2017年4月第2週 株 コメント

4月第2週 投資部門別売買状況 現物先物合計 現物 先物
投資部門別コメント週次20170414

4月第2週 大手証券 先物手口概算
ブログ週間先物手口20170414

4月第2週 日経平均株価 日中足チャート
週足株価ブログ用20170407

時系列データ
 投資部門別売買状況 現物と先物の時系列表
 投資部門別売買状況 長期時系列グラフ(月次) 
 投資部門別売買状況 先物累積買越枚数 グラフ
 先物建玉残高 証券会社別枚数推移 グラフ


2017年4月第2週の日経平均株価は前週末比329円安の18336円で引けた。この前週末に発表されたアメリカ雇用統計の内容が、為替レートに対してはやや円安方向への反応をもたらした。そのため月曜日の日本の株価は上昇した。その後はトランプ政権によるシリア、アフガニスタン、北朝鮮などに対する強行姿勢が地政学リスクと捉えられ、NY株安と円高を引き起こした。それに並行して日本の株価も下落が続いた。加えて木曜日にトランプ大統領がドルは強すぎると発言したと報道され、円高と株安をより進行させた。日経平均株価は火曜日から4日連続の続落となり、下げたまま週を終えることになった。

4月第2週の最大の買い手は銀行であった。現先合計で470億円の買い越し。うち現物で85億円の売り越し。先物で555億円の買い越し。うち日経平均ラージ先物で747億円の買い越し。銀行は第1週に日経平均ラージ先物を1214億円売り越していたので、その反対売買である。銀行の先物売買は回転が速いことが多く、今回も投機的なヘッジ売りと買い戻しである。

海外は現先合計で376億円の売り越し。うち現物で1027億円の買い越し。先物で651億円の売り越し。先物の投資部門別売買状況の海外と先物手口概算(2種の先物)の外資系14社を比較し、その中身を自己と海外に分けて考える。

ブログ外資系と海外の比較20170414

この週の海外と自己との売買の内容はわからない。ミニとは言えSQのある週は外からは見えない取引初外での玉移動が増え、同時に外資系の売買の中で自己の占める割合が高まり、上記の2つの数字が大きく乖離するケースが多い。しかしこの週は実質的に最も大きく売り買いが交錯したのは自己の内部であり、重要性が高い。わからないだけですますわけにはいかず、わかる範囲内で推測を試みる。

上記の試算は、後ほど自己の所で触れるが、第2週は東証が公表した裁定売買を海外自己、東証が公表していない広義の裁定売買を東京自己と置いてみたものである。普通は東証公表分の方が東京自己であり、公表しない広義裁定が海外自己であるので正反対である。しかし、こう考えないと辻褄が合わない。

SQのある週は上記の2つの数字が乖離するケースが多いが、SQ以外の週でも上記の2つの数字が少し大き目に乖離するケースは当然ある。外資系の売買の中に国内機関投資家の売買が混じったり、海外の売買が日系大手に流れたりするケースである。こうした種類の金額が4月第2週に特別増加する理由は存在しない。しかし、たまたま増加することならありうる。このたまたまが発生していたことも一つの理由かもしれない。

海外の売買には、現物買い・先物売りという広義裁定が混じっている可能性が高く、現物を大きく買い越しているわけでもない。ただ、現先総合で376億円の買い越しというのは、大量の売りと大量の買いがぶつかりあっている中では、ほとんど誤差に近いような少量の買い越しでしかない。加えてすぐ後に自己の所で説明するように、自己は取引所外で国内と海外の投資家から合計して3000億円の売りを引き取っている。取引所内で376億円しか買い越さなかったということは、取引所外も含めると売り越しであった可能性が高い。

自己は現先合計で79億円の売り越し。うち現物で866億円の売り越し。先物で787億円の買い越し。

この週の日銀ETFは2960億円の買い越しであった。週間買越額としては僅差で過去3番目の規模であった。日銀ETF以外の自己は現先合計で3000億円前後売り越していたことになる。

この週の東証公表の統計では裁定形成売買が1248億円入っていた。裁定残は微増であったため、その増加株数から計算するとネットの裁定売買は100億円の裁定形成売買になる。東証公表の大口裁定売買は、裁定形成がドイツ1300億円、みずほ350億円、ソシエテ100億円。裁定解消が野村400億円であった。海外のところで説明したが、この週は裁定形成売買は東証に報告されているが、裁定解消売買の方は一部しか東証に報告されていない。ドイツはオプションとのリバーサルからSQ時に裁定形成売買を現物に入れている。その際、SQ値が上に飛んだので、すぐに裁定解消売買を350億円ほど出した可能性が高い。350億円とはSQ当日のドイツによる日経平均ラージ先物の買越額である。おそらくであるが、裁定解消の先物買いは現物売りより後に出したと思われる。そのため厳密な形の裁定解消ではなく、裁定売買としては東証には報告しなかった可能性が高い。

自己は日銀ETFを除くと現先合計で3000億円の売り越しである。SQのある週ではこうした売買は多いので、特に多い金額でもない。通常はSQ精算値で外資系の東京自己と海外との間で玉が大量に動く。通常なら、日銀ETFの買いに対して海外が売り向かうケースが多い。ただ今回は日系大手でも玉移動があった可能性が高い。日系大手の場合は、日銀ETFの買いに対して売り向かった相手方が、海外か国内機関投資家か、その両方かの区別が付けられない。外資系だけの場合なら、海外自己は取引所内では先物ではなく現物を売り越している。

投信は現先合計で243億円の売り越し。うち現物で18億円の売り越し。野村総研によると4月第2週の国内株式型の公募投信は67億円の資金純流出であった。私募投信は少しだけ買い越していた可能性がある。

投信先物は225億円の売り越し。うち日経平均ラージ先物で13億円の買い越し。TOPIXラージ先物で229億円の売り越し。この週に行われた投信による日経平均ラージ先物の大口売買は下記のようになる。

