2016年10-12月期 日銀統計 株 コメント

日銀資金循環統計による株式投資部門別売買・保有残高
資金循環統計コメント表201612

2016年10-12月期の日銀の資金循環統計から、株式投資部門別売買・保有残高の直近分を取り上げ、重要な箇所に色をつけて示した。日銀統計は、東証が公表している投資部門別売買状況という統計ではカバーしていない取引所外取引や株の発行、償却をも含んだ大変貴重な統計である。他方、その推計方法には問題点も数多く存在する。今回も日銀統計の数字を、その問題点と合わせて説明することにする。

最初に日銀統計が東証統計との比較で、常に良い点と悪い点を示す。

日銀統計の最大の欠陥は日銀ETFの買い主体の誤りである。この期の日銀ETF買いは1兆4511億円。少なくとも最近の日銀ETF買いの大半は東証統計では自己に含まれている。この誤りを指摘し、日銀は誤りを認めたのであるが、相変わらず投信に含めて算出を続けている。この分を考慮すると、投信は7723億円の売り越しから6800億円前後の買い越しへ、証券会社は2兆1504億円の買い越しから7000億円前後の買い越しへと修正されなければならない。

次が家計の3兆4505億円の売り越し。これは東証統計の個人3兆5034億円の売り越しから、発行市場等での購入を加えたものである。しかし、日銀の発行市場等での購入は常に過小推計である。より正しい数字は日証協が発行等を含めた個人売買の推計値を公表している。日証協の推計値は3兆0026億円の売り越しであり、日証協の数字が日銀の数字以上に正確性が高い。

海外は日銀統計では2兆7032億円の買い越し。東証統計では2兆4983億円の買い越し。これは発行等や取引所外取引の分をも含めて直接報告を受けている日銀の数字が最も正確性が高い数字である。

ここから先は、推測でしかないとこを書く。ただ推測の中には、当たっている可能性が高そうな推測もある。

国内銀行は503億円の売り越し。この数字の一つ下に、農林水産金融機関が6141億円の売り越しとあるが、この数字は完全な誤りである。日銀統計はフロー、ストック、調整の3部門からなる。そして調整の数字の変動は資産が株である場合は、TOPIXとある程度は連動するのが普通である。しかし、農林水産金融機関の調整の数字はTOPIXとの乖離が大きすぎる。従って、日銀統計における農林水産金融機関の株についてのストック、フロー、調整の数字は全て誤りである。4期連続の誤りであるが、誤りを繰り返す理由がわからない。

国内銀行に戻ると、東証統計では2418億円の売り越しであり、503億円売り越しの日銀統計より大きく売り越したことになっている。一方、この期に三菱UFJホールディングスが自社株買いを1000億円実施している。これは持株会社ということで東証では事法扱いにしている。しかしこれは東証がおかしく、実体は銀行の買いである。東証は訂正の努力を約束したのであるが、まだ訂正はなされていない。日銀統計の503億円の売り越しを否定できる材料もないので、ある程度は正確性の高い数字として扱う。

非金融法人企業は7368億円の売り越し。これに相当する東証の事法とその他法人は6142億円の買い越し。相当大きな差がある。ただ事法の自社株償却は大量に存在しているはずであるが、外部からはその数字はわからない。目に見える自社株買いから目に見えない自社株消却を差し引かなければならない。この差は自社株償却の数字と考え、日銀の数字をある程度は正確性の高い数字と信用するしかない。

薄赤色の部分が、企業年金を中心とする私的年金である「年金基金」と「公的年金」、および両者の合計である「年金計」を表す。公的年金は564億円の買い越し。GPIFと3共済の株式買い越し金額を推計してみると、もう少し大きな数字になった。しかし推計には必ず誤差を伴うので、日銀統計の564億円は妥当な推計値の範囲内だと思われる。

一方、私的年金である年金基金は859億円の買い越し。この数字の元になっている数字の一つは、東証統計の信託3442億円の売り越しである。信託の中で、買い越しは公的年金と信託方式の自社株買いくらいであろう。それ以外の昔から存在する多数の信託の大半は逆バリであり、売り越しのはずである。昔からある年金基金が859億円も買い越すとはとても考えられない。過去の年金や信託の売買行動パターンを考えると、日銀の買い越しという推計は誤りであり、実際には東証信託の何割かを占めるほどの売り越しである可能性が高い。

保険は958億円の売り越し。一方、東証統計の保険は1769億円の売り越し。この数字も日銀統計の方が誤りが大きい。この期間のTOPIXの上昇率は14.8%。保険の株式資産の増加率は14.1%であり、TOPIXを下回っている。保険の株式資産が仮に100%TOPIXに連動していたと仮定するならば、保険の株式売越額は1769億円に近い数字になる。信託の売越額からすると、生保の信託勘定での買い越しは考えられない。正確な数字は日銀よりも東証の方に近い可能性が高いと見る。

以上のことを頭に入れておく必要がある。その上で日銀の資金循環統計に基づく2016年10-12月期における投資部門別売買状況は「海外2兆7032億円の買い越し、証券会社2兆1504億円(修正後7000億円)の買い越し、vs家計(=個人)3兆4505億円(修正後3兆円)の売り越し、投信7723億円の売り越し(修正後は6800億円の買い越し)」であった。この期の日経平均株価は2665円値上がりして19114円で引けた。この期の証券会社の買いの大半は裁定買いであり、大元は海外の先物買いである。株価下落の防止に日銀ETF買いの貢献はあったが、株価上昇のほとんどは海外の一手買いにより上昇した期であった。

参照 株式売買関連の統計
 日銀 資金循環統計に基づく株式売買と株式保有残高
 投資部門別売買状況 現物と先物の時系列表
 投資部門別売買状況 長期時系列グラフ(月次)
 株式先物 投資部門別売買状況 累積買越枚数
 大手証券 先物建玉枚数推移 グラフ
 日本株 株式分布状況調査 2015年度

