購買力平価から見た円相場 対主要国(OECD)

主要国通貨の購買力平価に対するする割高・割安度合い(米ドル基準)2011年(グラフ)

(2013年までデータを更新したグラフを最後に掲載)
OECDのHPに掲載されている購買力平価を使って、1960年から、米ドル=100とした場合の主要国通貨の購買力平価に対する割高、割安度合いを算出した結果が、上記のグラフである。39ヶ国もデータがあるので、その中から主要10ヶ国をピックアップしたものである。39ヶ国のデータを数値化した表を掲載すると、下記のようになる。


購買力平価で見た主要国通貨の米ドルに対する割高・割安度合い			購買力平価で見た主要国通貨の米ドルに対する割高・割安度合い(表)

円相場は、直近の2011年において、購買力平価からのかい離率が、39ヶ国中、上から6番目とかなり割高な水準にある。

購買力平価で円相場の水準を判断すると、以前に示した実質実効為替レートとは違って、円が断トツに割高というわけではない。それは、日本以外の通貨で、購買力平価よりも割高な国の大半がヨーロッパ諸国であり、日本は、そうしたヨーロッパ諸国との貿易量はそれほど多くはないからである。日本と貿易量の多い、中国、アメリカ、韓国の購買力平価については、基準国であるアメリカは、プラザ合意の翌年の1986年からずっと日本より下方に位置し、中国、韓国は、常に日本より大幅に下方にかい離した位置にある。

従って、購買力平価で見た円相場は、かなり割高な水準に位置しているのであるが、国際競争力という観点からは、購買力平価が示すデータ以上に、円は割高な水準に位置していると考えられる。こうした超円高が、現在の日本の製造業を苦境に陥れている最大の原因なのである。


追記 2014年4月

主要国通貨の購買力平価に対するする割高・割安度合い(米ドル基準)2013年(グラフ)

2012年11月以降、円安が進行した。その結果、円レートの購買力平価に対する割高度合いは、フランス、イギリスを少し下回り、アメリカ、ドイツを少し上回る水準にまで修正された。それでもなお、韓国と比較すれば、かなり高い場所に位置している。

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購買力平価とは

購買力平価から見た、円相場の水準を調べることにする。ネット上で手に入る、あるいは、算出可能な購買力平価のデータとしては、IMF(2011年)、世銀(2010年)、CIA(2011年)、OECD(2011年)、ビッグマック指数(2012年)がある。

このうち、IMF(2011年)(2012年4月の公表値ではなく、2011年9月公表の2011年の推定値)とCIA(2011年)は、大部分が同じなので、CIAは、独自計算ではなく、IMF等からデータを借用していることがわかる。

IMF(2011年)と、世銀(2010年)は、いずれも、世銀が2005年の価格を基準としたICP(International Comparison Program:国際比較プログラム)という作業で求められた数値を元にして算出されている。 ICPは、国連統計部とペンシルベニア大学が、1970年から開始した、購買力平価を算出するためのプログラムである。2005年基準のICPは、第7回目である。この時は、世銀が中心となり、OECD、ユーロスタットが分担協力して、146の国、地域における約1000の商品・サービスを比較して算出するという大規模な購買力平価算出プログラムであった。第6回は1993年基準であったので、精度向上のために、過去6回よりも相当長い時間をかけて算出している。先進国から途上国まで、幅広くカバーしている。2006年以降は、それぞれが、購買力平価算出用デフレーターを作って算出するという手法により、アップデートした数値である。大元が同じであるため、IMF(2010年)と世銀(2010年)は、非常に似た数値を示している。直近の数値は、IMFの方が新しいので、IMF(2011年)を使用するのが妥当であろう。