野村アセット「NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(野村レバETF)」150億円前後の売り越し。
野村アセット「NEXT FUNDS 日経平均インバース・インデックス連動型上場投信」350億円前後の買い越し。

上記の2本で200億円の買い越しになる。同種のブルベア型投信で資産規模が大きい野村の1本、大和の2本とシンプレックスの2本を加えると、7本合計で10億円前後の買い越しであった。この週のブルベア型投信の売り越し買い越し金額はほとんどゼロに近かった。上記7本以外のブルベア型投信、それ以外の公募投信、私募投信が合計で日経平均ラージ先物を20億円ほど売り越し、TOPIXラージ先物を229億円売り越していたことになる。

信託は現先合計で369億円の売り越し。うち現物で11億円の売り越し。先物で358億円の売り越し。クジラが動かなくなり、信託は深い押し目以外では買い越さないという昔の姿に戻ってしまった。

個人は現先総合で436億円の売り越し。うち現物現金で622億円の売り越し。信用で113億円の買い越し。先物で73億円の買い越し。個人は今年に入ってから13週目までは連続で逆バリであったが、14週目、15週目は連続で順バリになった。

合計すると、4月第2週は「銀行、海外の買い越しvs個人、信託、投信の売り越し」であった。実質的には自己の内部で日銀ETFが大きく買い越しており、取引所外で海外か国内機関投資家が大きく売り越していた。個人をも含む国内投資家は下げ相場であるにもかかわらず売り越しであった。海外は取引所外をも含めると売り越しであった可能性が高い。一番確かなことは、最も大きく買い越していたのは日銀ETFであったことである。日経平均株価を329円の下落で食い止めることができたのは、やはり日銀ETFの買い支えが大きく貢献していた。

テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

2017年3月第5週 株 コメント

3月第5週 投資部門別売買状況 現物先物合計 現物 先物
投資部門別コメント週次20170331

3月第5週 大手証券 先物手口概算
ブログ週間先物手口20170331

3月第5週 日経平均株価 日中足チャート
週足株価ブログ用20170331



時系列データ
 投資部門別売買状況 現物と先物の時系列表
 投資部門別売買状況 長期時系列グラフ(月次) 
 投資部門別売買状況 先物累積買越枚数 グラフ
 先物建玉残高 証券会社別枚数推移 グラフ


2017年3月第5週の日経平均株価は前週末比353円安の18909円で引けた。週初は前週に続いてトランプ政権のヘルスケア法案失敗の材料を改めて不安視する形で安く始まった。28日、29日は権利付き最終日とその直後ということもあり株価は堅調に推移した。それが31日の後場から、森友学園問題に対する海外投資家の不信感が国内投資家に伝染する形で株価は急落した。日経平均株価は3週連続で下落して週を終えた。

3月第5週の最大の買い手は信託であった。現先合計で3042億円の買い越し。うち現物で31億円の買い越し。先物で3011億円の買い越し。うちTOPIXラージ先物で2428億円の買い越し。JPX日経400先物で249億円の買い越し。信託による先物買いは、運用ポートフォリオをベンチマークである配当込みTOPIX、あるいはJPX日経400に連動させることを目的とした半年度初めの恒例の先物買いである。

今回は3月28日の権利付き最終日に野村の自己がTOPIXラージ先物を買い越し、28日夜間(新年度である29日扱い)のJNETで信託に引き渡していた。その後も信託と思われる買いは入ったが、野村とみずほの買いが多く、半年前には多かった大和の買いが今回は少ししか見えなかった。

半年度の初めに信託がTOPIXラージ先物を最後に売り越したのは2002年3月第4週であった。信託は2002年9月第4週以降、半年度初めにずっとTOPIXラージ先物を買い越し続けている。その金額が増加し、ほぼ継続して1000億円を上回るまで拡大したのが2007年9月第4週以降である。そのグラフを下記に示す。

信託先物コメント週次20170303

上記の20回の合計で週間の株価騰落は10勝10敗、日経平均株価変動幅の平均は-9円となる。過去6回なら0勝6敗、日経平均株価変動幅の平均は-336円となる。信託の買いが増えるほど、株価の値下がり幅が大きくなっている。おそらくこれは単なる平均回帰の現象だと考える。信託の半年度初めの買いがあまり知られていなかった頃は多少は値上がりすることもあった。しかし、多くの人が知るところになると、買いの影響は事前に織り込まれてしまう。初期の頃は過小織り込み、最近は過大織り込みなのであろう。そのため長期で見た場合、日経平均株価の変動幅の平均は0円に近づくと思われる。

3月第5週の信託によるTOPIXラージ先物買い越し2428億円は前回、前々回よりも金額が減っている。これは、信託による先物買いの金額が減ったのではなく、先物売りの金額が増えたからである。2016年9月第5週比で買い金額は+919億円、売り金額が+1490億円である。この週は恒例のTOPIXラージ先物買いとは全く別に、信託よる大口売りが出ていたことを示す。31日金曜日に三菱UFJがTOPIXラージ先物をJNETで1250億円売り越していた。これが信託の売りである可能性が一番高い。この大口売りがあったために、表面上は信託によるTOPIXラージ先物の買越額は減少することになった。

個人は現先合計で378億円の買い越し。うち現物現金で432億円の買い越し。信用で161億円の買い越し。先物で215億円の売り越し。個人は今年に入ってから13週全週で逆バリである。

投信は現先合計で104億円の売り越し。うち現物で271億円の売り越し。野村総研によると、3月第5週の国内株式型の公募投信は84億円の資金純流入であった。この週も私募投信が売り越していた可能性が高い。

投信先物は167億円の買い越し。うち日経平均ラージ先物で587億円の売り越し。TOPIXラージ先物で687億円の買い越し。この週に行われた投信による日経平均ラージ先物の大口売買は下記のようになる。

野村アセット「NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(野村レバETF)」350億円前後の売り越し。
大和投信「ダイワ・ブルベア・ファンドⅣ ブル3倍日本株ポートフォリオⅣ」150億円前後の売り越し。