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2017年3月第2週 株 コメント

3月第2週 投資部門別売買状況 現物先物合計 現物 先物
投資部門別コメント週次20170310

3月第2週 大手証券 先物手口概算
ブログ週間先物手口20170310

3月第2週 日経平均株価 日中足チャート
週足株価ブログ用20170310

時系列データ
 現物と先物の投資部門別売買状況 時系列表
 投資部門別売買状況 長期時系列グラフ(月次) 
 株式先物 投資部門別売買状況 累積買越枚数 グラフ
 大手証券 先物建玉残高 枚数推移 グラフ


2017年3月第2週の日経平均株価は前週末比135円高の19605円で引けた。この週はNY株価が冴えない展開が続いた。そのため株価を引き上げたのは為替レートの動きであった。3日のイエレンFRB議長の議会証言はタカ派的な内容であった。しかしその内容はすでに織り込み済みであり、しばらくは円高傾向が続き、株価も弱含んだ。その円高の流れを転換させたのが8日に公表されたADP全米雇用報告の予想以上の強さであった。9日のドラギECB総裁の発言も従来のハト派色が弱まり、円安進行の材料となった。この円安進行を背景にして週末にかけて株価は上昇した。週を通してみると日経平均株価は3週連続で上昇し、年初来高値で終えることになった。

最初に、この週のTOPIXラージ先物の売買において、投信1202億円買い・信託1103億円の売りがあったことについて説明をする。こうした投信と信託に近い金額が売り買い反対方向に1000億円以上もあることはほとんどない。しかし最近、1度だけあった。それが1月第4週である。この週は日経平均ラージ先物に信託2700億円買い、投信2345億円の売りという売買があった。この週は同じ顧客が2000億円前後の日経平均ラージ先物の投信買い建玉を信託での買い建玉へ勘定を移したと推測した。3月第2週は同じ顧客が今度はTOPIXラージ先物の信託買い建玉を投信での買い建玉へと勘定を移したと考える。その金額が1150億円前後であった可能性が高い。手口は三菱UFJ→野村が多かったと思われる。前回は大和→野村であった。方向は正反対であるが、ほとんど見られない形式の売買が7週間に2度起こった。同じ顧客が保有する先物を投信(私募)と信託(特金など)の間で勘定を移し替えた可能性が高い。

3月第1週の最大の買い手は自己であった。現先合計で1806億円の買い越し。うち現物で3037億円の買い越し。先物で1231億円の売り越し。

この週の日銀ETFは784億円の買い越しであった。従って、日銀ETF以外の自己は現先総合で1000億円前後の買い越しになる。この週はメジャーSQのある週であった。1000億円の買い越しというのは通常の週なら多い方であるが、メジャーSQのある週にしては少ない。

この週の東証発表の金額では裁定形成買いが952億円、裁定解消売りが1891億円、差し引き939億円の裁定解消。裁定残はそれ以上減っているので、その減少株数から計算すると1600億円前後の裁定解消売買が入っていたことになる。一方、裁定以外のプログラム売買は1兆1665億円の買い、8956億円の売り、2709億円の買い越しであった。プログラム売買での買い越し分は、後で示すパリバが裁定形成と同じ形で現物を買った分などが含まれているからである。

この週はメジャーSQのあった週にしては裁定の買いと売りの合計金額が少なかった。一方、裁定以外のプログラム売買は、最近にメジャーSQがあった週の中ではやや多めの週であった。3月第2週も通常のメジャーSQのあった週と同様に、SQとその前後に現物、先物、OTCデリバ等の取引所内外での売買が大量に入っていた可能性が高い。ただ、現物と先物の裁定の中で東証に裁定として報告された金額が少なかっただけだと思う。裁定ではない単なるプログラム売買としては報告されている。

現物の取引所外取引やOTCデリバ等の売買は毎週存在するが、メジャーSQのある週は特に多い。そうした取引の影なら見ることができる。しかしその内容については自己の裁定売買を含めていろいろと推測はしているが、確度の高いものは少ししかわからない。その内容については、後に海外のところで少し触れることにする。

投信は現先合計で1214億円の買い越し。うち現物で505億円の売り越し。野村総研によると、3月第2週の国内株式型の公募投信は3億円だけの資金純流出であった。私募投信が500億円前後売り越していたと推定するしかない。

投信先物は1719億円の買い越し。うち日経平均ラージ先物で538億円の買い越し。この週に行われた投信による日経平均ラージ先物の大口売買は下記のようになる。

野村アセット「NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(野村レバETF)」350億円前後の買い越し。
野村アセット「NEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信(野村ダブルインバースETF)」200億円前後の買い越し。
大和投信「ダイワ・ブルベア・ファンドⅣ ブル3倍日本株ポートフォリオⅣ」150億円前後の買い越し。

上記の3本で700億円の買い越しになる。同種のブルベア型投信で資産規模が大きい大和の1本とシンプレックスの2本を加えると、6本合計で750億円前後の買い越しであった。この6本のブルベア型投信以外の公募、私募投信が合計して日経平均ラージ先物を200億円ほど売り越していたことになる。TOPIXラージ先物の買いは、大半が先に示した同一顧客内部での信託から私募投信への勘定の移し替えである。

個人は現先合計で538億円の売り越し。うち現物現金で1419億円の売り越し。信用で443億円の買い越し。先物で437億円の買い越し。小幅上昇の3月第2週は売り越しになった。個人は今年に入ってから10週連続で逆バリである。

信託は現先合計で1021億円の売り越し。うち現物で256億円の売り越し。先物で765億円の売り越し。信託も1150億円前後の同一顧客による信託から投信への勘定の移し替え分を差し引くと、少しばかりの買い越しであった可能性が高い。

3月第2週の最大の売り手は海外であった。現先合計で1099億円の売り越し。うち現物で987億円の売り越し。先物で112億円の売り越し。先物の投資部門別売買状況の海外と先物手口概算(3種の先物)の外資系14社を比較すると下記のようになる。
ブログ外資系と海外の比較20170310

