2016年10-12月期 日銀統計 株 コメント

日銀資金循環統計による株式投資部門別売買・保有残高
資金循環統計コメント表201612

2016年10-12月期の日銀の資金循環統計から、株式投資部門別売買・保有残高の直近分を取り上げ、重要な箇所に色をつけて示した。日銀統計は、東証が公表している投資部門別売買状況という統計ではカバーしていない取引所外取引や株の発行、償却をも含んだ大変貴重な統計である。他方、その推計方法には問題点も数多く存在する。今回も日銀統計の数字を、その問題点と合わせて説明することにする。

最初に日銀統計が東証統計との比較で、常に良い点と悪い点を示す。

日銀統計の最大の欠陥は日銀ETFの買い主体の誤りである。この期の日銀ETF買いは1兆4511億円。少なくとも最近の日銀ETF買いの大半は東証統計では自己に含まれている。この誤りを指摘し、日銀は誤りを認めたのであるが、相変わらず投信に含めて算出を続けている。この分を考慮すると、投信は7723億円の売り越しから6800億円前後の買い越しへ、証券会社は2兆1504億円の買い越しから7000億円前後の買い越しへと修正されなければならない。

次が家計の3兆4505億円の売り越し。これは東証統計の個人3兆5034億円の売り越しから、発行市場等での購入を加えたものである。しかし、日銀の発行市場等での購入は常に過小推計である。より正しい数字は日証協が発行等を含めた個人売買の推計値を公表している。日証協の推計値は3兆0026億円の売り越しであり、日証協の数字が日銀の数字以上に正確性が高い。

海外は日銀統計では2兆7032億円の買い越し。東証統計では2兆4983億円の買い越し。これは発行等や取引所外取引の分をも含めて直接報告を受けている日銀の数字が最も正確性が高い数字である。

ここから先は、推測でしかないとこを書く。ただ推測の中には、当たっている可能性が高そうな推測もある。

国内銀行は503億円の売り越し。この数字の一つ下に、農林水産金融機関が6141億円の売り越しとあるが、この数字は完全な誤りである。日銀統計はフロー、ストック、調整の3部門からなる。そして調整の数字の変動は資産が株である場合は、TOPIXとある程度は連動するのが普通である。しかし、農林水産金融機関の調整の数字はTOPIXとの乖離が大きすぎる。従って、日銀統計における農林水産金融機関の株についてのストック、フロー、調整の数字は全て誤りである。4期連続の誤りであるが、誤りを繰り返す理由がわからない。

国内銀行に戻ると、東証統計では2418億円の売り越しであり、503億円売り越しの日銀統計より大きく売り越したことになっている。一方、この期に三菱UFJホールディングスが自社株買いを1000億円実施している。これは持株会社ということで東証では事法扱いにしている。しかしこれは東証がおかしく、実体は銀行の買いである。東証は訂正の努力を約束したのであるが、まだ訂正はなされていない。日銀統計の503億円の売り越しを否定できる材料もないので、ある程度は正確性の高い数字として扱う。

非金融法人企業は7368億円の売り越し。これに相当する東証の事法とその他法人は6142億円の買い越し。相当大きな差がある。ただ事法の自社株償却は大量に存在しているはずであるが、外部からはその数字はわからない。目に見える自社株買いから目に見えない自社株消却を差し引かなければならない。この差は自社株償却の数字と考え、日銀の数字をある程度は正確性の高い数字と信用するしかない。

薄赤色の部分が、企業年金を中心とする私的年金である「年金基金」と「公的年金」、および両者の合計である「年金計」を表す。公的年金は564億円の買い越し。GPIFと3共済の株式買い越し金額を推計してみると、もう少し大きな数字になった。しかし推計には必ず誤差を伴うので、日銀統計の564億円は妥当な推計値の範囲内だと思われる。