上記の2本で500億円の売り越しになる。同種のブルベア型投信で資産規模が大きい野村の2本、大和の1本とシンプレックスの2本を加えると、7本合計で700億円前後の売り越しであった。この7本のブルベア型投信以外の公募、私募投信が合計して日経平均ラージ先物を100億円ほど買い越し、TOPIXラージ先物を687億円買い越していたことになる。TOPIXラージ先物の買越額は投信にしては大きい。こういう買いは公募投信ではなく、私募投信で大口の買いがあったとしか考えられない。

自己は現先合計で1316億円の売り越し。うち現物で654億円の買い越し。先物で1969億円の売り越し。

この週の日銀ETFは784億円の買い越しであった。従って、日銀ETF以外の自己は現先総合で2100億円前後の売り越しになる。自己は取引所外で2100億円前後買い越していた可能性が高い。金額としては大きいが、中身は読み切れなかった。ツイッターには第3週の反対売買とだけ書いたが、それは一部であり、それ以外は非常に複雑である。

この週の東証発表の金額では裁定形成売買が318億円、裁定残はそれほど増えていないので、その増加株数から計算するとネットの裁定売買はゼロに近かったことになる。ただし、グロスの裁定売買自体は高水準であった。東証発表の裁定売買は、裁定形成で三菱UFJ500億円、野村300億円、ソシエテ300億円、裁定解消ではみずほ900億円が上位である。

3月第5週の最大の売り手は海外であった。現先合計で1366億円の売り越し。うち現物で549億円の売り越し。先物で816億円の売り越し。先物の投資部門別売買状況の海外と先物手口概算(3種の先物)の外資系14社を比較すると下記のようになる。

ブログ外資系と海外の比較20170331

この週はふだんとは異なり両者の数字の差が非常に大きい。3月第5週に関してはその裏側までは読み切れなかった。信託のTOPIXラージ先物の買いが外資系大手に流れたかもしれない。今までは小さかったが、今回は増えたことが考えられる。また、海外の大口売りの一部が日系大手に流れている。毎週存在するが、規模が大きかった。規模が大きいと裏側まで読めることもあり、実際一部なら読める。しかし全体像は複雑すぎる。

この2種類の数字の差の発生理由以外では読めることもある。先物手口概算の売り方のトップであるUBSの売りは、この週も大半がUBS本体運用部の売りである。UBS証券の日々の売買の合計では少しばかりの売り越しであった。すなわち、UBS証券の建玉変化の多くはモルガンMUFGとバークレーズで売られたものがUBS証券へと移管(またはギブアップ)されている。この2社はUBS本体運用部の御用達のような証券会社である。UBS証券の売りの大半は、UBS本体運用部が売ったとしか考えられない。

買い方のトップはABNアムロクリアリング。この証券会社はHFTが多いことで有名であるように、投機筋のシェアが高い。第5週は買い建玉を残しているが、近い将来に売りが出てくる投機筋の買いである可能性が高い。

この週の海外は、UBS本体運用部やゴールドマン、モルガンMUFGといった昨年の秋頃から買い上がっていた中長期性の資金による中短期志向の買いポジションの縮小が売り方の多くを占めていたと思われる。買い方はABNアムロクリアリングを筆頭とする投機筋の買いが多かった。

合計すると、3月第5週は「信託、個人の買い越しvs海外、自己の売り越し」であった。年度の初めということで、信託による先物買いはいつものように入った。日銀ETFも買い越したが、金額は少なめであった。海外はUBS本体運用部による売りが最も大きかった。その中で信託の一部が金曜日に大きく売り越していた。この売りこそが、海外が森友学園問題を嫌がって売っているという見方が広まったことによって出てきた国内機関投資家の売りである可能性が高い。こうした売買の合計が週間の日経平均株価を184円引き下げて終わることになった。



3月 月間 投資部門別売買状況 現物先物合計 現物 先物
投資部門別コメント月次20170331

記録にとどめておくべき事項、数字。

投信現物
野村総研によると、2月の公募型日本株投信は665億円の資金純流出。

投信による日経平均ラージ先物売買
野村アセット「NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(野村レバETF)」400億円前後の買い越し。
野村アセット「NEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信(野村ダブルインバースETF)」150億円前後の買い越し。
大和投信「ダイワ・ブルベア・ファンドⅣ ブル3倍日本株ポートフォリオⅣ」20億円前後の買い越し。

事法部門での自社株買い
3月15日に行われた三菱ケミカルによる300億円の買いが一番大口。

自己
日銀ETFが6060億円の買い。

裁定売買(大部分が自己、一部は海外)
東証発表 裁定形成売買の金額合計 974億円(現物買い・先物売り)。
東証発表 裁定残株数変化からの裁定形成売買推計値 1000億円前後(現物買い・先物売り)。

特殊な大口売買
ゴールドマンが3月15日、16日、22日に日経平均ラージ先物約2.3万枚、4650億円のクロス。これが自己買い・海外売り。これによって12月の海外の買いは4650億円少なく、自己の買いは4650億円多く見える。

3月月間では、「自己1兆1774億円(うち日銀ETF6060億円)の買い越し、個人4679億円の買い越しvs海外1兆6823億円の売り越し」で、日経平均株価は374円下落し18909円で引けた。

ゴールドマンの特殊なクロスを除くと、「自己7100億円(うち日銀ETF6060億円)の買い越し、個人4679億円の買い越しvs海外1兆2200億円の売り越し」であった。

テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

2017年3月第4週 株 コメント

3月第4週 投資部門別売買状況 現物先物合計 現物 先物
投資部門別コメント週次20170310

3月第4週 大手証券 先物手口概算
ブログ週間先物手口20170324

3月第4週 日経平均株価 日中足チャート
週足株価ブログ用20170324


時系列データ
 投資部門別売買状況 現物と先物の時系列表
 投資部門別売買状況 長期時系列グラフ(月次) 
 投資部門別売買状況 先物累積買越枚数 グラフ
 先物建玉残高 証券会社別枚数推移 グラフ