日経平均ラージ先物とミニ先物を一体的に見ると、それほど乖離した金額でもない。メジャーSQのある週は外資系の売買の中にある自己の売買金額は通常より大きく、もっと乖離することが多い。ただどの証券会社の売買が自己であるかを示すことは難しい。先にも書いた通りメジャーSQのある週の自己は現物先物の取引所内取引だけではなく、現物の取引所外取引やOTCデリバ等の売買が多い。このことは海外、あるいは外資系の売買についても同様である。

この週の特徴は現物にある。投資部門別売買状況の海外現物は987億円の売り越し、財務省の対外証券投資での海外による対内株式投資は7227億円の売り越し。差が6240億円もある。乖離自体は毎週存在する。しかし乖離の幅としては6778億円が過去最高なので、非常に高い水準である。SQ前後の現物の取引所外取引で海外は6000億円前後売り越している可能性が高い。にもかかわらず株価が下げていないのは、OTCデリバ等に6000億に近い金額の海外による買いがあった可能性が高い。自己の所で書いた通り、メジャーSQ時にはこうした取引所外取引やOTCデリバ等の取引の中にある大きな影までは見える。しかし影の実体については、グロスの売越額は大きくてもネットの売越額は小さいということ以外に可能性の高いものを示すことはできない。海外に6000億円もの現物の取引所外取引とOTCデリバ等の売買があるということは、その相手方は自己であり、自己にも海外とは正反対の同様の取引があったことになる。

もう1つ指摘しておきたいことは、パリバによるTOPIXラージ先物売り4150億円についてである。パリバは10日の終了時点でTOPIXラージ先物を10万枚強も売り立てている。第2週はロール・オーバーに加え、3限月買い・6限月売りの新規の限月間スプレッドが4000億円前後見えていた。従って、パリバのTOPIXラージ先物売りは裁定である可能性が高い。以前のパリバのTOPIXラージ先物売買はどちらかというと自己の売買の方が多いように見えた。しかし、最近は海外と思われる売買も増えた。海外といっても、その多くの部分はパリバの海外自己である。3月第2週のTOPIXラージ先物の売りに関しては、全部か多くが海外自己である。先物の投資部門別売買状況の海外と先物手口概算の外資系14社を見る限り、そう考えざるをえない。しかし現物買いについては、全部か多くかが東京自己である。東証の投資部門別売買状況の自己と海外の現物売買からそう考えざるをえない。3月第2週のパリバの売買については、現物買いは東京自己、先物売りは海外自己が中心になっている。そしておそらくであるが、両者の間にOTCデリバでパリバの東京自己売り、パリバの海外自己買いという取引が存在するのであろう。

この週の海外はSQとその前後にいろいろ複雑な売買が大量にあったため、トータルとして見れば、売り越しか買い越しかわからない。確実なことは、取引所内取引だけの海外は現先合計で1099億円の売り越しであった。

合計すると、3月第2週は「自己、投信の買い越しvs海外、信託、個人の売り越し」であった。この週は同じ投資家によるTOPIXラージ先物の信託買いから投信買いへの移し替えが1150億円ほどあった。メジャーSQのあった週であるということと、財務省の統計の海外が大幅な売り越しであったことから、海外には取引所外で複雑な売買が大量にあったことを示す大きな影までは見える。しかしその細かな内容、すなわち影の実体まではわからない。それでも海外は取引所内取引だけならば売り越しであり、株価を引き下げた。個人とともに売り方の主体であった。買い方は自己の日銀ETFとブルベア型投信の先物買いが中心であった。それにパリバの東京自己と思われる現物買いが加わる。結果として日経平均株価は135円だけ上昇して週を終えることになった。

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2017年3月第1週 株 コメント

3月第1週 投資部門別売買状況 現物先物合計 現物 先物
投資部門別コメント週次20170303

3月第1週 大手証券 先物手口概算
ブログ週間先物手口20170303

3月第1週 日経平均株価 日中足チャート
週足株価ブログ用20170303

時系列データ
 現物と先物の投資部門別売買状況 時系列表
 投資部門別売買状況 長期時系列グラフ(月次) 
 株式先物 投資部門別売買状況 累積買越枚数 グラフ
 大手証券 先物建玉残高 枚数推移 グラフ


2017年3月第1週の日経平均株価は前週末比186円高の19469円で引けた。この週も日本の株価に大きな影響を与えたのはNY株価と為替レートの動きであった。アメリカのFRBでFOMCの投票権を持つメンバーが続々と3月利上げを支持する発言をしたため、円安が進行し、株価も上昇した。3月2日の上昇は前日のNY株価の急騰を好感したものであるが、その理由は2月28日のトランプ大統領の議会演説でとりたてて悪材料が出なかったことが原因と解説されたりした。週を通してみると、日経平均株価は2週連続で上昇して終えることになった。

3月第1週の最大の買い手は海外であった。現先合計で1208億円の売り越し。うち現物で797億円の買い越し。先物で2004億円の買い越し。先物の投資部門別売買状況の海外と先物手口概算(3種の先物)の外資系14社を比較すると下記のようになる。
ブログ外資系と海外の比較20170303

外資系14社の売買に自己である可能性が高いドイツの250億円の売りを差し引いたものが下の方の表である。2種類の数字に少し乖離があるが、それほど大きな差でもない。

先物手口概算で買い方のトップはABNアムロクリアリング。日経平均ミニ先物の850億円買いが中心である。これは手口が公表されていない6限月売りとセットになったスプレッド裁定と考えている。裁定の元となった6限月に海外が850億円ほどの買いを入れ、そのために割高になった6限月売り・3限月買いというスプレッド裁定を海外のトレーディング会社かヘッジファンドが実施した。裁定という証拠はないが、ABNアムロクリアリングには様々な種類の裁定売買が好きな海外顧客が多いことだけは確かである。

