日銀ウォッチャー報告(2014年7月号)

マネタリーベース平残の推移201406(グラフ)

2014年6月の季節調整済のマネタリーベース平残は、前月比で6.3兆円増加し、226.8兆円になった。

マネタリーベース平残の推移201405(表)

上記のグラフに示したとおり、季節調整済のマネタリーベース平残は、2012年12月の白川体制の末期から増加基調が明確になり、昨年11月までは高い増加率が続いていた。昨年12月に、前月比増加率はマイナスとなったが、今年1月以降は再び高水準の増加率が続いている。

6月の市中資金は、2.1兆円の不足であった。そこに、国債の購入6.9兆円、短期国債の購入6.5兆円、貸出支援基金による貸し出し5兆円などを中心とした金融調節により、合計18.2兆円の資金が供給された。金融調節後の市中資金は、16.1兆円の資金余剰になった。この資金余剰のため、当座預金残高は、5月末の136.3兆円から、6月末の152.3兆円へと、16.1兆円増加した。この当座預金残高の増加を反映して、6月の季節調整済のマネタリーベース平残は、前月比6.3兆円増加の226.8兆円になった。当座預金残高と季節調整済のマネタリーベース平残の増加に差がある理由は、6月のマネタリーベースは増加しやすいという季節要因があるためである。

2月18日の金融政策決定会合で決定された、新方式による貸出支援基金による貸し出しが6月から実施されたので、その説明をすることにする。貸出支援基金による貸し出し金額を表すグラフを下記に示す。


貸出支援基金201406

成長基盤強化支援資金供給による貸し出しが始まったのは、2010年9月、貸出増加支援資金供給による貸し出しが始まったのは2013年6月からである。旧基準で行われた3月には、成長基盤強化支援資金供給の貸し出し増加額は、マイナス1197億円(ドル特則14億ドルを除く)であり、新規貸し出しよりも償還等の金額の方が多かった。貸出増加支援資金供給の貸し出し増加額は、3兆4653億円と、かなり規模の大きな貸し出しが実施された。一方、6月分は、成長基盤強化支援資金供給の貸し出し増加額は、2066億円(ドル特則19億ドルを除く)であり、償還等よりも、新規貸し出し金額の方が多くなった。貸出増加支援資金供給の貸し出し増加額は、4兆7976億円と貸し出し金額がいっそう増加した。6月末のドル特則をも含む貸出支援基金全体の残高は、5月末比で5兆1976億円増加の17兆8639億円となった。

当初の貸し出し枠が今年の年末に18兆円であったので、6月末時点で、その金額に近い貸し出し額がすでに達成されたことになる。年内に9月と12月の2回の新規貸し出しが実施される予定なので、貸出支援基金の年末残高は18兆円を大幅にこえることは確実になった。黒田総裁は、貸出増加支援資金供給だけで、最終的には30兆円の残高目標を公言していたが、場合によっては、年内にも達成する可能性が出てきた。この場合、2014年末のマネタリーベース残高目標の270兆円を上方修正するのか、短期国債の残高などを減らして270兆円の目標を維持するのかは要注目である。

増加額が、昨年9月と12月に1.1兆円であった貸出支援基金が、条件を変えずに、貸し出し枠を拡大するだけで、今年6月の増加額が5.2兆円にまで拡大している。これは、金融政策のアナウンスメント効果である。黒田総裁が、2月18日の金融政策決定会合後の記者会見で、貸出支援基金の増加額を増やすとかなり大げさに説明したからである。その結果、今まで、貸出支援基金をあまり使用する気がなかったいくつかの銀行が、従来より大規模に利用するように変化した。これは、中央銀行の小さな政策変更が、金融機関の行動を大きく変化させ、結果として大きな効果が発生することがありうるという一つの具体的な例である。

私は「日銀ウォッチャー報告(2014年3月号)」(*1)で、貸出支援基金の枠拡大という政策変更自体は支持した。しかし、発表の仕方が、正確なものではなく、実体を大きく見せかけ、誤解を生むような表現であることを激しく批判した。アナウンスメント効果の発生を期待していたのであろうが、市場にウソを見抜かれ、日銀に対する信認を失う恐れがあるので、望ましくないという意味の文章を書いた。結果は、アナウンスメント効果の影響が予想以上に大きく、大成功であった。今までのところ、日銀が信認を失うような事態は発生していない。黒田総裁の2月18日の説明は、今でも不適切だと感じているが、結果オーライと言うしかない。


