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実質実効為替レート、名目実効為替レートの長期推移

実効為替レート ブログ用 202102

非貿易財を含む消費者物価指数から作成される実質実効為替レートを見る場合、単純にその変動だけを見てはならない。

バラッサ・サミュエルソン効果(経済成長率が相対的に高い国は購買力平価、ないしは実質実効為替レートも上昇するという現象)と合わせて見ることが必要。

日本はバラッサ・サミュエルソン効果に貿易摩擦も加わり、1995年までは異常な円高が発生。

その後、日本経済の成長率低下に伴うバラッサ・サミュエルソン効果の是正=超円高の是正が起こった。

しかし、超円高の是正は不十分。

日本周辺のアジア諸国では、固定レート制や政府・中央銀行の為替介入などにより経済成長に伴う通貨高=バラッサ・サミュエルソン効果がほとんど発生していない。


(購買力平価との関係)

IMFが算出している購買力平価で見ると、1ドル=101円であり現状はそれよりも円安。

従って、最近のIMFは円レートを適正とは評価しても、割安と評価することはない。

しかし、IMFの見方には問題点がある。


第1点は、日本の購買力平価で見た一人当たりのGDPは欧米と比較すると過去のように高くはない。

先に示したバラッサ=サミュエルソン効果で示した通り、豊かではない国の為替レートは購買力平価で見て割安なのは当然。

これは、対米ドルや対欧州諸国の通貨に対して円が割安であることを正当化できる理由である。


第2点は、日本と貿易量の多いアジア諸国の通貨は、購買力平価で見ても非常に割安な国ばかり。

シンガポールなどの非常に豊かな国の通貨は日本よりかなり割安。

中国のようにあまり豊かとは言えない国の通貨はさらに割安。

日本と貿易量の多いアジア周辺諸国は、購買力平価で見ると超割安な国が多い。


結果として、円は購買力平価で見ると円安、実質実効為替レートで見ると基準時点によっては円安。

より厳密には欧米諸国の通貨に対しては超円高とは言えないが、大半のアジア諸国の通貨に対しては超円高。

詳細→アジア諸国の近隣窮乏化政策と日本経済の低迷

この超円高・アジア通貨安は是正されなければならない。


なお、購買力平価説の通説的解釈は物価変動の差→為替レートである。

1995年以降の日本については為替レート(円高)→物価とGDP変動の差(物価安とGDPの低迷)、という因果関係の方が大きい。

この因果関係についての考え方は特殊なように見える。

他方、通貨安→GDP増加という考え方は広く見られる。

アメリカは年に2度の為替報告書を公表して日本を通貨安誘導の疑いありと監視対象国に指定し続けている。

通貨安→GDP増加を認めるならば、通貨高→GDP低迷と物価安という因果関係も50%は認めるべきである。

過去30年近い日本とアジアの関係においては、この因果関係は50%を大きく上回っていたと思う。


(超円高の是正方法)

1995年以降、実質実効レートが大きく円安方向に移動したことは事実。

しかし、名目実質実効レートは少ししか円安になっていない。

この現象下で発生したことは、日本の輸出産業の製品価格の下落、輸出産業の崩壊、物価下落、賃金下落、成長率低下。

賃金を見ても、世界の先進国の中で日本だけが上昇していない。

OECD時給

電機を中心とする輸出成長産業が大崩壊。

その結果、賃金は低下。

実質円高の是正方法としては最悪。

今後の実質円高の是正は名目円レートの引き下げでなければならない。

それならば賃金、物価の上昇も可能。


(経常黒字で円高進行?)

日本は円高が原因で全然豊かになれない。

反対に、浪費壁があるアメリカは豊かになり、同時に経常赤字も拡大。

日本=経常黒字、アメリカ=経常赤字の原因を通常の経済学で考えると、円が安すぎ、米ドルが高すぎになる。

そのため、先に書いた通りアメリカは為替報告書で日本は円安誘導の疑いありと監視し、実際に円安誘導をしていると非難することもある。

日本国内でも、経常黒字で円高になるのは当然という意見はある。

購買力平価説の通説的解釈とも言える。


しかし、経常黒字の原因は円高のために賃金上昇がなく、消費も節約しすぎで、輸入が増えないことも一因。

円高差損に懲りた日本企業も国内では生産能力をほとんど増やさず、対外直接投資は大きく増やす。

結果として貿易赤字は増えず、第一次所得収支の黒字が拡大し、経常収支も黒字を維持。


世界的には、通貨安が原因で経常黒字になる国が多い。

日本に関しては円高を原因とする経常黒字が継続。

円安になると所得が増え、輸入も増え、貿易黒字は減るかもしれない。

企業の対外直接投資も減り、経常黒字も減るかもしれない。

これに近い貿易・サービス黒字、経常黒字の縮小はバブル時代の末期に実際に発生、現在のアメリカとも共通点が多かった。


ところが、日本ではバブル=悪という全面否定論が強すぎる。

バブル時代は資産価格の上昇に対して、賃金と物価の上昇率が低すぎたことが失敗という総括に変えることが必要。


(経済成長の困難化)

