日銀ウォッチャー報告(2014年12月号)

マネタリーベース平残の推移201412(グラフ)

2014年11月の季節調整済のマネタリーベース平残は、前月比で12兆円増加し、268.6兆円になった。

マネタリーベース平残の推移201412(表)


上記のグラフに示したとおり、季節調整済のマネタリーベース平残は、2012年12月の白川体制の末期から増加基調が明確になった。その後は、ほぼ高水準の増加率が続いている。11月は、10月に続いて前月比4%超というかなり大幅な増加率となった。

11月の市中資金は、16.4兆円の不足であった。そこに、国債の購入10.7兆円、短期国債の購入8.8兆円、共通担保オペの0.8兆円の回収などを中心とした金融調節により、合計19兆円の資金が供給された。金融調節後の市中資金は、3.6兆円の資金余剰となった。この資金余剰を反映して、当座預金残高は、10月末の167.7兆円から、11月末の170.3兆円へ、2.6兆円の増加となった。この当座預金残高の変動を反映して、11月の季節調整済のマネタリーベース平残は、前月比12兆円増加の268.6兆円になった。当座預金残高と季節調整済のマネタリーベース平残の増加に差がある理由は、11月のマネタリーベースは減少しやすいという季節要因があるためである。


日銀BSとMB(実績と予想)201412

上記の表に示したように、今年11月末までの過去12ヶ月間に、国債の残高は56.5兆円、マネタリーベース残高は71兆円の増加となっている。年間目標は、国債とマネタリーベースを80兆円増やすことである。10月31日に決めたばかりの目標なので、年内の達成は無理である。来年の早い時期に、80兆円まで増やすことになるであろう。

今年の年末時点におけるマネタリーベースの予定残高は、275兆円である。従って、12月1ヶ月間で、マネタリーベース末残を12.3兆円増加させることが必要である。

12月の市中資金は、7.3兆円の不足となる。12月の資金供給は、国債の購入が9兆円と想定する。上記の表にあるとおり、1ヶ月間に必要な純増額3.4兆円、プラス償還予定額4.9兆円、合計8.3兆円が最低必要金額であり、それを少し上回る金額になると考える。短期国債の購入は8兆円と想定する。償還予定額が8.6兆円あるので、それを少し下回る金額と考える。共通担保オペの回収額は0.5兆円と想定する。貸出支援基金による貸し出しは2兆円と想定する。貸出支援基金の中の成長基盤強化支援資金供給は、残高ベースでは0.6兆円の減少になることが11月中に決まっている。貸出増加支援資金供給の金額はまだ決まっていないが、9月並の2.6兆円と想定する。そこから成長基盤強化支援資金供給の純減0.6兆円を差し引いて、貸出支援基金による貸し出しは2兆円という数字を算出した。この結果、12月の資金供給は、「9兆円+8兆円-0.5兆円+2兆円」となり、合計で18.5兆円となる。その他、12月は銀行券の発行が5.6兆円と日銀は予想している。12月末のマネタリーベース末残は、「18.5兆円+5.6兆円-7.3兆円」に等しい前月比16.8兆円の増加と予想する。マネタリーベースの年末の残高は279.5兆円となり、目標の275兆円を少し上回ると予想する。季節調整済のマネタリーベース平残の増加額は、前月比16.8兆円を大幅に下回り、前月比微増になると予想する。

黒田日銀総裁が、金融政策の最大の目標であると考えている、消費者物価の動向を示す。


CPI201412.gif

コアCPI201412

コアコアCPI201412

上記の真ん中にあるコア物価の上昇率は、このところ低下している。10月の全国コア物価の上昇率は、前年比2.9%増となり、消費税増税分を除くと、0.9%増と、1%割れになった。黒田総裁は、1%を割ることはないと断言していたのが、1%を割ってしまった。10月31日の金融緩和の強化は、こうした2%のインフレ目標への道に逆行する動きが予想以上に大きくなりそうなことがわかったため、急遽金融緩和の強化を実施したわけである。

上記には全部で6種類の物価をグラフに掲載している。生鮮食品の価格は乱高下するので、それを除いたコア物価を見るのが一番適当である。しかし、よく見ると、上記の6つのグラフの大半は、今年の半ばから下落の方向にある。これは、円安要因が消滅しつつあるからだ。9月から再び円安が進行し始めたが、今度は原油を中心とした商品価格が低下しつつある。目先の物価は、上昇(円安)と低下(商品価格低下)の2要因の綱引きになり、どちらが強くなるかはっきりしないが、どちらかに大きく動くこともなさそうである。

