2017年1-3月期 日銀統計 株 コメント

日銀資金循環統計による株式投資部門別売買・保有残高
資金循環統計株コメント201703


(日銀・資金循環統計と東証・投資部門売買状況の比較)
2017年1-3月期の日銀の資金循環統計から、株式投資部門別売買・保有残高の直近分を取り上げ、重要な箇所に色をつけて示した。日銀統計は、東証が公表している投資部門別売買状況という統計ではカバーしていない取引所外取引や株の発行、償却をも含んだ大変貴重な統計である。他方、その推計方法には問題点も数多く存在する。今回も日銀統計の数字をその問題点と合わせて説明することにする。

(ETFによる売買金額の推計方法の変更)
今回から投信と自己の売買の算出方法に大きな変更があった。従来は「資金循環統計の投信の売買」=「東証の投資部門別売買状況における投信の売買」であった。以前、日銀に対して日銀ETFによる買いが投信ではなく、自己に含まれていると伝えた時、それをある程度は認めながらも現体制では算出方法の変更が不可能との理由で変更は行われなかった。それが昨年10-12月期の確報から「資金循環統計の投信の売買=「東証の投資部門別売買状況における投信の売買+投資信託協会のETF設定解約の金額」に変更された。

日銀ETF以外のETFの売り越し買い越し金額を求めたい時、最初に思いつくのが投資信託協会が公表しているETFの設定解約の数字である。ETF関係の売買統計はこれ1種類しか存在しないので、参考にするのは当然であろう。私も何年も前に同じことを考えた。その時の結論は「デタラメすぎて使えない」であった。

投資信託協会は投信による株の売り越し買い越し金額を月次で公表している。これが東証統計による投信の株の売り越し買い越し金額とは大きな乖離がある。東証の数字は全部門の合計がゼロにはならないが、ゼロに比較的近い数字になるので、誤差は大きくない。従って、投資信託協会の投信による株の売り越し買い越し金額がデタラメということになる。ETFの設定解約についても同様にデタラメである可能性が高い。

ただ私のように投資信託協会と東証の株式売買動向を比較したり、毎週ETFの売買をウォッチしていたらデタラメであるというのがすぐにわかる。しかし、こうした特殊な作業をしない大半の人たちにはデタラメさなど見えない。同時にデタラメの可能性が高いという証拠を示すことはできるが、100%デタラメと証明できる証拠は示せない。

今回の投資信託協会の数字を元にした日銀統計の数字によると、日銀ETF以外のETFは昨年10-12月期に1兆円の売り、今年1-3月期に1.4兆円の買いになる。日銀ETFによる買いは昨年10-12月期に1兆4511億円、今年1-3月期に1兆6351億円である。今年1-3月期の日銀ETF以外のETFによる1.4兆円の買いは日銀ETFの買いを少し下回るだけであり、毎週投資部門別売買状況を見ていればありえない数字なのである。

私としては、従来通りに日銀以外に現物を売買するETFの設定解約の合計はゼロという仮定で進めたい。これも間違った推計方法であるが、投資信託協会の統計数字を使う日銀統計よりは多少はベターであると考える。従って、投信の買いは日銀ETF以外のETFが1兆4031億円買って合計で2兆3797億円の買いという日銀統計の数字は否定する。東証統計+日銀ETFの合計値である9765億円をよりマシな数字として提示する。同様に全ETFの買いに等しい金額が証券会社(東証統計の自己)から差し引かれている。日銀統計の証券会社9000億円の売りは間違いで、証券会社-日銀ETF以外のETFの売り(=マイナス1兆4031億円)に等しい5031億円の買いをより正確性の高い数字として提示する。

(家計)
いつも指摘している家計(=個人)の数字を修正したい。日銀統計の家計による買い推計は精度が低く、日証協が算出している「東証統計+公募、売り出し等による購入金額」を推計した値の方が精度が高い。家計は日銀統計の484億円の買いから日証協の数字に等しい3771億円の買いに修正する。