この週の先物手口は1000億円以上の大口の売買をした証券会社はない。つまり海外といっても大手顧客が大きく動くことはなかった。中口小口の売買の積み重ねである。UBSが大量に売買をすればUBS本体運用部が動いた可能性が高いが、合計で500億円ではUBS本体運用部が少し動いたのか、全く別の顧客が売買したのか区別をつけられない。手口の分析というのは大口でないとわからない。中口小口だと超大手から個人まで何でもありえることになってしまうからだ。

海外の売買で1つだけわかることがある。海外の現物とTOPIXラージ先物が売り越しで日経平均ラージ先物、日経平均ミニ先物が買い越しである場合は、短期志向の投機筋が買い越し、中長期志向の投資家が売り越しであるケースが多い。昨年秋からゴールドマンを中心にして買い上がった中長期志向の大口の投資家の買いは、無くなったか急減している。代わりにNY株価や円安に投機筋が反応して買いを入れた。ただその投機筋も中口小口ばかりで、大手の投機筋による大口の買いはなかった。

自己は現先合計で1137億円の買い越し。うち現物で2536億円の買い越し。先物で1399億円の売り越し。

この週の日銀ETFは764億円の買い越しであった。従って、日銀ETF以外の自己は400億円前後の買い越しになる。先週説明したように、この400億円の中に、ディーラーの現物先物のディーリング用の買いと、取引所外取引での現物売り、SGX等の大証以外の上場先物、オプション、日経平均リンク債、スワップなどの売りポジションをカバーするための買いが含まれており、それらをすべて合計すると400億円前後の買い越しになっているのである。

この週の裁定売買は東証発表の金額では403億円の裁定形成。裁定残はそれ以上増えているので、その増加株数から計算すると1400億円前後の裁定形成売買が入っていたことになる。この週の現物買い・先物売りの金額からすると、裁定売買は1400億円に近かった可能性が高い。東証発表の裁定形成売買はみずほ350億円、ドイツ250億円が大口の裁定形成売買であった。先物手口からすると、みずほの現物買い先物売りは350億円の2倍の700億円くらいはあったのではないか。半分の350億円は現物買いと先物売りの時間が同時ではないため、裁定形成売買ではないが、事後的には裁定残と同じ形になったものと考える。

信託は現先合計で720億円の売り越し。うち現物で381億円の売り越し。先物で339億円の売り越し。

3月3日にGPIFの2016年10-12月期の決算が発表された。そこから推定できる日本株の買越額は600億円前後しかなかった。GPIFは2016年3月以前は日本株を大量に買い越していた。それが2016年4月以降、買越額は激減し、推計誤差を考えると買い越しが確かとさえ言えないないくらいの小幅の買越額に減ってしまった。GPIF以外の信託の大半は上値は売り上がりが基本であり、大きく下がらないと買い越しにはなりにくい。

投信は現先合計で814億円の売り越し。うち現物で588億円の売り越し。野村総研によると、3月第1週の国内株式型の公募投信は384億円の資金純流出であった。私募投信も少し売っていた可能性が高い。

投信先物は226億円の売り越し。うち日経平均ラージ先物で132億円の売り越し。TOPIXラージ先物で108億円の売り越し。この週に行われた投信による日経平均ラージ先物の大口売買は下記のようになる。

野村アセット「NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(野村レバETF)」140億円前後の売り越し。
野村アセット「NEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信(野村ダブルインバースETF)」20億円前後の売り越し。
大和投信「ダイワ・ブルベア・ファンドⅣ ブル3倍日本株ポートフォリオⅣ」40億円前後の売り越し。

上記の3本で200億円の売り越しになる。同種のブルベア型投信で資産規模が大きい大和の1本とシンプレックスの2本を加えると、6本合計で250億円前後の売り越しであった。この6本のブルベア型投信以外の公募、私募投信が合計して日経平均ラージ先物を120億円買い越し、TOPIXラージ先物を108億円売り越していたことになる。

3月第1週の最大の売り手は個人であった。現先合計で1164億円の売り越し。うち現物現金で1070億円の売り越し。信用で230億円の買い越し。先物で324億円の売り越し。個人はやはり逆バリであった。年初から9週連続で逆バリである。

合計すると、3月第1週は「海外、自己の買い越しvs個人、投信、信託の売り越し」であった。いずれの主体も買い越し、売り越しの金額は小さい週であった。NY株高と円安に反応して、投機筋が中心と思われる海外が日経平均型の先物で買い上がった。週初の安い局面では日銀ETFも買いを入れていた。しかし、個人、投信、信託の国内勢は皆上値に戻り待ちの売り指し値を置いていた。結果として3月第1週は日経平均株価が186円だけ上昇して週を終えることになった。

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2017年2月第4週 株 コメント

2月第4週 投資部門別売買状況 現物先物合計 現物 先物
投資部門別コメント週次20170224

2月第4週 大手証券 先物手口概算
ブログ週間先物手口20170224

2月第4週 日経平均株価 日中足チャート
週足株価ブログ用20170224


時系列データ
 現物と先物の投資部門別売買状況 時系列表
 投資部門別売買状況 長期時系列グラフ(月次) 
 株式先物 投資部門別売買状況 累積買越枚数 グラフ
 大手証券 先物建玉残高 枚数推移 グラフ


2017年2月第4週の日経平均株価は前週末比49円高の19284円で引けた。この週もNY株価は連騰が続いたが、日本株に対する影響は小さかった。薄商いが続く日本の株価に大きな影響を与えたのは、第3週に続いて為替レートの動きであった。週前半は円安傾向であり、22日の寄りあたりまでは円安が維持された。株価も22日の寄りまでは上昇した。しかしその後は為替が円高方向に動き、株価も並行する形で下落した。週を通して見ると、日経平均株価はわずかばかりの上昇を維持して週を終えることになった。