一方、私的年金である年金基金は859億円の買い越し。この数字の元になっている数字の一つは、東証統計の信託3442億円の売り越しである。信託の中で、買い越しは公的年金と信託方式の自社株買いくらいであろう。それ以外の昔から存在する多数の信託の大半は逆バリであり、売り越しのはずである。昔からある年金基金が859億円も買い越すとはとても考えられない。過去の年金や信託の売買行動パターンを考えると、日銀の買い越しという推計は誤りであり、実際には東証信託の何割かを占めるほどの売り越しである可能性が高い。

保険は958億円の売り越し。一方、東証統計の保険は1769億円の売り越し。この数字も日銀統計の方が誤りが大きい。この期間のTOPIXの上昇率は14.8%。保険の株式資産の増加率は14.1%であり、TOPIXを下回っている。保険の株式資産が仮に100%TOPIXに連動していたと仮定するならば、保険の株式売越額は1769億円に近い数字になる。信託の売越額からすると、生保の信託勘定での買い越しは考えられない。正確な数字は日銀よりも東証の方に近い可能性が高いと見る。

以上のことを頭に入れておく必要がある。その上で日銀の資金循環統計に基づく2016年10-12月期における投資部門別売買状況は「海外2兆7032億円の買い越し、証券会社2兆1504億円(修正後7000億円)の買い越し、vs家計(=個人)3兆4505億円(修正後3兆円)の売り越し、投信7723億円の売り越し(修正後は6800億円の買い越し)」であった。この期の日経平均株価は2665円値上がりして19114円で引けた。この期の証券会社の買いの大半は裁定買いであり、大元は海外の先物買いである。株価下落の防止に日銀ETF買いの貢献はあったが、株価上昇のほとんどは海外の一手買いにより上昇した期であった。

参照 株式売買関連の統計
 日銀 資金循環統計に基づく株式売買と株式保有残高
 投資部門別売買状況 現物と先物の時系列表
 投資部門別売買状況 長期時系列グラフ(月次)
 株式先物 投資部門別売買状況 累積買越枚数
 大手証券 先物建玉枚数推移 グラフ
 日本株 株式分布状況調査 2015年度

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2017年4月第1週 株 コメント

4月第1週 投資部門別売買状況 現物先物合計 現物 先物
投資部門別コメント週次20170407

4月第1週 大手証券 先物手口概算
ブログ週間先物手口20170407

4月第1週 日経平均株価 日中足チャート
週足株価ブログ用20170407


時系列データ
 投資部門別売買状況 現物と先物の時系列表
 投資部門別売買状況 長期時系列グラフ(月次) 
 投資部門別売買状況 先物累積買越枚数 グラフ
 先物建玉残高 証券会社別枚数推移 グラフ


2017年4月第1週の日経平均株価は前週末比245円安の18665円で引けた。この週も円高、NY株安が少しずつではあるが進行し、日本株も上昇しにくい環境下にあった。4日火曜日の下げは円高進行を嫌気した下げであった。6日木曜日はアメリカのFOMCの議事録に株価が高すぎるという文言があったため、NY株が下落した。すると、日本株はより大きく下げることになり、年初来の安値を更新した。7日金曜日はアメリカ軍がシリアをミサイル攻撃のニュースで一時急落したが、後場は円安進行とともに戻した。日経平均株価は4週連続の下落で週を終えることになった。

4月第1週の最大の買い手は投信であった。現先合計で2768億円の買い越し。うち現物で1億円の売り越し。野村総研によると、4月第1週の国内株式型の公募投信は160億円の資金純流入であった。この週も私募投信が少し売り越していた可能性が高い。

投信先物は2769億円の買い越し。うち日経平均ラージ先物で2646億円の買い越し。TOPIXラージ先物で116億円の買い越し。この週に行われた投信による日経平均ラージ先物の大口売買は下記のようになる。

野村アセット「NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(野村レバETF)」1100億円前後の買い越し。
野村アセット「NEXT FUNDS 日経平均インバース・インデックス連動型上場投信」700億円前後の買い越し。

