日銀ウォッチャー報告(2014年5月号)

マネタリーベース平残の推移201404(グラフ)

2014年4月の季節調整済のマネタリーベース平残は、前月比で2.8兆円増加し、215.9兆円になった。

マネタリーベース平残の推移201404(表)

上記のグラフに示したとおり、季節調整済のマネタリーベース平残は、2012年
12月の白川体制の末期から増加基調が明確になり、昨年11月までは高い増加率が続いていた。昨年12月に、前月比増加率はマイナスとなったが、1月、2月と再び高い増加率に戻った。3月、4月の前月比増加率は、多少低くなった。

4月の市中資金は、6.7兆円の不足であった。そこに、国債の購入6.5兆円、短期国債の購入6兆円、共通担保オペの回収1.1兆円などを中心とした金融調節により、合計11.9兆円の資金が供給された。金融調節後の市中資金は、5.1兆円の資金余剰になった。この資金余剰のため、当座預金残高は、3月末の
128.7兆円から、4月末の133.8兆円へと、5.1兆円増加した。この当座預金残高の増加を反映して、4月の季節調整済のマネタリーベース平残は、前月比2.8兆円増加の215.9兆円になった。当座預金残高と季節調整済のマネタリーベース平残の増加に差がある理由は、4月のマネタリーベースは増加しやすいという季節要因があるためである。


日銀BSとMB(実績と予想)201404

上記の表のように、今年の年末時点におけるマネタリーベースの予定残高は
270兆円である。残り8ヶ月間で増やすので、マネタリーベース末残は、月間5.6兆円の純増が必要である。

5月の市中資金は、13.8兆円の不足となる。5月の資金供給については、国債の購入が、4月と同金額の6.5兆円と想定する。短期国債の購入は、4月比2兆円増加の8兆円と想定する。4月より市中資金の不足額が大きいからだ。貸出支援基金による貸し出しは、5月中には予定されていない。この結果、5月の資金供給は、2つの合計で14.5兆円となる。5月末のマネタリーベース末残は、前月比0.7兆円の増加と予想する。必要額の5.6兆円をかなり下回るが、資金余剰になりやすい6月に、マネタリーベースを大幅に増やすと考えるからだ。季節調整済のマネタリーベース平残は、前月比で0.7兆円を上回る金額の増加になると予想する。

従来、後半では、金融政策批判を書いてきた。しかし、今回は、「日銀ウォッチャー報告2013年度バージョン」を書くことにする。2013年度のマネタリーベースや日銀関連の統計数字の発表がほとんど終わり、分析可能となった。2013年度のマネタリーベースの増加金額は、金融政策決定会合の目標範囲内に収まっていない。それ以外の日銀の資産、負債についても、いくつかの変化が発生している。
1996年7月以降の数字が存在する「マネタリーベースと日本銀行の取引」という統計に、一部それ以外の統計からの数字も合わせて、過去と比較しながら2013年度の金融政策の内容を説明することにする。

最初に、資金過不足とその要因の表を下記に示す。


資金過不足とその要因

毎月、月初に当月の資金過不足の予想数字が発表され、その1ヶ月後に前月の資金過不足の確報値が発表される。上記の表の一番右端の数字は、その年間合計額の数字である。それと同時に、月次では省略している資金過不足の原因、すなわち銀行券要因と財政等要因、財政等要因の内訳も上記の表に示した。財政等要因の中の「国債」の部門は、現在、1ヶ月以上と国庫短期証券に分かれている。しかし、この分類に変更されたのは、短期国債が国庫短期証券という名に再編された2009年2月以降のことである。そのため、ここでは、国債をいくつかの部門に分けることなく、1部門として示すことにする。

銀行券要因の数字は、2つ後の表に示す銀行券発行高のフローの数字にマイナスの符号を付けた数字と等しい(月次合計の数字であるため、最大で3ポイントの誤差が発生)。紙幣の発行が増えることの意味は、銀行が顧客に支払う紙幣(のネットの金額)と等しい金額の紙幣を銀行が日銀から受け取ることを意味する。その代わりに、銀行の日銀に置いてある預金口座、すなわち、日銀当座預金の残高がその分減少することになる。つまり紙幣発行残高の増加=当座預金の減少要因=銀行券要因による資金不足額拡大、となる。逆に、顧客が紙幣を銀行預金に預けると、銀行はその紙幣(のネットの金額)を日銀に渡し、その金額と等しい日銀当座預金の残高が増加する。この場合は反対に、紙幣発行残高の減少=当座預金の増加要因=銀行券要因による資金余剰額拡大、と考えるのである。

2001年度-2004年度の間、国債部門のマイナス幅拡大を原因として、資金不足額が拡大している。これは、4つ後に示す表に掲載されているとおり、日銀保有の短期国債の償還が増えたからである。日銀が市中から買い入れた国債(短期国債)を保有したまま満期を迎えると、本来なら国債の満期に伴って市中に流れるはずであった国債の償還金が、日銀に流れてくることになる。これは、償還金額に等しい分だけ日銀が資金を市中から吸い上げたことと同じ結果であり、市中資金の不足が拡大すると考えるのである。異次元緩和の実施とともに、日銀は、国債だけではなく短期国債の購入額も急増させた。短期国債は残存期間が短いので、同時に償還額も急増した。そのため、2013年度の資金不足額は、2004年度の68.3兆円を大幅に上回り、111.6兆円と過去最高となった。

次に、その資金不足を埋めるために行った日銀による金融調節の表を下記に示す。


金融調節

マネタリーベース大幅増加の目標をたてているので、資金不足が拡大する中、金融調節の金額も例年より大幅に拡大するのは当然である。2013年度は、年間の市中資金の不足額は111.6兆円、金融調節が182.1兆円、当座預金残高の増加は70.5兆円、年度末の当座預金残高は128.7兆円にまで拡大した。