OCED(2011年)は、OECDとユーロスタットが共同して、先進国を中心とする2008年の主要国の購買力平価を算出したデータを元にしている。ユーロスタットは、1960年代後半から、ヨーロッパの一部の国の購買力平価算出プログラムを開始した。1980年から、OECDと共同して先進国中心の購買力平価を算出し始めた。その後、何度も新たに計算を行い、現在は、OECD(2008年)の数値が元となっている。これは、主要国における約3000の商品・サービスを比較して算出された購買力平価の数値である。2008年の数値から、IMF・世銀方式よりも、より精密な購買力平価算出用デフレーター作って算出するという手法によりアップデートしたものが、OECD(2011年)である。OECD(2005年)はICPで算出された世銀(2005年)に組み入れられている。

ビッグマック指数は、イギリスのエコノミスト社が、マクドナルドのビッグマックという一つの商品から算出している購買力平価である。IMF等の購買力平価と違って、あまりにも簡易な算出方法であり、実体がどこまで反映されているか疑わしい。実際、ビッグマック指数は、IMF、世銀、OECDの購買力平価と、かなりかけ離れた数値が散見される。より厳密な購買力平価を使うとしたら、ビッグマック指数ではなくIMF等の数値を使うのが妥当であろう。

それでも、IMF、世銀、OECDの購買力平価には、いくつかの問題がある。その中で最大のものは、貿易財と非貿易財の問題である。先進国と途上国の生産性の格差は、貿易財の方が非貿易財よりも大きい。例えば、工業製品の生産性は、先進国と途上国との間に大きな格差が見られる。しかし、散髪のようなサービス・非貿易財の生産性は、先進国と途上国との間に、大きな格差は見られない。しかし、市場で決定される為替レートは、非貿易財の価格は無視され、貿易財の価格のみが反映される。そのため、途上国では、市場で決定される為替レートは、購買力平価よりも過小に評価される傾向がある。一方、先進国では、市場で決定される為替レートは、購買力平価よりも過大に評価される傾向がある。このことは、同時に、途上国が経済成長を実現して先進国へと移っていく間、市場で決定される為替レートは、経済成長と共に上昇していくことをも意味する(バラッサ・サミュエルソン効果)。この問題を頭に入れておけば、IMF、世銀、OECDの購買力平価は、通貨価値を比較する際の指標として、かなりの正確性を持つことになると考えられる。


(関連記事)
OECD購買力平価から見た円相場 対主要国
IMF購買力平価から見た円相場 対アジア諸国
購買力平価から見た円相場 超円高の原因
ビッグマック指数の問題点

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円の実質実効為替レート 継続する超円高

実質実効為替レートの最新のグラフはこちら

主要国の実質実効為替レートの推移(グラフ)

BIS(国際決済銀行)のHPには、1964年以降の主要27ヶ国の月次の実質実効為替レートが掲載されている。そのデータから、年次のレートを計算し、1964年=100として指数化する。数が多いので、ユーロ圏の国々をまとめてユーロ圏だけに代表させて、18ヶ国の実質実効為替レートをグラフ化すると、上記のようになる。

1964年の日本の経常収支は若干の赤字。スタート時点において、円は少し過大評価されていたことになる。

見て明らかなとおり、円の実質実効為替レートは、1964年-1995年の間、第2位のスイスフランを大きく引き離して、ずば抜けて高い上昇率を実現してきた。円は、昨年1年間に大きく値下がりしたが、超々円高が、超円高に変わった程度である。

円の実質実効為替レートが、米ドルの実質実効為替レートと比較して、大幅に上昇しているという事実は、1ドル=360円からピーク時には1ドル=75円にまで上昇したのであるから、実感できるはずである。

もう一つ注目すべきことは、中国、韓国、香港、台湾、シンガポールのアジア諸国である。いずれも、2013年の指数は、87以下である。これらの国の実質実効為替レートは、円の実質実効為替レートが71%上昇している間、13%以上値下がりしてきたのである。

