要素価格均等化定理 日本の賃金が上がらない理由

日本の賃金は過去30年間、上昇していません。それどころか低下気味です。
賃金低下は国際経済学の中核理論、要素価格均等化定理で説明できます。
「要素価格均等化定理」は聞きなれない言葉です。経済学を学んだことがない人にとっては、難しすぎる話です。
要素価格の代表は賃金です。賃金同一化定理と言い換えることがでます。国際経済学の教科書には掲載されています。ググれば説明を読むことができます。
要素価格均等化定理は、数ある理論、学説の中の1つではありません。経済学、国際経済学の中核理論です。物理学のニュートン力学のような理論です。

中国は名目為替レートと実質為替レートを引き下げてきました。1980年は1人民元が151円でした。それが直近では20円です。9割近い下落です。賃金などコストも9割近く下がったわけです。
中国の賃金は直近で日本の約3分の1です。中国は低コストで競争上、有利です。
要素価格均等化定理はグローバルな完全競争の下でしか成立しません。完全競争に近い環境が、自由化、国際化により日中間で出来上がったわけです。
要素価格均等化定理はEUの域内でも成立しています。賃金上昇率の高い国はリトアニア(実質1位)、ラトビア(名目1位)などの国です。EU域内では低賃金の東欧諸国が大きく上昇しています。
ちなみに、リトアニアとラトビアは人口がピークから2~3割の急減です。人口急減下でも、要素価格均等化定理は成立するのです。人口急減による人手不足が賃金上昇の速度を速め、要素価格均等化成立の時期も早くしているのです。
要素価格均等化定理は経済学の中核理論でありながら、非現実的ということで使われませんでした。しかし、自由化、国際化が進行した現在では、東アジアや欧州で成立しています。
欧米は中国との貿易で高い輸送コストが必要です。この輸送コスト障壁で一定程度守られています。日中間では輸送コスト障壁が小さいです。そのため、賃金の同一化が進みやすいのです。
実際に日本の賃金は低下傾向です。中国の賃金統計は長期のものは存在しません。それでもGDPの増加を考えると、賃金上昇は間違いありません。
こうして、日中間の賃金は同一化へ向かいました。おかげで日本経済はボロボロになってしまいました。
今後も日中間の賃金は同一化へと進むでしょう。現状のままなら、日本経済がもっとボロボロ化することが避けられません。
1970年-1980年代は日米間で賃金同一化が成立しそうになりました。アメリカは貿易摩擦で賃金同一化を阻止しました。その後は日中間で賃金同一化が進行しました。
日本の賃金が上昇しない理由は謎ではありません。国際経済学の中核理論通りなのです。