2月第4週の最大の買い手は自己であった。現先合計で1099億円の買い越し。うち現物で1194億円の買い越し。先物で94億円の売り越し。

この週の日銀ETFは1468億円の買い越しであった。従って、日銀ETF以外の自己は400億円前後の売り越しになる。

自己は原則として売り越し買い越しはゼロかそれに近い金額になる。現先総合で400億円の売り越しがあった場合、400億円に相当するそれ以外の他の何らかの売買とセットになっていることが多い。具体的には現物の取引所外取引、SGX先物、CME先物、上場オプション、エクイティ・スワップ、日経平均リンク債、ETFなどが思いつくだけでもあげられる。それ以外にディーラーによる現物と先物だけのディーリング勘定での売買がある。日銀ETF買いを差し引いた自己の現先合計の売り越し買い越しの金額が小さかった場合、ディーリング勘定が大半であり、他の何らかの売買を合計すればゼロに近かったということもあるだろう。しかし、金額が大きくなると、他の何らかの売買での売り越し買い越しが東証現物と大証先物の取引所外に存在していた可能性が高くなる。こうした他のなんらかの売買と取引所を通じる現先合計の売買を足し合わせると自己はゼロに近くなるわけである。

日銀ETFの買いというのは現物の取引所外取引である。現物の取引所外取引の全体像は全くわからないが、その中で日銀ETF絡みの売買だけは金額まではっきりとわかる特別の取引である。中身と金額がわかるので、毎週特別扱いにしている。2月第4週の場合、日銀ETFを除くと、上記であげたSGX先物等の取引の合計が400億円の買い越しになっているわけである。もっと多い週もあるが、日銀ETF以外の自己は大きな金額にはならない。日銀ETF以外の自己は取引所で2月第1週は400億円の買い越しであるが、2007年1-2月は900億円の売り越しである(現物と先物だけのディーリング勘定がスクウェアであったと仮定)。日銀ETF以外の自己は売り越したり買い越したりであり、長期で見ると最近は売りか買いかのどちらかに大きく傾いてはいない。2010年12月から累計で12兆円以上買い越している日銀ETFと比較すると影響力が何ケタも小さいのである。

自己の現先合計マイナス日銀ETFの間にいくらかの差が常に発生している。この差が発生する原因は先に上げたとおりである。そして、差が発生する原因となる様々な取引の1つが日経平均リンク債絡みの売買である(海外自己が主体となっているものは海外の売買となるので除く)。

最近、日経平均リンク債からみの売買を日本経済新聞がよく報じている。日経平均リンク債絡みの売買は毎日存在していてもおかしくない。しかし、規模は大きなものではない。日経平均リンク債絡みの買いが一番大きく存在した時期は、バブルとその崩壊直後である。バブルの時代に日経平均リンク債が大量に発行され、先物は買われた。バブル崩壊とともに日経平均リンク債絡みの買いが大量に入った。しかし、バブル崩壊をくい止める力は限りなくゼロに近かった。こうした日経平均リンク債絡みの買いが大量に入っていたころ、日本経済新聞は何一つ報道しなかった。最近になって日経平均リンク債絡みの売買が増えているというような印象を与える記事が増えている。

日本経済新聞が日経平均リンク債絡みの買いについて書くことは報道の自由である。しかし、日経平均リンク債絡みの買いを書くのであれば、その金額は自己の売買のすき間に他の多数の種類の売買の1種類として現れ、最近では頻繁に売買があったとしても、売り越し買い越しの金額は大きくはないこと、バブル崩壊直後に大量の買いが入ったことなどの説明をどこかできちんと書くべきである。デリバティブのディーリングの経験のあるベテランやOBなどには、日経平均リンク債の歴史について詳しい人がいるはずである。そうした年長者に取材をして知識を持ってから記事を書くべきである。そうでないと、日経平均リンク債絡みの売買が相場を大きく動かしているというような全く誤った理解が世間に広まってしまうからである。

元に戻るが、この週の裁定売買は、東証発表の金額では436億円の裁定形成。裁定残はそれ以上増えているので、その増加株数から計算すると500億円前後の裁定形成売買が入っていたことになる。この週も差が存在するが、金額が小さいので深く追求しないことにする。なお、東証発表の裁定形成売買はドイツ200億円、みずほ150億円などが上位である。

事法は現先合計で611億円の買い越し。うち現物で621億円の買い越し。最も目立った自社株買いは、「日本ユニシス、2月24日、111億円」であった。それほど大口の売買ではない。ただ数十億円クラスの自社株買いは普段よりも多かった。

投信は現先合計で298億円の売り越し。うち現物で540億円の売り越し。野村総研によると、2月第4週の国内株式型の公募投信は321億円の資金純流出であった。私募投信も少し売っていた可能性が高い。

投信先物は242億円の買い越し。詳しくウォッチしている野村レバETF以下の6種類のブルベア型投信による日経平均ラージ先物は160億円の買い越しであった。残りはその他もろもろの投信の売買であろう。

海外は現先合計で534億円の売り越し。うち現物で728億円の売り越し。先物の投資部門別売買状況の海外と先物手口概算の外資系14社を比較すると下記のようになる。

ブログ外資系と海外の比較20170224

この週は先物の投資部門別売買状況の海外と大手証券先物手口概算の外資系14社もそれほど大口の売買はなかった。重要性が低いので上記以上の説明は省略する。

第2週には「ゴールドマンを通じる大手機関投資家数社の買いvsUBS本体運用部の売り」があり日経平均株価は上昇した。第3週はゴールドマンによる買いが縮小する中、UBS本体運用部による巨額の売りは続き、日経平均株価は下落した。それが第4週の先物売買は小粒化してしまった。小粒の売買というのは個人から大手の機関投資家まで何でもありなので裏はわからない。ただ一つだけ言えることは、第3週にはUBS本体運用部が2550億円前後の先物売りを出していた。その売りが第4週には激減した。UBS本体運用部の巨額の売りが激減したか、あるいはなくなったことが第4週の日経平均株価が値上がりした一つの大きな原因であったと思われる。

2月第4週の最大の売り手は個人であった。現先合計で936億円の売り越し。うち現物現金で587億円の売り越し。信用で178億円の買い越し。先物で527億円の売り越し。個人はやはり逆バリであり、今年も8週連続で逆バリが続く。小幅の値上がりにしては売りが多い感じはする。第3週に先物を大量に買ったスイングトレーダーが多少の戻りで先物の半分ほどを利食ってきたからである。彼らの相場観では先の天井は低いという読みもあったのであろう。