(国内銀行)
今回も国内銀行とそのすぐ下にある農林水産金融機関の数字を修正したい。農林系は売りと買いが交互であるが、株の評価損益に近い調整勘定がTOPIXと連動していない。銀行の連動率も少し低い。農林系は全くのデタラメ、銀行は実態との乖離が大きいことを示す。2017年1-3月期の数字はどちらも信用できない。農林系はデタラメの続きすぎで、信頼できそうな数字が全くない。銀行は1-3月期の4694億円の売りは信用できないが、東証統計の銀行が1647億円の売りであるので、取引所外取引を含めた売りの数字は両者の中間である3000億円前後の売りが一つの目安だと考える。

(年金計)
薄赤色の年金基金は1552億円の売り、公的年金は3466億円の売りである。このうち、公的年金の売り金額は間違いである。7月7日にGPIFと3共済の決算が発表されたが、1500億円前後の買いであった。日銀は今回の速報ではこの決算を見ていないので、確報で修正がある。また、この期間の東証統計の信託の売りが4109億円である。これを考えると年金基金の売りの1552億円は少なすぎであり、倍の3000億円以上はあった可能性が高い。

(保険)
保険は2793億円の売り。東証の保険は1512億円の売りだが、取引所外取引での売りがおそらくあり、この分を加えなければならない。日銀統計の数字が東証統計よりベターな数字として受け入れることにする。

(非金融法人企業)
非金融法人企業は179億円の売り。これに相当する東証の事法とその他法人の合計は3824億円の買い。ただ東証の数字には自社株買いの多くは含まれているが、自社株消却の金額が含まれていない。自社株消却の数字は全くわからないので、日銀の数字がある程度は正確性の高い数字であると信用するしかない。

(海外投資家)
海外は日銀統計では1兆1728億円の売り。東証統計では1兆2386億円の売り。これは発行等や取引所外取引の分をも含めて直接報告を受けている日銀統計の数字が東証統計よりも正確性が高い数字である。

(売買の合計)
以上のことを頭に入れておく必要がある。その上で日銀の資金循環統計に基づく2017年1-3月期における投資部門別売買状況は「投信2兆3797億円(修正後9765億円)の買い越し、家計(個人)484億円(修正後3771億円)の買い越しvs海外1兆1728億円の売り越し、証券会社(=自己)9000億円の売り越し(修正後5031億円の買い越し)」であった。日経平均株価は205円下落して18909円で終えた。この期の投信買いの実体は日銀ETFであるので「日銀ETF買い越しvs海外売り越し」で小幅に下落した期であった。


参照 日銀資金循環統計 株式部門の長期時系列をグラフ化
 日銀 資金循環統計に基づく投資部門別売買状況と保有残高グラフ

参照 株式売買関連の統計は他にもあります
 投資部門別売買状況 現物と先物の時系列表
 投資部門別売買状況 長期時系列グラフ(月次)
 投資部門別売買状況 先物累積買越枚数 グラフ
 先物建玉残高 証券会社別枚数推移 グラフ
 株式分布状況調査 年度末と時系列グラフ


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2016年10-12月期 日銀統計 株 コメント

日銀資金循環統計による株式投資部門別売買・保有残高
資金循環統計コメント表201612

2016年10-12月期の日銀の資金循環統計から、株式投資部門別売買・保有残高の直近分を取り上げ、重要な箇所に色をつけて示した。日銀統計は、東証が公表している投資部門別売買状況という統計ではカバーしていない取引所外取引や株の発行、償却をも含んだ大変貴重な統計である。他方、その推計方法には問題点も数多く存在する。今回も日銀統計の数字を、その問題点と合わせて説明することにする。

最初に日銀統計が東証統計との比較で、常に良い点と悪い点を示す。

日銀統計の最大の欠陥は日銀ETFの買い主体の誤りである。この期の日銀ETF買いは1兆4511億円。少なくとも最近の日銀ETF買いの大半は東証統計では自己に含まれている。この誤りを指摘し、日銀は誤りを認めたのであるが、相変わらず投信に含めて算出を続けている。この分を考慮すると、投信は7723億円の売り越しから6800億円前後の買い越しへ、証券会社は2兆1504億円の買い越しから7000億円前後の買い越しへと修正されなければならない。

