑制策が取られているような気がします。

 財務官僚の金融緩和抑制指向は、景気低迷、税収低迷、財政悪化で増税を推進するためのものでしょうか。
 景気低迷だと財政支出も増やしやすいから、出と入りの両方で財務官僚の支配力が強まりますね。
 景気低迷は官僚の省益にはプラスなのでしょう(労働運動が活発化するので、労組の利益にもプラス) 

 オイルショック以降の日本の金融緩和抑制傾向は、経済問題とうより政治問題かも知れません。
  景気低迷が利益になる官僚に政治を丸投げするようになって(角栄以降=オイルショック以降)、金融緩和抑制が常態化したと思えます。

財務官僚の自滅

真相はわかりませんが、感覚的には私はあなたとは正反対の意見を持っています。

私の目には、財務官僚は増税と歳出削減による財政再建のために、大変努力してきたように見えます。しかし、実際に起こったことは財務官僚の意図と正反対、すなわち国債発行残高の累積です。彼らはモノと資産のデフレが税収を減らす影響を過小評価してきました。金融緩和のおくれが、どれほど破壊的な結末になるかを予想していたのではなく、予想できなかったと考えています。

そして、現在もなお、財務官僚は誤った自滅路線へと向かおうとしています。プライマリーバランスの黒字化という誤った目標を掲げ続けています。

下記の記事をご覧ください。
http://stockbondcurrency.blog.fc2.com/blog-entry-164.html

利益相反の官僚に金融政策を丸投げしてるのが間違い

 自分は国民多数と同様、財務官僚を好意的に見なくても良い立場にあるので、事実だけみて、何が国民益(=持続的な個人益)に即すかを考えています。

  事実としてあるのは、1)金融政策の主導権は財務省が取り続けてきたこと、2)財務省は抑制的な金融政策(景気抑制策)を取り続けてきたこと、3)実際に景気低迷・円高・空洞化・財政悪化が進んだこと、4)景気低迷により景気対策・地方対策・社会保障の支出が拡大してきたこと、5)増税に進まざるを得なくなってきこと、、です。

 結果的に財務省の失策で国民益が損なわれてきたわけで、それなのに今もなお、財務省主導の金融政策、景気抑制策が取られてるのは、危険ではないでしょうか?

 しかも、上記1)~5)の事象は、財務省の省益には整合してます。
 で、おそらく、役所内の出世競争の激しさから、財務官僚の省益追求行為(結果的に反国民益の金融政策)は今後も止められないでしょう

、、、以上がらすれば、金融政策は政治主導(国民が選んだ政治家主導)がベター、となるのでは?
  過去の歴史を見ても、官僚主導の金融政策は、デフレやハイパーインフレになりがちですよね(官僚の生活は景気に左右されないせい?)

 政治家は景気を適度に上げないと選挙に不利になるし、国民が直接、選挙でコントロール出来るので、政治家に任せたほうがおかしな金融政策は続けにくいと思うのです

今は異次元緩和でしょうか?

 巨大経済国の隣国・中国が通貨安政策を続けている現在では、それに負けないだけの巨大緩和をしないと、日本国内の景気を中立化できないし、経済の空洞化も止められないと思います。
 
 景気が中立化出来なければ、財政支出は増え、税収は伸び悩み、増税、景気悪化、、の悪循環に陥ります。

 パラダイムが変わった現在において、過去対比で異次元云々というのは無意味と思います。
 現在の景気中立化に必要な緩和規模は、決して異次元ではなく、適正緩和でしょうね

 黒田日銀がそれを指向してないのは、増税での物価上昇、景気低迷を円安(=金融緩和)に責任転嫁してる点、コアインフレ率を再度0%に落とす不作為をやってる点で明らかではないでしょうか?

 

国債発行残高ゼロよりも国民負担率の低下が重要では?

 国債発行ゼロはあまり意味がある目標とは思えません。
 債務の対極には資産もあるわけで、債務での資金調達が合理的ならば、そうすべきだからです。

 それよりも、「持続的な国民益増大」にとって重要なのは、国民負担率(GDPベース)の縮小=公的経済比率の縮小、ではないでしょうか?

 それは、市場原理が働かない公的部門経由の資金循環を極力減らすことが、最適資源配分につながり、経済成長率の向上につながるからです。

 これは金融政策でなく、成長政策の話になりますが、、。

財務省OBはハト派、日銀生え抜きはタカ派

繰り返しますが、真相はわかりません。

今の黒田日銀総裁は確かに財務省OBです。しかし、歴代の日銀総裁の中では最もハト派です。

前総裁の白川氏は、昔から日銀内でインフレタカ派で有名でした。それ以前の総裁である福井氏、速水氏もややタカ派、三重野氏はタカ派でこの3名は日銀生え抜きです。大蔵省OBの松下氏は中立派、同じく大蔵省OBの澄田氏はハト派でバブル発生の戦犯と見なされています。

過去の日銀総裁は、大蔵、財務省のOBはタカ派ではなく、日銀生え抜きはタカ派が多いです。三重野氏は、橋本大蔵大臣の許可なく公定歩合を引き上げて、取り消しをさせられたり、自民党の金丸氏に解任の脅迫を受けながらも、タカ派を維持してきました。こうした日銀生え抜きのタカ派総裁たちが、大蔵、財務官僚の言いなりであったとはとても思えません。

黒田総裁でも十分タカ派

 黒田総裁の言動、行動とインフレ率推移を見ると、とてもハト派とは言えないのでは?
 インフレ率0%の金融政策は十分タカですよね
 アベノミクス初期以外はほとんど動いていません。
 その行動からすれば、本意はやはり景気抑制にあると見るのが自然でしょう。
 安倍政権の圧力でタカ派度合いを若干緩和させただけ、、、

 景気中立化を維持するのがインフレ目標政策でしょうから、本来、ハトでもタカでも総裁不適格ですよね。

黒田氏は白川氏よりマシな総裁

私も金融緩和の強化を繰り返し唱え続けています。

それでも、財務省出身の黒田氏が日銀生え抜きの白川氏よりはるかにハト派である点は評価しています。バズーカ砲2発がなければ、現在は1997年型のデフレ不況に陥っていたはずです。

歴代の総裁の行動を見る限り、財務省OBよりも、日銀生え抜きの方がタカ派色が強かったことは間違いありません。

日銀の最大の使命は、インフレとバブルの抑制であり、その結果経済が悪化しても、インフレとバブルにつながる可能性のある金融緩和は最小限にする、といった日銀生え抜き総裁の極端なタカ派的思考が、日本経済を無茶苦茶にした最大の戦犯だと思います。

財務省OBが総裁である期間がもっと長かったと仮定したならば、日本経済の失われた25年の打撃は、少しは小さかったと思います。
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