合計すると、2月第4週は「自己、事法の買い越しvs個人、海外、投信の売り越し」であった。いずれの主体も買い越し、売り越しの金額は小さい週であった。株価が上昇した原因は、いつもと同様に自己に含まれる日銀ETFの買いが入ったからであった。ただ日経平均株価が144円下がった第3週と比較すると、第4週はUBS本体運用部の2550億円の先物売りが激減、あるいはなくなったことが特徴として指摘できる。この大量売りがなかったために、日経平均株価は49円という小幅ではあるが上昇することができた。UBSによる大量売りが一巡したことが、別の角度から見た株価上昇の原因であった。



2月 月間 投資部門別売買状況 現物先物合計 現物 先物
投資部門別コメント月次20170224

記録にとどめておくべき事項、数字。

投信現物
野村総研によると、2月の公募型日本株投信は2058億円の資金純流出。

投信による日経平均ラージ先物売買
野村アセット「NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(野村レバETF)」150億円前後の売り越し。
野村アセット「NEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信(野村ダブルインバースETF)」200億円前後の売り越し。
大和投信「ダイワ・ブルベア・ファンドⅣ ブル3倍日本株ポートフォリオⅣ」100億円前後の売り越し。

事法部門での自社株買い
2月9日に行われた三井物産による475億円の買いが一番大口。

自己
日銀ETFが5869億円の買い。

裁定売買(大部分が自己、一部は海外)
東証発表 裁定形成売買の金額合計 2634億円(現物買い・先物売り)。
東証発表 裁定残株数変化からの裁定解消売買推計値 2700億円前後(現物売り・先物買い)。


2月月間では、現先合計で「自己6087億円(うち日銀ETF5869億円)の買い越し、事法1452億円の買い越しvs海外4890億円の売り越し、投信1796億円の売り越し、信託1763億円の売り越し」で、日経平均株価は184円下落した。2月の株価は、日銀ETFという公的資金の買いによって下げを最小限に抑えることができた。相も変わらず続く官製相場であった。

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2016年 年間 株 コメント

2016年 投資部門別売買状況 現物先物合計 現物 先物
投資部門別売買状況2016年

2016年 大手証券 先物売買手口概算
先物手口2016年間

2016年 日経平均株価 日中足チャート
週足株価2016年間ログ用

時系列データ
 投資部門別売買状況 長期時系列表 (日本株)
 株式先物 投資部門別売買状況 累積買越枚数 グラフ
 大手証券 先物建玉残高 枚数推移 グラフ


2016年の日経平均株価は前年末比81円高の19114円で終えた。ただし、TOPIXは少し値下がりのまま年を終えた。

2016年の最大の買い手は自己であった。現先合計で3.8兆円の買い越し。うち現物で2.4兆円の買い越し。先物で1.4兆円の買い越し。

2016年は日銀ETFによる買いが4.6兆円入っている。従って、日銀ETF以外の自己は0.8兆円前後の売り越しであったことになる。一方、2015年は日銀ETF以外の自己は0.6兆円の買い越しであった。2年間では0.2兆円だけの売り越しになる。自己の中にはいろいろと複雑な取引があるが、2年というスパンで見ると売越額又は買越額は大きくはなかったことになる。

なお、2016年の年間では東証発表の実質裁定残(買残-売残)は7.9億株の減少、現物の裁定売買は2.9億株の裁定形成であった。裁定形成売買が入っているにもかかわらず、裁定残は大きく減少。裁定残をETFに替えて日銀に売っているからという説もある。しかし、その動きは夏頃までである。日銀が7月末にETF購入額を年間6兆円に増やした少し後あたりから、裁定形成売買の株数以上に裁定残の株数が増えている。2016年前半は日銀ETFの買いで説明できたが、後半は日銀ETFの買いとは動きが正反対である。理由はよくわからない。裁定残の統計自体がいいかげんで信用のできない統計であることが理由の1つであろう。ただ、自己の先物は年間で1.4兆円の買い越しなので、裁定売買は形成ではなく解消である。2.9億株の裁定形成は間違いであり、7.9億株の裁定解消の方が正確な数字により近かった。

信託は現先合計で2.7兆円の買い越し。うち現物で3.3兆円の買い越し。先物で0.6兆円の売り越し。このうち年間ではなく、1-9月の期間での現物は3.6兆円の買い越し。日銀は資金循環統計で同期間の公的年金の買越額を3.2兆円と推計している。この推計値は少し過大推計であり、実際の買越額はもう少し小さかったと見ているが、それほど実体から大きく離れた数字でもないとも考えている。またトヨタの自社株買いが信託方式で入っており、1-9月で0.7兆円の買い越しになる。すなわち、日銀推計の公的年金とトヨタによる信託方式の自社株買いの2種類の買いの合計が3.9兆円であり、その他もろもろの信託は1-9月に0.3兆円の売り越しであったことになる。2016年の前半は、株価が下落した結果、公的年金を中心に株を大幅に買い越した。しかし、10-12月は、海外主導で株価が大きく上昇したので、信託全体で現物株を0.3兆円売り越していたことになる。

事法は現先合計で2.2兆円の買い越し。大半が自社株買い。

その他法人は0.5兆円の買い越し。従業員持株会が買いの中心。

その他金融は0.3兆円の買い越し。信託や私募投信を通じて株を買っている金融機関はあるが、直接、株を買っている金融機関は大手では思い浮かばない。日銀の資金循環統計では農林水産金融機関、中小企業金融機関等といったところが買い越しになっている。この部門に含まれる大手以外の中小金融機関の小口の買いが積もって0.3兆円の買い越しになったとしか考えられない。