長年の超円高・アジア通貨安継続の結果、日本の輸出産業の基盤は大きく崩壊し、現在も崩壊中。

その結果として、日本の先端製造技術、規模の経済、外部経済が失われただけではない。

日本人の夢と希望が失われ、勤労意欲、学習意欲も低下。


こうした夢と希望の消失などは少子高齢化でも発生。

ただ日本の場合、少子高齢化以上に超円高・アジア通貨安が寄与。

少子高齢化で夢と希望の消失が発生するからこそ、超円高・アジア通貨安は是正する必要があった。

実際は夢と希望の消失を少子高齢化や既得権益層の過保護が原因と決めつけ、超円高・アジア通貨安を是正しなかった。


現時点では、円安だけで経済を再生させようとしても完全に手遅れであり、もはや不可能。

しかし、円高進行なら、産業崩壊は加速=日本経済の崩壊も加速=国民は貧困化。

食料や石油など輸入品価格上昇という痛みを伴う割には、経済成長は簡単ではない。

それでも経済衰退の加速防止には円安が不可欠。


なお、コーポレートガバナンスコードは、ROE重視より先に、賃金上昇の重視へと改める必要がある。

今まで書いてきた世界経済における日本の特殊事情を知らない経営学者が、欧米の常識をそのまま日本に導入したこともまた大きな失敗。


(逆ウォーラースティン的没落)

20世紀後半は、豊かな北、貧しい南という南北問題が世界経済の大きな問題であった。

南北問題の原因は、先進国の後進国に対する搾取という考え方があった。

マルクスの搾取理論を世界経済に応用したもので、従属学派と呼ばれた。

しかし、従属学派は人気が広まらなかった。

この従属学派の搾取理論を取り入れて発展させたのがウォーラースティンである。

ウォーラースティンの理論は中心国による周辺国からの搾取というものが大きな柱である。

ウォーラースティンの理論は経済学の主流にまではならなかったが、従属学派を上回る賛同を世界で獲得した。


私はウォーラースティンとは正反対の、逆ウォーラースティン的な考え方を持つ。

中心国日本による周辺国アジアに対する過剰贈与という考え方である。


搾取もあるが、搾取がメインだとは考えていない。

中心は過剰贈与である。

過剰贈与の具体的な中身が、超円高・アジア通貨安である。

日本が行った援助もある。

加えて、多くのアジア諸国が行った保護貿易、補助金、通貨安誘導などもある。

この最後の部分は搾取と言った方が良いであろう。


最近、ミラノヴィッチのエレファントカーブ理論が勢いを増している。

エレファントカーブはアメリカの格差問題を説明するのにある程度成功していると思う。

日本に関しては、エレファントカーブではうまく説明できない点が多すぎる。

逆ウォーラースティンの方がより適切。


(参考)

上記の実質実効為替レート、名目実効為替レートは1964年1月が基準時点。

仮に1ドル=360円と決定された1949年4月を基準時点にすると、円は少なくとも米ドルとの実質レートではさらに割高になる。

仮に1ドル=4.27円であった1941年12月を基準時点にすると、1949年4月の1ドル360円はおそらく割安。

しかし、第2次世界大戦終了後のハイパーインフレ期の日本の消費者物価上昇率は精度の低い推測値しか存在しない。

正確な消費者物価上昇率を計算できないため、おそらく割安とは言えても、何%割安かという正確な数値を計算することは不可能。

従って、第2次世界大戦以前までさかのぼって実質実効為替レートの推移を見ようとしても、正確な計算が不可能である以上、正確な分析もできない。

第2次世界大戦以前までも含む分析は、正確性の低い分析にならざるをえない。

あまりにも誤差の大きい分析をして結論を出すのは、逆に危険になる。


(出所)
BIS effective exchange rate indices
Narrow indices comprising 27 economies, with data from 1964
中国だけは、Broad indices より

オーストラリア(ドル)、オーストリア(シリング→ユーロ)、ベルギー(フラン→ユーロ)、カナダ(ドル)、台湾(ドル)、デンマーク(クローネ)、ユーロ圏(ユーロ)、フィンランド(マルカ→ユーロ)、フランス(フラン→ユーロ)、ドイツ(マルク→ユーロ)、ギリシャ(ドラクマ→ユーロ)、香港(ドル)、アイルランド(ポンド→ユーロ)、イタリア(リラ→ユーロ)、日本(円)、韓国(ウォン)、メキシコ(ペソ)、オランダ(ギルダー→ユーロ)、ニュージーランド(ドル)、ノルウェー(クローネ)、ポルトガル(エスクード→ユーロ)、シンガポール(ドル)、スペイン(ペセタ→ユーロ)、スウェーデン(クローナ)、スイス(フラン)、イギリス(ポンド)、アメリカ(ドル)、中国(人民元)の合計27の国、地域の実質実効為替レートと名目実効為替レート。

メキシコ(ペソ)は実質実効為替レートだけ

2021年3月20日チャート更新


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中央銀行の政策比較

日銀、FRB、ECB、BOEおよび日銀、香港金融管理局
バランスシート、マネタリーベースの推移と対GDP比率の推移を比較


中央銀行比較201510

香港のマネタリーベースがバランスシートとの比較で小さい理由は、準備預金には含まれない巨額の政府預金の存在。香港金融管理局は、日本でいうところの財務省の外為特会と日銀を連結したような勘定であり、単純に比較ができるものではないことも注意。

なお、下記の意見を参照にしただければ幸いです。
 日銀「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に対する代替案
2016年10月2日更新


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世界の地価 主要国の長期時系列グラフ

主要国の住宅用不動産価格ブログ用202010

出所 BIS
オーストラリア、ベルギー、カナダ、スウェーデン、ドイツ、デンマーク、スペイン、フィンランド、フランス、イギリス、香港、アイルランド、イタリア、日本、韓国、マレーシア、オランダ、ノルウェー、ニュージーランド、スウェーデン、タイ、アメリカ
22ヶ国の住宅用不動産価格の推移

2021年2月28日更新


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