上記の2本で1800億円の買い越しになる。同種のブルベア型投信で資産規模が大きい野村の1本、大和の2本とシンプレックスの2本を加えると、7本合計で2100億円前後の買い越しであった。小型のブルベア型投信は他にもたくさんある。それらの投信も買い越していたであろう。上記7本の以外のブルベア型投信、それ以外の公募投信、私募投信が合計で日経平均ラージ先物を500億円ほど買い越し、TOPIXラージ先物を116億円買い越していたことになる。

事法は現先合計で867億円の買い越し。うち現物で859億円の買い越し。最近発表された自社株買いで大口のものとしては、「NTT、4月1日-12日、432億円」があげられる。

自己は現先合計で473億円の買い越し。うち現物で807億円の売り越し。先物で1281億円の買い越し。

この週の日銀ETFは1510億円の買い越しであった。従って、日銀ETF以外の自己は現先合計で1000億円前後の売り越しになる。

4月6日にゴールドマンがJNETでTOPIXラージ先物900億円のクロスを振っていた。これはおそらく海外売り・自己買いであり、ゴールドマンがよくやる先物とOTCデリバのマッチングであろう。これだと自己がネットで900億円の買い越しになる。上記の1000億円の売り越しとは矛盾する。この1900億円の差を説明できるシナリオの1つが下記のような内容である。

ブログ週間現物先物デリバ201704



上記のシナリオが正しいとは言わないが、ある程度近い売買があった可能性は十分に考えられる。深くは説明しないが、自己というのは常に非常に複雑である。

この週の東証発表の統計では裁定形成売買が290億円入っていた。裁定残は減少しているのでその減少株数から計算するとネットの裁定売買は300億円の裁定解消売買になる。裁定形成買いが入って裁定残が減るという現象は、東証裁定残の統計ではよく起こる。東証発表の数字によると、裁定形成ではドイツ300億円、ソシエテ150億円、三菱UFJ150億円、裁定解消では野村200億円が大口裁定売買の証券会社になる。

個人は現先総合で128億円の売り越し。うち現物現金で146億円の売り越し。信用で150億円の買い越し。先物で132億円の売り越し。個人は今年に入ってから13週連続で逆バリであったが、14週目にして記録がとだえてしまった。余裕のある個人はブルベア型投信の買いに回っていたようである。

信託は現先合計で512億円の売り越し。うち現物で633億円の売り越し。先物で122億円の買い越し。3月第5週は期初要因で買い越しになった。最近の信託は特殊要因で買い越しになることがあるが、それ以外の通常の週では売り越しが多い。

銀行は現先合計で1540億円の売り越し。うち現物で216億円の売り越し。先物で1324億円の売り越し。うち日経平均ラージ先物で1214億円の売り越し。銀行の先物の大口売りは時々見られる。銀行は期末に売って、期初に買い戻すことが多い。今回は期初に売りを出した。投機的なヘッジであり、近い将来に買い戻される可能性が高い。

4月第1週の最大の売り手は海外であった。現先合計で2128億円の売り越し。うち現物で908億円の買い越し。先物で3036億円の売り越し。先物の投資部門別売買状況の海外と先物手口概算(3種の先物)の外資系14社を比較すると下記のようになる。

ブログ外資系と海外の比較20170407

第2週は第1週ほどではないが、両者の間の差が大きい。それをゴールドマンのクロス、ドイツ、ソシエテの裁定を加えて修正すると、ある程度は近い数字になる。

第2週は海外の現物は買い越し、6種類ある先物のうちマザーズ先物を除く5種類の先物は売り越しであった。先物の売り方トップはABNアムロクリアリング。これは第1週に買い越した投機筋の反対売買であろう。それ以外に大きな特徴はない。第1週に大量に売り越したUBS本体運用部の売りも止まった。多くの種類の売りがあったとは思うが、現物買い・先物売りで売り越しであった。現物中心の中長期性の資金を扱う投資家はあまり動いていない。セオリーからすると、投機筋の売りの割合が通常よりは高かったと思われる。