次が家計の3兆4505億円の売り越し。これは東証統計の個人3兆5034億円の売り越しから、発行市場等での購入を加えたものである。しかし、日銀の発行市場等での購入は常に過小推計である。より正しい数字は日証協が発行等を含めた個人売買の推計値を公表している。日証協の推計値は3兆0026億円の売り越しであり、日証協の数字が日銀の数字以上に正確性が高い。

海外は日銀統計では2兆7032億円の買い越し。東証統計では2兆4983億円の買い越し。これは発行等や取引所外取引の分をも含めて直接報告を受けている日銀の数字が最も正確性が高い数字である。

ここから先は、推測でしかないとこを書く。ただ推測の中には、当たっている可能性が高そうな推測もある。

国内銀行は503億円の売り越し。この数字の一つ下に、農林水産金融機関が6141億円の売り越しとあるが、この数字は完全な誤りである。日銀統計はフロー、ストック、調整の3部門からなる。そして調整の数字の変動は資産が株である場合は、TOPIXとある程度は連動するのが普通である。しかし、農林水産金融機関の調整の数字はTOPIXとの乖離が大きすぎる。従って、日銀統計における農林水産金融機関の株についてのストック、フロー、調整の数字は全て誤りである。4期連続の誤りであるが、誤りを繰り返す理由がわからない。

国内銀行に戻ると、東証統計では2418億円の売り越しであり、503億円売り越しの日銀統計より大きく売り越したことになっている。一方、この期に三菱UFJホールディングスが自社株買いを1000億円実施している。これは持株会社ということで東証では事法扱いにしている。しかしこれは東証がおかしく、実体は銀行の買いである。東証は訂正の努力を約束したのであるが、まだ訂正はなされていない。日銀統計の503億円の売り越しを否定できる材料もないので、ある程度は正確性の高い数字として扱う。

非金融法人企業は7368億円の売り越し。これに相当する東証の事法とその他法人は6142億円の買い越し。相当大きな差がある。ただ事法の自社株償却は大量に存在しているはずであるが、外部からはその数字はわからない。目に見える自社株買いから目に見えない自社株消却を差し引かなければならない。この差は自社株償却の数字と考え、日銀の数字をある程度は正確性の高い数字と信用するしかない。

薄赤色の部分が、企業年金を中心とする私的年金である「年金基金」と「公的年金」、および両者の合計である「年金計」を表す。公的年金は564億円の買い越し。GPIFと3共済の株式買い越し金額を推計してみると、もう少し大きな数字になった。しかし推計には必ず誤差を伴うので、日銀統計の564億円は妥当な推計値の範囲内だと思われる。

一方、私的年金である年金基金は859億円の買い越し。この数字の元になっている数字の一つは、東証統計の信託3442億円の売り越しである。信託の中で、買い越しは公的年金と信託方式の自社株買いくらいであろう。それ以外の昔から存在する多数の信託の大半は逆バリであり、売り越しのはずである。昔からある年金基金が859億円も買い越すとはとても考えられない。過去の年金や信託の売買行動パターンを考えると、日銀の買い越しという推計は誤りであり、実際には東証信託の何割かを占めるほどの売り越しである可能性が高い。

保険は958億円の売り越し。一方、東証統計の保険は1769億円の売り越し。この数字も日銀統計の方が誤りが大きい。この期間のTOPIXの上昇率は14.8%。保険の株式資産の増加率は14.1%であり、TOPIXを下回っている。保険の株式資産が仮に100%TOPIXに連動していたと仮定するならば、保険の株式売越額は1769億円に近い数字になる。信託の売越額からすると、生保の信託勘定での買い越しは考えられない。正確な数字は日銀よりも東証の方に近い可能性が高いと見る。

以上のことを頭に入れておく必要がある。その上で日銀の資金循環統計に基づく2016年10-12月期における投資部門別売買状況は「海外2兆7032億円の買い越し、証券会社2兆1504億円(修正後7000億円)の買い越し、vs家計(=個人)3兆4505億円(修正後3兆円)の売り越し、投信7723億円の売り越し(修正後は6800億円の買い越し)」であった。この期の日経平均株価は2665円値上がりして19114円で引けた。この期の証券会社の買いの大半は裁定買いであり、大元は海外の先物買いである。株価下落の防止に日銀ETF買いの貢献はあったが、株価上昇のほとんどは海外の一手買いにより上昇した期であった。