2017年3月第4週の日経平均株価は前週末比259円安の19263円で引けた。この週の株価下落の最も大きな原因はNY株安であった。大元はトランプ政権が提案したオバマケア廃止のためのヘルスケア法案が議会で採決できなかったことである。後につながるより重要な減税法案やインフラ投資のための法案の成立も危ぶまれるようになった。この影響が一番大きく現れたのが21日のNY市場であり、日本株も22日は急落となった。その下げ分を取り戻すことができず、日経平均株価は下落したまま週を終えた。

3月第4週の最大の買い手は個人であった。現先合計で4241億円の買い越し。うち現物現金で2238億円の買い越し。信用で1029億円の買い越し。先物で975億円の買い越し。個人は今年に入ってから12週連続で逆バリである。日経平均株価が259円という小幅な下げにもかかわらず、買越額は多かった。

こうした個人の大幅な買い越しを見ると、日銀の金融緩和の効果が十分ではないにしろ、ある程度は顕れていると強く感じる。個人が週間に4241億円以上買い越したことは過去にも何度かあった。しかしその時の環境は、株価が急落した週か、株価の水準がもっと低い週であった。19000円台でかつ259円程度の下げで個人がこれほど大量に買い越したことはかつてなかった。量的・質的緩和を強化すれば押し目買い、戻り売りの位置はより上昇するのである。しかし、日銀は景気後退につながりやすい株価下落を避けたいという以上の考えがない。株式市場については絶望的なほどの無理解、誤認識の塊である。ETF買いの出口戦略の準備さえも全くしていない。ETF年間6兆円買いが続いている間に、戻れば売りという株式市場のヒステリシスがもっと弱くなるかどうかはわからない。

自己は現先合計で3797億円の買い越し。うち現物で996億円の買い越し。先物で2801億円の買い越し。

この週の日銀ETFは1496億円の買い越しであった。従って、日銀ETF以外の自己は現先総合で2300億円前後の買い越しになる。22日にゴールドマンが日経平均ラージ先物に1万枚、2000億円のクロスを振っていた。第3週と同じとすると、下記の形態になる。

GS先物20170324


コールドマンの東京自己が2000億円の日経平均ラージ先物売り・OTCデリバ買いのマッチングをしたという考え方である。この説の難点は、2000億円もの売りと買いが同時に現れることがよくあるかという点である。過去においても年に1~2回程度は1万枚レベルのマッチングと思われるクロスがあったことは間違いない。問題は100日あまりの期間に同様のクロスが5回も起こることがありえるかという点である。この点は自信がない。可能性としては、例えばゴールドマンの海外自己売り、東京自己買いもあり得る。ただこの場合、何が目的か、外からは見えない部分に何らかのポジションがあるのか、などの疑問が残る。

後で示す投資部門別売買状況の海外と外資系証券14社の先物売買の差を考えると、ゴールドマンのクロスが自己買い・海外売りである可能性だけは非常に高いと言うことができる。日銀ETFとゴールドマン自己の買いを除くと自己は300億円程度の買い越しであり、ディーラーのポジション調整の売買として許される範囲内の金額であった。

この週の東証発表の金額では裁定解消売買が181億円、裁定残はそれ以上減っているので、その減少株数から計算すると800億円前後の裁定解消売買が入っていたことになる。東証発表の裁定売買は、裁定解消の買いがソシエテ300億円、みずほ300億円、裁定形成の売りがドイツ200億円、野村200億円などが上位である。ここではソシエテ自己の先物300億円買い、ドイツ自己の先物200億円売りについては後で使うので強調しておきたい。裁定にかかわる売り越し・買い越しの金額だけなら、絶対値が小さいので重要性は低い。

投信は現先合計で908億円の買い越し。うち現物で489億円の売り越し。野村総研によると、3月第3週の国内株式型の公募投信は216億円の資金純流入であった。この週は現物に数百億円の私募投信の売りを仮定しないとうまく説明できない。

投信先物は1396億円の買い越し。うち日経平均ラージ先物で1644億円の買い越し。この週に行われた投信による日経平均ラージ先物の大口売買は下記のようになる。

野村アセット「NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(野村レバETF)」1250億円前後の買い越し。
野村アセット「NEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信(野村ダブルインバースETF)」150億円前後の買い越し。

上記の2本で1400億円の買い越しになる。同種のブルベア型投信で資産規模が大きい野村のもう1本、大和の2本とシンプレックスの2本を加えると、7本合計で1600億円前後の買い越しであった。この7本のブルベア型投信以外の公募、私募投信が合計して日経平均ラージ先物を50億円ほど買い越し、TOPIXラージ先物を236億円売り越していたことになる。

3月第4週の最大の売り手は海外であった。現先合計で9533億円の売り越し。うち現物で3742億円の売り越し。先物で5792億円の売り越し。先物の投資部門別売買状況の海外と先物手口概算(3種の先物)の外資系14社を比較すると下記のようになる。

ブログ外資系と海外の比較20170324

ゴールドマンの2000億円とそれ以外の細かな項目の修正をすると両者はかなり近い金額になる。日経平均ラージ先物と日経平均ミニ先物の差が大きいが、これは日経平均ミニ先物の中心限月である6限月分の証券会社別の建玉残高が公表されていないからだと思われる。日経平均ラージ、ミニ先物の6限月同士でなら自己による裁定売買がもっとたくさんある可能性は十分に考えられる。いずれにせよ、ゴールドマンの1万枚、2000億円のクロスは、自己買い・海外売りである可能性が非常に高い。

ゴールドマン以外で大きく動いたのはUBSである。これはUBS本体運用部の売りである。理由はUBS証券の日々の売買を合計すると、第4週は買い越しであったからだ。UBSの大口顧客はバークレーズ、ドイツ、モルガンMUFGなどの他社で全部売ってUBS証券へと移管(またはギブ・アップ)している。こういうステルス売買をするのが最近のUBS本体運用部の戦術なので、UBS本体運用部の売りであることは間違いない。UBS本体運用部は1850億円以上、おそらく2千数百億円レベルで両先物を売り越していた可能性が高い。絶対収益追求型の運用ならば、トランプ政権の政策に不安が出たりするとリスク回避の売りになるのであろう。