合計すると、4月第1週は「投信、事法、自己の買い越しvs海外、銀行、個人の売り越し」であった。投信はブルベア型投信、事法は自社株買い、自己は日銀ETFの買いが中心であった。海外は投機筋の比率がやや高く、銀行は投機的なヘッジ売り、そして信託は昔からあるファンドの売り越しであった。買い方は、日銀ETFのようにすぐには売りにはならない資金の割合が高かった。一方売り方は、中長期性の資金の割合が低く、投機を中心とする中短期志向の資金の割合が高かった。結果として4月第1週の日経平均株価は245円下落して終わることになった。

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2016年7-9月期 日銀統計 株 コメント

日銀資金循環統計による株式投資部門別売買・保有残高
資金循環統計コメント表201609

2016年7-9月期の日銀の資金循環統計から、株式投資部門別売買・保有残高の直近分を取り上げ、重要な箇所に色をつけて示した。日銀統計は、東証が公表している投資部門別売買状況という統計ではカバーしていない取引所外取引や株の発行、償却をも含んだ大変貴重な統計である。他方、その推計方法には問題点も存在している。今回も日銀統計の数字を、その問題点と合わせて説明することにする。

国内銀行は3527億円の売り越し。東証統計の銀行は1088億円の売り越しであり、日銀統計とは異なっている。この点に関しては、過去2回、同じ内容を指摘した。この数字と、一行下の農林水産金融機関による7332億円の買い越しという数字はおそらく誤りである。

前回は「ほぼ間違いなく誤り」であった。今回は「おそらく誤りに」なる。前回は確度が高い証拠があったが、今回はそこまで確度の高い証拠がないからだ。3期連続して国内銀行と農林水産金融機関がキャッチボールのように株を売ったり買ったりするのは不自然である。常識的には考えられないのであるが、それ以上の証拠がない。

繰り返すが、東証統計の銀行は1088億円の売り越しである。農林水産金融機関が属する東証統計の「その他金融機関」も732億円の買い越しである。国内銀行、農林水産金融機関には株の売り越しや買い越しはあるが、大きな金額ではないと思われる。3回連続して起こったことなので、10-12月にもう一度大きな反対売買があるかもしれない。この売買の説明は3か月後にさせていただく。

薄赤色の部分が、企業年金を中心とする私的年金である「年金基金」と「公的年金」、および両者の合計である「年金計」を表す。年金基金は1947億円の買い越し、公的年金は122億円の買い越し、年金計では2069億円の買い越し。この数字の根拠は、東証の投資部門別売買状況における信託銀行の買越額7213億円であろう。この中にはトヨタを筆頭とする信託方式の自社株買いが4000億円前後存在することが確認できる。従って、信託方式の自社株買いを除いた様々な信託の合計が1000億円強の買い越しになる。

日銀と東証を合わせると、自社株買いが4000億円前後、年金計が2069億円の買い、うち公的年金が122億円買い、年金基金が1947億円買い、それ以外の様々な信託が1000億円前後の買いというわけである。信託には年金と自社株買い以外にもいくつかの勘定があり、その内側は外からはほとんどわからない。明らかな推定ミスが存在することが多い部門だが、今回はそのような推定ミスは見当たらない。従って、日銀の推計値を受け入れるしかない。

証券投資信託は1796億円の売り越し。これは東証統計の投信の買越額といつも同じ数字である。しかし東証統計の投信には、日銀が大量に購入しているETFを通じた株の買いが含まれていない。この不備は日銀自身も認めている。実際の投信の買越額は少なくとも7-9月期に日銀が購入したETF1兆5005億円分が過小推計になっている。つまり、日銀ETFによる買いをも含めた場合、投信は1兆3000億円前後の買い越しになる。

証券会社は1兆2472億円の買い越し。これは東証統計の自己1兆2543億円の買い越しを参考にしたものと思われる。ところが東証統計の自己には日銀ETF1兆5005億円の買い越しが含まれている。この分を差し引かなければならない。日銀ETF買いの金額を除くと、証券会社は2500億円前後の売り越しになる。この数字がより正しい推計値になる。