なお、11月の東京のコアコア物価を見ると、ストンと低下している。これは、11月になって大きく低下したわけではない。東京のコアコア指数は、4月に消費税引き上げがあった後、動かなくなった。東京のコアコア指数は、消費税増税直後の4月と11月が同じ数字である。そのため、前年比で見た場合、上昇率は低下していくのである。金融緩和を強化しなかった場合、来年4月に東京のコアコア物価上昇率はゼロになってしまう可能性が高かった。食料、エネルギーを含めた場合でも、12月以降も前年比の上昇率は低下し続けるのである。円安と商品価格の綱引きで、両者引き分けであった場合、コアも総合も、コアコアに引き続いてゼロになってしまう。このことは、10月31日の金融緩和の強化が、必然であったことを示すものである。そしてまた、私が重視する資産価格の変動まで考慮した場合には、従来の日銀の政策と同様に、Too little Too Lateであったと考える。

量的緩和の効果は、繰り返し述べているように、非常に小さい。だから、大規模に実施しなければ、意味がないのである。特にリスク回避志向が強まっている日本においては、効果が小さくなる。リフレ政策に対する批判は、「物価が上昇していない」、「物価が上昇したのにもかかわらず賃金が追いつかず、国民生活は苦しくなった」、というものが多い。一番問題だと思うのは、同じ人物が、上記の正反対の2つの現象を根拠にしてリフレ政策を批判するのである。ある時には、効果がないと批判し、ある時には、インフレが進行して国民生活が苦しくなった上、金利が急上昇し、財政が破綻する、と批判してくる。こうしたとんでもない批判にはきちんと反論しなければならないのだが、できていない。これは、黒田総裁とリフレ派の主流派の側にも弱点があるからだ。それは、きちんとした出口戦略を示すことができていないからである。

金融緩和を強化し続ければ、いずれは雇用の逼迫により、賃金が上昇してくる。この場合、賃金上昇そのものの上昇によるコストプッシュ、上昇した賃金による購買力の増加から発生するディマンドプルのインフレが発生し、やがては2%をこえてくるであろう。こうした現象が起きたときこそ消費税を増税し、超過需要と労働需要を押さえ込むべきなのである。2017年3月の消費税増税時にこのような現象が発生しているとは限らない。本当は好ましくない増税の延期であった。しかし、ここまで来てしまった以上、そうするより他に道はなかったのかもしれない。

私は、以前から書いてきたように、政府、日銀が協力して、インフレ抑制とバブル防止を目的とする増税プラン=ドッジ・ライン・バージョン2を作るべきと主張してきた(*1)(*2)。金融緩和の結果、インフレとバブルが進行した場合、金融引き締めではなく、増税を中心とする財政政策により、インフレとバブルを封じ込めるというプランである。そのプランの一環として、コア物価上昇率が2.5%をこえた場合、総理大臣が9ヶ月以内に消費税を2%引き上げなければならないことを義務づけるような法律を作っておくべきであった。その消費税増税をも含むドッジ・ライン・バージョン2を、出口戦略と財政再建の手段の一環として準備し、作成しておくのである。そうしたきっちりした財政再建への道筋が提示できていた場合、2015年9月に消費税増税を実施しなかったとしても、日本国債のCDSの保証料率が上昇したり、ムーディーズから日本国債の格下げをくらうことはなかったのである。

ドッジ・ライン・バージョン2の中身は、インフレ抑制とバブル防止を目的とする増税策であると同時に、財政再建のプランであるので、高率のインフレも金利の急上昇も財政破綻も、起こりようがない。反リフレ派から金利の急上昇、財政破綻が起こるなどという批判も封じ込めることができる。また、現在の日本においては、金融抑圧という政策は長続きしない。従って、最初から金融抑圧という政策の放棄を宣言しておけば、欠陥の多い金融抑圧という批判も封じ込めることができる。ドッジ・ライン・バージョン2を作っておけば、インフレは高進せず、税収は増加し、財政は健全化する。もちろん、ドッジ・ライン・バージョン2は簡単に作れるものではなく、いろいろ問題点を含む政策になることはわかっている。それでも、出口戦略、財政再建策としては、他の方法よりは欠点が一番小さいと考える。

Too little Too Lateであるとはいえ、黒田総裁が10月31日に踏み切った金融緩和は、円安批判が強まった環境下であったにもかからず、実施に踏み切ったことを評価したい。これからは、政府と出口戦略を話し合い、インフレ抑制とバブル防止につながるドッジ・ライン・バージョン2を作り上げながら、より大規模な追加金融緩和を実施すべきである。


リンク先記事
量的緩和の出口戦略 増税、増税、増税 ! (*1)
インフレ抑制とバブル防止を利用した財政再建策(*2)


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