参照 株式売買関連の統計
 日銀 資金循環統計に基づく株式売買と株式保有残高
 投資部門別売買状況 現物と先物の時系列表
 投資部門別売買状況 長期時系列グラフ(月次)
 株式先物 投資部門別売買状況 累積買越枚数
 大手証券 先物建玉枚数推移 グラフ
 日本株 株式分布状況調査 2015年度


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2016年7-9月期 日銀統計 株 コメント

日銀資金循環統計による株式投資部門別売買・保有残高
資金循環統計コメント表201609

2016年7-9月期の日銀の資金循環統計から、株式投資部門別売買・保有残高の直近分を取り上げ、重要な箇所に色をつけて示した。日銀統計は、東証が公表している投資部門別売買状況という統計ではカバーしていない取引所外取引や株の発行、償却をも含んだ大変貴重な統計である。他方、その推計方法には問題点も存在している。今回も日銀統計の数字を、その問題点と合わせて説明することにする。

国内銀行は3527億円の売り越し。東証統計の銀行は1088億円の売り越しであり、日銀統計とは異なっている。この点に関しては、過去2回、同じ内容を指摘した。この数字と、一行下の農林水産金融機関による7332億円の買い越しという数字はおそらく誤りである。

前回は「ほぼ間違いなく誤り」であった。今回は「おそらく誤りに」なる。前回は確度が高い証拠があったが、今回はそこまで確度の高い証拠がないからだ。3期連続して国内銀行と農林水産金融機関がキャッチボールのように株を売ったり買ったりするのは不自然である。常識的には考えられないのであるが、それ以上の証拠がない。

繰り返すが、東証統計の銀行は1088億円の売り越しである。農林水産金融機関が属する東証統計の「その他金融機関」も732億円の買い越しである。国内銀行、農林水産金融機関には株の売り越しや買い越しはあるが、大きな金額ではないと思われる。3回連続して起こったことなので、10-12月にもう一度大きな反対売買があるかもしれない。この売買の説明は3か月後にさせていただく。

薄赤色の部分が、企業年金を中心とする私的年金である「年金基金」と「公的年金」、および両者の合計である「年金計」を表す。年金基金は1947億円の買い越し、公的年金は122億円の買い越し、年金計では2069億円の買い越し。この数字の根拠は、東証の投資部門別売買状況における信託銀行の買越額7213億円であろう。この中にはトヨタを筆頭とする信託方式の自社株買いが4000億円前後存在することが確認できる。従って、信託方式の自社株買いを除いた様々な信託の合計が1000億円強の買い越しになる。

日銀と東証を合わせると、自社株買いが4000億円前後、年金計が2069億円の買い、うち公的年金が122億円買い、年金基金が1947億円買い、それ以外の様々な信託が1000億円前後の買いというわけである。信託には年金と自社株買い以外にもいくつかの勘定があり、その内側は外からはほとんどわからない。明らかな推定ミスが存在することが多い部門だが、今回はそのような推定ミスは見当たらない。従って、日銀の推計値を受け入れるしかない。

証券投資信託は1796億円の売り越し。これは東証統計の投信の買越額といつも同じ数字である。しかし東証統計の投信には、日銀が大量に購入しているETFを通じた株の買いが含まれていない。この不備は日銀自身も認めている。実際の投信の買越額は少なくとも7-9月期に日銀が購入したETF1兆5005億円分が過小推計になっている。つまり、日銀ETFによる買いをも含めた場合、投信は1兆3000億円前後の買い越しになる。

証券会社は1兆2472億円の買い越し。これは東証統計の自己1兆2543億円の買い越しを参考にしたものと思われる。ところが東証統計の自己には日銀ETF1兆5005億円の買い越しが含まれている。この分を差し引かなければならない。日銀ETF買いの金額を除くと、証券会社は2500億円前後の売り越しになる。この数字がより正しい推計値になる。