非金融法人企業は40億円の売り越し。この数字は東証統計の「事法・その他法人」の6119億円の買い越しという数字が大元であろう。しかし、日銀統計には自社株買い以外に自社株消却が含まれている。40億円の売り越しという数字は、6119億円の買い越しから自社株消却を差し引いた金額である。自社株償却の正しい数字を知ることは難しい。従って、日銀の推計値を受け入れるしかない。

保険は1340億円の売り越し。一方、東証統計の保険は1921億円の売り越し。日銀統計の数字は「東証統計の金額+保険会社が信託勘定で売買した金額+保険会社が取引所外取引で売買した金額」の合計である。この数字も外からはほとんどわからない。保険についても、日銀の推計値を受け入れるしかない。

家計は5799億円の売り越し。これは東証統計の6766億円の売り越しから、公募、売出しなどの取引所外取引での購入金額を加えた推計値である。しかし、ほとんど同じ数字を日証協が算出しており、4589億円の売り越しである。日銀よりも日証協の数字の方を信用すべきである。

海外は1兆2961億円の売り越し。東証統計では1兆4459億円の売り越し。海外に関しては取引所外取引を含む数字を国際収支統計の一部として財務省・日銀が集計している。東証統計よりも日銀統計の方が正確性が高い。

以上のことを頭に入れておく必要がある。その上で日銀の資金循環統計に基づく2016年7年-9月期における投資部門別売買状況は、「証券会社1兆2472億円の買い越し、年金計(信託の一部)2069億円の買い越しvs海外1兆2961億円の売り越し、家計5799億円の売り越し」であった。ただ、証券会社の買いというのは実は日銀ETFの買いの一部であり、日銀がETFを通して1兆5005億円買い越していたという理解の方がより正しい。


参照 株式売買関連の統計
 日銀 資金循環統計に基づく株式売買と株式保有残高(日本株)
 投資部門別売買状況 長期時系列表 (日本株)
 株式先物 投資部門別売買状況 累積買越枚数
 大手証券 先物建玉枚数推移 グラフ
 日本株 株式分布状況調査 2015年度

テーマ : 経済
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2016年4-6月期 日銀統計 株 コメント

日銀資金循環統計による株式投資部門別売買・保有残高
資金循環統計コメント表201603

2016年4-6月期の日銀の資金循環統計から、株式投資部門別売買・保有残高の直近分を取り上げ、重要な箇所に色をつけて示した。日銀統計は、東証名証の取引所内取引だけではなく、取引所外取引や株の発行、償却をも含んでいる。そのため、東証の投資部門別売買状況という統計よりも、株の売買動向をより正確に反映している統計として大変貴重な統計である。それでも問題点を数多く含んでいる。今回も日銀統計の数字をその問題点と合わせて説明することにする。

国内銀行は4814億円の買い越し。東証統計の銀行は645億円の売り越しであり、日銀統計とは異なっている。3か月前にも指摘したが、この数字は誤りである。一行下の農林水産金融機関の数字も同様に誤りである。

国内銀行
1-3月期 6291億円の売り越し→4-6月期 4814億円の買い越し
農林水産金融機関
1-3月期 8196億円の買い越し→4-6月期 5130億円の売り越し

上記のようにこの2部門は正反対の動きを示している。このうち、農林水産金融機関の数字は全くのデタラメである。理由は、資金循環統計はフロー、ストック、調整額という3つの部門から成り立っている統計である。調整額というのは、株の売買、評価損益プラス誤差である。株の場合、価格変動が大きいので、調整額も大きい。そして調整額はTOPIXとある程度連動する。評価損益等が大きいので、誤差が存在するにしても相対的には小さいからである。しかし、2016年の1-3月期も4-6月期も農林水産金融機関の調整額はTOPIXとかけ離れた動きを示している。これは、この期間の農林水産金融機関のストック、フローの金額に、非常に大きな誤差が存在していることを意味している。結論としては、1-3月期と4-6月期における国内銀行と農林水産金融機関の間には大きな売買は存在しなかった。信用できる部分があるとするならば、両者合計の1-6月期の数字であろう。これは1589億円の買い越しとなる。一方、この部門に相当する東証統計の「銀行+その他金融機関」は471億円の買い越しである。乖離は限定的で、日銀統計の数字の信頼性は比較的高いと思われる。