なお、中国人民元のデータは、BISのHPには1994年以降のデータのみが掲載されている。そこで、1964年-1994年のデータは、人民元と米ドルの実質為替レートを計算し、実質実効為替レートに代用し、上記のグラフに掲載した。人民元は割安であるが、1994年以前のドルに対する円高が全く反映されていない。従って、1994年以前の実質実効為替レートが計算可能であるならば、上記のグラフのさらに下を進んでいた可能性が高い。

以上から、1964年-2013年という長期の実質実効為替レートの推移を見ると、円は、主要国の通貨の中で、値上がり率がずば抜けて高かったのである。特に、アメリカとアジア諸国の通貨に対しては、極端に大きく上昇してきたという事実は間違いないはずである。

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円の実質実効為替レート 基準時点の問題

日本経済は、現在、超円高という「津波」に苦しんでいる。

しかし、エコノミストの中には、「現在は円高ではない、それどころか、現在は円安が進行している」という意見も多い。中には、2005年-2007年頃の為替レートは超円安、円安バブルというべきもので、現在は、その超円安が是正されただけだと主張するエコノミストもいる。その根拠は、下記に示した日銀が毎月発表している円の実質実効為替レートの推移が根拠とされている。

円の実質実効為替レート(グラフ
実質実効為替レートは、ピークの1995年4月の151.07から2012年4月の98.54まで、34.8%も下落している。従って、現在は超円高ではない、という主張である。

しかし、こうした見方はあまりにも一面的である。例えば、基準時点を最も古い1970年1月におけば、円の実質実効為替レートは、1970年1月の59.00から2012年4月の98.54まで、67%も上昇している。

実質実効為替レートで為替水準を判断する際、経常収支が均衡している時点を基準時点とすることが望ましい。しかし、戦後の日本において、経常収支が均衡近くであった時点は複数存在し、どの時点を基準時点にするかで結論が変わってくる。ちなみに、日銀は、基準時点は1973年3月が望ましいと考えているようである。1973年3月を基準時点とすると、2012年4月の実質実効為替レートは、1973年3年の77.74から、2012年4月の98.54まで26.8%の上昇となり、依然として円高水準である。

実質実効為替レートで、為替レートの水準の高低を判断する際には、もっと多角的な分析が必要なのである。

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製造業の重要性(その2)

日本経済を衰退させた産業構造の大変化

日本の就業者数(雇用者+自営業者)の変化 (総務省HP、労働力調査より)
________2002年____2011年_____増減
総数_____6,330万人___6,244万人___ -86万人   
製造業____1,202万人___1,041万人___-161万人
医療・福祉___ 474万人____ 676万人___+202万人

過去10年間に、日本は就業者を、製造業から、医療・福祉産業へと継続して移動し続けてきた。
 
問題点
製造業
(1)生産性が高く、生産性の伸び率も高い。
(2)それもかかわらず、超円高で製品価格高となり、多くの企業が、競争力を失っている。
(3)産業全体で、税金・保険料を、政府に大量に納めている。
医療・福祉産業
(1)生産性が低く、生産性の伸び率も低い。
(2)その結果、医療はともかく、福祉の中には低賃金労働者が多い。
(3)産業の大部分が、税金・保険料を財源とした政府からの移転経費で成り立っている。

過去10年間、日本の実質GDPが伸び悩み、財政赤字が拡大した最大の原因は、こうした就業構造、すなわち産業構造の変化にある。

今後、日本は、製造業が衰退する中で、医療・福祉産業が肥大化する可能性が高い。しかし、基幹産業たる製造業が衰退に向かえば、税金を産み出すことができず、税金バカ食いの医療・福祉産業を支えることができなくなる。そうなると、次には、医療・福祉産業までも衰退してしまう。

製造業の衰退の最大の原因は、中国の工業化に伴う日本経済の空洞化。残念ながら、これは避けることはできない。

しかし、もう一つ大きな原因がある。それは、中国、韓国、台湾などの、極端な自国通貨安誘導政策である。日本円は、購買力平価で見て、中国、韓国、台湾などの通貨より、約2倍の割高状態が継続している(後日詳述)。これに対しては、日本にも対抗策がある。介入と金融の量的緩和の強化による円安誘導政策である。