非金融法人企業は40億円の売り越し。この数字は東証統計の「事法・その他法人」の6119億円の買い越しという数字が大元であろう。しかし、日銀統計には自社株買い以外に自社株消却が含まれている。40億円の売り越しという数字は、6119億円の買い越しから自社株消却を差し引いた金額である。自社株償却の正しい数字を知ることは難しい。従って、日銀の推計値を受け入れるしかない。

保険は1340億円の売り越し。一方、東証統計の保険は1921億円の売り越し。日銀統計の数字は「東証統計の金額+保険会社が信託勘定で売買した金額+保険会社が取引所外取引で売買した金額」の合計である。この数字も外からはほとんどわからない。保険についても、日銀の推計値を受け入れるしかない。

家計は5799億円の売り越し。これは東証統計の6766億円の売り越しから、公募、売出しなどの取引所外取引での購入金額を加えた推計値である。しかし、ほとんど同じ数字を日証協が算出しており、4589億円の売り越しである。日銀よりも日証協の数字の方を信用すべきである。

海外は1兆2961億円の売り越し。東証統計では1兆4459億円の売り越し。海外に関しては取引所外取引を含む数字を国際収支統計の一部として財務省・日銀が集計している。東証統計よりも日銀統計の方が正確性が高い。

以上のことを頭に入れておく必要がある。その上で日銀の資金循環統計に基づく2016年7年-9月期における投資部門別売買状況は、「証券会社1兆2472億円の買い越し、年金計(信託の一部)2069億円の買い越しvs海外1兆2961億円の売り越し、家計5799億円の売り越し」であった。ただ、証券会社の買いというのは実は日銀ETFの買いの一部であり、日銀がETFを通して1兆5005億円買い越していたという理解の方がより正しい。


参照 株式売買関連の統計
 日銀 資金循環統計に基づく株式売買と株式保有残高(日本株)
 投資部門別売買状況 長期時系列表 (日本株)
 株式先物 投資部門別売買状況 累積買越枚数
 大手証券 先物建玉枚数推移 グラフ
 日本株 株式分布状況調査 2015年度



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2016年4-6月期 日銀統計 株 コメント

日銀資金循環統計による株式投資部門別売買・保有残高
資金循環統計コメント表201603

2016年4-6月期の日銀の資金循環統計から、株式投資部門別売買・保有残高の直近分を取り上げ、重要な箇所に色をつけて示した。日銀統計は、東証名証の取引所内取引だけではなく、取引所外取引や株の発行、償却をも含んでいる。そのため、東証の投資部門別売買状況という統計よりも、株の売買動向をより正確に反映している統計として大変貴重な統計である。それでも問題点を数多く含んでいる。今回も日銀統計の数字をその問題点と合わせて説明することにする。

国内銀行は4814億円の買い越し。東証統計の銀行は645億円の売り越しであり、日銀統計とは異なっている。3か月前にも指摘したが、この数字は誤りである。一行下の農林水産金融機関の数字も同様に誤りである。

国内銀行
1-3月期 6291億円の売り越し→4-6月期 4814億円の買い越し
農林水産金融機関
1-3月期 8196億円の買い越し→4-6月期 5130億円の売り越し

上記のようにこの2部門は正反対の動きを示している。このうち、農林水産金融機関の数字は全くのデタラメである。理由は、資金循環統計はフロー、ストック、調整額という3つの部門から成り立っている統計である。調整額というのは、株の売買、評価損益プラス誤差である。株の場合、価格変動が大きいので、調整額も大きい。そして調整額はTOPIXとある程度連動する。評価損益等が大きいので、誤差が存在するにしても相対的には小さいからである。しかし、2016年の1-3月期も4-6月期も農林水産金融機関の調整額はTOPIXとかけ離れた動きを示している。これは、この期間の農林水産金融機関のストック、フローの金額に、非常に大きな誤差が存在していることを意味している。結論としては、1-3月期と4-6月期における国内銀行と農林水産金融機関の間には大きな売買は存在しなかった。信用できる部分があるとするならば、両者合計の1-6月期の数字であろう。これは1589億円の買い越しとなる。一方、この部門に相当する東証統計の「銀行+その他金融機関」は471億円の買い越しである。乖離は限定的で、日銀統計の数字の信頼性は比較的高いと思われる。