薄赤色の部分が、企業年金を中心とする私的年金に相当する「年金基金」と「公的年金」、および両者の合計である「年金計」を表す。年金基金は1億円の売り越し、公的年金は5577億円の買い越し、年金計では5576億円の買い越し。この数字の根拠は、東証の投資部門別売買状況における信託銀行の買越額8321億円であろう。しかし、この数字にも誤りが存在する。まず、1-3月期の数字が3か月前から大幅に修正された。

1-3月期の3か月前の公表分から今回公表分への修正金額と修正内容

年金基金(1兆9349億円の下方修正)
6526億円の買い越し→1兆2823億円の売り越し

公的年金(1兆6566億円の上方修正)
9654億円の買い越し→2兆6220億円の買い越し

年金計(2783億円の下方修正)
1兆6180億円の買い越し→1兆3397億円の買い越し

3か月前には怪しいとは思いながらも、選挙の関係で公的年金の決算が未公表であったので、「将来は修正の必要性を頭に入れながら、現時点では一応正確な数字に近いと受け入れるしかない。」と書いた。今回の問題は修正幅が大きい上に、修正後の数字もデタラメである可能性が高いことである。特に年金基金と公的年金の内訳は修正後の1-3月期も、今回公表された4-6月期もデタラメの数字である。この中で正確性が比較的高い数字は、修正後の年金計と今回公表された年金計の数字であり、1-3月期に1兆3397億円の買い越し、4-6月期に5576億円の買い越しである。この数字なら東証統計の信託の数字から見てもありえない数字ではない。この年金計の数字は、正しいとは言い切れないが、誤差が比較的少ない数字として受け入れるしかない。年金基金と公的年金の内訳は、全くデタラメで信用に値しない。

証券投資信託は1750億円の買い越し。これは東証統計の投信の買越額といつも同じ数字である。しかし東証統計の投信には、日銀が大量に購入しているETFを通じた株の買いが含まれていない。ETFは取引所外取引を利用して株を購入しているからだ。この不備は日銀自身も認めている。実際の投信の買越額は4-6月期に日銀が購入したETF9667億円分が過小推計になっている。つまり、ETFによる買いも含めた場合、投信は1.1兆円前後の買い越しになる。

証券会社は1兆5980億円の売り越し。これは東証統計の自己1兆5748億円の売り越しを参考にしたものと思われる。ところが東証統計の自己には日銀ETF9667億円の買い越しが含まれている。先にも書いたが、これは取引所外取引を利用して投信へと売却されている。日銀ETF買いを除く自己は2.5兆円ほどの売り越しになるはずである。同時期に東証の自己は先物を1.9兆円買い越している。この分は広義の意味における裁定解消売買である。それ以外に0.6兆円の売り越しがある。ただ自己はリスクを取れないので、これとは反対の様々な取引所外取引による買いが0.6兆円前後あるはずである。しかしこの取引所外取引の内容(現物かデリバかなど)は外部からは全くわからない。結論としては、日銀統計における証券会社の1兆5980億円の売り越しという数字は、東証統計における先物買いを伴った1.9兆円の自己による現物売りの金額にある程度近く、正確性がそれほど高いとは思えないが、信用するしかない。

非金融法人企業は7842億円の買い越し。この数字は東証統計の「事法+その他法人」の8877億円の買い越しという数字に近い。しかしこれは、近い数字であっては困るのである。日銀統計には自社株買い以外に、自社株消却が含まれているからだ。7842億円の買い越しという数字では、自社株消却が少なすぎ、買い越しの金額としては大きすぎる。ただ自社株消却は日銀が把握した時点でドカンと大幅なマイナスが計上されることが多い。自社株償却の正しい数字を知ることは非常に困難である。日銀統計の4-6月期の数字は信用できないが、年単位で見た場合は日銀の数字を信用するしかない。そういうことを頭に入れた上で、4-6月期の7842億円の買い越しを受け入れるしかない。