証券会社は0.1兆円の売り越し。東証に会員権を持っていない中小証券の売りである。実際の売りの大半は、中小証券を通じて売買をする個人の売りである。

銀行は0.5兆円の売り越し。取引所内取引では銀行の売り越しは続く。

保険は0.6兆円の売り越し。保険の売り越しは続いている。ただ日銀の資金循環統計を見ると、信託勘定では年の前半は買い越していたと思われる。後半は信託勘定でも売り越しの可能性が高い。

海外は現先合計で2.2兆円の売り越し。うち現物で3.7兆円の売り越し。先物で1.5兆円の買い越し。うち日経平均ラージ先物で0.7兆円の買い越し。日経平均ミニ先物で0.2兆円の買い越し。TOPIXラージ先物で0.7兆円の買い越し。

海外は2016年の株価下落、低迷時すなわち9月以前は大幅な売り越しであった。それが10月以降の株価上昇時には大幅な買い越しになっている。景気敏感で順バリという運用方針は変わっていない。9月以前の売りは現物の割合が高く、10月以降の買いは先物の割合が現物より少しだけ高かった。

9月以前の売りは、従来の下落時よりも現物売りの金額が大きかった。この売りの何割かはオイルマネーの売りであった可能性が高い。売り切りであり、買い戻しはほとんどなかったと思われる。そのため、海外現物は年間でも大幅な売り越しになった。

海外先物は、2016年秋からの上昇局面ではUBS、ゴールドマン、JPモルガン、バークレーズという4社の買いが特に目立った。しかし、年を通して見ると、最も大幅に買い越したのはJPモルガンの1.2兆円の買いであった。JPモルガンは年の後半に買い越しであっただけではなく、前半も買い越しであったため、年を通してなら最大の買い手になった。他の3社は年の前半に大きく売り越していた。UBSはUBS本体運用部の売買が多くを占める。しかし、年間では売り越しであり、日経平均ラージ先物買い・TOPIXラージ先物売りになっている。秋以降のUBSは両先物を買い越しながら、日経平均ラージ先物の買いの比率が高かった。これはUBS本体運用部が日経平均ラージ先物の割合を増やしたのか、全く別の顧客が買ったのか、現時点では区別がつかない。UBS以外の3社は年金などの長期性の資金が中期的観点からTOPIXラージ先物を中心に売買をしていると考える。

ニューエッジは2016年2月にTOPIXラージ先物で0.5兆円前後の超大口買いがあったことが大きい。メリルリンチは10月にTOPIXラージ先物を0.2兆円前後買ったことが一番寄与している。HSBCは12月だけで先物を0.6兆円売り越しており、外資系証券の中では一番異質の売買行動をとっていた。

投信は現先合計で2.4兆円の売り越し。うち現物で0.4兆円の売り越し。野村総研によると、日本株型公募投信からの資金純流出額は0.5兆円であった。私募投信が少しだけ買い越していた可能性が高い。

投信は先物で2兆円の売り越し。うち日経平均ラージ先物で1.6兆円の売り越し。TOPIXラージ先物で0.4兆円の売り越し。2016年年間の大口投信による日経平均ラージ先物の売買は下記のようになる。

野村アセット 「NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(野村レバETF)」 0.7兆円前後の売り越し。
野村アセット 「NEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信(野村ダブルインバースETF)」0.2兆円前後の売り越し。
大和投信 「ダイワ・ブルベア・ファンドⅣ ブル3倍日本株ポートフォリオⅣ」 0.1兆円前後の売り越し。

上記3種のファンドだけで合計1兆円の売り越し。他の同種のブルベア型ETFも小幅の売り越しであるが、それを加えたとしても1兆円強くらいであろう。残りの0.6兆円弱の日経平均ラージ先物の売り越しとTOPOXラージ先物の0.4兆円売り越しは、公募投信の売りも一部は含まれているとは思う。ただ金額としては私募投信による売り越しの割合が高かったと思われる。

2016年の最大の売り手は個人であった。現先合計で3.3兆円の売り越し。うち現物現金で3.8兆円の売り越し。信用で0.7兆円の買い越し。先物で0.2兆円の売り越し。

東証の数字は発行市場分を含まない。発行市場は買いしかなく、個人の比率が高い。発行市場も含めた売買金額推定値を日証協が2016年1-9月期までの数字を公表している。この間、発行市場を含まない東証統計では個人現物(含む信用)は0.3兆円の買い越しであった。これに対して発行市場も含めた場合、日証協の推計では0.7兆円の買い越し。それでも10-12月期には東証統計での個人の現物(含む信用)の売越額は3.5兆円。10-12月の戻り相場では個人は大量に売り越した。発行市場を含まない東証統計での個人の現物(含む信用)の売越額は年間3.2兆円である。発行市場を含めても年間2.8兆円弱の売り越しであった可能性が高い。

2016年の個人は週レベルで見た場合、52週中46週で逆バリであった。同時に下げ局面では小幅の買い越し、上げ局面では大幅な売り越し。年間で日経平均株価は小幅の上昇であるが、往って来いの相場では大幅な売り越しになっている。バブル崩壊後の個人は発行市場で買った分を取引所で売り越すというのが基本形であり、発行市場をも含めた売越額はそれほど大きな金額ではなかった。しかし、アベノミクス相場が始まってからは、個人の取引所での売越額は発行市場での購入分を大きく上回る金額になっている。デイトレーダーは売買金額は大きいが、買越額はそれほど大きなものではない。一方、高年齢富裕者層は、下げ局面での買いは少なく、上げ局面では大量に売ってくる。アベノミクス相場が始まって以降、個人の株式離れが本格化している。

2016年年間では「自己3.8兆円、信託2.7兆円、事法2.2兆円の買い越しvs個人3.3兆円、投信2.4兆円、海外2.2兆円の売り越し」であった。

個人は大幅な売り越しである。投信も一部に法人が売買する私募投信が含まれているが、過半は個人が中心に売買をする公募投信の売りである。すなわち、個人マネーは投信を含めても大幅な売り越しであった。個人を中心とする国内投資家が株を大量に売り越す中、買い方の多くは日銀と公的年金であった。これだけ国内投資家が株を売り越したのにもかかわらず株価が下がらなかった理由は、完全な官製相場であったことを意味する。公的資金の買いが入っていなければ、株価は大きく下落していたことは間違いない。その場合、負の資産効果で景気後退が発生していた可能性が高い。