薄赤色の部分が、企業年金を中心とする私的年金に相当する「年金基金」と「公的年金」、および両者の合計である「年金計」を表す。年金基金は1億円の売り越し、公的年金は5577億円の買い越し、年金計では5576億円の買い越し。この数字の根拠は、東証の投資部門別売買状況における信託銀行の買越額8321億円であろう。しかし、この数字にも誤りが存在する。まず、1-3月期の数字が3か月前から大幅に修正された。

1-3月期の3か月前の公表分から今回公表分への修正金額と修正内容

年金基金(1兆9349億円の下方修正)
6526億円の買い越し→1兆2823億円の売り越し

公的年金(1兆6566億円の上方修正)
9654億円の買い越し→2兆6220億円の買い越し

年金計(2783億円の下方修正)
1兆6180億円の買い越し→1兆3397億円の買い越し

3か月前には怪しいとは思いながらも、選挙の関係で公的年金の決算が未公表であったので、「将来は修正の必要性を頭に入れながら、現時点では一応正確な数字に近いと受け入れるしかない。」と書いた。今回の問題は修正幅が大きい上に、修正後の数字もデタラメである可能性が高いことである。特に年金基金と公的年金の内訳は修正後の1-3月期も、今回公表された4-6月期もデタラメの数字である。この中で正確性が比較的高い数字は、修正後の年金計と今回公表された年金計の数字であり、1-3月期に1兆3397億円の買い越し、4-6月期に5576億円の買い越しである。この数字なら東証統計の信託の数字から見てもありえない数字ではない。この年金計の数字は、正しいとは言い切れないが、誤差が比較的少ない数字として受け入れるしかない。年金基金と公的年金の内訳は、全くデタラメで信用に値しない。

証券投資信託は1750億円の買い越し。これは東証統計の投信の買越額といつも同じ数字である。しかし東証統計の投信には、日銀が大量に購入しているETFを通じた株の買いが含まれていない。ETFは取引所外取引を利用して株を購入しているからだ。この不備は日銀自身も認めている。実際の投信の買越額は4-6月期に日銀が購入したETF9667億円分が過小推計になっている。つまり、ETFによる買いも含めた場合、投信は1.1兆円前後の買い越しになる。

証券会社は1兆5980億円の売り越し。これは東証統計の自己1兆5748億円の売り越しを参考にしたものと思われる。ところが東証統計の自己には日銀ETF9667億円の買い越しが含まれている。先にも書いたが、これは取引所外取引を利用して投信へと売却されている。日銀ETF買いを除く自己は2.5兆円ほどの売り越しになるはずである。同時期に東証の自己は先物を1.9兆円買い越している。この分は広義の意味における裁定解消売買である。それ以外に0.6兆円の売り越しがある。ただ自己はリスクを取れないので、これとは反対の様々な取引所外取引による買いが0.6兆円前後あるはずである。しかしこの取引所外取引の内容(現物かデリバかなど)は外部からは全くわからない。結論としては、日銀統計における証券会社の1兆5980億円の売り越しという数字は、東証統計における先物買いを伴った1.9兆円の自己による現物売りの金額にある程度近く、正確性がそれほど高いとは思えないが、信用するしかない。

非金融法人企業は7842億円の買い越し。この数字は東証統計の「事法+その他法人」の8877億円の買い越しという数字に近い。しかしこれは、近い数字であっては困るのである。日銀統計には自社株買い以外に、自社株消却が含まれているからだ。7842億円の買い越しという数字では、自社株消却が少なすぎ、買い越しの金額としては大きすぎる。ただ自社株消却は日銀が把握した時点でドカンと大幅なマイナスが計上されることが多い。自社株償却の正しい数字を知ることは非常に困難である。日銀統計の4-6月期の数字は信用できないが、年単位で見た場合は日銀の数字を信用するしかない。そういうことを頭に入れた上で、4-6月期の7842億円の買い越しを受け入れるしかない。