保険は1706億円の買い越し。一方、東証統計の保険は1285億円の売り越し。日銀の数字は「東証統計の金額+保険会社が信託勘定で売買した金額+保険会社が取引所外取引で売買した金額」の合計である。日銀の数字が正しいかどうかわからないが、信託勘定や取引所外取引での売買金額は全くわからない。そういう意味において、日銀の数字を信用するしかない。

家計は3903億円の売り越し。これは東証統計の4060億円の売り越しから、公募、売出しなどの取引所外取引での購入金額を加える必要がある。日銀統計はこれらの数字の推計が常に過小推計なので、正しいとは言えない。ただ4-6月期は公募、売出しが少額であった。4-6月期に関しては誤差は小さく、3903億円の売り越しは実際とはかけ離れた数字ではない。

海外による3029億円の買い越しは、取引所外取引を含まない2716億円の買い越しという東証統計よりも正確性が高い。

以上のことを頭に入れておく必要がある。その上で日銀の資金循環統計に基づく2016年4-6月期における投資部門別売買状況は、「非金融法人企業(事法+その他法人)7842億円の買い越し、年金計(信託の一部)5576億円の買い越しvs証券会社(自己)1兆5980億円の売り越し」であった。

参照 株式売買関連の統計
 日銀 資金循環統計に基づく株式売買と株式保有残高(日本株)
 投資部門別売買状況 長期時系列表 (日本株)
 株式先物 投資部門別売買状況 累積買越枚数
 大手証券 先物建玉枚数推移 グラフ
 日本株 株式分布状況調査 2015年度

テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

2016年1-3月期 日銀統計 株 コメント

日銀 資金循環統計に基づく株式売買と株式保有残高(日本株)

資金循環統計コメント表201603


2016年1-3月期の日銀の資金循環統計から、株式投資部門別売買・保有残高の直近分を取り上げ、重要な箇所に色をつけて示した。日銀の統計は、東証名証の取引所内取引だけではなく、取引所外取引や株の発行、償却をも含んでいる。そのため、東証の投資部門別売買状況という統計よりも、株の売買動向をより正確に反映している統計として大変貴重な統計である。それでも問題点を数多く含んでいる。日銀統計の数字を、その問題点と合わせて説明することにする。

国内銀行は7012億円の売り越し。東証統計の銀行は778億円の売り越しであり、日銀統計とは大きく異なっている。銀行に関しては日銀統計の数字を受け入れることはできない。上記の表では国内銀行7012億円売り越しの一つ下の行に、農林水産金融機関が7277億円買い越しという数字が見える。外見上は国内銀行が株を農林水産金融機関に7000億円ほど売却したように見える。しかし、この農林水産金融機関の7277億円買い越しという数字もおかしい。まず、この1-3月期において、TOPIXは12.9%下落している。しかし、国内銀行の保有株式価格は、32.4%の下落、農林水産金融機関の保有株式価格は6.9%の下落である。保有株式の下落率に差があるのはよくあることだが、今回は差が大きすぎる。同じ日銀が発表している民間金融機関の資産・負債という統計では、この1-3月期に銀行が保有株式を大きく売り越したという事実は確認できない。東証の株式分布状況調査でも、2015年度に銀行が株を大きく売り越したという事実は見えない。やはり日銀統計の国内銀行による株式の保有金額、売買金額には誤りがある。日銀統計では、国内銀行と農林水産金融機関を合計すれば265億円の買い越しになる。東証の銀行は778億円の売り越しであるが、農林水産金融機関が属するその他金融は1390億円の買い越しであり、合計すると611億円の買い越しである。国内銀行と農林水産金融機関を合計した数字は、正確な数字に近いと思われる。