日銀ETF買いについては反対意見が多い。自由な株式市場に対する冒涜という人もいる。しかし、日銀ETFの買いは現在のような環境下では必要なのである。これだけ日銀が買い支えながらも、国内投資家の資金は株式市場から続々と逃げ出している。これはバブルとは正反対の逆バブル現象であり、バブル崩壊の継続と言ってもよい。そして株価が戻れば売りという株式市場のヒステリシスの重病が定着してしまっている。その結果、日本の株価は長期で見た場合、諸外国との比較で極端に下がったままの状態が続いている。こうした重要な事実をまず理解する必要がある。

日本の株式市場が陥っている重い病気は、日銀ETF買いという対症療法だけでは治らない。ヒステリシスという恐ろしい病気が定着してしまった以上、その治療をするためには極端な政策を採用しないと治らない。日銀の金融緩和は規模が小さすぎるのである。

この病気を治す方法は、株価を緩やかでよいから右肩上がりの状況をできるだけ長期間維持することしかない。日本以外の国では株価を高値掴みしても、何年か塩漬けにしておけば元に戻る。日本では高値で株を買ってしまうと損をする可能性が非常に高い。損切りのうまい人しか株で儲けることができない。あるいは高値では必ず売り、底値を買うことに徹するしか儲かる方法はない。この20数年間続いた「勝利の方程式」を、株価の長期の右肩上がりを復活させることにより「敗北の方程式」に変えさせる必要がある。

国内投資家の資金をブラックホールのように吸い込む国債という資産がまだ数百兆円規模で日銀の外に残っている。金余りの機関投資家は、金利が非常に低いこの国債の購入に殺到する。そして機関投資家は、この資金運用難こそが日銀の金融緩和の大きな副作用だと主張した。

政府・日銀は、資金の運用先がないと抗議する機関投資家がいた場合、株を売らずに、株を大量に買えと言わなければならなかったのである。これこそが量的緩和のもたらすポートフォリオ・リバランス効果という大変重要な波及ルートでもあった。ところが日本ではあまりにも株価の値下がりが長続きしてきたため、量的緩和がもたらした株式市場に対するポートフォリオ・リバランス効果はプラスではなく、巨大なマイナスが続いたのである。日銀と公的年金以外の国内機関投資家は、アベノミクス相場が開始されてからも株を売り越し続けてきた。もう一つの重要な買い手は、日銀の量的緩和によって資金運用難に陥れることが不可能である海外投資家だけであった。政府・日銀は自分たちが行っている政策がどのようにして効果が発現するのかという一番重要な部分を理解できていなかったのである。

その結果、政府・日銀は資金運用難と主張する機関投資家の意見を聞き入れてしまった。そして機関投資家は株を売り続けた。これは政府・日銀が実施すべき政策とは正反対の政策を採用するという自爆戦略であった。採用すべき政策は、日銀が国債をもっと大量に購入し、機関投資家がしがみつく国債から無理矢理にでもその資金を引き剥がし、株を買わざるをえない状況に追い込まなければならなかったのである。超金余りの機関投資家の資金が継続的に株へと向かい続けるようになれば、株価は右肩上がりが続かざるをえない。そうなってから、ようやく株式市場のヒステリシスは克服され、普通の国へと戻ることができる。そして、この政策を長く続ければ、いずれ必ず株式市場はバブルへと進行して行く。このバブルに近づいた時こそ、日銀はETFを売却し、バブル化を防がなければならない。財政再建にも貢献する。このETF買いの出口戦略こそが大変重要なのである。

日銀は国債もETFも出口戦略なしに大量購入を続けてきた。国債購入の出口戦略がないからこそ9月にはイールドカーブコントロール付き量的・質的緩和というテーパリング色の強い政策に移行せざるをえなかった。日銀「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に対する代替案というものを提案したのは、出口戦略を明確に示した上で、株式市場をバブル崩壊から救いたかったからである。出口戦略なしに金融緩和を長期間続けることはできない。出口戦略なき日銀ETF買いは、たとえ株価が下がったとしてもいずれはテーパリングに向かわざるをえなくなる。そして株価が上がったとしても、現状では株の主な買い手は海外投資家になる可能性が高い。それでは2015年に実際に起こったように、株価が上昇するほど日本の国富は減少するばかりになる(アベノミクスがもたらした株価上昇による100兆円の損失)。

欧米で研究の進んでいる「物価水準の財政理論」という学説は、ゼロ金利に近い国債の大量発行が株式市場から資金を奪い取り、株価上昇を抑制するという効果が全く考慮されていない。日本では第2次世界大戦終了直後のハイパーインフレ期にも株価上昇率は物価上昇率に遠く及ばず、大半の株主は大損をした。インフレ税は国債や預貯金に課するべきものであり、株にまで課してしまうと経済に対するマイナス効果が非常に大きくなる。日本以外の国で、最近はそのようなマイナス効果は発生していない。「物価水準の財政理論」が日本では全く適用できないとは言わないが、日本経済の異質性が考慮されていない。少なくとも株式市場のヒステリシスの克服をも目指した欧米とは異なる「日本バージョンの物価水準の財政理論」でなければならない。「欧米バージョンの物価水準の財政理論」をそのまま日本に適用してはいけない。

私の日銀「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に対する代替案という提案がベストの提案であるとは言わない。日銀ETF買いに反対するのは構わない。しかし、代替案なしに反対ばかりで何もしなければ、株価は下落し続け、日本経済もマイナス成長が続いてしまう。この負のスパイラルを容認するわけにはいかない。物価水準の財政理論を安易に採用することもできない。株式市場に深く通じている者であるなら、日本の株式市場を、そして日本経済を救い出すことのできる新しい具体案を競って提案しあうべきである。

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