保険は1706億円の買い越し。一方、東証統計の保険は1285億円の売り越し。日銀の数字は「東証統計の金額+保険会社が信託勘定で売買した金額+保険会社が取引所外取引で売買した金額」の合計である。日銀の数字が正しいかどうかわからないが、信託勘定や取引所外取引での売買金額は全くわからない。そういう意味において、日銀の数字を信用するしかない。

家計は3903億円の売り越し。これは東証統計の4060億円の売り越しから、公募、売出しなどの取引所外取引での購入金額を加える必要がある。日銀統計はこれらの数字の推計が常に過小推計なので、正しいとは言えない。ただ4-6月期は公募、売出しが少額であった。4-6月期に関しては誤差は小さく、3903億円の売り越しは実際とはかけ離れた数字ではない。

海外による3029億円の買い越しは、取引所外取引を含まない2716億円の買い越しという東証統計よりも正確性が高い。

以上のことを頭に入れておく必要がある。その上で日銀の資金循環統計に基づく2016年4-6月期における投資部門別売買状況は、「非金融法人企業(事法+その他法人)7842億円の買い越し、年金計(信託の一部)5576億円の買い越しvs証券会社(自己)1兆5980億円の売り越し」であった。

参照 株式売買関連の統計
 日銀 資金循環統計に基づく株式売買と株式保有残高(日本株)
 投資部門別売買状況 長期時系列表 (日本株)
 株式先物 投資部門別売買状況 累積買越枚数
 大手証券 先物建玉枚数推移 グラフ
 日本株 株式分布状況調査 2015年度


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2015年10-12月期 日銀統計 株 コメント

日銀 資金循環統計に基づく株式売買と株式保有残高はこちら

資金循環統計コメント表201512


2015年10-12月期の日銀の資金循環統計から、株式投資部門別売買・保有残高の直近分を取り上げ、重要な箇所に色をつけて示した。日銀の統計は、東証等の取引所内取引だけではなく、取引所外取引や株の発行、償却をも含んでいる。そのため、東証の投資部門別売買状況という統計よりも、株の売買動向をより正確に反映している統計として大変貴重な統計である。それでも問題点を数多く含んでいるので、その問題点も合わせて説明することにする。

今回は通常とは異なる数字が存在する。薄緑色をつけた2ヶ所であるが、いずれも郵政3社株の上場に伴う特殊な処理の分である。中小企業金融機関は1兆3460億円の買い越しになっている。しかし、上記の表にはない未上場株でこの金額に近い売りが発生している。これは、ゆうちょ銀行の自社株保有分が、株式上場により未上場株から上場株へと振り替わったからである。この分を除くと、中小企業金融機関の株の買越額は460億円にまで減少する。もう1つは公的非金融法人の6兆0082億円の買い越しである。これも日本郵政が保有していたゆうちょ銀行、かんぽ生命の保有株が未上場株から上場株に振り替わった点が大きい。日本郵政はゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式を売り出しによって売却もしているので、公的非金融法人の上場株と未上場株を合計すると5368億円の売り越しとなる。

薄赤色の部分が、企業年金を中心とする私的年金に相当する「年金基金」と「公的年金」、および両者の合計である「年金計」を表す。年金計では5570億円の買い越しになっている。この数字の根拠は、東証の投資部門別売買状況における信託銀行の買越額5922億円であろう。年金計の数字は、特に矛盾する点も見られないので、正確な数字に近いものと受け止めることにする。問題はその内訳である。公的年金による買越額4611億円は、GPIFが公表している4300億円前後の株式買い越しなどが根拠であったと思われる。しかしこの期間は、3共済も一元化によりかなり多くの株を買い越していたはずである。日銀による公的年金買越額4611億円という数字は過小推計である。もう一つの理由は、年金基金による959億円の買越額があまりにも過大推計と考えられることだ。この10-12月期は日経平均株価が1646円も上昇した期間である。年金基金の売買行動パターンは公的年金とは異なり、昔からずっと逆バリである。この株価上昇局面で買い越しはあり得ない。年金基金は959億円の買い越しではなく売り越しであり、公的年金の買越額は3共済の買越額を上乗せすると、4611億円より大きかった可能性が高い。