証券投資信託は3879億円の買い越し。これは東証統計の投信の買越額と全く同じ数字である。しかし東証統計の投信には、日銀が大量に購入しているETFを通じた現物株の買いが一部しか含まれていない。この不備は日銀自身も認めている。実際の投信の買越額は1-3月期に日銀が購入したETF6833億円、日銀以外が購入したETFも含めると、おそらく7000億円以上の過小推計になっている。つまり、ETFによる買いも含めた場合、投信は1.1兆円以上は買い越しているのである。

民間非金融法人は4509億円の売り越し。この数字は東証統計の事法3958億円の買い越しを元にしているはずである。ここから日銀が把握した発行や取引所外取引での売買金額、自社株償却などの金額を調整した結果、4509億円の売り越しになったのだと思われる。自社株償却等の数字は、アイ・エヌ情報センターが集計した数字を日銀が借用している。そうした数字には明らかにおかしな推計と思われる数字が、過去においては何回かあった。しかし、今回の数字は明らかにおかしいという部類に属する数字ではない。十分に考えられる範囲内の数字である。従って、今回は正確に近い数字と受け入れることにする。

薄赤色の部分が、企業年金を中心とする私的年金に相当する「年金基金」と「公的年金」、および両者の合計である「年金計」を表す。年金計では1兆6180億円の買い越しになっている。その内訳は年金基金6526億円、公的年金9654億円である。この数字の根拠は、東証の投資部門別売買状況における信託銀行の買越額2兆0560億円であろう。しかし、東証の株式分布状況調査の数字を頭に入れると、年金基金の数字を額面通り受け入れるのには大きな抵抗感を感じる。しかし公的年金については、今回は日銀の推計を否定する確たる根拠が存在しない。通常なら現時点で3月末のGPIF、3共済の株式運用状況が公開されており、公的年金の株式売買状況を一定程度は推測できる。しかし、今年は参議院選挙があるため、公的年金の運用状況の公開を先延ばしにしてしまった。日銀の数字を誤りと指摘できる根拠が現時点では不足している。将来は修正の必要性を頭に入れながら、現時点では一応正確な数字に近いと受け入れるしかない。

保険は1039億円の買い越し。一方、東証統計の保険は764億円の売り越し。この数字については日銀の数字を支持したい。「東証統計の金額+保険会社が信託勘定で売買した金額+保険会社が取引所外取引で売買した金額」が本当の保険会社の買い越し売り越し金額になる。東証統計の保険の数字は売り越しが続いているが、金余りの環境下で、保険全体では買い越しになっている可能性が高い。日銀の数字の方が、東証の数字よりも正確な数字に近いと考えることにする。

家計は1兆4827億円の買い越し。東証統計の個人1兆4235億円買い越しに近い。しかし、より正しい数字は日本証券業協会が発表している募集と売り出しを含む個人の買い越し1兆4990億円である。1-3月は募集、売り出し金額が少なく、日銀も日証協も数字に大きな違いはない。ただ、昨年10-12月では、郵政3社株を大量に個人が買った分の日銀独自の推計値が滅茶苦茶であった。日銀には独自推計よりも、日証協の数字を使ってもらいたい。

証券会社4944億円買い越しは、東証統計の自己4138億円買い越しに近い。海外4兆9846億円の売り越しは、東証統計の海外5兆0127億円売り越しに近い。この2部門の売買については、日銀の数字が正確な数字ではないとしても、正確な数字からそれほど離れた数字でもない。

以上のことを頭に入れておく必要がある。その上で日銀の資金循環統計による2016年1-3月期における投資部門別売買状況は、「年金計(信託の一部)1兆6180億円の買い越し、家計(個人に相当)1兆4827億円の買い越しvs海外4兆9846億円の売り越し」であった。

参照 株式売買関連の統計
投資部門別売買状況 長期時系列表 (日本株)
株式先物 投資部門別売買状況 累積買越枚数
大手証券 先物建玉枚数推移 グラフ
日本株 株式分布状況調査 2015年度

テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

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