UBSとゴールドマンのクロス以外は売買ともに小口でバラバラである。そして中長期の投資性の資金の比率が高い現物から、短期の投機性資金の比率が高い日経平均ラージ先物まで幅広く売り越している。第3週のような中長期の投資性の資金だけではなく、投資から投機にいたるまで様々な種類の資金が多数に分かれて売り越していた可能性が高い。UBS本体運用部とゴールドマンで大口クロスを振った客以外では、トランプ相場の終焉を感じ取って大量に売り越した大口顧客はいなかったようである。その代わり、様々な種類の多数の投資家が少しずつ、しかし合計すれば大量に売り越していた。

合計すると、3月第4週は「個人、自己、投信の買い越しvs海外の売り越し」であった。このうち、自己は日銀ETFの買いとゴールドマン自己による海外の代理の形での買いであった。すなわち、「個人、日銀ETF、投信先物の買いvs海外の売り」であった。ゴールドマンのクロスを除くと、海外の売りはUBS本体運用部が大きく売り越したが、それ以外は中小口の売りの集積であった。ヘルスケア法案の成立に失敗したトランプ政権の政策に対する楽観度合いが減少し、海外中心に売りが出て、日経平均株価は259円下落することになった。

テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

2016年 年間 株 コメント

2016年 投資部門別売買状況 現物先物合計 現物 先物
投資部門別売買状況2016年

2016年 大手証券 先物売買手口概算
先物手口2016年間

2016年 日経平均株価 日中足チャート
週足株価2016年間ログ用

時系列データ
 投資部門別売買状況 長期時系列表 (日本株)
 株式先物 投資部門別売買状況 累積買越枚数 グラフ
 大手証券 先物建玉残高 枚数推移 グラフ


2016年の日経平均株価は前年末比81円高の19114円で終えた。ただし、TOPIXは少し値下がりのまま年を終えた。

2016年の最大の買い手は自己であった。現先合計で3.8兆円の買い越し。うち現物で2.4兆円の買い越し。先物で1.4兆円の買い越し。

2016年は日銀ETFによる買いが4.6兆円入っている。従って、日銀ETF以外の自己は0.8兆円前後の売り越しであったことになる。一方、2015年は日銀ETF以外の自己は0.6兆円の買い越しであった。2年間では0.2兆円だけの売り越しになる。自己の中にはいろいろと複雑な取引があるが、2年というスパンで見ると売越額又は買越額は大きくはなかったことになる。

なお、2016年の年間では東証発表の実質裁定残(買残-売残)は7.9億株の減少、現物の裁定売買は2.9億株の裁定形成であった。裁定形成売買が入っているにもかかわらず、裁定残は大きく減少。裁定残をETFに替えて日銀に売っているからという説もある。しかし、その動きは夏頃までである。日銀が7月末にETF購入額を年間6兆円に増やした少し後あたりから、裁定形成売買の株数以上に裁定残の株数が増えている。2016年前半は日銀ETFの買いで説明できたが、後半は日銀ETFの買いとは動きが正反対である。理由はよくわからない。裁定残の統計自体がいいかげんで信用のできない統計であることが理由の1つであろう。ただ、自己の先物は年間で1.4兆円の買い越しなので、裁定売買は形成ではなく解消である。2.9億株の裁定形成は間違いであり、7.9億株の裁定解消の方が正確な数字により近かった。

信託は現先合計で2.7兆円の買い越し。うち現物で3.3兆円の買い越し。先物で0.6兆円の売り越し。このうち年間ではなく、1-9月の期間での現物は3.6兆円の買い越し。日銀は資金循環統計で同期間の公的年金の買越額を3.2兆円と推計している。この推計値は少し過大推計であり、実際の買越額はもう少し小さかったと見ているが、それほど実体から大きく離れた数字でもないとも考えている。またトヨタの自社株買いが信託方式で入っており、1-9月で0.7兆円の買い越しになる。すなわち、日銀推計の公的年金とトヨタによる信託方式の自社株買いの2種類の買いの合計が3.9兆円であり、その他もろもろの信託は1-9月に0.3兆円の売り越しであったことになる。2016年の前半は、株価が下落した結果、公的年金を中心に株を大幅に買い越した。しかし、10-12月は、海外主導で株価が大きく上昇したので、信託全体で現物株を0.3兆円売り越していたことになる。

事法は現先合計で2.2兆円の買い越し。大半が自社株買い。

その他法人は0.5兆円の買い越し。従業員持株会が買いの中心。

その他金融は0.3兆円の買い越し。信託や私募投信を通じて株を買っている金融機関はあるが、直接、株を買っている金融機関は大手では思い浮かばない。日銀の資金循環統計では農林水産金融機関、中小企業金融機関等といったところが買い越しになっている。この部門に含まれる大手以外の中小金融機関の小口の買いが積もって0.3兆円の買い越しになったとしか考えられない。

証券会社は0.1兆円の売り越し。東証に会員権を持っていない中小証券の売りである。実際の売りの大半は、中小証券を通じて売買をする個人の売りである。

銀行は0.5兆円の売り越し。取引所内取引では銀行の売り越しは続く。

保険は0.6兆円の売り越し。保険の売り越しは続いている。ただ日銀の資金循環統計を見ると、信託勘定では年の前半は買い越していたと思われる。後半は信託勘定でも売り越しの可能性が高い。

海外は現先合計で2.2兆円の売り越し。うち現物で3.7兆円の売り越し。先物で1.5兆円の買い越し。うち日経平均ラージ先物で0.7兆円の買い越し。日経平均ミニ先物で0.2兆円の買い越し。TOPIXラージ先物で0.7兆円の買い越し。

海外は2016年の株価下落、低迷時すなわち9月以前は大幅な売り越しであった。それが10月以降の株価上昇時には大幅な買い越しになっている。景気敏感で順バリという運用方針は変わっていない。9月以前の売りは現物の割合が高く、10月以降の買いは先物の割合が現物より少しだけ高かった。