次に、マネタリーベースとその内訳の表を下記に示す。


マネタリーベース

マネタリーベースの定義は、日本銀行券発行高+日銀当座預金+貨幣流通高である。このうち、貨幣流通高は、主として財務省の管轄であり、日銀のバランスシートにものらない。しかし、残高、増加金額ともに小さいので、金融政策を考えるにあたっては、ほとんど無視して構わないと思う。上記の表に示したとおり、日銀券発行高が従来とあまり変わらない増加額を示し、当座預金が急激に増加した結果、2013年度のマネタリーベースの残高は急増することになった。白川体制の2011年度は、金融緩和の強化が3回発表された年であるが、年間でマネタリーベースが6.4兆円減少するようなことが実際に発生していた。2011年度と比較した場合、2013年度は大変大きく変化している。2013年度は、金融政策決定会合で、マネタリーベースの増加目標金額を、年間60兆円-70兆円と発表し続けてきた。しかし、実際の2013年度の年間マネタリーベース増加金額は
73.8兆円であった。2014年2月、3月、4月と続けて、少額ではあるが目標の超過達成になっている。

次に、日銀による国債保有のストック、フローの表を下記に示す。


国債

本来なら、前期末のストック+今期のフロー=今期末のストック、フローの合計=買入+償還等になるはずである。しかし、直近において、この式は成立しているが、2005年度以前は成立していない。これは、主として、国債の現先取引の計上方法が頻繁に変わっているからだ。しかし、最近は国債の現先取引は、政府の特別会計に対するものだけであり、その計上方法も変わっていない。2013年度の年間の国債購入金額は88兆円、償還は25.2兆円、フロー合計と年間純増金額は62.8兆円、年度末の国債保有金額は154.2兆円となっている。2013年度は、グロスの国債購入金額が大幅に増加した結果、国債の純増金額は、年間の方針である50兆円をかなり上回っていたのであった。

次に、日銀による短期国債保有のストック、フローの表を下記に示す。


短期国債

国債と同様に、現先取引の影響で、ストック、フローが2001年度以前は整合がとれていない。1998年以前は、政府発行の短期国債の大半を事実上日銀が引き受け、その後に一部を市中に売却していた。しかし1999年4月に、短期国債の発行方式は、現在の方式である公募入札制に移行した。2001年度以降は、金融調節の手段としての短期国債の買いオペの金額が増えた。その結果、先に述べたとおり、市中資金の不足額拡大の大きな要因となった。2013年度の年間の短期国債は、引受15兆円、購入91兆円、償還95.8兆円、フロー合計と年間純増金額は10.2兆円、年度末の保有金額は44.2兆円となった。

次に、貸出支援基金のストック、フローの表を下記に示す。


貸出支援基金

2012年度の貸出支援基金は、フローが572億円、それに対してストックが3兆
3570億円と大きな差がある。これは、貸出支援基金が、2010年9月に設立された成長基盤強化支援資金供給に、2012年12月に貸出増加支援資金供給を加える形で設立された基金であるからだ。そのため、2012年度の貸出支援基金のストックの金額は、成長基盤強化支援資金供給のストック金額と等しい。そしてまた、貸出支援基金の2013年度のストックは、上記の表では11.8兆円であるが、上から3番目に示した表の2014年3月末の金額は、12.7兆円であり、0.9兆円(正確には8861億円)金額が一致しない。これは、成長基盤強化支援資金供給の中にドル特則というものがあり、この枠で8861億円のドル建て資金が貸し出されているからだ。日銀が作成する統計の多くは、ドル特則を貸出支援基金に入れずに、「その他」の中にある「外国為替」の中に入れている。

次に、共通担保資金供給のストック、フローの表を下記に示す。


共通担保資金供給

かつて、日銀は、買いオペの手段として、手形買いオペを実施していた。しかし、
2006年6月に日銀は手形買いオペを全面停止し、共通担保オペ(資金供給)へと全面的に切り替えたのである。従って、共通担保オペの場合、ストックとフローの差はゼロである。

共通担保オペの残高は3年連続で減少し、2013年度末で14.1兆円である。共通担保オペについてのニュースは、連続札割れのニュースばかりである。しかし、共通担保オペの入札額がゼロになることはなく、2013年度末においても14.1兆円の残高を維持していることの方が驚きである。当座預金残高が128.7兆円、準備預金残高が119.5兆円、0.1%の金利が付く超過準備が100.5兆円も積み上がっている。近い将来、どの銀行も金余りの結果、0.1%の金利のつく日銀準備預金で資金を運用するようになるに違いないと考えていた。その場合、
0.1%の借入金利がつく共通担保オペの残高は、ゼロになるはずである。しかし、共通担保オペの残高は、ゼロではなく、2013年度末の段階で14.1兆円、
2014年4月末の段階で13.1兆円も残っている。直近でも資金が不足し、日銀から金利0.1%の資金を合計して13.1兆円も借り入れなければやっていけない銀行等の金融機関が、依然として存在するのである。

異次元緩和の開始から1年以上過ぎた現在において、マネタリーベースは日銀の目標を少し上回るスピードで増加し続けている。そして、日銀の資産、負債の構成にも少しずつ変化が生じている。しかし、報道される機会は少ないし、数少ない報道には、誤りがしばしば見受けられる。日銀のHPから直接統計にアクセスしても、統計作成の方法についてある程度の知識がなければ、簡単には理解ができない統計も多い。貸出支援基金には、統計数字が2種類存在するのである。異次元緩和に賛成、反対にかかわらず、こうした日銀をめぐる資金の流れを正確に理解した上で、意見を述べたり、批判したりすべきであろう。


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テーマ : 経済
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