日銀BSとMB(実績と予想)201406

上記の表のように、今年の年末時点におけるマネタリーベースの予定残高は、270兆円である。残り6ヶ月間で増やすので、マネタリーベース末残は、月間4.4兆円の純増が必要である。

7月の市中資金は、16.6兆円の大幅な不足となる。7月の資金供給は、国債の購入が、6月を少し上回る7兆円と想定する。短期国債の購入は、従来の規模の上限である11.5兆円と想定する。貸出支援基金による貸し出しは、7月には実施されない。この結果、7月の資金供給は、合計で18.5兆円となる。7月末のマネタリーベース末残は、前月比1.9兆円の増加と予想する。季節調整済のマネタリーベース平残の増加金額は、前月比で1.9兆円を大きく上回る金額になると予想する。

消費税増税から3ヶ月強経過し、増税後の4月以降の経済統計が続々と発表されている。先月号と同様に、今年4月以降の統計から、重要と思われる統計を一部取り上げ、その意味を説明することにする。

最初に生鮮食品を除く消費者物価指数(コア)の前年比上昇率を表すグラフを下記に示す。


コアCPI

5月全国のコア消費者物価は前年比で3.4%の上昇である。うち消費税増税の影響は2.0%と考えられているので、消費税を除くベースで考えてみても、前年比1.4%の上昇となる。一方、6月東京のコア消費者物価は前年比で2.8%の上昇であり、5月と上昇率は変わっていない。黒田総裁も、6月23日の講演で、「物価上昇率は、夏場に向けて1%近辺まで縮小」という意味の発言を行い、従来とは少し異なった考え方を示した。

次に、過去1ヶ月間にいくつか発表された重要指標のうち、弱めの数字が出たものを表示する。先月に引き続いて、家計調査の消費水準指数と消費総合指数を表すグラフを下記に示す。


個人消費

消費水準指数は、家計調査の消費支出の数字から、家族構成、年齢変化などの要因を調整し、消費の実体をより正確に表すように修正を加えた数字である。それでもブレや右肩下がりの傾向は除去し切れないので、家計調査に供給サイドの統計を加えて再計算した数字が、消費総合指数である。消費総合指数を見る限り、4月の消費の落ち込みは1997年4月を上回る大きなものであった。

消費水準指数は5月もさらに低下している。ただ5月の低下は、住居費などの変動の多い項目に偏っている。これは、先に記した消費水準指数のブレである可能性がある。5月の消費総合指数は、消費水準指数とは異なり、小幅なマイナスか、小幅なプラスになる可能性が高い。しかし、同時に、4月比で大幅なプラスになる可能性も低い。消費全体では、5月のリバウンドは、全くないか、あったとしても小さなものになる可能性が高い(7月7日、5月消費総合指数発表、前月比+1.3%)

個人消費以外にも心配な統計がいくつかある。今回は住宅統計を取り上げる。新設住宅着工戸数の長期のグラフを下記に示す。


住宅着工

1997年の消費税増税の時は、1996年10月まで大きな駆け込み需要があり、その後、長期の低迷が続いていた。今回は、2013年12月まで駆け込み需要があったが、その後、今年の5月現在でも、新設住宅着工戸数は減少し続けている。今回は、水準がリーマンショック後の2009年よりもかなり高い。加えて、人口減少数が拡大しつつある。人口減という構造要因を考えた場合、ここから大きくリバウンドする可能性は低いと思う。水準調整のため、もうしばらく下落の期間が続く可能性が高い。住宅着工の増加とそれに伴う消費財購入という現象が発生するのは、今年の夏ではなく、もう少し先の将来のことになる可能性が高いと考える。

しかし、悪い統計ばかりではない。良い統計も出ている。新車販売台数の推移を表すグラフを下記に示す。


新車販売

リーマンショック後にエコカー減税などの政策が繰り返し実施されたため、変動率が大きくなっている。そうした中で、今年1月に、1月としては過去最大の新車販売台数を記録し、非常に大きな駆け込み需要が発生した。その結果、4月以降の反動減は大きくなると予想された。ところが、実際には、反動減は小さく、6月には前年比でプラスの水準にまで戻した。消費税増税による反動減が大きいものは、高価な耐久財である。1番目が住宅、2番目が自動車である。1番目の住宅は反動減が続いているが、2番目の自動車は、早くも反動減を脱した。