9月以前の売りは、従来の下落時よりも現物売りの金額が大きかった。この売りの何割かはオイルマネーの売りであった可能性が高い。売り切りであり、買い戻しはほとんどなかったと思われる。そのため、海外現物は年間でも大幅な売り越しになった。

海外先物は、2016年秋からの上昇局面ではUBS、ゴールドマン、JPモルガン、バークレーズという4社の買いが特に目立った。しかし、年を通して見ると、最も大幅に買い越したのはJPモルガンの1.2兆円の買いであった。JPモルガンは年の後半に買い越しであっただけではなく、前半も買い越しであったため、年を通してなら最大の買い手になった。他の3社は年の前半に大きく売り越していた。UBSはUBS本体運用部の売買が多くを占める。しかし、年間では売り越しであり、日経平均ラージ先物買い・TOPIXラージ先物売りになっている。秋以降のUBSは両先物を買い越しながら、日経平均ラージ先物の買いの比率が高かった。これはUBS本体運用部が日経平均ラージ先物の割合を増やしたのか、全く別の顧客が買ったのか、現時点では区別がつかない。UBS以外の3社は年金などの長期性の資金が中期的観点からTOPIXラージ先物を中心に売買をしていると考える。

ニューエッジは2016年2月にTOPIXラージ先物で0.5兆円前後の超大口買いがあったことが大きい。メリルリンチは10月にTOPIXラージ先物を0.2兆円前後買ったことが一番寄与している。HSBCは12月だけで先物を0.6兆円売り越しており、外資系証券の中では一番異質の売買行動をとっていた。

投信は現先合計で2.4兆円の売り越し。うち現物で0.4兆円の売り越し。野村総研によると、日本株型公募投信からの資金純流出額は0.5兆円であった。私募投信が少しだけ買い越していた可能性が高い。

投信は先物で2兆円の売り越し。うち日経平均ラージ先物で1.6兆円の売り越し。TOPIXラージ先物で0.4兆円の売り越し。2016年年間の大口投信による日経平均ラージ先物の売買は下記のようになる。

野村アセット 「NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(野村レバETF)」 0.7兆円前後の売り越し。
野村アセット 「NEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信(野村ダブルインバースETF)」0.2兆円前後の売り越し。
大和投信 「ダイワ・ブルベア・ファンドⅣ ブル3倍日本株ポートフォリオⅣ」 0.1兆円前後の売り越し。

上記3種のファンドだけで合計1兆円の売り越し。他の同種のブルベア型ETFも小幅の売り越しであるが、それを加えたとしても1兆円強くらいであろう。残りの0.6兆円弱の日経平均ラージ先物の売り越しとTOPOXラージ先物の0.4兆円売り越しは、公募投信の売りも一部は含まれているとは思う。ただ金額としては私募投信による売り越しの割合が高かったと思われる。

2016年の最大の売り手は個人であった。現先合計で3.3兆円の売り越し。うち現物現金で3.8兆円の売り越し。信用で0.7兆円の買い越し。先物で0.2兆円の売り越し。

東証の数字は発行市場分を含まない。発行市場は買いしかなく、個人の比率が高い。発行市場も含めた売買金額推定値を日証協が2016年1-9月期までの数字を公表している。この間、発行市場を含まない東証統計では個人現物(含む信用)は0.3兆円の買い越しであった。これに対して発行市場も含めた場合、日証協の推計では0.7兆円の買い越し。それでも10-12月期には東証統計での個人の現物(含む信用)の売越額は3.5兆円。10-12月の戻り相場では個人は大量に売り越した。発行市場を含まない東証統計での個人の現物(含む信用)の売越額は年間3.2兆円である。発行市場を含めても年間2.8兆円弱の売り越しであった可能性が高い。

2016年の個人は週レベルで見た場合、52週中46週で逆バリであった。同時に下げ局面では小幅の買い越し、上げ局面では大幅な売り越し。年間で日経平均株価は小幅の上昇であるが、往って来いの相場では大幅な売り越しになっている。バブル崩壊後の個人は発行市場で買った分を取引所で売り越すというのが基本形であり、発行市場をも含めた売越額はそれほど大きな金額ではなかった。しかし、アベノミクス相場が始まってからは、個人の取引所での売越額は発行市場での購入分を大きく上回る金額になっている。デイトレーダーは売買金額は大きいが、買越額はそれほど大きなものではない。一方、高年齢富裕者層は、下げ局面での買いは少なく、上げ局面では大量に売ってくる。アベノミクス相場が始まって以降、個人の株式離れが本格化している。

2016年年間では「自己3.8兆円、信託2.7兆円、事法2.2兆円の買い越しvs個人3.3兆円、投信2.4兆円、海外2.2兆円の売り越し」であった。

個人は大幅な売り越しである。投信も一部に法人が売買する私募投信が含まれているが、過半は個人が中心に売買をする公募投信の売りである。すなわち、個人マネーは投信を含めても大幅な売り越しであった。個人を中心とする国内投資家が株を大量に売り越す中、買い方の多くは日銀と公的年金であった。これだけ国内投資家が株を売り越したのにもかかわらず株価が下がらなかった理由は、完全な官製相場であったことを意味する。公的資金の買いが入っていなければ、株価は大きく下落していたことは間違いない。その場合、負の資産効果で景気後退が発生していた可能性が高い。

日銀ETF買いについては反対意見が多い。自由な株式市場に対する冒涜という人もいる。しかし、日銀ETFの買いは現在のような環境下では必要なのである。これだけ日銀が買い支えながらも、国内投資家の資金は株式市場から続々と逃げ出している。これはバブルとは正反対の逆バブル現象であり、バブル崩壊の継続と言ってもよい。そして株価が戻れば売りという株式市場のヒステリシスの重病が定着してしまっている。その結果、日本の株価は長期で見た場合、諸外国との比較で極端に下がったままの状態が続いている。こうした重要な事実をまず理解する必要がある。

