日銀ウォッチャー報告(2012年7月号)

日銀は、昨年の大震災直後に、大規模な金融緩和を実施した。しかし、その後の金融緩和の速度は遅く、意味のある金融緩和は実施されていない。
                                     (日銀HPより)

マネタリーベースの推移(201206)

上記のマネタリーベースの推移を見ると、日銀が金融緩和を大規模に実施したのは、大震災直後の昨年3-4月だけである。日銀は、昨年8月から今年4月の間に4度にわたって、金融緩和の強化を発表し、「資産買入等の基金」の枠拡大だけで、30兆円増加させることを発表した。しかし、季節調整後のマネタリーベースは、昨年8月から今年6月までの拡大金額は6兆円であり、昨年11月と、今年4月の水準を下回っている。

日銀は、毎月1.8兆円の長期国債買いオペと、「資産買入等の基金」で資産買い入れを実施してきた。しかし、「資産買入等の基金」の枠外で、主に貸出金を大量回収したため、昨年8月から今年3月までの季節調整後のマネタリーベースは、微増であった。

4月以降の季節調整後のマネタリーベースの変動要因を見ると、4月の増加は、3月21日-4月19日に、市中資金が、大幅な余剰になった影響が大きい。5月の減少は、月間で、市中資金が8.4兆円の大幅な不足になった影響が大きい。6月の増加は、月間で、市中資金が7.4兆円の大幅な余剰になった影響が大きい。

4月-6月の日銀のオペレーションを見ると、月間1.8兆円の長期国債の買いオペと、資産買い入れ等の基金による資産購入を機械的に行っており、従来、実施してきたような、それ以外の日々の細かな資金調節は、ごくわずかしか実施していない。

7月の市中資金は、8兆円の大幅不足となる。さらに、8月も季節要因から市中資金は大幅不足となるため、季節調整後の8月マネタリーベースは、6月比で減少する可能性が高い。

以前にも書いたたように、日銀の白川総裁は、マネタリーベースの量の調節ではなく、資産の買い入れで、結果的に金利や各種プレミアムを引き下げるのが主眼であると説明している。しかし、「資産買入等の基金」で購入する国債は、1年以上3年以下の国債に限っている。毎月1.8兆円購入する長期国債の平均残存期間は、昨年度において3.3年(日銀調査論文5月8日「2011年度の金融市場調節」)と、平均すれば、残存期間が短い国債しか購入していない。その上、現在は、残存期間3年以下の国債の金利は、日銀の超過準備預金に対する付利の0.1%とほとんど変わらない水準にはりついてしまっており、それ以上低下する余地は、ほとんど存在しない。ちなみに、アメリカでは、現在、期間3年以下の国債を売却し、期間6年以上の国債に乗り換えるという「オペレーション・ツイスト」が実施されている。

現在、日銀が採用している政策は、資金の量は考慮せず、結果として資金の量は少ししか増やさず、金利が低下する余地がほとんど存在しない残存期間の短い国債を中心に購入して、金利の低下を目指す、という政策である。このような、ほとんど効果がない政策を継続して、中長期的な物価安定の目途である、前年比1%の消費者物価上昇率が実現することは、全く不可能であると思われる。

効果のある金融政策とは、まず、超過準備預金に対する付利の0.1%を、引き下げるか、廃止すべきであろう。そして、もっと残存期間が長い国債を、より大量に購入するか、より期間の長い貸出金の金額を大幅に増やすべきであろう。残念ながら、現在の日銀は、そうした「効果」のある政策には、大きな「副作用」が伴うとして、「効果」のある政策を導入する雰囲気は無いというような声が、新聞報道から聞こえてくる。

テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

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