国内銀行は610億円の買い越し。東証統計の銀行は1434億円の売り越しであり、日銀統計とは異なっている。東証統計とは異なり、日銀統計は銀行が買い越しになることが多かった。過去の買い越し時においては、日銀統計の推計値は信じられないと書いてきた。しかし、今回は日銀統計の元になる、同じ日銀による「国内銀行の資産・負債等」という統計の銀行による保有株式残高を見ると、少し増えている。これは持合解消売り以上に、余剰資金の運用手段として株を購入していたからだと思われる。購入の際に取引所外取引を多く使ったと考えれば、銀行が買い越しということはありうる話となる。今回は日銀統計の数字を信じることにする。

民間非金融法人は2356億円の売り越し。この数字も東証統計の事法1兆0797億円の買い越しを参考にしているはずである。ここから日銀が把握した自社株償却の金額を差し引いた結果、2356億円の売り越しになったのだと思われる。7-9月期に1兆1914億円の買い越しが記録されているが、これは自社株償却の過小把握が原因の誤った数字である。ただ、7-9月期から10-12月期にかけての自社株償却金額の急増もまた大きすぎて信じがたい。10-12月期が正確というよりも、7-12月期を合計した場合、より正確な数字に近づいた可能性が高い。このことを頭に入れた上で、2356億円の売り越しという数字を一応容認できる推計値と見なすことにする。その場合、先に日本郵政を中心とする公的非金融法人が特殊分を除くと5368億円の売り越しと書いたが、公的と民間を合計した非金融法人で考えると、7724億円の売り越しであったことになる。

家計は1兆6555億円の売り越し。この数字も東証統計の個人2兆0390億円(厳密には個人+証券会社(小規模証券会社の売買であるため、大半が個人の売買))の売越額を元に、郵政3社株の売出株購入金額などの推計数字を加えたものであると思われる。前回も指摘したように、公募増資等を含めた個人の株の買越額は日本証券業協会が推計している。その数字は7941億円の売り越しである。日銀の数字よりも日証協の数字の方が正確性が高い。しかし、個人は郵政3社株だけで売り出しの際、1兆円以上購入している。難しいのは、郵政3社株以外の株の公募売り出しによる購入金額の推計である。個人の売越額が1兆円以下ということまでは誰でも簡単に推計できる。1兆6555億円という数字を出す日銀の株式売買推計担当者はあまりにもいい加減すぎる。日銀統計の個人売越額は、長年過大推計され続けているのである。

海外は1兆6187億円の買い越し。東証統計の1兆1737億円の買い越しに、郵政3社株の海外に対する売り出し金額2872億円を加えると1兆4609億円になる。それ以外に海外は発行市場や取引所外取引でも日本株を買い越している。日銀の推計値は妥当な金額と考える。

証券投資信託は1310億円の買い越し。これは東証統計の投信の買越額と全く同じ数字である。しかし、日銀が大量に購入しているETFを通じた現物株の買いが一部しか含まれていない。この不備は日銀自身も認めている。実際の投信の買越額は10-12月期に日銀が購入したETF5789億円、日銀以外が購入したETFも含めると、おそらく6000億円以上の過小推計になっていると思われる。

上記以外では、保険272億円の売り越し、証券会社(自己)1041億円の売り越しになっている。これらの数字は、東証統計の数字を参考にしながら、日銀が修正を入れている。この2つの数字にも疑問点はあるが、金額が大きくはないので重要性は低い。

以上のことを頭に入れておく必要がある。その上で日銀の資金循環統計による2015年10-12月期における投資部門別売買状況は、郵政3社の未上場株から上場株への振り替えという特殊要因を除くと、「海外1兆6187億円の買い越し、年金計(信託の一部)5570億円の買い越しvs家計(個人)1兆6555億円の売り越し、非金融法人(事法に相当)7724億円の売り越しであった。日経平均株価が1646円上昇した期間であり、自社株消却を考慮しているので、最近の株価上昇時によく見られるパターンに近かった。


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