日本の株式市場が陥っている重い病気は、日銀ETF買いという対症療法だけでは治らない。ヒステリシスという恐ろしい病気が定着してしまった以上、その治療をするためには極端な政策を採用しないと治らない。日銀の金融緩和は規模が小さすぎるのである。

この病気を治す方法は、株価を緩やかでよいから右肩上がりの状況をできるだけ長期間維持することしかない。日本以外の国では株価を高値掴みしても、何年か塩漬けにしておけば元に戻る。日本では高値で株を買ってしまうと損をする可能性が非常に高い。損切りのうまい人しか株で儲けることができない。あるいは高値では必ず売り、底値を買うことに徹するしか儲かる方法はない。この20数年間続いた「勝利の方程式」を、株価の長期の右肩上がりを復活させることにより「敗北の方程式」に変えさせる必要がある。

国内投資家の資金をブラックホールのように吸い込む国債という資産がまだ数百兆円規模で日銀の外に残っている。金余りの機関投資家は、金利が非常に低いこの国債の購入に殺到する。そして機関投資家は、この資金運用難こそが日銀の金融緩和の大きな副作用だと主張した。

政府・日銀は、資金の運用先がないと抗議する機関投資家がいた場合、株を売らずに、株を大量に買えと言わなければならなかったのである。これこそが量的緩和のもたらすポートフォリオ・リバランス効果という大変重要な波及ルートでもあった。ところが日本ではあまりにも株価の値下がりが長続きしてきたため、量的緩和がもたらした株式市場に対するポートフォリオ・リバランス効果はプラスではなく、巨大なマイナスが続いたのである。日銀と公的年金以外の国内機関投資家は、アベノミクス相場が開始されてからも株を売り越し続けてきた。もう一つの重要な買い手は、日銀の量的緩和によって資金運用難に陥れることが不可能である海外投資家だけであった。政府・日銀は自分たちが行っている政策がどのようにして効果が発現するのかという一番重要な部分を理解できていなかったのである。

その結果、政府・日銀は資金運用難と主張する機関投資家の意見を聞き入れてしまった。そして機関投資家は株を売り続けた。これは政府・日銀が実施すべき政策とは正反対の政策を採用するという自爆戦略であった。採用すべき政策は、日銀が国債をもっと大量に購入し、機関投資家がしがみつく国債から無理矢理にでもその資金を引き剥がし、株を買わざるをえない状況に追い込まなければならなかったのである。超金余りの機関投資家の資金が継続的に株へと向かい続けるようになれば、株価は右肩上がりが続かざるをえない。そうなってから、ようやく株式市場のヒステリシスは克服され、普通の国へと戻ることができる。そして、この政策を長く続ければ、いずれ必ず株式市場はバブルへと進行して行く。このバブルに近づいた時こそ、日銀はETFを売却し、バブル化を防がなければならない。財政再建にも貢献する。このETF買いの出口戦略こそが大変重要なのである。

日銀は国債もETFも出口戦略なしに大量購入を続けてきた。国債購入の出口戦略がないからこそ9月にはイールドカーブコントロール付き量的・質的緩和というテーパリング色の強い政策に移行せざるをえなかった。日銀「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に対する代替案というものを提案したのは、出口戦略を明確に示した上で、株式市場をバブル崩壊から救いたかったからである。出口戦略なしに金融緩和を長期間続けることはできない。出口戦略なき日銀ETF買いは、たとえ株価が下がったとしてもいずれはテーパリングに向かわざるをえなくなる。そして株価が上がったとしても、現状では株の主な買い手は海外投資家になる可能性が高い。それでは2015年に実際に起こったように、株価が上昇するほど日本の国富は減少するばかりになる(アベノミクスがもたらした株価上昇による100兆円の損失)。

欧米で研究の進んでいる「物価水準の財政理論」という学説は、ゼロ金利に近い国債の大量発行が株式市場から資金を奪い取り、株価上昇を抑制するという効果が全く考慮されていない。日本では第2次世界大戦終了直後のハイパーインフレ期にも株価上昇率は物価上昇率に遠く及ばず、大半の株主は大損をした。インフレ税は国債や預貯金に課するべきものであり、株にまで課してしまうと経済に対するマイナス効果が非常に大きくなる。日本以外の国で、最近はそのようなマイナス効果は発生していない。「物価水準の財政理論」が日本では全く適用できないとは言わないが、日本経済の異質性が考慮されていない。少なくとも株式市場のヒステリシスの克服をも目指した欧米とは異なる「日本バージョンの物価水準の財政理論」でなければならない。「欧米バージョンの物価水準の財政理論」をそのまま日本に適用してはいけない。

私の日銀「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に対する代替案という提案がベストの提案であるとは言わない。日銀ETF買いに反対するのは構わない。しかし、代替案なしに反対ばかりで何もしなければ、株価は下落し続け、日本経済もマイナス成長が続いてしまう。この負のスパイラルを容認するわけにはいかない。物価水準の財政理論を安易に採用することもできない。株式市場に深く通じている者であるなら、日本の株式市場を、そして日本経済を救い出すことのできる新しい具体案を競って提案しあうべきである。

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2017年3月第3週 株 コメント

3月第3週 投資部門別売買状況 現物先物合計 現物 先物
投資部門別コメント週次20170310

3月第3週 大手証券 先物手口概算
ブログ週間先物手口20170310

3月第3週 日経平均株価 日中足チャート
週足株価ブログ用20170317

時系列データ
 投資部門別売買状況 現物と先物の時系列表
 投資部門別売買状況 長期時系列グラフ(月次) 
 投資部門別売買状況 先物累積買越枚数 グラフ
 先物建玉残高 証券会社別枚数推移 グラフ