介入と金融の量的緩和の強化により、円安誘導を実施し、製造業の成長を維持することが、日本経済にとって必要な政策である。

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製造業の重要性(その1)

国家の経済成長の原動力となる産業=基幹産業である。

基幹産業は、周辺産業に寄生することなく、雇用を産み、税金を創出する産業。

日本の場合、第二次産業の大部分と、第一次産業と第三次産業の一部が含まれる。そして、日本の場合、第二次産業の多くは製造業であり、基幹産業でもある。

GDP統計より____実質GDPの推移とその主な内訳______
_________2001年_____2010年_______伸び率
実質GDP___476.5兆円___511.3兆円___+7.3%
製造業_______ 90.2兆円___108.6兆円__ +20.4%
電気機械_______8.7兆円_____26.9兆円__+209.1%
公共サービス業__ 23.1兆円_____27.5兆円__+19.0%
(公共サービス業は、医療、保険衛生、教育、研究等のサ-ビス業)

GDP統計より_就業者(雇用者+自営業者)数の推移とその主な内訳
________2001年______2010年_______伸び率
就業者数___6,489.9万人___6,391.5万人_ -1.5%
製造業____1,216.5万人___1,018.2万人_-16.3%
電気機械_____188.7万人____148.7万人_-21.2%
サービス業__ 1,925.2万人__ 1,962.3万人___+1.9%
(GDP統計には、公共サービス業の就業者数が無いので、公共サービス業に、民間の対事業所サービス、対個人サービスを加えたサービス業を示す)

従来の日本経済では、製造業が、雇用を減らしながらも、生産性を大幅に上昇させることによって、成長を遂げてきた。しかし、製造業の中でも、最も大幅な成長を遂げてきたてきた電気機械産業は、現在、急激な崩壊へと進む危機に瀕している。電気機械産業以外でも、伸び悩み、または衰退へと向かっている製造業は多い。

電気機械産業の中には、DRAM,薄型テレビ等の、価格が急落し、赤字ばかり産み出す、いわゆるコモディティ産業が含まれている。ハイテク・コモディティ産業の不振に対して、最初からそのような製品の製造に手を出すのが悪かったと言う人は多い。しかし、ハイテク・コモディティ産業は、従来、日本経済の成長率を大幅に引き上げる役割を果たしてきた。従って、政府が、ハイテク・コモディティ産業でも赤字にならない環境をつくり上げる政策こそが、日本の潜在成長率の低下を食い止めるために、必要な政策なのである。

一方、今後、急速に拡大することが確実な産業は、医療、保険衛生産業。これは、大部分が税金と保険料に依存する寄生産業である。その他の第三次産業は、基幹産業と寄生産業の中間的な性質を持つものが多い。

1930年代に、コーリン・クラークが提唱した国民所得を少し改造したGDPを見て経済成長を判断すると、大変な間違いをおかす。GDPの一部である基幹産業を成長させなければ、真の経済成長はありえない。

また、コーリン・クラークは、「経済社会・産業社会の発展につれて、第一次産業から第二次産業、第二次産業から第三次産業へと就業人口の比率および国民所得に占める比率の重点がシフトしていく」という「ペティ=クラークの法則」の提唱者の一人でもある。しかし、この法則は、ある程度の真実を捕らえているが、完全には正しくないということも、理解すべきである。

日本は、地下資源に恵まれていない。第一次産業の生産性向上は必要であるが、自然条件の制約により限界がある。また、アメリカが世界で圧倒的な優位を持つ高度なソフトウェア産業は、日本人には不向きであると思われる。

日本人に向いた基幹産業の代表は、製造業であろう。日本は、製造業を死守しながら、より高度化して、成長し続けていくことが必要である。

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