そしてもう一つ、先行き強気の予想を抱かせる統計が出た。日銀短観の大企業の設備投資の推移を表すグラフを下記に示す。


設備投資

青が実績値であり、赤が6月時点の予想値である。企業は、期初に設備投資計画を立てる。しかし、最初は、確実に実施する非常に控えめな数字を出す。3月短観の2014年度の設備投資計画は前年比+0.1%であった。それが、6月には上積みされるのが普通である。今年は+7.4%まで上積みされた。各年度の6月時点での計画値が上記のグラフの赤線である。この赤線の2014年の値は、リーマンショック以降で最も高い計画数字になっている。現時点では、企業は設備投資の増強を考えているのである。

しかし、例年は、期末にかけて計画を下方修正することが多い。その結果、最終的に実施された設備投資の増加額が、青線なのである。今後、+7.4%という数字は、ほぼ間違いなく下方修正される。下方修正の幅は景気動向次第であり、予想は難しい。ただ、途中経過の数字としては、リーマンショック後で最高の数字なのである。空洞化や人口減少のため、もう国内投資はあまり増えないのではないかと心配されてきた。そうした観点からすると、6月時点の+7.4%という数字は、十分強い数字である。景気の好循環を引き起こす可能性のある数字と見なすことができる。

総合すると、過去1ヶ月間に発表された景気指標は、まだら模様である。強弱のいずれにも解釈可能な数字となっているが、私は弱めの統計数字の方が多いと感じている。先月は弱めの数字を指摘した。先月の場合、反動減の数字がほとんどであり、減少の数字が非常に多かったのは当然である。5月以降は、反動減からの回復数字が続々と発表されている。そうした統計の中で、減少を続けている弱い統計、反動減が終了した強い統計も出てきたので、そうした統計を上記に示した。その他の統計は、こうした好調な統計と、不調な統計の間に位置している。私は、現時点では、少し前の順調回復という多数派の意見よりも、少し弱めの統計数字が多く出ていると考えている。6月分の統計で、すでに発表されたものの中で、自動車の販売は良かったが、百貨店売上高は不振であった。5月分の発表済みの統計を見る限り、自動車のように順調に回復している統計は少なく、百貨店売上高のように、順調とはいえない回復を示すものの方が、数としてはかなり多いように感じている。

消費税増税後の低迷から、景気が何時かは完全に回復することは間違いない。問題はその時期である。黒田総裁の6月23日の発言は、「円安の影響で上昇していた消費者物価の上昇率は、しばらく低下方向に向かう。その後、景気回復の進展とともに、人手不足が続けば、物価上昇率は再び上昇に向かい、最終的には2%の目標に到達する。」といった内容であった。このロジックは、私と黒田総裁とは、全く同じである。物価と景気の動向は、ある程度は連動するのである。景気回復が順調に進み、人手不足が深刻化すると、物価もそれに伴って必ず上昇していく。ただ、2%上昇の達成時期が、黒田総裁が考えている2015年度であるかどうかが、私には予想ができない。黒田総裁も、2015年度中に2%が実現するという確固とした根拠を述べてはいない。消費税増税後の景気回復、物価上昇の時期が早いか遅いかは、誰も正確に予想ができないのである。それだけ、経済現象は複雑であり、正しい将来の姿は、「神のみぞ知る」なのである。

私の考え方は、景気が回復しようと、回復しなかろうと、物価上昇率が2%になろうと、2%にならなかろうと、大規模な追加金融緩和が必要である、というものである。大規模な追加金融緩和で景気が過熱し、インフレとバブルが発生したならば、ドカンと増税を行い、景気を冷やして物価を引き下げるのと同時に、急激な財政再建を目指すべき、というものである。ほとんど毎回のように書いている同じ結論である。しかし、こうした考え方は、世間に全く広まってはいない。毎回読んでくださっている方には申し訳ない気がするのであるが、こうした考え方が世間に広まるまで、今後も繰り返し書き続ける予定である。


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日銀ウォッチャー報告(2014年3月号)(*1)


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