2017年3月第3週の日経平均株価は前週末比83円安の19522円で引けた。この週はNY株価が少し上昇したが、為替レートが円高方向に振れたため株価も上昇を維持できなかった。前週末10日発表のアメリカ雇用統計が良かったが、織り込み済みで為替レートは少し円高で始まった。15日のアメリカFMOCで政策金利が引き上げられたが、FMOCメンバーの年内の利上げ予想が年3回と変化がなかった。これを嫌気する形で為替レートはさらに円高方向に振れた。円高という環境下では今の株価は上昇しにくい。金曜日には森友学園の籠池理事長が安倍首相から100万円の寄付を受けたという発言が報道され、この発言も嫌気された。週間では小幅安となり、4週連続の上昇にはならなかった。

3月第1週の最大の買い手は自己であった。現先合計で6350億円の買い越し。うち現物で3996億円の買い越し。先物で2355億円の買い越し。

この週の日銀ETFは2232億円の買い越しであった。従って、日銀ETF以外の自己は現先総合で4100億円前後の買い越しになる。日銀ETF以外の自己がこれほど大幅な買い越しになるのは昨年12月第2週以来のことである。そして3月第3週は12月第2週と共通点がある。それはゴールドマンによるJ―NETでの日経平均ラージ先物の大口クロスである。12月第2週は3万枚であったが、3月第3週は1.3万枚である。規模は小さくなったが同じことが行われた可能性が高いと考える。その仕組みを下記に示す。

GS先物20170317

16日の1万枚、2050億円のクロスが見えた時、12月第2週の反対売買と考えていた。しかし、投資部門別売買状況を見ると積み増しであった。15日にも同じ売買が3000枚、600億円あった。これらは海外による日経平均ラージ先物の売りとOTCデリバの買いとをゴールドマンの自己がマッチングさせたことになる。

TOPIXラージ先物はOTCデリバの買いを自己が先物でカバーしたものと考えている。1250億円という金額は、後で示す外資系証券14社の売買と先物の投資部門別売買状況の海外の差から算出した。これは特殊な取引ではなく、毎週存在する普通の売買である。OTCデリバと書いたが、その内容はエクイティ・スワップのケースが多いと思うが、それ以外にもOTCデリバとは言えない現物の取引所外取引、SGX先物、大証オプション、日経平均リンク債など様々なものを含むものを一言で表現したものである。この2種類以外の自己には200億円ほどの買い越しがまだ残る。200億円というのはディーラーによるポジション調整の売買の範囲内として認められる金額である。

この週の東証発表の金額では裁定形成買いが1374億円、裁定残はそれ以上増えているので、その増加株数から計算すると1900億円前後の裁定形成売買が入っていたことになる。どちらの金額の方がより正しいかはわからないが、裁定形成の先物売りは、すぐ前に書いた様々なカバー取引から発生する先物買いによって見えなくなっている。東証発表の裁定形成の売りは、三菱UFJ800億円、ドイツ300億円、みずほ250億円などが上位である。

個人は現先合計で1762億円の買い越し。うち現物現金で538億円の買い越し。信用で791億円の買い越し。先物で433億円の買い越し。個人は今年に入ってから11週連続で逆バリである。日経平均株価が83円という小幅な下げにもかかわらず、買越額は多かった。

信託は現先合計で795億円の売り越し。うち現物で1391億円の売り越し。先物で596億円の買い越し。第2週は同じ運用会社内での信託勘定から投信勘定への移し替え分を差し引くと少しばかりの買い越しであった。しかし、第3週は再び売り越しに戻ってしまった。個人は買越額が大きいことに驚きを感じたが、信託は売越額が大きいことに驚きを感じた。

投信は現先合計で1767億円の売り越し。うち現物で595億円の売り越し。野村総研によると、3月第3週の国内株式型の公募投信は575億円の資金純流出であった。この週の現物売りは公募投信の解約で大半の説明がつく。

投信先物は1172億円の売り越し。うち日経平均ラージ先物で1083億円の売り越し。この週に行われた投信による日経平均ラージ先物の大口売買は下記のようになる。

野村アセット「NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(野村レバETF)」700億円前後の売り越し。
野村アセット「NEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信(野村ダブルインバースETF)」150億円前後の売り越し。

上記の2本で850億円の売り越しになる。同種のブルベア型投信で資産規模が大きい大和の2本とシンプレックスの2本を加えると、6本合計で1000億円前後の売り越しであった。この6本のブルベア型投信以外の公募、私募投信が合計して日経平均ラージ先物を100億円ほど売り越し、TOPIXラージ先物を87億円売り越していたことになる。

3月第3週の最大の売り手は海外であった。現先合計で6033億円の売り越し。うち現物で4070億円の売り越し。先物で1963億円の売り越し。先物の投資部門別売買状況の海外と先物手口概算(3種の先物)の外資系14社を比較すると下記のようになる。

ブログ外資系と海外の比較20170310

この週は上記2種類の差が通常の週よりも大きい。この差額はすべて自己の売りと仮定し、先に書いた外資系による自己のTOPIXラージ先物売りの金額を1250億円と算出した。外資系の売買には海外と自己の他に日系の機関投資家の売買も混じっている。しかし、その金額は大きなものではないので、誤差は当然存在するにしても大きくはない。

自己が海外の代理として3900億円買い越していると仮定しても、依然として2100億円程度の海外による売り越しが残る。そしてその売りは現物の売りである。通常は、FRBが予想ほど金利を早く上げないで円高という材料による売りは、投機筋が日経平均ラージ先物に売りを出してくるケースが多い。しかし、今回はそうした売りがあったかもしれないが、売り越しに大きく寄与したのは現物の売りであった。その多くは、昔から長期性の資金で日本株を保有し、昨年秋以降の上昇局面で買い上がりをしなかった投資家で、日本株の売り場をずっと探し続けていた海外投資家が現物を中心に売りを出してきたと推測する。

合計すると、3月第3週は「自己、個人の買い越しvs海外、投信の売り越し」であった。この週は自己部門に海外の代理とも言える買いが大量に入った。それを差し引いても、「日銀ETF、個人の買い越しvs海外、投信の売り越し」であった。それほど悪材料が出なかった割には海外の売りが現物中心に多かった。日経平均株価は83円だけの下落で週を終えることができたが、日銀ETFによる下値での買い支え効果はこの週も非常に大きかった。

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